『決着ゥゥゥ!これが第一回戦で良いのか!?勝ったのはァ!『英雄』、四遊霊使ィィィィッ!』
「…。」
金我大智は四遊霊使と白百合結の試合を見て憤りを感じていた。
まるで意味もなく霊使い達を使いつぶしているように見えたからだ。
墓地に送られても蘇生さえ、さらにフィニッシャーの素材として墓地に送られる。
果たしてそれが本当に「いい使い方」だといえるのだろうか。
―――いえるわけが無い。
どんなデッキコンセプトであれ、少なくとも少女に追わせていい労苦ではない。
「そういうのはアンデット族の専売特許だろーが…。」
だから、四遊霊使という男のデッキそのものが気に入らなかった。
大智は与り知らぬことではあるが彼の言う「使い捨て」を霊使に示したのは霊使い達自身だ。
そもそも墓地からのリアニメイトを戦術に組み込まないのであれば【憑依連携】をデッキに入れる必要はない。むしろそのカードを入れるよりも他のカードを入れた方がよりシナジーが生まれるはずだ。
だが、怒りというものは存外人の視界を狭めるものである。
大智はこの手に関して最も大切な「本人の気持ち」を無視していた。
「絶対ぶっ飛ばす…!」
斜め上どころか明後日の方向へ思考が吹っ飛んでいる大智。
当然、彼はウィンと霊使の関係を知らない。
余りにも数奇で奇妙な関係を、彼はまだ知らないのだ。
だから彼は憤る。少女を使い捨てているような、ただただ貪欲に勝利だけを求めているような男に対して。
そして絶対に初恋の人を救って見せると、そう心に誓った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一方の霊使。
結との激闘を紙一重で制し選手控室へと戻る。この大会は屋外で行われる為、近くのホテルの部屋を「選手控室」として開放しているようだ。余計な所で金をかけるなぁ、と霊使は思っていた。
また、公平を期すために控室内での選手同士の決闘はルールで禁じられている。
それでもテレビ中継などで大会の様子は確認できるため、ある程度相手のデッキを推測することはできる。
更に今回の大会ではメインデッキとエクストラデッキに加えカード交換用のサイドデッキを認めている大会でもあった。その枚数はエクストラデッキと同じく15枚だが、通常のデッキに採用されるカードがしこたま含まれている。
ただこのデッキはあくまで「調整用」。このデッキに入っているカードはデュエル中に使用することはできない。相手のデッキを見て調整してください、という、それだけのデッキでしかない。
おまけに霊使は二回戦の相手を見逃しており、どんなデッキを組めばいいのか、というのはさっぱり理解できなかった。
『圧倒的ィィィ!金我大智、ノーダメージで一回戦突破だァァァ!』
ただそれでも強いと謳われる人材を見逃すほど霊使も愚かではない。
霊使はデュエリストであり、それと同時にリアリストでもある。だから勝つためにルール内でなら手段を選ばない。
流石にかつての黎明期いたという他人の切り札を見せてもらったついでに海に捨てる、だなんて行為をする気はさらさらないが。だが、ルール内の行為であれば相手が嫌がることを進んでやる。それが霊使のデュエリストとしてのスタンスだった。
だから霊使のデッキには【大霊術-「一輪」】や、【憑依連携】、【教導の騎士フルルドリス】や【閉ザサレシ世界ノ冥神】といった相手を妨害するカードがたくさん投入されている。
そういう「メタ」としての頂点で言うならばたった今、この画面越しの相手が使っていた【スキルドレイン】程相応しいものはないだろう。
「【スキドレ】の対策は必須…か。」
【スキルドレイン】は永続罠であり、場にあるだけで相手のモンスター効果全てを無効にしてしまうカードだ。当然【マスカレーナ】の相手ターン中にリンク召喚できる効果も、【閉ザサレシ世界ノ冥神】の「対象外効果耐性」もすべて無効にされる。
一応、【閉ザサレシ世界ノ冥神】の「対象外効果耐性」は先に出しておけば【スキルドレイン】さえ無効にするようだが、そもそも【閉ザサレシ世界ノ冥神】は相手の切り札を吸収して召喚することにある。
霊使はそれを「
相手のモンスターを吸収し、その後は【憑依覚醒】の効果で攻撃力を盛った【憑依装着】モンスター達でぶん殴る。トリッキーなようで実の所物凄く脳筋なデッキを扱っていた。
「…さて、と。」
「そろそろ二回戦、だね。」
「…その前にウィンに一つ聞いとくことがあるけどな。」
霊使はウィンの前に仁王立ちになる。
それを見たウィンはどうやら自分のやらかしたことがばれていたらしい、と思った。
当然ながら霊使はウィンの浮気だとかを疑っているわけでは無い。単純にウィンが何をやらかしたのかを明らかにしたいだけだ。
「…で?何やらかしたの?」
