「相棒」   作:ダンちゃん1号

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1.5部2章:何気ない日々
ヌトスパニッシュメント!


 

創星神との戦いのひと段落して、その時負った怪我もある程度癒えた霊使は自宅療養へと移行していた。

別に怪我が痛いだとか、傷が開いた、だなどは特段おこることなく。傷跡は残るものの快方に向かっていた。

そんなある日である。

いつもの如く、騒動は霊使のこの一言からだった。

 

「デッキを強化するなら、どんなカードがいい?」

 

この瞬間、ウィンやヒータは何か色々と察した。

―――これ、面倒くさくなる奴だ、と。

だって霊使のデッキは切り札として「閉ザサレシ世界ノ冥神」が投入されているが、これ一種だけではそのうち「召喚させない」という選択肢が平然と取られるようになる。

だからデッキの強化を霊使は望んだ。

しかしながら霊使が考え付く強化はほとんど行ってしまったのだ。

そうすると自然と色々な知識がある存在―――デュエルモンスターズの精霊足るウィン達に頼らざるを得なくなる。

 

「ラヴァゴ入れようよ!」

「ガメシエル!カグヤ!ベストマッチでしょ!」

「私は…マドルチェと組むのが良いかと。後アーゼウス入れましょう。」

「ドラグマ!ドラグマ!ヌトスパニッシュメントが一番だよ!」

「敢えて言わせてくれ!トーチ・ゴーレムを入れて欲しい!」

「ここは敢えてパラレルエクシードを…。」

 

ウィンとクルヌギアス以外の全員が自分の入れたいカードを提示してくる。

だが全員が同時に発言したため何を言っているのかひっちゃかめっちゃかでさっぱり分からない。

 

「俺は聖徳太子じゃあないぞッ!?」

 

その為か霊使は少々無理のあるツッコミをした。

霊使は聖徳太子のように聞き分ける能力が高いわけでも無ければ、一つ一つの発言の先を読むことなんてこともできない。

だから今の霊使の頭の中は大混乱に陥っていた。

 

「―――一回落ち着こう?な?」

 

霊使はもう色々と収拾がつかなくなったこの状況を抑えるためになんとか霊使い達を落ち着けようとする。

だが彼女らは相当この時を待っていたのか、霊使の声に反応するどころか、議論に夢中で気付かないなんて有様だった。

霊使は静かに涙を流したことは言うまでもない。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

数十分後―――。

頭に大きなたんこぶを付けた六人はリビングの床に正座することになった。

なんてことはない。余りにも霊使の意向を無視した議論していたせいでクルヌギアスの堪忍袋の緒が切れて、その頭に拳骨が落とされただけだ。

攻撃力3000の拳骨は相当聞いたようであれだけ議論に集中していたエリア達も流石にしゅんとしている。

少し気の毒のようにも思えたが当人たちも少し白熱しすぎたことは自覚しているようだ。加えて先走り過ぎたことについてこんこんと説教され、ただいま反省真っ最中という所だろう。

だが、確かにそれぞれの意見には一考に値するものがあるのもまた事実だ。

 

「…で、霊使は皆の意見の内どれを採用するか決めたの?」

「今回はライナの案かな。ドラグマだったら既に何枚か採用しているから合わせやすいし。」

「だよね。」

 

霊使は今のデッキの内容を鑑みて、ライナの案を採用することをウィンに伝えた。

その言葉にウィンは当然の如く「やっぱり」と頷く。

霊使のデッキは既に【天底の使徒】、【教導の聖女エクレシア】、【教導の騎士フルルドリス】、【教導の鉄槌テオ】がくみ込まれている。

こうなると他のカードの割合を減らして「ドラグマ」と「憑依装着」の混合構築にした方が色々と楽になると霊使は踏んだのだ。

 

「まあ必然と枚数は抑えにゃならんわけだけど。」

「それは…うん。」

「…さ、これからが大変だぞ。」

「…またやるの!?」

 

デッキの強化方針を決めた霊使は次に行った事。

それは家にある数万枚のカードを全てひっくり返す事であった。

この世界ではカードは基本的にパックから入手できる―――が、カードを「ばれないところ」へ捨てる輩は山ほどいる。霊使はそんな心無い輩に捨てられたカードを見つけては回収しているのだ。

その大半は霊使が丁寧に保管しているが、そのうち何枚かはとんでもない利便性を持ったカードである可能性があった。

 

(…元は教導も捨てられていたカードだったりするんだよな。…こんなに強いのに。)

 

今、霊使が使っている【教導】カードの大部分は捨てられていたものだ。唯一ショップで買ったカードは【フルルドリス】のみ。

どうやら大半の人間は「EXデッキから特殊召喚出来ない」というデメリットを嫌ったようだ。確かに今、切り札の大半はEXデッキに組み込まれ、メインデッキはあくまで展開用―――というカテゴリもある。

それこそ結の【イビルツイン】がいい例だ。メインデッキに、というか【イビルツイン】に組み込まれるカードのほぼ全てが展開用のカードであり、試行回数を多くすることで切り札を無理矢理着地させるデッキだ。

そんなデッキからしてみれば【教導】のカードが持つ縛りとの相性は悪いことこの上ない。

だからと言って、ドラグマは弱いかと言われればそれは勿論否である。

 

(物は使いようなんだよね…。)

 

使い方を考えれば十全な力を発揮できる。だからいろいろなカードを組み合わせてどんなシナジーがあるかを考える。

そう言った理由から、霊使は相性がいいカードを探すために家にあるカードをひっくり返すという凶行をたびたびおこなっていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「よし…!」

 

取り敢えずドラグマのカードを組み込んで新しいデッキを作った。

―――のはいいのだが。如何せん近くにデュエルする相手がいなかった。

克喜達は絶賛オンラインで授業を受けていて、ロイは遠くの国に居るから無理である。

 

「…じゃ、私とやる?」

 

じゃあ誰とこのデッキを試そうか。

そんな時にウィンからこんな申し出をされた。まるで狙っていたとでも言わんばかりのタイミングではある。が、霊使にとってその提案は渡りに船だった。

だから霊使はすぐにウィンの言葉に頷き返す。。

 

「やるか、デュエル。」

「ん。やろやろ。」

 

というわけで唐突に始まったウィンとのデュエル。

最初は霊使も楽しみにしていたのだが―――。

 

「というわけで先攻は私のターン。私はカードを二枚枚伏せるよ。」

「…ミラーマッチ?」

「んーん?さらに私は手札の【ハーピィ・クイーン】を捨てて、魔法カード【ハーピィの狩場】サーチ。そのまま発動。そして皆大好き【隣の芝刈り】。デッキの上から19枚を墓地に。そしたら…【ハーピィ・パフューマ―】を召喚。効果でデッキから【万華鏡-華麗なる分身】を手札に加えてそのまま発動するね。デッキから【ハーピィ・レディ1】二体を召喚。そのまま【パフューマ―】、【レディ1】の2体でエクシーズ召喚。【鳥銃士カステル】。私はこれでターンエンド。」

 

霊使はこの時点でウィンのデッキが何なのか大体予想がついていた。

今伏せた二枚のカードによって少しは違ってくるが、恐らく伏せカードの内の一枚は確定している。

デッキを試してみたいだけだったのに、このままではものの見事に制圧されておしまいだ。

 

「俺のターン…。ドロー!俺は―――魔法カード【精霊術の使い手】発動!」

「それにチェーンして【魔封じの芳香】発動。」

「…もうだめだぁ…おしまいだぁ…」

 

そして伏せカードは案の定【魔封じの芳香】。霊使のデッキの弱点の一つである「始動が魔法頼り」という欠点を明確についてきた形だ。

これで魔法カードは一度セットしなければならず、セットした次のターンからでしか発動できなくなった。

正直なところ詰んだも同然となってしまった。

あのカードが【魔封じの芳香】であるならば残る伏せカードは何かしらの手段で【ハーピィ・レディ】関連カード。

更に鳥銃士カステルもいるせいでモンスターを場に出してもバウンスされるのがオチだ。

 

「…実の所ちょっと拗ねてるんだよ?」

「さいですか…。」

 

そんな事を言われても、なんでウィンが拗ねてるか分からない霊使にとっては理不尽でしかないのだが。

だがそんなこと知ったことかとウィンは笑顔で言い放った。

 

「というわけでロックかけるね?」

「ふざけるな!ふざけるな!馬鹿野郎ォォォォォッ!」

 

その後ウィンのデッキにボロ雑巾もかくやという程にボコボコにされたのは言うまでもない。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ふ、ふ、ふふふ…やはりパニッシュメント…。パニッシュメントは全てを解決する…!」

「…ちょっと霊使虐めすぎたかも…?」

 

あれから霊使とウィンは数戦デュエルを行った。それから数戦デュエルをして、最初の方はウィンが【魔封じの芳香】などで押していたが、途中から霊使がなりふり構わず【ドラグマ・パニッシュメント】と【旧神ヌトス】を併用し始めたことで逆転。

霊使は見事な【ドラグマ・パニッシュメント】の信徒になり、そして【旧神ヌトス】が弾として墓地に送られるのを必要経費だと思うようになっていた。

EXデッキの枠を圧迫するだとか、ヌトスがかわいそうだとかそんな生温い意見は今の霊使には届かないだろう。

 

「ごめんよ、霊使…。」

「そうだ、これからドラグマの信徒になろう…。EXデッキなんか全部パニッシュメントの弾だぁー!」

 

最早完全に正気を失っている霊使とそれを見ておろおろするだけのウィン。

そしてその光景を「うわぁ…。」位の感覚で眺めているその他六人。

こうして誰も特をしない不意な時間がしばらく続いた後――――

 

「埒が明かん!物理的に精神分析…正気に戻れ、霊使よ!そんな発狂修正してやるわ!」

「ふぁんぶる!」

 

クルヌギアスが霊使の顔面に鉄拳を繰り出し、その衝撃で霊使は正気に戻ることになった。

その後、やり過ぎたウィンには当然クルヌギアスの鉄拳制裁が降りかかることになり、頭にでかいたんこぶを携える同居人が一人増えることになった。

なお、今回の霊使の作ったデッキは初手さえ安定すれば安定して相手に振りを押し付けられるため、採用された。

このデッキには、霊使の執念と、ウィンのちょっとした嫉妬と、たんこぶの痛みと、クルヌギアスの拳の痛みが入っている。

故に、色々な意味でこのカードのドローは果てしなく重い。

笑ってしまうほどに当り前な結論を得て、霊使のデッキは一歩先へと進んだのであった。




登場人物紹介

・霊使
デッキ強化するよー。

・ウィン
何で個人的に聞いてくれなかったんですか!?すねる!

・クルヌギアス
精神分析(こぶし)

というわけで微々たる強化ですがこれからも霊使君の事をよろしくお願い申し上げます。

次回は…咲姫のデッキ強化ですね!次回もお楽しみに!

水樹君のデッキ強化

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