「相棒」   作:ダンちゃん1号

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漣歌姫との日々(デイズ・ウィズ・ティアラメンツ)

 

「私が何でもしますから、この世壊を助けてください―――!」

 

それはキトカロスが心の底から発した助けだった。「自分はどうなってもいいから世壊を助けて欲しい」―――なんて意味を持つ言葉をいうことができるのだから、シェイレーンたちが彼女を慕うのも当然のことと言えた。

彼女は世界の支配者にしては優しすぎる。元々こういった事を余り好まない性格なのだろう。

だが、優しさにも限度というものはある。キトカロスのそれは明らかに行き過ぎたものだ。自らを犠牲にするのは優しさではなく、ただの自殺願望だという事を海斗は何処かで聞いていた。今のキトカロスの根底には恐らく彼女自身でさえ感じる事の出来ない小さな願望がある。それはこの世壊を守るべきはずだったのに、守れなかった自分への強い敵愾心―――つまるところ「自分なんていなくなれば」という、そんな気持ちだ。

キトカロスはずっと無力感に苛まれ続けてきて、いつの間にか自分なんてどうでもいいと思うようになってしまったのだろう。

だが、その思いは彼女を慕ってくれる人を深く傷つけるものだ。

 

「気に入らない…。」

「…え?」

 

だから、海斗はそれが気に入らなかった。そして、自分なんてどうでもいいと思っているキトカロスもそうだが、彼女にそう思わせたレイノハートが何よりも気に入らなかった。

だが今、目の前に居ない相手の事を考えてもしょうがない。目の前に居るキトカロスの投げやりな思考を変えることが優先だと考えた海斗はそのまま言葉を続ける。

 

「…なんで…そう、投げやりな考えになるかなぁ…。「なんでもします」って言うと「ん?いま何でもするっていったよね?」っていう輩が出て来るから…。」

「…差し出せる物は何もないですから。私一人でレイノハートを斃せるのなら安いものです。」

「そう言う事じゃないんだけどな…。」

 

どうにもキトカロスは自分達がレイノハートから救ってもらうには対価が必要だと感じているようだ。確かに海斗は準備する暇もなくこの世壊に飛ばされ、さらに強大な相手を倒してほしいと懇願されている立場だ。しかもキトカロス(依頼人)は海斗の人柄を良く知らない。だから「自分はどうなってもいいから代わりにこの世壊を救って欲しい」という事を頼んだ。

キトカロスは自身をまるで物のように扱っている。だがそれは彼女が嫌っているレイノハートとほとんど同じ考えだ。誰を物のように扱っているかの違いしかない。

そしてその考え方の先にあるのは破滅だ。少なくとも自身を物扱いする存在は大概碌な人生を送れない。

 

「…君は何でもするって言った。―――もし俺が「下の連中を皆殺しにして来い」って言ったら?」

「…え?」

「もし俺が悪人だったらどうするつもりだったの?」

 

敢えて厳しい口調で話す海斗。

キトカロスの考えは今ここで正さなければならないと分かっているからだ。

何故なら、彼女の行く道の先がどうなっているか―――それを知っているから。その道を進んだ人間がどうなっているか知っているから。頼るという事をしなかった人間がどうなっているかを知っているから。

 

「それ、は…。」

「…ダメだよ。そんな考えじゃ…。「自分はどうなってもいい」っていう考えじゃ…。」

 

誰かを頼る事をしないからこそ、キトカロスは自分を犠牲にしようとする。海斗とは違って周りにとよることができる仲間がいたはずなのに、彼女は仲間に頼る事を良しとしなかった。

確かにこんな地獄が見えているのならシェイレーンたちを巻き込むことに気が引けるのもうなずける。

 

「…『寂しい時に寂しいって言えない人間なんて、人の痛みが分からない人間になる』…って言葉が、俺達の世界の物語にあってね。これは寂しいを苦しいに変えても成り立つと思ってる。」

 

海斗はこの言葉は寂しさを別のものに置き換えても成り立つと思っていた。

一方のキトカロスは図星だったのか、海斗のその言葉に食い気味に言い返す。

 

