「相棒」   作:ダンちゃん1号

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決勝戦:目眩しき黄金卿

『ついにやって来た!決勝戦がやって来た!相対するのはー!今大会最大攻撃力を更新し!どこまでも一直線に駆け抜ける男!四遊霊使!VS!今大会のダークホース!とこしえに輝く黄金のアンデット使い!金我大智!両者!入場です!』

 

霊使は物凄い歓声に圧倒されながらも決勝戦の舞台へ足を踏み入れる。

どういうわけか決勝戦は舞台中央に設けられ、スポットライトに照らされた舞台だった。

 

(うわぁ。)

 

反対側からは殺気最大の少年がずかずかと歩いてくる。霊使から見れば魔王やら悪神やらそう言った類のラスボスにしか見えない。もっとも向こうも似たようなものなのだろうが。

 

(…それにしても。)

 

霊使は改めて目の前の少年の姿を見る。まず真っ先に目についたのは火傷跡だった。これはこれからも彼が背負っていかなければならないものだ。自分のせいではないといえ、もう少し早く動ければ、こんな傷も追う事無かったのだろうなという悔恨がふつふつと首をもたげてくる。

金髪と赤い目が特徴的な整った顔立ちの少年は、憤怒に染まっていた。

流石の霊使も無実の罪でここまでの殺気を見せられたら心の中で泣くことくらいしかできない。

何となく冤罪で非難されてしまう人の気持ちを理解出来た気がした。

 

(…勘違いのレベルが…余りにも…高い!)

(殺気て…。あーあ。物凄い勘違いされているね、霊使?)

(ウィンのやらかしが大きすぎるね、こりゃ。)

(ヒータちゃんの言う通りでございます…。)

 

殺気を向けられた霊使の心中は察するに余りあるものだろう。

心の内とはいえ気軽に話しかけてくれる霊使い達の声が妙に心地よく、今の霊使の心を癒す。

とはいえ、いつまでも霊使いたちのやり取りで癒され続けるのはよくない。それは今、目の前に居る彼に対しての失礼ごとに当たるだろうからだ。

それに彼とデュエルするにあたってもう一つ解決しておきたい事柄がある。

 

「…さて、俺は君が何に起こっているか皆目見当もつかないんだ。」

 

そう、それだ。

このままではどのみち満足なデュエルはデュエルは出来ない。

疑問はしっかりと先に解決しておかなければならない。というか目線に殺気が籠りすぎていて的モニュエル出来そうにない。

何でデュエルを愉しみにしてきたのに殺気に晒されなければいけないんだろうか。

いや、怒りの理由は大体予想できているのだが―――

 

「アンタがマスターであることを笠に着てその子たちに色々と酷いことやってんだろ!?」

(…ウィン達が見えてるってことは少なくとも精霊連れなのは確かだな。)

 

案の定、というかなんというか。

やはり盛大な勘違いをされているようだった。ちなみに今はデュエルモンスターズの精霊が存在するという認識が無ければウィン達を認識出来ない様な状態で待機している。

この状態だと現実には干渉できないが隠密性が格段に上がるのだとウィンが言っていた。

 

「…で、その酷い事って?」

 

それはともかく。

霊使は少年の言う「酷い事」に心当たりは何一つなかったのでとにかく聞いてみることにした。

どんなうわさが流れているか、―――というかどんな感じに勘違いしているのか確認しない事には始まらない。

 

「―――その…!ごうか…って!何言わせようとしてんだテメェ!」

 

態度には示さないが霊使は心の中で「うわちゃー」と頭を抱えた。

一番勘違いしないで欲しいところを穿っていくな、と態度には出さないものの悪態を付きたくなる。

 

「ウィンさんや他の子たちを無理矢理襲ってんだろテメェ!」

「そんなことするかよ馬鹿野郎ッ!」

 

だがいくらなんでもあることないこと言いたい放題なのは許せない。少なくとも、ウィンやエリア達が本気で嫌がるような行為は絶対にしないと言い切れる。

この会話が外から完全に聞こえないのは僥倖だった。とにかく言いたいことを色々と言い合える。

 

「そもそも俺はなぁ!中学校の頃からずっとウィン達と一緒に居るんだ!互いに嫌い合っていたらそもそもこんな所まで付いてこないだろうがよ!」

「お前がそれを強制させてんじゃないのか!?」

「―――そんなに疑うならデュエルで見せてやるよ!俺とみんなの絆の強さを!」

「見せてもらおうじゃねぇか、この虫野郎!」

 

霊使までブチギレては埒が明かない。

がなんやかんやでデュエルが始まったことであの言い合いは多少は収まったようだ。

コイントスでは相手が先攻を取ったようで霊使は即座に構える。

 