「…実はね。金我君に告白されてね?それは断ったんだけど。」
「うん。」
「エリアちゃん達の事を伝え忘れててね?―――多分「マスターであることをかさに着た糞野郎」というのが第一印象になったんじゃないかなー…って。」
―――想像の三十倍は酷い理由だった。
いや、告白をきちんと断ってくれたのは非常にうれしい、嬉しいのだが、その後の「伝えなかった」やらかしは余りにも大きい。
確かに霊使の使用するカードの大半は「アイドルカード」と呼ばれるものだ。で、そのカードの精霊がたくさん憑いている霊使は傍から見れば少女をとっかえひっかえしているような下種にしか見えない、と。そしてウィンはエリア達の説明をすっかり忘れていたので、初めて会った時に「そう言う風」に見られてしまったということだろう。
つまるところ―――
「俺は知らず知らずのうちに世の中の男に喧嘩売ってたのか…。」
「…うん。実際は違うけど傍目から見たらハーレムだし、あるいは「とっかえひっかえ」だし。」
「いったいどうしろと…?」
霊使は傍から見れば、世の中の全ての敵であるのだ。
無知な少女をとっかえひっかえしているというのが初めての印象になってもおかしくはない。むしろ普通の人ならそうなってしまうのが常というものだ。
ならそれを変えるにはどうすればいいのか。
「うーん…。皆には今のようにカードに戻っていてもらうとか?」
「それは外に出るのが誰になるかの喧嘩になる。そして俺達の家は更地になる。」
「いとも容易く想像できる。」
改善案を色々と考えてみたがどの案も最終的には霊使の家が更地になるという事で廃案となった。よく考えてみて欲しい。
炎と水がぶつかり、地面は隆起し、風が吹き荒れる。そんな状態で家が持つのだろうか。
当然、持つはずがない。というか一度霊使の家は何処かのポンコツ天使のせいで吹き飛んでいる。
「…そろそろ時間だよー!」
「エリアちゃんが呼んでる。…行こうか?」
結局改善案が出ないままウィンと霊使は次の戦いの舞台へと向かうのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「準決勝の相手は『英雄』という二つ名を戴く四遊霊使。使用デッキはリンク召喚を軸とした【ドラグマ霊使い】―――か。得意な戦術は相手の墓地のカードや、フィールドのカードを奪う事。特に【閉ザサレシ世界ノ冥神】と【星遺物からの目醒め】もしくは【I:Pマスカレーナ】による相手ターン中に行う「召喚素材とすることでの実質的な除去」と、【憑依覚醒】と【妖精の伝姫】、魔法使い族が存在する場合に特殊召喚できるモンスターで攻撃力をゴリゴリにあげて殴る戦法を得意とする。―――カード一枚のパワーは低いもののかみ合った場合は最速で先攻2ターンキルもあり得ると。」
男は準決勝で当たる相手の一挙手一投足に至るまでの全てを観察していた。
色々と引っかかることはある。例えば、引いたカードが光っていたり、臨んだであろうタイミングで臨んでいたカードが来たり。
「…彼の引きの強さは要警戒、だな。特に二回戦から準々決勝にかけては非常に短い間で勝負を決めている。」
男はそこで一度対戦動画を見るのをやめてゆっくりと顔を上げる。
その顔はずっと画面を見ていたせいか若干目が充血していた。
「…それにしても【霊使い】達のマスター…か。まるでハーレムか何かのように見えるな。ちゃんと説明しないと周りに誤解を与えかねんぞ。ハーレムにしろ、とっかえひっかえにしろ。」
そうぼやく彼はただひたすらに霊使という男への対策を積み重ねていく。
どうすればモンスターの召喚を抑制できるのか。どうすれば膨れ上がる総攻撃力に対抗できるか。
「…魔法封じや召喚回数制限はこっちも封じられるから論外。…速攻を仕掛けるのが一番かな。初手マスカレーナとか出されたら誠心誠意感謝のサレンダーかもしれないけど。」
四遊霊使という一つの「頂点」に今の自分がどこまで通じるのか。
男はそれが楽しみで楽しみでしょうがなかった。
登場人物紹介
・霊使
対策を考える。
ダルクには色々と申し訳なく思っている。
・ダルク
あの一団に居たせいで男の娘扱いに。
本人は不服そうではある。
・霊使の準決勝の相手
対策を練る。
が、思いつかなかった模様。
・大智
勘違いは止まらない、加速する…!
というわけで次回から準決勝開始します。
ちなみに二回戦からの相手の使用デッキは「トマハン」、三回戦は「無限起動」、四回戦は「ジャンク・ウォリアー」、準々決勝は「ふわんだりぃず」でした。―――が全部勝負すると余りにも話数を消費するのでカットです。相手の切り札をクルヌギアスで吸収したという事にしておいてください。
次回もお楽しみに
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア