「相棒」   作:ダンちゃん1号

13 / 209
0章:四遊霊使の"始まり"
四遊霊使の"始まり"


いつから、彼女達を好いていたのだろう。

いつから、彼女達と一緒にいるのだろう。

そんなことはどうだっていい。

ただ、彼女達と出会った時の事は───相棒になった時の事は今でもはっきりと覚えている。

 

 

 

 

デュエルモンスターズ──それはこの社会における基準の一つである。

基本的に決闘(デュエル)が強い者が生きやすい世の中だ。つまり、決闘の強さはそのまま人生の縮図と言っても過言ではない。決闘が弱い者に発言する権利等なく、強者に従うのが道理である。強者に逆らう人間は畜生以下──そんなイカれた認識が世の中に蔓延していた。

 

「ゲウッ…」

「そんじゃ、こいつは貰っていくぜェ?」

 

少年はそんな社会の敗者だった。そして、今、リンチされている。

 

「決闘強くねぇやつがレアカード持ってたって無駄だろう?なあ、霊使クゥン?」

「…………」

「またレアカード引いたら教えてくれよなぁ?それじゃあなぁ。」

 

そういうと少年を囲んでいた者達は去っていった。

 

「──くそッ!」

 

少年───四遊霊使(しゆうれいじ)は叫んだ。悔しさからか、怒りからか分からないが、ただ叫んだ。一通り叫んだ後に自分にバカらしくなって、泣いた。

 

 

痛む体を引きずって帰路に着く。いつもの道を歩いているとふと、道端から声が聞こえたような気がした。

 

『助けて』

 

と。

この日、霊使は生涯の相棒達と出会う。

 

 

「"憑依装着─ウィン"…、"憑依覚醒"…、"風霊使いウィン"…"ランリュウ"…"水霊使いエリア"…"憑依連携"…攻撃力が低いから捨てられたのか…?」

 

霊使は道端に落ちていたカード達を見て、首を捻った。

そんなに弱いカードではないのにこのカード達は捨てられていた。

 

「…"憑依装着─アウス"──"憑依装着─ヒータ"。…"風霊媒師ウィン"…うん。誰かがデッキごと捨てたのか…?ひどい話だ…」

『本当に、ね。』

「…へ?」

 

呆けた声が出た。今、明らかにデッキから声が聞こえたのだから。優しい風のような女性の声が。

 

『…ていうか、傷だらけ…!?大丈夫…!?』

「…幻聴が聞こえた時点で大分アウトじゃないか…?」

『扱いが酷いね…』

 

霊使は聞こえた声を幻聴と断じた。

 

「…だってもう、こっちは死にそうなんだぜ…?幻聴じゃ、ないのか?」

『もちろん』

「……は?」

 

幻聴ではない。

謎の声はそう、言い切った。

 

「じゃあ、証拠…みせてくれよ…。」

『いいよ。…でも、ちょっと君の力をわけてもらうけど、いいかな?』

「ああ、いいさ。いくらでも持ってけ。」

『じゃあ、いくよ…?せーの…ッ!』

 

その瞬間、霊使は大きな喪失感とともに意識を失った。

 

 

 

「…う…うぅ…」

 

泣いている。目の前の少年が泣いている。

気絶しながら見る夢はどのような物なのだろう。

友人と楽しく決闘している夢なのだろうか。

家族一緒に楽しく過ごしている夢なのだろうか。

それとも辛く、苦しい夢なのだろうか。

「大丈夫、これからは私達が居るからね…?──()()()()。」

少女は、少年の頭を撫でながら誓った。

 

 

「……、ハッ!」

 

霊使は目を覚ました。

始めに伝わってくるのは道端ではない、どこかの硬いベンチに寝ている感触。

ただ、頭部に伝わってくる感触は違った。

なんというか、柔らかく、温かい。

そしてすぐ近くからするとてもいい匂い。

そしてすぐに理解した。

誰かに膝枕されているのだ、と。

だから、飛び起きた。

それが、悪かった。

 

「うわっ…びっくりしたぁ…。」

 

少女を驚かせてしまった。

 

「ん…?んん…?んんん…?」

 

ふと、疑問に思う。

この声の主は一体、何処にいるのだ、と。

「ああ、起きた?……おはよう、()()()()。」

驚愕した声と同じ方向から声が聞こえた。

と、いうよりも

〈驚愕していた人物と今声をあげていた人物が同じ声で同じ方向からした〉

というのがしっくり来た。

つまり、霊使は名も知らない少女に膝枕させていたのである。見方を変えれば────

 

