「相棒」   作:ダンちゃん1号

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世界の終わりまで君と一緒に

 

それからの話をしよう。

この事件では死者472人、重傷者約1300人、軽傷者は70000人以上という未曽有のテロ事件となった。ただこんな大事件であったにもかかわらず行方不明者は一人しかいなかった。

ただ死体には焼死体も多く、死体の身元の判別には相応の時間を使った。

この事件の主犯格とされる四道安雁、四道真子、四道零夜の身柄は確保され拘留所に移送。その後は起訴されてその罪を裁かれることになるとのことだった。また彼らに同調した者たちも同じように逮捕され拘留されているという。

これだけの事件を巻き起こしたのだ。普通は死刑、良くて無期懲役が妥当だろう。

霊使は未だに自分の事を恨めしげに見て来る安雁の顔を忘れることはできない。なんでそんな顔ができるのかと憤慨したのを未だに覚えている。

ちなみにだが霊使は病院に救急搬送されて、精密検査。そこで肋骨、大腿骨の骨折、頭部に軽度の裂傷などなどが認められ、病室にぶち込まれることになった。けがの程度もひどく全治三か月の重傷だったらしい。後、診察した医者曰く「こんな体で良く動けた」と言われるほどの大けがだったそうだ。

思いっきり壁に叩きつけられてそれならば少しはましだと思うのだが、それを言ったら入院がさらに伸びかねないので黙っておくことにした。

入院中はずっとウィンやエリア、ヒータにアウス―――四霊使いの面々に抱き着かれていた。死ぬ寸前だったし、視線を何度も乗り越えた相棒達の精一杯の甘えだと思って頭をなでる。

なお霊使は予想よりも少しだけ早く怪我が癒えて少しだけ早く退院。入院費が少しだけ浮いてほくほくとした顔つきになっていた。

戦場となった端河原松市の中心街との近郊は全て壊滅。都市機能を喪失したため、端河原松市という市はその歴史に幕を下ろし、周囲の市に分割、吸収されることになるそうだ。

そして旧端河原松市に存在していた学区はそれぞれ吸収合併した市の学区になるそうで、霊使達はそれぞれ別の学校に来春から通う事になる。

これから約半年はオンラインで履修を行う事になり、これは入院している霊使やけがをした学生の事を慮っての事であった。

 

「学生の本分は勉強だから」

 

と、このオンライン授業は旧端河原松市の学生全員で受けるらしく、新たな友情が芽生えるに違いないだろうと旧市の教育委員会は推測している。

また、霊使達は住んでいる地域がちょうど市の境にあるため、来春からは別の学校に通う事になるようだ。他の仲間たちもみんなバラバラになってしまうのは少し悲しい事ではあった。

それでも大丈夫だろう、とみんなで泣いたのはいい思い出だ。

そして全てが片付いてから、四か月。霊使達は今――――

 

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霊使と彼の傍にいる事を選んだ精霊たちは町の近くにある展望台から少しずつ在りし日の姿に戻っていく街並みを眺めていた。崩れた建物は取り壊し作業が、それ以外の建造物では復興作業が進められている。

 

「…信じられんな。もう既にここまで復興が進んでいるとは。」

「現代は機械と技術の二つがドッキングしてるからね。」

 

クルヌギアスはあの惨劇から四か月ぽっちで復興を始める人間の強さを見て嘆息した。マスカレーナはその嘆息に呆れ半分で同意半分で返す。

二人はここに来るはずの人を待っていた。マスカレーナに「多分遅れる」という言伝を残したその人物は今、自分達にとっても最も大切な人をここに連れてきている。

 

「この町の人々を命を賭けて守った理由が良く分かる…強いのだな。」

「うん。とても強い。あんなことがあったっていうのにもう呑気に決闘大会ひらいてるんだよ?」

「…それは、なんというか、凄いな?」

「でしょう。…でもこれが彼が信じた人の強さだっていうなら…うん。守れてよかったんじゃないかなぁ?」

 

二人はその大切な人を待つためにここで話している。といっても、別に待ち合わせが何処だとか、ここで待っているだとかは何一つ伝えていない。ただ、ここに居たいからいるだけだ。自分の大切な人が命を賭けて守ったこの町を一望できるここで自分達がなしたことの成果を確認したかっただけ―――そう言いきってしまえばそうだし、そうじゃないといえばそうじゃない。

ここにいる目的なんて多分、何もいらないのだ。

 

「それにしても、まさか霊使が神になるとはなぁ?」

「そうだねー…。死にかけた挙句に神になるなんて前例が無さすぎて笑うしかないよねって感じ。」

 

二人の話題は自然とと二人のマスターである霊使の事へと移っていく。

霊使が退院して、家で急に「あ、神様はじめました」と軽い口調でいうものだから思わず「そんな軽く言うか!?」と突っ込んでしまったクルヌギアス。そのツッコミが出た話題に関しては全面的にクルヌギアスが正しかったのかマスカレーナも苦笑しながら話を進めた。

 

「…神様…か。」

「…不思議なものだな…。マスターはどんどん(わたし)達の先へと進んでいっている。…それが少し羨ましくもある。」

「今回の件に関しては全面的にあの悪神のせいだと思うけどね?」

「まあ、な。」

 

二人は霊使から事の次第を聞いたのち大きく息を吐いて、声を揃えて「嘘でしょ!?」と叫んだ。霊使自身も嘘だと信じたかったが「これが現実」としか言いようが無かったらしい。