「俺の先攻だ!俺は手札から【ドラゴンメイド・ラドリー】を召喚!効果でデッキの上から三枚を墓地に!更に手札からフィールド魔法【呪われしエルドランド】発動!800のライフを支払い手札に【永久に輝けし黄金郷】を手札に加える!更に墓地の【黄金卿エルドリッチ】の効果発動!【呪われしエルドランド】を墓地に送り【黄金卿エルドリッチ】を召喚!」

「もう出て来るのかよ!」

「この効果で召喚した【黄金卿エルドリッチ】の攻撃力は相手ターン終了時まで1000上昇し、効果では破壊されない!」

 

厄介なものがいきなり出てきたものだ。

少なくともこのカードはどうこうするものではない。―――余りにも強固すぎる。攻撃力3500の壁はそれほどまでに高いのだ。

 

「墓地に送られた【呪われしエルドランド】の効果で【黄金郷のワッケーロ】を墓地に!…俺はカードを二枚伏せてエンドフェイズ。エンドフェイズ時に【黄金郷のワッケーロ】の効果発動!このカードを除外して【赤き血染めのエルドリクシル】をセット。…これでターンエンドだ。」

 

大智 LP7200 手札三枚

モンスターゾーン ドラゴンメイド・ラドリー

         黄金卿エルドリッチ

魔法・罠ゾーン  伏せ×3

 

「さーて、どうするかな…。」

 

相手の使用デッキは【エルドリッチ】。罠カードを駆使して相手を追い詰めていくデッキだ。言わずもがな霊使のデッキとの相性は最悪だ。霊使は対モンスターに特化させているから、罠カードで的確に盤面処理を行うデッキにかち当たると非常に苦しいのだ。

だが、霊使にも打てる手が無いわけでは無い。

 

「俺は手札から魔法カード【ライトニング・ストーム】を発動!俺のフィールド表側表示のモンスタ-が存在しない場合このカードは発動できる!今回選択する効果は「相手の魔法・罠カード全てを破壊する」効果!」

「何!?」

 

これがその一手だ。霊使が使用したカードは【ライトニング・ストーム】。【ハーピィの羽箒】、【サンダーボルト】と入れ替える形で採用したカードである。このカードは重い誓約がある代わりに効果も強いカードで、端的に言えば二つのカードの合わせだ。

 

「チィ!罠発動【永久に輝けし黄金卿】!【黄金卿エルドリッチ】をコストにその発動を無効にして破壊する!」

 

そして霊使は迷うことなく「魔法・罠カードの全破壊」を選択。当然罠に頼っている【エルドリッチ】はその発動を無効にせざるを得ない。

 

「…使ったな?」

「…狡い手を…ッ!」

 

と、こうなると不利になるのは相手の方だ。

何故かと言えば「使わされた」というのが実のところ正しいからである。

霊使も何度か経験があるが「使う」と「使わされる」というのは中々に違う物だ。

とくに後は戦術に異常をきたしてしまう程度にはまずい事態で「使わされたこと」が後々になって響くこともある。

 

(…あえて使わないことが有効なこともある…ってね。)

 

墓地で使用できる効果があったのならばあえて使わずに墓地効果の発動を狙うのも手だ。墓地で発動させる効果には除外という条件こそあるが大体はデュエルを有利に運ぶ下準備の効果だ。

霊使の使う【憑依連携】は完全とは言えないがそれなりにリカバーは出来る為、破壊されることも視野に入れている。だが、今回相手は破壊を無効にすることを選択した。つまりはそれだけフィールドに残したいカードなのだろう。

 

「後はいつもの通りだ!速攻魔法【精霊術の使い手】!手札の【憑依装着-ウィン】をコストに【憑依連携】を手札に【憑依覚醒】をセット!更に【大霊術-「一輪」】を発動してそのまま【憑依覚醒】を発動!手札から【妖精伝姫-カグヤ】を召喚して【憑依覚醒】の効果、【カグヤ】の効果でチェーンを組む。まず【カグヤ】の召喚時効果でデッキから【憑依装着-アウス】を手札に加える。その後【覚醒】の効果で一枚ドロー。」

 

霊使はいつも通りにデッキを動かしていく。今回は【カグヤ】が手札にあったのが幸運だった。おかげで【覚醒】の効果を含めて二枚分の手札を得ることが出来たのだ。いいことづくめが過ぎるというものだ。

 

「…手札コストに…!?」

「…当然だろ。―――【憑依連携】の効果の発動に必要なことだしな。それに手札から召喚するよりかは墓地から召喚の方が妨害されにくい。【憑依連携】の発動タイミングに寄るからな。」

 

霊使にとって霊使いをはじめとした「守備力1500の魔法使い族モンスター」は【憑依連携】で特殊召喚するカードの筆頭だ。そう言ったカードは何一つ迷うことなく何かしらの手段で墓地に送ることが多い。その理由は色々とあるが一番の理由は「確実に使用する」ためだ。