「完っ全に変態じゃねーかぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

誰かに見られなかったことが唯一無二の幸運だった。

 

 

 

それからしばらくして、ようやく冷静になった霊使。

 

「…で?君は結局誰なんだ?」

「…え?まだ気づいていらっしゃらない?」

 

少女は一瞬可哀想なものを見る目をした。

確かに、目の前の少女は霊使が拾ったカードの内の"風霊使いウィン"、"風霊媒師ウィン"、"憑依装着─ウィン"に似ている。というほぼそのままである。綺麗な緑色の髪といい、少しあどけなさを残した顔立ちといい"ウィン"というモンスターにそっくりなのだ。

 

「まさかとは思うけど…ウィン?でいいのかな?」

「そうだよ?正真正銘のウィンだよ…ようやく気付いてくれたかぁ…。」

 

まさかの本人であった。

 

「私は精霊だよ。聞いたことない?」

「無いわけじゃないけど…」

 

カードの精霊。

カードに宿るモンスターが現実に現れた存在。

本来は別の世界───精霊界の存在。

目の前の少女───ウィンがそうだという。

 

「さては信じてないね?」

「うん。」

 

霊使は即答した。

 

「じゃあ、証拠を…」

 

と、ウィンは手に持った杖を掲げた。

 

「おいで、ランリュウ」

 

ウィンが優しい声で呼び掛けると目の前に急にドラゴンが現れた。そのドラゴンは「キュウン」と可愛らしい鳴き声をあげてウィンに顔を擦り付ける。

 

「くすぐったいって…」

「ええ…」

 

霊使はさすがに信じざるを得なくなった。

 

「ガチの精霊かよ…。」

 

霊使の呟きは空に消えていった。

 

「ところで、マスターの名前は?」

「四遊霊使だ!」

 

霊使は照れくさくて叫んでしまった。

こうして二人は出会った。

 

 

 

 

そしてウィンと霊使が出会って数日。

 

「…よし。」

「できたね、私達のデッキ…!」

「だな。」

 

拾った霊使い達を中心にしたデッキが完成した。

レアカードこそ多くはないが堅実なメタビートを行うデッキとして作り上げたため、それなりには強いだろう。

 

「じゃあ、行こう?マスター。」

「だから霊使で良いって。」

 

ウィンのマスター呼びを除いて二人の仲は順調に深まっていった。

 

「今日は…決闘基礎の試合かぁ…。」

「絶対に勝とうね。マスター。」

「ああ、そうだな。」

 

そうしてウィンはカードに戻る。

 

「じゃあ、いってきます。」

 

誰も居ない部屋に向かって挨拶して学校に向かった。

 

 

 

「おっ、霊使じゃん。」

「おはよう、克喜。」

 

教室に入ると唯一無二の友人である九条克喜(くじょうかつき)が声をかけてくれる。

 

「デッキは大丈夫なのか?」

「ああ。」

 

彼は霊使の数少ない味方でもある。

克喜の用いるデッキは"ウィッチクラフト"。

学内でも相当の強さを持つ。

いつもなら克喜を下せる相手は居ない程に。

上級生の使う"ワルキューレ"を簡単に下してしまう程に。下らない世間話を克喜としていると朝のホームルームの時間になった。

 

「おーい、今日の一時間目、決闘基礎の試合するぞー。デュエルディスク持って、体育館に集合なー。」

 

生徒それぞれが気の抜けた返事をする。

 

「今日は上級生が観戦しにくるからなー。」

 

先生は最後に特大の爆弾を落としていった。彼女達を先日の者達に見せたくなかったのだが、それはもう叶わない。

 

 

 

 

決闘基礎の試合相手はランダムにくじ引きで決められる。

その結果──

 

「これより、九条克喜対四遊霊使の試合を始めるぞー。」

 

最強にかち当たった。

 

「………うそぉ…。」

「まぁ、楽しもうぜ、霊使。」

「お前のその余裕が俺にもほしい…ッ!」

 

克喜という圧倒的な強敵が彼女達の初戦である。

 

「信じてるぜ…皆…!」

「行くぜ、霊使…!」

「「決闘(デュエル)!」」

 

霊使 LP 8000

 

「俺のターン!」

『先行ドローはないけど…勝てそう?』

 

ウィンがカードを通して聞いてくる。ただ、ここで急に独り言を呟くと明らかにやべーやつになるので黙って頷くだけにした。

 

