「―――海斗強くね?」
事の発端はそんな感じの会話だったと思う。
霊使は海斗に許可をもらって海斗のデュエルの光景を見せてもらう事にした。
以前に霊使の物を見せたので「そのお礼」ということらしい。
見た結果の感想がこれしか出てこなかったのだから、これは酷いというほかない。
「ええ、海斗は最強ですから。」
「…十割十分原因は貴方たちでしょうよ…。キトカロスさん?」
「…そう、とも言いますが…。」
―――海斗は案の定デュエルモンスターズの精霊が憑いていた。人魚モチーフの彼女はキトカロスという名前だ。
彼女はその圧倒的な効果で対戦相手を絶望させていた。正直海斗を相手にするのならば一番相手にしたくない相手でもある。
「…もう一度見せてくれない?」
「ん。」
「好きなだけ見てください、私と海斗の雄姿を!」
「―――二人は魔王じゃないか?」
そんな事を言いながら霊使は『デュエル実践』と名のついたファイルを眺めるのであった。
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この形式の授業はくじ引きで対戦相手が決まる。
海斗のクラスの総計は35人なため一人だけ先生と対戦しなければならないようだった。
このご時世に、デュエルが強くなければ教員も務められないという謎理論が蔓延っており、先生はぐうの音の出ないほどの実力者だ。
「―――じゃあ、俺が先生とやります。」
だが、そんな相手にに海斗は臆さず向かって行く。―――早いところキトカロス達【ティアラメンツ】を使いたいから。後は、自分がこのクラスで最も浮いているという自覚があるから。
もっとも、彼が先生とデュエルしたいのは、自分が先生という「強い相手」とデュエルしたいからなのだが。
「デュエル、しましょうよ、先生。」
「…ふむ。良いでしょう。デュエルしましょうか。―――ですが挑まれたからには手加減しませんよ。」
海斗が先生に提案した通りに、先生と海斗がデュエルの準備を始める。他の物はどうせだから、ということでこの一戦を見学することになった。
「―――先攻をどうぞ。」
「いいのかい?」
「ええ。あっと驚く蹂躙劇をご覧に入れましょうとも。」
基本的にデュエルモンスターズは先行が有利なゲームだ。
相手の動きを妨害し、自分の沼に引きずり込むことができる―――その分だけアドバンテージが得られるからだ。
だが、海斗は敢えて後攻を選ぶ。
「そこまでいうなら…。良いでしょう。私のターンだ。…私は手札の【伝説の白石】をコストに【ドラゴン・目醒めの旋律】を発動。デッキから【ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン】と【青眼の亜白竜】を手札に加える。さらに【伝説の白石】の効果で【青眼の白龍】をもう一体手札に。」
「…どうぞ。」
「…私は手札の【青眼の亜白竜】の効果発動。手札の【青眼の白龍】を公開することで【青眼の亜白竜】を特殊召喚。…さらに儀式魔法【カオス・フォーム】発動!手札の【青眼の白龍】をリリースして…降臨せよ、【ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン】!」
海斗は何もアクションを起こさない。
―――当然、相手のカードが強力な物であることは百も承知だ。だが、ティアラメンツの特性上、海斗は妨害カードさえ最小限にする必要があった。
だから海斗はただ見るばかり。それ以上のアクションを起こす必要さえない。
「…さて、と。私はこれでターンエンド。…伏せカードがないのは辛いですが、まあいいでしょう。」
先生 LP8000 手札二枚
モンスターゾーン ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン
青眼の亜白竜
先生はこれでターンエンドを宣言。青眼の亜白竜も厄介だが、一番厄介なのは効果破壊耐性と対象効果耐性を持っている【ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン】。このカードを突破するには攻撃力4000以上のモンスターを召喚しなくてはならない。