「そうなるとは限らないじゃないですか!」

「そうなるよ。…俺はそうなった人間を知っているから。」

 

だが海斗はその言葉を切って捨てる。

そんな甘い見通しがある人間を日常という名の地獄に引きずり込んだことを知っているから。だが、これにキトカロスは不服を唱える。確かに彼女の側からしてみれば自分の為すことをすべて否定されているも同義だ。

それでも海斗はキトカロスの言葉を否定しなければならない。

 

「―――目の前の馬鹿野郎がそうさ。誰にも頼らなかった結果―――俺はここにいる。」

「…え?」

 

キトカロスからしてみれば訳が分からなかっただろう。彼女にしてみれば海斗は、目の前に居る男はこの世壊を助けてくれるはずの英雄なのだから。

とてもではないが海斗が言う大馬鹿野郎―――そうであるとは思えない。

 

「…俺の父親はね、アルコール依存症―――酒狂いなんだ。」

 

だが海斗にしてみれば自分は自分から地獄に飛び込んで言った愚か者だ。

彼はキトカロスのように周りを巻き込むこと嫌がった結果、今でも父親の奴隷として扱われているのだから。

その愚行の証を見せようと海斗は服を一枚脱いで上半身裸になった。

 

「…見てよ、これ。誰かに頼るのを嫌った結果が()()なんだよ。苦しい時に苦しいって言えなかったから―――こうなったんだ。」

 

そこにあったのは明らかに人為的につけられた傷跡の数々だった。青痣や火傷跡が広がりとてもではないが正常だ、などと言えるようなものでない。

海斗は父親に虐待されていた。幸運だったのはこっちの世壊に来たことで対等に話せる友人ができたことだ。少しずつではあるが海斗は自分を取り戻す事が出来ている。

だが、キトカロスの進む道はどうだろうか。このままでは確実に先に彼女の心が死んでしまう。

そうして彼女は無感動無感情な存在になっていってしまうのだ。

 

「で、こういう事が続けばいずれ心が死ぬんだ。…そうすればほら、痛みも苦しみもさみしさも何も分からない立派な廃人が完成ってわけ。…君は俺のようになりたい?」

 

そういう風に聞けば少しだけ躊躇った後、キトカロスは首を横に振る。廃人、だなんて言われてそうなりたいと思えるような思考にはまだ至っていない。

 

「…では、どうすれば私は貴女にこの恩をかえせるのですか。…どう返せ、というのですか。命を危険に晒して」まで―――」

「恩とかそういうのを考えるんじゃないよ。…俺が助けたいから助ける。それだけだよ。…だから、君の望みを言ってくれ、キトカロス…!」

 

だから、恩とか関係なしに助けることができる。

恩を体で返すだなんてことを言いだしたらどうしようかと思ったがちゃんと、本当の自分の望みを言葉に出そうとしているようだ。

 

「…本当に…望んでもいいんですか…?」

「実現できるかどうかは別、だけどね。キトカロスが笑えるように努力するし、君が望んだところにたどり着けるように尽力するつもりではあるよ。」

 

キトカロスの望みが実現できるかどうか分からない以上、海斗は「助ける」ということを確約することが出来なかった。下手に期待させて「こうじゃない」とか言われるのが嫌だったからである。流石に彼女はそういうことを言わないだろうが。

一方のキトカロスは海斗の言葉に思わず「ええ…。」と漏らしてしまう。

 

「だって…ここで助けるって言って助かると思う?」

「そこはかとなく助からない気がしますね…。」

 

どうやらティアラメンツの姫はフラグを察知する能力があるらしい。そんな馬鹿な会話をしているものだからか、いつの間にやら二人は互いに笑顔を見せるようになっていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

海斗がキトカロスと本当の意味で出会ってから少なくとも二週間が経過した。一応キトカロスはレイノハートの「商売道具」であるため、必要最低限の食事は与えられているようだ。海斗にはそれさえなかったがキトカロスから少し食事を分けてもらって日々の飢えを凌いでいた。ちなみに食事は一日三回与えられている。変な所で律儀というか、「道具」が壊れないようにする配慮はしているようだった。非常に皮肉な話だが、今の海斗はレイノハートのお陰で命を繋いでいた。ついさっき運ばれてきた44回目の食事も二人で分け合い、鎖でつながれた二人はまた語り合う。