「俺は…魔法カード"テラ・フォーミング"発動!デッキからフィールド魔法である"大霊術─「一輪」"を手札に。」

 

デッキから一枚飛び出したカードを互いに確認し、手札に加えた。

 

「そしてそのままフィールド魔法"大霊術─「一輪」"発動。そして、手札を一枚捨てて速攻魔法"精霊術の使い手"発動。デッキから"霊使い"カード、"憑依装着"カード、"憑依"魔法・(トラップ)カードを二枚まで選ぶ。俺は…"憑依連携"と"憑依覚醒"を選ぶ。その後どちらか一枚をセットし、一枚を手札に加える。」

 

ソリッドビジョンシステムによってフィールド上に一枚カードが伏せられる。

 

「そして、今伏せた"憑依覚醒"発動。そして、手札から"憑依装着─エリア"を召喚。」

 

自分の前に青髪の少女が現れる。少女はどうやら爬虫類族の使い魔を使役しているようだった。

 

(どことは言わないがウィンより発達してるな。どことは言わないが。)

『マスター?』

(すいませんでした)

 

一瞬、霊使の愚息が元気になった気がした。

それは気のせいということにしておく。

健全な思春期の男子である霊使にそんなことなんてつきものだ。

 

「攻撃力1850のモンスターが登場したことにより"憑依覚醒"の効果が発動。一枚ドロー。」

「厄介だな…!早めに"ハイネ"で粉砕しないと…。」

 

おそらく相手は"憑依覚醒"をすぐに破壊しに来るだろう。

だが、なんとしてでも"憑依覚醒"で得られる1枚のドローを死守しなくてはいけない。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。」

 

霊使 LP 8000

フィールド "憑依装着─エリア"

フィールド魔法 "大霊術─「一輪」"

魔法・罠 "憑依覚醒"×1 伏せ×2

手札 1枚

 

なかなかの滑り出しだろう。

いくら克喜といえどもこの布陣はそうやすやすと突破できない。そう信じて、ターンを克喜に渡した。

 

(まだ、"憑依覚醒"の全てを見せきった訳ではない…。)

『マスター、油断せずに行こう。』

(ああ…!)

 

克喜 LP 8000

 

「俺のターンだな!行くぜ、ドローッ!」

 

克喜は勢いよく引いたカードを確認する。

 

「俺は"ウィッチクラフト・シュミッタ"を召喚!そして能力を発動──────」

「はさせない!"大霊術─「一輪」"の効果発動!守備力1500の魔法使い族のモンスターが表側表示で存在するときに相手モンスターの効果が発動したとき、その効果を無効にする!」

「んなっ…!?」

 

不思議な陣に捉えられ、少女──シュミッタのビジョンがへたりこむ。

 

「っちぃ!……手札から、"ウィッチクラフト・デモンストレーション"発動!手札から…"ウィッチクラフト・エーデル"を特殊召喚…ッ!」

 

今度は巨大なノギスを持った少女が現れる。

 

「行くぜ、バトルだ!"ウィッチクラフト・エーデル"で"憑依装着─エリア"を攻撃!」

 

エーデルはノギスを構えてエリアへと向かっていく。ノギスには宝石が収まっている。

 

『あれ武器だったの!?』

(…即席ハンマー…?)

 

エーデルは空高く跳躍するとエリアにノギスを叩きつける。しかし、エリアは水流を生み出しその一撃を反らした。そのまま水流をエーデルに向けて射出。そのままエーデルを押し流してしまった。

 

「なっ…!?"憑依装着─エリア"の攻撃力は1850じゃないのか!?」

「"憑依覚醒"の効果で俺のフィールド上のモンスターは属性一つにつき300ポイント攻撃力がアップする。今のエリアの攻撃力は2150なのさ!」

「なっ…!?なんだってー!?」

「戦闘で発生した150ダメージをくらえぇぇぇぇ!」

「ぐわぁぁぁぁぁ!」

 

克喜 LP 8000→7850

 

「くそぅ…!カードを二枚伏せてターンエン───」

「エンドフェイズ時に罠発動。"憑依連携"。この効果で墓地の"憑依装着─ウィン"を特殊召喚。さらに属性が二種以上あれば表側表示のカード一枚を選んで破壊できる。もちろん俺は"ウィッチクラフト・シュミッタ"を破壊。さらに攻撃力1850のモンスターである"憑依装着─ウィン"が召喚されたので1枚ドロー。」

 

