「相棒」   作:ダンちゃん1号

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夏休み兼100話記念番外編兼没ネタ:精霊使いと肝試し中編

「いい加減この土地を寄越せっつってんだろぉ?」

「そーじゃなきゃお宅の娘さんを"研修"に連れ出しますからねぇ?」

 

その映像を見て世紀末もここまで来たかと頭を抱えた。どうやらこれはこの土地の本来の所有者が脅されている映像であるようだ。

 

「…ッスゥー」

「…やっべぇ。」

 

その恫喝具合と言い妙に良い体格だったり背中にちらりと刺青が見えたり、映像の中でとうとう拳銃(はじき)という単語を出したり、完全に相手はヤの付く自営業の方々だ。創星神復活の混乱に乗じてヤの付く自営業の方々もお仕事を頑張っているのだろうか。

 

「ていうかチザクラは何処でこれを?」

「精霊ですよ?」

「…盗撮、だね。覚えがあるよ。主にマスカレーナさんとか。」

 

こういうやり取りもあってか、割とこの情報は信じられるものだということは分かった。マスカレーナは職業柄色々なデータを持ち運ぶのでさもありなんである。この世界に来てからは変装の見た目はある程度より取り見取りになったと喜んでいた。それでも、犯罪は犯罪なのでこってりと叱ったが。

 

「ま、とりあえずは俺達がこのヤの付く自営業の方々をボコボコに、で良いんだな?」

「大砲に詰めて宇宙旅行にでも行ってもらう?」

方向(着弾地点)はシリアナでいいだろ。」

「話について行けないです…」

 

この二人と話していると話がどんどん明後日の方向へ逸れていってしまう。チザクラは頭を抱えながらも、シリアナという地名が気になっていた。どうやらチザクラは本質的には霊使と同じらしい。

 

「えーと、シリアナが何処かは存じませんし物凄く気になるところですが、今は…。」

「分かってる。要するにここに『恐ろしい何かが居る』ってことを知らしめればいいんだろ?でも相手はヤの付く自営業の方々だ。ただビビらせるだけって言うのはダメだ。」

「あ、じゃああの二人の個人情報すっぱ抜くっていうのは?」

「じゃあそれをダシにして思いっきりビビらせよう。」

 

チザクラの目の前でいとも容易く相談されるえげつない行為。これには思わずチザクラも「相談吹っ掛ける相手間違えたかなぁ」という感想しか出てこなかった。

 

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そして、数日が過ぎた。あれからチザクラの元へ通い始めた霊使とウィン。それに事情を知った克喜に結に奈楽。最初は人が増えたことに戸惑いを隠せなかったが全員が全員霊使の親友であることを知ってチザクラは少しばかり安心した。そして、それと同時に何となく嫌な予感も覚えた。ただでさえ発想がどこかハジけている節のある霊使の友人なのだ。なんというか、敵がものすごく悲惨な目に合う気がしてならない。

 

「というわけで、や―さんビビらせ作戦の詳細を煮詰めたい。」

「とりあえずここは、ポルターガイストさんが一番だろ。」

「極細のワイヤーでそれっぽい現象なら起こせるよ?」

「じゃあポルターガイストさんはそれで決定っと…。」

 

何気に今怪奇現象のうちの一つであるポルターガイストを起こすと言い切った。その為の種もすでに作ってあるとは。

 

「ま、コレはどちらかと言えば生来のモノだからねぇ…。」

「キスキルにワイヤー術習おうかなぁ…。」

 

チザクラは目の前で行われる理解の範疇を超越した話について行けない。ワイヤーでポルタ―ガイストを起こす?ワイヤー術?生来のモノ?

チザクラの中で疑問が疑問を呼び、とうとうその疑問はオーバーフローした。

 

「ちょっと話について行けないんですけど?」

「…やっべ。」

 

チザクラは霊使がぼそりと呟いた一言を聞き逃さなかった。顔を真っ赤にしてその距離を詰めて来る。

 

「『やっべ』ってなんですか!?」

「すっかりみんなの素性説明するのを忘れていたと思ってさ。俺とウィンはともかく…。他の皆―――特に他の精霊についてはよく知らないだろ?」

「いや、そういうことではなくてですね!?」

 

チザクラはもう何が何だか分からなくなっていた。霊使やその仲間たちと話していると自分がどうにも変わっていってしまうように思えるのだ。それはきっと悪い事ではないのだろうが、チザクラは「自分が変わる」という経験が無かったため、それが悪い事のように思えてしまう。

 

「じゃあどういうことだよ!?」

「なんでそんなにホイホイ話が進んでいるだってことですよ、私がツッコミたいのはぁ!」

「だって…打合せしてきたし。」

「だったら私も呼んでくださいよ!」

「だって…連絡先知らんし…。」

「ここに来ればいいじゃないですか!?」

「電車賃、高い。」

 

チザクラと霊使がギャーギャー言い合っている姿を見て克喜は思わず「姉妹みたいだな」と呟いた。

その言葉に一早く反応したのは他でもないチザクラだった。

 

「もし、霊使さんが兄弟ならワタシはストレスで死んでしまいます!無い筈の胃がキリキリし始めたくらいなんですからね!?」

「…チザクラにはハジケが足りなかったか。」

 

これには思わずチザクラも思考を放棄した。思考の方向がぶっ飛んでいるとは思っていたがこれはもはやぶっ飛びすぎだろう。チザクラは既に、霊使達の会話についていけなくなっていた。

 

「ちょっと待て克喜。俺もウィンもハジケリストではないぞ?」

「え?」

「…おい克喜、デュエルしろよ。」

 

