「相棒」   作:ダンちゃん1号

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全てが終わった夜に

「乾杯っ!」

「うぇーい!」

 

霊使やウィン、それに諷利や大智、結といった面々は大会の終了後、何故か一緒に食事をとっていた。というのも、霊使たちが戦勝会を行うために選んだ店に偶然、諷利と大智が居たのだ。二人は一緒に食事をとっていた。言ってしまえばただそれだけなのだが、たまたま空いている席が諷利と大智が居る席しかなかったのだ。

というわけで、霊使がそこに座った所、その後即座に結とキスキル、そしてリィラの三人がやって来た。

さらにそこにエリア達7人が遅れてやってきたのだから、もう店がパンクしそうになる。

そんなところで食事を終えた隣の団体客が席を開けてくれて、全員が入る運びとなった。

そして全員分の飲み物が運ばれてきた所で今に至るというわけだ。

 

「まさかそれにしても―――君がハーレム形成しているとはね。」

「ハーレムじゃないです。既に答えは出してます。」

 

まず、諷利は霊使に対して少しばかり厳しめの視線を向けて来る。彼は霊使に関係性をはっきりさせろといった。だが、霊使の中ではすでに関係性をはっきりさせていたのだ。

そうきっぱりと霊使が答えを出せば、諷利はそれに満足したようにうなずく。

逆にその言葉に驚愕したのは他でもない大智だった。当然ハーレムという男の夢をかなえた男だとばかり思っていたせいか、その「答えを出している」宣言に驚いたというわけだ。

 

「―――なん…だと…?」

「俺が異性として好きなのはウィンだけ。これから先もそれは変わりませんよ。」

「…ふふっ、嬉しいこと言ってくれるよね、霊使?」

「人前なんだから…。」

 

そんな事をいうものだから、ウィンは人目もはばからず霊使とイチャつきだす。

その光景を目の前で見せられた諷利と大智の二人は即座にブラックコーヒーを頼んだ。

だが、そんな二人の様子をほほえましいものを見るような目で見る人物が一人居た。この一年間、なんやかんやで霊使と共に戦い続けた結である。

 

「久しぶりに見たねぇ。二人のいちゃつきは。」

「そんなでも―――あるのか。なんやかんやで結と会うのは俺が退院して以来初めてなのか。」

 

結とは退院以降そこまで顔を合わせる機会が無かった。

オンライン授業などで確認しようにも、結は一学年上だ。おまけに何か呪いにかかっていやせいで一度ダブっている。

とにかく、結とはそこまで会う機会が無かったという事だ。

 

「え?白百合さん二人のこと知ってるの?」

「ん?まあ…ね。色々とあったんだよ。そう、本当にウチのポンコツ共が色々と…。」

「―――何かあったんですね?」

「ああ、あったあった。最初から色々とあったんだ。…本当に…色々と…。」

 

霊使は遠い目をしながらそれだけを呟いた。

あの時は本当に大変だったのだから。キスキル達にリベンジを果たしたと思ったら殺されかけ、何とか生還したと思ったら今度は洗脳され、最後は神と戦ってまた死にかけた。

全ての苦難の始まりはキスキル達からだったのかと思うと、彼女達と笑い合えるこの瞬間が奇跡であるようにも思える。

 

「それにしても、あれだね。君、あんなに精霊連れていたのか。」

「いや、本当にそれ。一人はキスキル達に引き合わされたんですけど…あとはまあ、縁でつながりました。」

「えん。―――もしそうだとしたら相当の縁だって。」

 

諷利は霊使の連れている精霊の多さに驚いていた。

普通、一人の人間と一緒に居る精霊というのは多くても2~3体だ。たまにカテゴリに丸っと愛されている人もいるのだが、そういう人間はほとんどいない。

 

「君は俗にいう「例外」という奴んだろうねぇ。」

「キスキル達のせいで「例外」になったのかもしれないけどな!」

「違いない…ってちょっと!?ワタシのせいにしないでくれないかい!?」

「…でもキスキル達と出会ってなかったら今頃死んでたし…。」

「ちょっと!?」

 

霊使がそんな事をいうものだから諷利が大げさに驚いて見せた。

霊使からしてみれば言っていることは何一つ間違っていない―――ただの事実だ。

だがそれは良識のある大人の諷利にとっては聞き捨てならないことで。

 

「ちょっと!?死にかけたっていうのはどういう事!?」

「悪いのは全部犯人です!」

「そういう事じゃなくてだね!?」

 