墓地から特殊召喚したウィンの急襲によりシュミッタは抵抗するまでもなく空の彼方に吹き飛ばされた。

 

『なんでぇぇぇぇ!?』

 

とシュミッタが叫んでいたのは気のせいだろう。精霊ではあるまいし。

 

「…まじか!?…ターン、エンド…!」

 

克喜 LP 7850

フィールド 伏せ2枚

 

アドバンテージは圧倒的に霊使にある。

 

「俺のターン。ドロー。」

 

霊使 手札 二枚→三枚

 

「手札から"憑依装着─ヒータ"を召喚。攻撃力1850のモンスターが召喚されたので"憑依覚醒"の効果によって一枚ドロー。さらに永続魔法"三賢者の書(トリス・マギストス)"発動。1ターンに一度、手札からレベル4の魔法使い族のモンスター一体を特殊召喚できる。」

 

フィールド上にキツネのフードを被ったような少女が現れた。その後に一枚、表側表示の魔法カードが増える。

 

「そのまま、"三賢者の書(トリス・マギストス)"の効果を使い手札からレベル4の魔法使いである"憑依装着─アウス"を召喚。」

 

最後に召喚したのは茶髪をショートにし、眼鏡をかけたボーイッシュな少女だ。

 

(やはり発育が…)

『ま・す・た・あ?』

(すいませんでした)

 

やはり発育がいい。何がとは言わないが。ウィンがキレそうだったため、また起立しそうになった愚息を抑え最後の手札を使用する。

 

「手札から、"ハーピィの羽箒"、発動。相手フィールドの魔法・罠を全部破壊」

「引きよすぎぃ!?」

 

これでもう抵抗は不可能。エリアとアウスでダイレクトアタックを敢行して直撃。克喜の手札に手札誘発のカードは無かったようであった。

 

「うわっちゃー…。めちゃくちゃいいデッキじゃねーか…!リベンジさせろよな、霊使。」

 

いい笑顔でリベンジマッチを申し込む克喜に霊使も笑顔で応える。

 

「ああ…!また、やろう。"憑依装着─ウィン"でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

克喜 LP 7850→4800→1750→0

 

この日、克喜の無敗記録は打ち破られた。

 

 

放課後、霊使とウィンは二人並んで歩いていた。

 

「なんか新鮮な気分だね、()使()。」

「そうだな、ウィン。」

 

二人は夕飯の材料を買っていた。

始めて決闘に勝利した記念に、そしてウィンの歓迎のために焼き肉をしようと決めたからだ。

 

「ところで何で名前呼びなの?────別にいいけど、さ。」

「もし、美少女に"マスター"って呼ばせているやつがいたらさ、どう思う?」

「そりゃ、変態………あぁ、そういう…。」

 

ただでさえ友人が皆無に等しいのに"変態"なんて言われた日には死ねるだろう。

 

「それにしても視線がすごいね…。」

「俺の隣にいるのが目を引く美少女だからねぇ…。」

「…っ!?」

 

やけに視線が気になる。確かにウィンという存在もあるのだろうが、どのほとんどは霊使に向けられた嫉妬、羨望の目線だった。

たまに値踏みするような視線も感じたが流石に人通りの多いこの商店街で手を出す者は居ないだろう。

 

「ところで…ウィン、顔赤いけど大丈夫か?」

「えっ…?だ、大丈夫…だよ?」

「………体調悪いなら言ってくれよな?」

「う、うん…」

 

それにしてもウィンの顔が赤い。それはもうゆでダコように赤い。そんなウィンを見て、霊使は若干照れくさくなった。

このまま甘酸っぱい雰囲気に流されたい自分を抑えてウィンと歩く。

 

「見せつけてくれるなぁ?霊使クゥン?」

 

一番会いたくなかった、上級生───外道洛斗(そとみちらくと)と出会うまでは。

 

 

 

「いい女じゃねぇか…」

「…やめて下さい…ッ!」

 

誰も見ていない一瞬に路地裏に引っ張られた。そして霊使は不良数人に囲まれ、ウィンは外道に体をまさぐられ、悲鳴をあげる。

 

「まさか決闘出来ないやつに女ができるなんてなぁ…?生意気だなぁ!」

「外道さん、目の前でヤってやったらどうですか?そしたらこいつは泣き叫びますよ?」

「は、それはこいつをボコボコにしてからだ!ぐちゃぐちゃにしてからヤって、こいつの心と体を服従させてやろう!これが強者に従わねぇ奴の末路だって知らしめてやるのさぁ!」