余りにも意味不明な会話についていけていないせいでフラストレーションがたまっていたチザクラ。余りにも話が脱線したことによりとうとう限界を迎えてしまう。

 

「…少し、頭を冷やしましょう…かッ!」

 

馬鹿みたいな話を続ける霊使と克喜の頭に全力の拳骨をお見舞いして、それからできうる限りの低い声で霊使達に言い放った。

 

「少し黙ってください。」

「え、ちょ。ふざけすぎたのは謝るから―――」

「首、斬りますよ?」

「ヒェッ。」

 

こうしてチザクラは霊使達を脅すことで話の軌道修正に成功した。

ちなみに話し合いの間ずっと霊使の首にはチザクラの持つ鎌が添えられていた。脅しというか脅迫というか、これからは余り馬鹿な話をやめようと、霊使に決心させるには十分すぎる出来事であった。

 

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あれから色々と屋敷の中を改造したりして、後はターゲットが来るのを待った。

ちなみにどのヤの付く自営業の方々がここを狙っているかはマスカレーナのリサーチによって判明している。それによると、チザクラのいる土地を狙っているのは「益子(ますご)組」という組らしい。特定の指定暴力団に指定されているとてつもないイカれ集団でこの土地の住民ほとんどがそのヤの付く自営業の方々を嫌っているらしい。

 

「…で。表向きは建設業者って建前だからこの土地に事務所を立てたい、と。」

「そういうことです。幹線道路も近くてそこまで目立たなくてかつそれなりに広い土地のここは絶好の場所なのでしょう。」

「でもチザクラやここに住んでたおばあちゃんの家族の人はこの土地を手放したくない、と。」

「…はい。」

 

もとより相手は違法行為の温床のようなものだ。もしかしたらいい「極道」かもしれないと思っていたがそんな事は無かった。マスカレーナがちょっと調べれば恫喝やらヤクの密売やら偽造貨幣の作成やら強姦やら。悪事がわんさと湧いてきた。おまけに、自分達の理にならない存在は消して―――つまりは殺して回っているというとんでもない悪辣な集団であったのだ。

 

「…ま、ここまで悪事を働いてるなら数え役満だわな。…心圧し折って二度と生意気な事が出来ない様にしてやる。」

「…そうですね。害虫は掃除しなきゃすぐ湧いてきますから。」

「…思ったけどチザクラって割と口悪いよな。」

「そうですか?だって、今回の相手は殺人まで犯してる便所に吐き捨てられたタンカス以下の存在ですよ?」

 

思った以上に罵詈雑言がすらすらと出て来るチザクラに少しの恐怖を覚えた霊使達。しかもいい笑顔でそんな事をいうものだから、本性は相当いい性格をしていることが伺える。

 

「それじゃ、ターゲットを招いてみようか?」

「楽しいショーの始まり…ですかね?」

 

そして、チザクラのいる屋敷の扉を固く閉ざしていた閂を引っこ抜いて、全員でターゲットの侵入を待つことにした。

ここに、肝試しへの道が開かれたのである。

 

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「…全く誰も居ないじゃないか?困るんですよ、奥さん嘘つかれるのは?」

「いるんですよ…。おばあちゃんが可愛がっていた精霊()が…。」

「せいれいぃ?そんなものまやかしに決まっているでしょう?」

 

男たちはそれだけ言うとその土地に踏み込んでいく。

それを苦い顔をしながらも、力が無いがゆえに眺めているしかできない中年の女性が一人。彼女は今のこの土地の所有者であった。

霊使に依頼をしたのも、実はこの土地を売り払いたいからではなく、超常現象が起きる事を証明してもらう事でこの土地の価値を極限まで落として見向きもさせないようにするのが目的であった。

この女性はまさか調査を依頼したはずの霊使が嬉々として超常現象を起こす側に回っているだなんて思いもしなかっただろう。それも友人も巻き込んで。

 

「…見れば見るほど、良い土地だな、ここ。なあ…?おい?」

 

そう呟いた男はちらりと後ろを見る。―――そこに今まで話していた弟分の姿は無かった。

 

「は―――?」

 

男は周囲を確認する。そこにあったのは何かが引き摺られた跡と、その先にある空いた扉。その前にはぽつと落ちた誰かのの黒い革靴。

 

「そうですね兄貴。こんなボロ家が建ってるのが惜しいくらいにはいい場所ですもんね!」

 

今の今までそんな発言をしていた男が闇に消えた。否、家に食われたというのが正しいのだろうか。分からない。目の前で起こっていることすべてが分からない。

 

「…見捨てるわけにいかねぇか‥。」

 

男は腐っていても、それでもどうするべきか分かっていた。部下の尻ぬぐいは上司がしないとならない。それはこんな裏稼業でも同じだった。

それに、ヤクザの端くれともあろうものがオカルトチックな存在に負けた等と報告した日には魚の餌か、コンクリに詰められるかだ。

 

「舐められてたまるかってんだ…!」

 

だから男は踏み込んだ。だが、男はまだ知らない。これから自分のキモが冷えて凍るような恐怖を覚えることになるという事を。





登場人物紹介

・四遊霊使
多分もうチザクラには逆らえない。

・ウィン
残念ながらチザクラが切れるのは当然なので助けるつもりはなかった。

・チザクラ
割といい性格をしている。もしもう少し荒い人がマスターだったら多分ジョジョみたいな言い回しを多用するキャラになっていた。一番近いのはギアッチョかも?

なんか描写を増やしまくった結果明らかに一話分の量じゃなくなりそうなので分けて投稿します。番外編の続きがいつになるかは…未定です…。

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