―――普通なら難しい話だ。霊使なら即座に【閉ザサレシ世界ノ冥神】の素材にすることを考えただろう。
「俺のターン!ドロー!…手札から魔法カード【テラ・フォーミング】を発動です。この効果でデッキから【
「…なにもないです。」
だが、海斗は違う。
海斗は小細工なしで、力尽くで乗り越えることにした。幸い、今の様子からして相手の手札に妨害の類はなさそうだ。
「ならば手札から【ティアラメンツ・シェイレーン】の効果発動!【ティアラメンツ・シェイレーン】を特殊召喚し手札の【古衛兵アギド】を墓地に!更にデッキの上から三枚を墓地に送る!俺は墓地に送られた【
「おや、墓地肥やしの結果は芳しくなかったようだね。」
ティアラメンツのデッキの特徴は「墓地肥やし」―――墓地にカードを溜めてそれをリソースとして使う、というものだ。シェイレーンをはじめとした下級のティアラメンツは全て墓地肥やし効果ともう一つの効果を持っている。
だが、海斗のデッキはこれでは止まらない。
「更に墓地に送られた【古衛兵アギド】の効果発動!互いのデッキの上から五枚を墓地に!…墓地に行ったのは【ティアラメンツ・レイノハート】に【宿神像ケルドウ】、【剣神官ムドラ】、【
「…墓地で融合だと!?」
ティアラメンツのもう一つの特徴。それは、
しかもこの効果はよりにもよって除外ではなく「デッキに戻す」効果―――つまり自前でリソースも回復できる。
うわぶれれば二度どころか何度も美味しい。それがこのデッキの醍醐味である。
「とにかく融合召喚!【捕食植物キメラフレシア】!」
「【ティアラメンツ】モンスターとかそう言った制限は…?」
「あるわけが無いッ!」
おまけに、この【ティアラメンツ】達の融合効果に【ティアラメンツ】モンスターという縛りは無い。従って雄吾条件を満たすモンスターならいくらでも湧いて出ることになる。
新たな融合モンスターが出るたびに【ティアラメンツ】はより強化される、というわけだ。
「さらに【ティアラメンツ・レイノハート】の効果発動!デッキから【ティアラメンツ・ハゥフニス】を墓地へ!【ハゥフニス】も当然墓地融合効果持ちですからね!今度は墓地の【ハゥフニス】と手札の二枚目の【ハゥフニス】、それと特殊召喚された【ティアラメンツ・レイノハート】の三体で融合召喚!【ティアラメンツ・カレイドハート】!」
―――海斗やキトカロスにとっては不倶戴天の仇である【カレイドハート】。―――当然ながら今はデュエル中かつ、ソリッドビジョンなので何の叛意も示さないが。
「もってけ!【壱世界=ペルレイノ】の効果発動!フィールド・墓地の【ティアラメンツ】モンスターがデッキに戻ったとき、相手フィールド上のモンスター一体を破壊できる!【青眼の亜白竜】を粉砕!」
波にさらわれて流されていく【青眼の亜白竜】。
これで残るモンスターは【ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン】一体のみとなった。
「…さらに手札の【ヴィサス=スタフロスト】の効果をこのカードとは属性・種族が違うカード一枚―――【ティアラメンツ。シェイレーン】を対象にして発動!【ヴィサス=スタフロスト】を特殊召喚して【ティアラメンツ・シェイレーン】を破壊!―――この破壊は【ヴィサス=スタフロスト】の効果によるもののため、【ティアラメンツ・シェイレーン】の効果は発動します!」
「―――自壊もありなのか!?」
ティアラメンツは自分のカードの効果ででも「カードの効果でさえ墓地に送られれば」効果は起動する。当然それは、フィールドから墓地に送られたときでも同じだ。
「【沼地の魔神王】と、【ティアラメンツ・シェイレーン】をデッキに戻す!【沼地の魔神王】は【ティアラメンツ・キトカロス】の代わりとする!」
墓地に存在する【沼地の魔神王】は融合素材の代用となれるモンスター。
どれだけ条件が厳しくてもこのカードがあればその内の一体は肩代わりできる。―――名称指定されている素材だけだが。
「壱世界の真なる主よ、清らかなる意思をもって我らが敵を退けろ!融合召喚!―――【ティアラメンツ・ルルカロス】!」