 

目の前では自分とウィンをどうするか話している。

ウィンは後ろ手に縛られていて動けない。

そして、腕っぷしに全く自信のない霊使は俯くのみ。そんな霊使に外道は「おい、顔を上げろ」という。

言われた通りに顔を上げるとそこには──

 

「そうだ、霊使ィ。あの女の事は忘れてここを去る、といえば……お前は解放してやるよ。」

 

そこにはウィンを指差して下卑た笑いを貼り付けた外道が立っていた。

その瞬間、霊使の中で何かがキレた。

 

「……ざ………な。」

「…あ?」

「ふざけんなッ!」

 

気付けば霊使は外道をぶん殴っていた。

常人のそれを遥かに超えた一撃が外道の顔面にめり込んだ。

 

「ゲブゥゥゥゥッ!?」

 

情けない悲鳴を上げて吹き飛ぶ外道。

 

「ウィンはなぁ!俺の生涯の相棒なんだよ!──俺の()()なんだよ!家族を売るやつが何処にいるってんだ!?このスカタン!」

 

何気に恥ずかしい事を言っていた気がしたが気にしない。それ以上に家族であるウィンに手を出すと言った外道が許せなかったからだ。

そしてそのまま外道の近くに行くと、霊使はこう言った。

 

「おい、デュエルしろよ」

 

と。

 

 

 

 

路地裏で二人の男が向かい合う。

腕にはデュエルディスクが装着されている。

…が、その決闘(デュエル)はあまりにも一方的だった。

 

「俺は"無限起動コロッサルマウンテン"をエクシーズ召喚!さらに"R(ランク)U(アップ)M(マジック)─アストラル・フォース"を発動…ッ!エクシーズ召喚!現れろ…!"無限起動アースシェイカー"!さ…流石にコイツは倒せねぇだろ!」」

 

外道が自身のエースモンスターを召喚する。

攻撃力3100と非常に強力なモンスターだが──

 

「"憑依連携"発動…!墓地から"地霊使いアウス"をセット。そのまま罠カード"砂漠の光"発動!俺のフィールド上のモンスター全てを表側守備表示にする。"アウス"のリバース時、"アウス"の効果発動!相手フィールド上にある地属性モンスター一体のコントロールを得る。」

 

霊使にいとも容易くコントロールを奪われ───

 

「くそッ…!"無限起動トレンチャー"で攻撃ィィ!」

「罠発動!"聖なるバリア─ミラーフォース"!」

 

攻撃すら行えず、そのまま───

 

「"無限起動アースシェイカー"でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

外道は霊使のライフを削る事なく一方的に負けた。

 

「…嘘だ…!俺が…霊使(コイツ)なんぞに負けるなんて…!」

「…さて、と。逃げるか───────」

 

デュエルに勝ち、霊使は何かを呟く外道を横目に、ウィンを連れて帰ろうとする。だが、

外道に背を向けたその一瞬が致命的な隙になった。

 

「俺がてめぇに負けるなんざあっちゃいけねぇんだよォォォォォッ!」

 

霊使は、強い力で押されてバランスを崩してしまう。

そのまま外道は霊使に馬乗りになった。

 

「マスター…ッ!」

 

ウィンは急いで外道を霊使の上から退かそうとするが──

 

「近づくなァ!コイツを殺すぞォ!」

 

それよりも早く外道がナイフを霊使の首筋に押し当てた。

もはや堕ちるところまで堕ちた外道は血走った目で霊使を睨む。

 

「てめぇは!一生!俺の下で!生きるべき!家畜なんだよ!まぐれの一回勝ちで勝ち誇った顔してんじゃねぇよ!どうせさっきの!奴も!まぐれだったんだろ!?そう言えよ!このクサレ野郎がッ!」

 

外道は何度も何度も何度も何度も霊使に拳叩きつけた。顔、腹、胸────体の至るところが激痛に悲鳴を上げる。

 

「あ゛あ゛ッ…!」

 

口から声にならない悲鳴が漏れる。

だが、外道の言葉を認めてしまえばまぐれ勝ちとしてまた決闘させられてしまう。

─────それはダメだ。

それは、決闘者(デュエリスト)としての矜持を失うことに等しいからだ。

そして、それはウィン達を否定するのと同じだからだ。

だから─────

 

「そうやって…じゃ…ねぇ……と勝てない…んだもんな……」

 

全力で煽った。

 

「なん…だとォ…?」

 