少なくともしばらくの間レイノハートは真珠の取引に言っているらしく、この間だけは地獄のような時間も訪れないのだとキトカロスは言う。その間に海斗とキトカロスは交流を深めていた。

キトカロスから聞いたことだが、レイノハートはキトカロスの流す涙に固執しているらしい。何でもキトカロスの流す涙はより価値の高い真珠に変わるからだそうだ。

その話を聞いて何ともまあ酷い話か、と海斗は瞠目する。するとキトカロスは自分の真珠に興味はないかと聞いてきたのだ。

 

「…海斗は、興味ないんですか?」

「まあね。…誰かの涙を金に換えるなんて俺にはできないよ。」

 

相変わらず、と海斗は付け足しながら言う。

ここの所キトカロスは急に海斗に自分の涙に興味はないかと言われた。

だが、海斗にとってレイノハートは相変わらず憎悪の対象であり、そんな相手と同じ行為をするというのは気が引ける。だがだいたいこう答えるとキトカロスは頬を膨らませて拗ねてしまう。

まさか、この短期間で自分に惚れるわけないか、と海斗は自分を卑下していた。

だが、考えても見て欲しい。海斗はこの14日間、常にるるカロスの傍に居続け、彼女と話し、彼女の心を開いていたのだ。しかもキトカロスにとってはこの地獄から救ってくれるかもしれない存在なわけで。

さらにいうなら海斗はキトカロスと同じ立場に立って話を聞いているのだ。

海斗にとっては「まさか」だが―――彼女の気持ちは一体どうなっているのだろうか。

一つ言えるのは、海斗は人から自分に向けられる好意に恐ろしい鈍感であることは間違いない事だろう。

だって海斗はそんな感情を向けられたことなど一度もないのだから。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

私は本当の意味で彼に会ってどれほどの時を一緒に過ごしただろうか。シェイレーンたちとはまた違う関係性に私は久しぶりに胸の高鳴りを覚えた。

これを何という気持ちで言い表せばいいのだろうか。たくさんの言葉を海斗と交わして、そしてその分だけ私が私に戻っていくような気がした。

私を私に戻してくれた人。私の大切な人。

優しいあなたはきっと私の思いに気付かないだろう。だって私が貴方に向ける感情は、貴方が向けられた事の無いものだから。

 

(でもいつかは…)

 

願ってもいいはずだ。

私の大切な人が幸せになる未来を。私の大切な人が人からの行為を素直に受け取れるような日々を。

そこに私が居たら―――そんな未来を思い描いてしまう。

もしかしたら貴方の傍に居るのは私ではないかもしれない。

 

私達の、私の英雄が、どうかただの人で在れますように。

いつか、私の大切な人の心を壊してしまった傷が塞がってくれますように。

私はそう思わずにはいられなかった。




登場人物紹介

・渡瀬海斗
何かがぶっ壊れている系主人公。
彼が止まる時は来るのか、それきっとキトカロスにかかっている。

・キトカロス
ちょろいん…だが、同時にどこか壊れている海斗の事を何とかしたいと思っている。
それと同時海斗が言っていたことがどういうことか少しわかった。
それはそれとして制限かエラッタしておいてほしかったです。おのれKONMAI…


一言いいですか?
ティアラメンツが完全に機能停止した!
何処かの動画でキトカロス≒神子イヴとは見たけど!だからって言って強化の直後に規制する普通!?しかもキトカロスがほぼほぼ融合召喚出来なくなったしィ!
しかもティアラメンツはキトカロスが禁止になっただけでなくシェイレーンにレイノハートも死んだし…。なんでや…。
えーつまり何が言いたいかというと彼を2部以降ちょい役で出す事が出来なくなりました。 
どうすっぺ…。
取り敢えずこのお話の間だけは全盛期の【ティアラメンツ】を使わせてください…。

次回もお楽しみに…。本当に、どうすっぺ…。

水樹君のデッキ強化

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