当然諷利はその霊使の言葉に突っ込む。―――というか彼はツッコまざるを得ない。

大人が子供を危険に晒すなどあってはならないのだから。

だが現に彼は死にかけたという言葉を口にした。本来ならば大人にしか許されていないはずのその言葉を、霊使はなんてことの無い物のように口にしたのだ。

 

「いやー…なんか先生以来だな。こんなまともな大人と話すのって。」

「うわぁ…。」

「自分の生い立ちなんか話す性分じゃないんだけどな…。」

 

しかし霊使はそんな諷利の思いに気付かずにただただまともな大人と会話できるのがここまで楽しく、身になる事だとは思いもしなかった。

―――霊使には普通の人の心が分からない。分かるのは以心伝心な相棒達と彼と戦い抜けた友人たちの心位である。そんな霊使が、悲しみに暮れる諷利の心を察するなど夢のまた夢のまた夢だった。

 

(霊使はもう少し人の心の機微を読み取るべき。―――ってなんかさっきも言ったような気がする、これ。)

(―――なまじ正しいから何も言えない。)

 

「とにかく、俺は大丈夫ですよ。すでに終わったことですし、何よりも過去の事を嘆くよりも俺は全力で今を楽しみたいですから。」

「―――でもあれだね、霊使君。君その事を責められたら弱そうだよね。」

「―――うぐ。」

 

確かに霊使はもう過去を振り返るのは止めた。

―――が、それと過去について他人から攻められるというのはまた別だ。

少なくとも祝いの席でやる話ではないだろう。

霊使が大声でそれを指摘すれば場はすぐに静まり返った。

 

「ああもう!なんで祝いの席でこんな話をしなければならないんですかーっ!」

 

そんな中遠慮しがちに結は手を挙げて答えた。

その後に続けて諷利と大智も言葉を紡ぐ。

 

「そりゃ、まあ…嫉妬…?」

「しっと。」

「負けたからその腹いせにいじりたい。」

「嫉妬だ。」

「俺の初恋を奪ったから。」

「Holy shit!」

 

霊使は「しっと」三段活用を披露して全員に突っ込む。

つまるところこんなに弄られたのは全部嫉妬のせいなのだ。

 

「あーもうくそ!こうなったらやけ食いしてやるーっ!会計は全部諷利さんが払えーっ!」

「うそ!?」

 

と、いうわけで霊使は拗ねた。へそを曲げ、その場にいる唯一の大人である諷利が払うというと店員はこくりと頷く。散々に弄り倒してくれたのだからこれ位は仕返しとして成立するだろう。

―――その後デュエル大会が始まり、諷利が全員に負けて最下位になって、全員分の食事代を払わされるという悲劇が発生した。

だがそこに居た人物たちの顔は底抜けに明るいものだったようだ。

 

「よっしゃぁぁぁ!」

「食え食え!」

 

ちなみに全員が食べなくった結果諷利は一度の食事で6桁という前代未聞の金額を払う事になったらしい。

―――とにかく、これにて英雄たちの休暇は終わりを告げる。

これから始まるのは新たなる土地で、新たな仲間と共に送る生活である。

 

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4月。桜が舞い散る道を霊使とウィンは歩く。

舞い散る桜の花をかき分けながら二人は進む。

そんな二人が交差点に差し掛かった時だった。

一瞬、強い風が吹いて霊使は思わずバランスを崩してしまったのだ。しかも運が悪い事に霊使が転んだその先には同じく先の強風でバランスを崩したであろう男がいた。

 

「あいて!」

「いた!」

 

二人は偶然折り重なるようにして倒れてしまう。

下になったのはどちらの方だったか覚えてもいない。すぐに二人して起き上がったからだ。

 

「ごめんなさい!大丈夫でしたか―――。」

「ごめん!君は大丈夫―――。」

 

二人して謝罪の言葉が重なる。

―――春は新たな出会いの季節。そして、新たな始まりの季節でもあった。




登場人物紹介

・霊使
当然最強―――というわけでは無いがそれなりに強い。
時には非情な決断も下せる。

・大智
弱くはない。決勝で当たった相手がただ悪かった。

・諷利
貧乏くじ。いくら強くても攻撃力4300や5300に勝てるわけないだろ!
なお、14人の飲み食いの結果は驚異の六桁に到達。
賞金をすべて使って若者に奢った。

・結
多分一番得した人

くぅ~疲!
これで1.5部終了です!というわけで次回から登場人物を一新した二部が始まりますよ!え?克喜や水樹はどうするんだって?
そりゃ出ますよ安心してください。

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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