手札に抱えたままでは【アーティアファクト‐デュランダル】や【ダスト・シュート】といった手札のカードをデッキに戻すカードによって【憑依連携】の効果を潰される危険がある。そう言ったカードの効果を無視するには墓地に送っておくのが一番気楽だ。当然墓地からカードを動かす効果を持つカードもあるので油断は大敵だが。

 

「というわけだ。手札コストにする理由はお判りいただけたかな?」

「いちいちむかつく野郎だぜ…!」

「あることない事言われてムカついてんのはこっちも同じだ!」

 

霊使は相手の一方的な言い分に一々言い返す気力さえ失せていた。

なんというかあの男の言葉の端々に嫉妬やらなんやら―――怒りとは関係ない感情が見えたからだ。

 

「とにかく、だ!俺は【大霊術-「一輪」】の効果発動!手札の【憑依装着-アウス】をデッキに戻して【デーモン・イーター】を手札に加える!更に手札の【デーモン・イーター】の効果!俺のフィールド上に魔法使い族モンスターが存在すれば【デーモン・イーター】は手札から特殊召喚できる!そして【カグヤ】と【デーモン・イーター】をリリースしていつも通りに【憑依覚醒-デーモン・リーパー】をデッキから特殊召喚!【デーモン・リーパー】の効果で墓地から【妖精伝姫-カグヤ】を蘇生!」

 

霊使はいつもの通りにデッキを回していく。

いつもの通りに、丁寧に。心を込めて、祈りを込めて、魂を乗せて。

 

「【カグヤ】と【デーモン・リーパー】の二体でリンク召喚!いつもの通りの【I:Pマスカレーナ】!この瞬間墓地に送られた【憑依覚醒-デーモン・リーパー】の効果が発動!デッキから【憑依解放】を手札に加える!」

 

そしてこれもまたいつも通りの【マスカレーナ】。リンク召喚でも何でも墓地に送れば効果が発動する【デーモン・リーパー】との相性は言わずもがな最高だ。

当然、墓地から蘇生することでキレイにつながるというのもあるのだが。

 

「更に手札から魔法カード【天底の使徒】発動!EXデッキから【灰燼竜バスタード】を墓地に送り、効果で【教導の聖女エクレシア】を手札に加える。EXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するため【教導の聖女エクレシア】を特殊召喚!【エクレシア】の効果でデッキから【ドラグマ・パニッシュメント】を回収!」

 

霊使は一瞬悩んだ。

ここでどうするべきか、何をすべきかを考えた。

【ドラゴンメイド・ラドリー】を破壊するか、あの伏せカードは厄介なものではないか、などだ。

 

「考えていても仕方が無い!バトル!【教導の聖女エクレシア】で【ドラゴンメイド・ラドリー】を攻撃!」

 

だが、霊使はここにきて考えることをやめた。罠を踏んだら罠を踏んだ。それだけの事だ。

だが、今まで発動しなかったところを見ると発動に何かしらの条件が存在する罠らしい。

恐らくそのキーになるカードは【黄金卿エルドリッチ】―――【永久に輝けし黄金郷】の効果で開いて自らが墓地に送ったカードだ。

そうでなければ何故今まで発動しなかったのかの説明が付かない。

 

「…その瞬間罠発動!【赤き血染めのエルドリクシル】!効果で【黄金卿エルドリッチ】を墓地から呼び出す!」

「だが攻撃は続ける!」

 

相手のフィールドに【黄金卿エルドリッチ】が舞い戻る。しかし霊使はそれを気にせず【ドラゴンメイド・ラドリー】の破壊をした。霊使は確かにみたのだ。【ラドリー】の効果で【ドラゴンメイド・フルス】が墓地に送られるのを。

効果力なモンスターが並ぶよりかは多少の危険に目を瞑らざるを得ない。

 

「…ちぃ。」

 

大智 LP8000→6400

 

霊使の攻撃はそのまま相手の通る。だが戦況は、これで少し有利になったかというくらいだ。

そこまで大きな違いが顕著に表れるわけではない。

 

「…俺はカードを三枚伏せてエンドフェイズ。【バスタード】の効果で【教導の騎士フルルドリス】を手札に加えてターンエンド。」

 

霊使 LP8000 手札2枚

EXモンスターゾーン I:Pマスカレーナ

モンスターゾーン  教導の聖女エクレシア

フィールド魔法   大霊術-「一輪」

魔法・罠ゾーン   憑依覚醒

          伏せ×3

 

霊使はターンエンドを宣言。このデュエルはまだまだ始まったばかり。霊使は端からアクセル全開だが、相手はまだまだエンジンがかかっていない様子。

この世にも珍しい痴話デュエルはまだ、幕を上げたばかりだ。




登場人物紹介

・霊使
強い。主人公だから今は負けられない。

・大智
割とムッツリ。

いやー12期たのしみですね。
それはそれとして今度の霊媒師はヒータちゃんですって。エリアちゃんは来年の四月かぁ…?
次回もお楽しみに!

水樹君のデッキ強化

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