それを聞いたとき全員頭を抱えたがそれも致し方なしというものだろう。

そんな風に二人で談笑していると後ろから急に声を掛けられた。

 

「…おーい、二人ともー!」

「出発するよー!?」

「ああ、今行く。」

 

その声の主はヒータとエリア。これまでの間で寝食を共にし、すっかり友人のような関係になっていた。

ヒータとエリア、それにアウス、ライナ、ダルクの誤認はこちらに向けて一目散にかけて来る。

その光景を眺めているといつの間にか後ろに5人の気配を感じた。いつも通りの慣れた五人の気配に安心したように息を吐くクルヌギアス。

今は何もない平和をただ噛みしめて歩いて行こう。彼の神との因縁は未だに尽きてはいない。そんな気がしてはならないのだから。

 

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四遊霊使は5人に無理を言って先に行ってもらった。

みんなが居る前ではこっぱずかしくて言えないことをこれからいうつもりだといえば一部の水霊使いが煽りつつも納得してくれた。

皆の配慮に感謝しながら霊使はウィンとともに歩く。

 

「なんで二人っきりになったの?」

「…一応言っておきたいことがあってさ。」

 

霊使はポリポリと恥ずかし気に頭を掻く。

そのまま何も言わなくなってしまった霊使を前にウィンは思わず首を傾げてしまった。

 

「何さ、その言っておきたいことって?」

「…俺さ、神になるって言ったじゃん?それで皆も俺に付いてきてくれるって話になったじゃん?…後悔してない?」

 

霊使は説明をした夜にその事を皆に聞いていた。永遠とまではいかないけれど悠久の時を過ごすことになるかもしれないと。それでもついてきてくれるのかと。

みんなその問いに二つ返事で了承してくれた。むしろなんでそんな事を聞くのかとさえ怒られてしまった。霊使は自分が思ってたよりもずっと皆に愛されていたんだとその時気付いて、それと同時に少しだけ後悔もした。

「こんなに良い子たちを自分に付き合わせてしまうのは如何なものか」と。

それで霊使思い切って聞いてみることにした。「その選択に後悔はないのか」と。

しかしその問いを聞いたウィンはそれはもう、物凄く不機嫌な顔になった。

 

「前にも似たようなこと言った気がするけど私達は君の傍に居たいからその事を受け入れたの。…分かる?」

 

最近気づいたことだが、ウィンが自分の事を「霊使」ではなく「君」と呼ぶときは大体不機嫌な時か、もしくは便宜上そう呼ばなければならないとき位だ。今この話に限って言うならば後者での理由は絶対にありえない。つまるところ、霊使から見てウィンは今物凄く不機嫌というわけだ。

 

「…それにね。世界の終わりまで好きな人と一緒に居られるって、それほど素晴らしいことは無いと思うんだ。君は…霊使はそう思わないの?」

 

ああ、どうやら彼女に対してこの質問は愚問だったようだ。それをこの短いやり取りで悟った霊使は素直にウィンに謝った。それに加えて―――

 

「…もしウィンが良ければ…これからもずっと俺の傍にいて欲しい。俺は、世界の終わりまで君と一緒に居たい。」

 

霊使も素直に自分の気持ちを伝える。顔から火が出たのではないかと勘違いするほどに顔が熱くなる。それでも、霊使はウィンにこの気持ちを伝えたかった。これまでも、そしてこれからも、ずっと隣にいる大切な人(相棒)に。

 

「…行こうか、霊使。」

「そうだな。行こう。」

 

きっと二人が一緒でなければこの光景は見れなかった。

きっとどこかで何かが違ったら、こんな幸せな結末を迎えることは無かった。

それでもまだ霊使の前には無数の道が広がっている。そこでどんな道を選択して、どんな道を歩むのか、それこそ霊使の自由だ。それでも、同じ道を傍で歩いてくれる人がいれば人はより幸せになれる。

霊使の道は終わらない。

その歩みを先に進める限り、未来は無限に広がっていく。時には道を阻まれることもあるし、道が見つからないことだってあるだろう。でもそれさえも楽しんで前へと進む。

きっと、それが霊使達にとって「生きる」という事だから。

霊使はゆっくりと歩きだす。ウィンもそれに連れ添うように歩き出す。

二人の未来にはきっといいことが待っているはずだ。そんな些細な事を信じて霊使達は今を生きていく。

これからの霊使の道を示すかのように、空は何処までも青く澄み渡っていた。




一部完結です。
この小説は元は自分の自己満足なものとして書き始めました。
始めの頃はデュエルモンスターズのルールを間違えたりカード名を間違えたりと散々なものでした。多分今も文章を作る能力が低く、醜い話になってしまった事も多いでしょう。
それでもここまで続けてこれたのは皆さまの支援があったからこそだと思います。
誤字脱字をご指摘をくれた皆さま。
乾燥をくれた皆さま。
評価をくれた皆さまに感謝をいたします。
しかしまだまだ霊使君の物語は終わっていません。

というわけで一部と2部の間におこるちょっとした騒動を1.5部として投稿します!
まぁ霊使君と四道の因縁にケリをつけることが目的の一部だったので!
というわけでここで一旦区切りとなりますが投稿頻度は下げません。

それでは次回をお楽しみに!

水樹君のデッキ強化

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