そして、霊使は顔面に鋭い痛みを受けて、意識を手放した。

だが、最後に───

 

『…うん。ウィンが正しかった…。遅いかもだけど、()()も出るよ…!』

 

ウィンが何かを叫んで、自分の内からも声が聞こえた気がした───。

 

 

 

「んぅ…」

 

ゆっくりと目を覚ます。

 

「あれ…?俺、何分寝てた…?」

「十分位かな。…おはよう、霊使。」

 

やっぱり隣にはウィンがいた。

 

「おはよう、なんて目覚めじゃねーけどな。コレ。」

「あははは…だね。」

 

霊使とウィンは軽口を口にする。

周りを見ればもう、外道は居ないようだった。

 

「…外道は?」

()にボコボコにされて逃げてったよ。今は…霊使のよく知る人物の精霊に説教されてるんじゃないかな?」

 

確かに少しばかり離れた所から怒気が感じられる。

だが、それよりも霊使が気になったのは───ウィンが言った、自分のよく知る人物と言う言葉だ。

 

「……………なあ、ウィン。"憑依連携"で破壊したシュミッタって空の彼方に吹っ飛んでいったよな…?」

「…うん、そうだねぇ…」

「でさぁ、俺、思いっきり"なんでぇぇぇぇ!?"って聞こえたんだけどさぁ…」

「大丈夫。私も聞こえたもん。」

「…………確か精霊に愛されると運命力が強くなるんだっけ…?」

「そうだね。……デッキが───私達が想いに応えるからね。」

 

ウィンの発言を基にして考えてみると、あっさりと"誰か"の答えがわかった。そして───

 

「よぉし、殴ろう!」

 

この日一の理不尽な発言が飛び出すのであった。

 

 

 

「この感じは…!」

 

九条克喜は何か大きな力の流れを感じていた。

具体的にいうなら一気に精霊が三人位顕現したのと同じ位の力の流れだ。

何故、そんな事が分かるのか。

それは──────

 

『克喜!この近くで精霊の反応が!』

(分かってるよ、ハイネ!)

 

彼もまた、ウィッチクラフト(カードの精霊)を従えている者だからである。

 

『のらせいれいのかのうせいがあるから、いちおう、ウィッチクラフト謹製の結界をてんかいしておくね』

(…OK。分かった。ありがとう、ヴェール。)

 

彼の中で何かが失われると、目には見えない結界が張られた。

 

(いくぞー!)

 

そして、安全を確保し、現場に到着した克喜が見たのは────

 

「ボクの」

「私達の」

「マスターを傷付けたのはお前らかァァァァァァ!」

 

何処かで見たことがある少女達が不良をオーバーキルしている姿だった。

どうやら彼女達は自らのマスターを傷付けた相手に対し、報復しているらしい。

 

(止めたほうが、いいよなぁ…。)

 

だが、何故か止める気が起きなかった。

 

 

 

エリアは激怒した。

必ずかの邪知暴虐の決闘者を排除せねばならないと決意した。

エリアは───エリア達はそれはもう、怒髪天をつく勢いでぶちギレていた。。

カードの中で自分達のマスター見ていたからこそ、外道という男が赦せなくなっていた。周りが見えなくなるほどにブチ切れていた。

だから、視界の端にから飛んでくる布に気付くことができなかった。

 

「…少し、やりすぎです!」

「…あっ…」

 

その声によってようやく、気付くことができた。

いつの間にか外道達は瀕死になっていたのだ。

 

「少し頭を冷やしなさい。…キレるのは分かるけれど。」

「…はい…。」

 

空から降ってきた女性から拳骨を貰う。

危うく大きな間違いを犯しそうになったので、拳骨は授業料として受け入れた。

ただ、この拳骨が原因でしばらくの間、頭にたんこぶが出来て痛かったのはエリア達だけの秘密である。

しばらくして、一人の少年がこちらに向かってきた。

 

「……はじめまして、マスター。」

 

エリアは小さな声でそう、言った。

 

 

 

こうして、霊使に4人の相棒が生まれた。この5人と克喜は後に世界に名を轟かせるほどの決闘者となるのだが、それはまた、別の話なのである───。

 

 

 




霊使のデッキは"憑依装着メタビート"を基にして構成しています。
そして、俺がこの話を書いた理由はウィンが可愛かったから。反省しているが後悔していない。
追記:外道の名前の綴りを外道洛東から外道洛斗に変更しました。

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
  • リチュア
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。