剣を持ち、世界の主たる意志の強さをその双眸に宿したキトカロス―――ルルカロスがフィールドのに登場する。彼女は攻撃力3000に加えて壱ターンに一度、モンスターの特殊召喚を行う効果を無効にしたうえで、自身のモンスター一体を墓地に送る効果、さらに効果で墓地に送られたときに一度だけ特殊召喚できる効果を持つ。
「…正真正銘、【ティアラメンツ・ルルカロス】は俺の切り札です。…墓地の【剣神官ムドラ】の効果発動。この角を除外して墓地のカードを三枚…【
エースモンスターの召喚に加えて、デッキのリソースの回復。
これで海斗がこのターンに為すべきことは全部為した。
攻撃力が500上がったルルカロスと、カレイドハート。そしてキメラフレシアが居ればこのターンで簡単に決着がつく。
「バトル!【
「何ィィィィッ!?」
先生 LP8000→7000
まずはダイレクトアタックを通すのに邪魔な【ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン】を破壊する。
こうすることで相手の場のモンスターを無くす。
もう、相手を守るカードは一枚もない。
「まずは【ティアラメンツ・カレイドハート】でダイレクトアタック!」
先生 LP7000→3500
海斗の指示と共にカレイドハートは無数の触手を相手に向ける。
当然これを防ぐ手立てはないので、無慈悲に相手のライフはけずれていく。
「終わりだ!【ティアラメンツ・ルルカロス】で、とどめェッ!」
海斗の掛け声と同時にルルカロスは泳ぐように、素早く相手の懐に潜り込む。
手にした剣を腰だめに構え一気に横に薙いだ。
「ぜぇあぁあぁぁッ!」
裂帛の気合と共に一閃した剣戟は先生の残りのライフを容赦なく削り取る。
―――こうして高校生活初めてのデュエルは「後攻ワンキル」というすさまじい結果で幕を閉じた。
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―――これはひどい。」
霊使は何度映像を見返してもその言葉しか出てこなかった。
この相手に勝ちたかったら特殊召喚を完全にロックするしかない。
これでは【崇高なる宣告者】の効果も打ち切りになりそうな予感がする。
「カードパワーが数年先なんだって!」
「…そう、ですかね?」
抱いている感想はそれだけだ。明らかに色々とバグっている。一体どうやったら後攻壱ターン目であれだけ展開できるのだろうか。
墓地肥やし全般と相性がいい。―――だが、まさかここまでとは誰も思わないだろう。
「そもそも墓地肥やしと強力な効果をひとまとめにしちゃいけないって征竜で学んだだろ!教えはどうなってんだ教えは!」
「…そんなこと言われても…。」
かつて存在したとされる【征竜】―――全てのカードが一度は禁止にされたとんでもないカテゴリだ。
かつてのソレを思わせる―――いや、それ以上のカードパワーに戦慄している。「猿」に匹敵するほどのカードパワーをカテゴリ内の全てが持っているといっても過言ではない。
普通ならば、そんな相手とデュエルをするのはおかしいのだろう。
「―――おい、デュエルしろよ。」
だが、霊使は底なしのデュエル馬鹿であった。
強い相手と心躍るようなデュエルをしたくなるお年頃なのだ。
(―――やれやれ。付き合うこっちの身になってよ。)
(嫌だったか、ウィン?)
(まさか。むしろやってやろうって気になったよ!)
(さすが、俺の相棒だ!)
ウィンも心を通じてやる気を見せてくれる。
ならばやるしかないだろう。
「行くぜ、海斗!―――デュエル!」
数分後、霊使は思い切り悲鳴を上げることになるのだが、それはまた別の話だ。
登場人物紹介
・海斗
最強で最凶。令和の征竜を従える作中最強。
こういうふうにティアラメンツをまともに動かすと「こいつだけで良くね?」となります。
彼は俗にいうBLACK RXです。
・霊使
規制されても環境に居座り続けるテーマ相手に勝てるわけないだろ!
いい加減にしろ!
これはひどい…。
というわけで海斗初デュエル回でした。
水樹君のデッキ強化
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