「相棒」   作:ダンちゃん1号

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制裁は終わらない

 

真木は霊使から、相談を受けていた。

霊使曰く「自分を崇めている宗教組織があるらしい」とのことだ。

咲姫から送られてきた写真を見せる事で真木は頭を抱えそうになる。

 

「…冗談だろう?なあ…冗談だと言ってくれ。」

「…夢ならどれほど良かったんでしょうね。…現実なんですよ、逃げようのない…。しかも勝手に、人の許可も得ず!」

「いや、許可があったらいいというわけでは無いだろうッ!」

「それもそうですね。…で、どうしましょう。私としてはこの組織をぶっ潰したいのですが。」

 

だろうな、と真木は肯定でも無く否定でもない言葉を放った。

潰したいと願う―――それは紛れもない霊使の本心だろう。誰だって、勝手に崇められては良い気分にはならない。

それがなんか怪しげなカルト宗教の教祖であるというのならばなおさらだ。

 

「…だが待て。待ってくれ。…お前はまた「アイツら」を頼るつもりか?」

「…いいえ。克喜も、流星も、水樹も、奈楽も、結も、咲姫も。…皆新しい生活を送っているんです。まさか改めて死地に誘うわけにはいかないでしょう。…それに颯人の事もありますし…。」

「…分かって、いるならいい。」

 

だが、霊使はそれを良しとはしなかった。

霊使のかつての仲間たちとは多くはないがそれなりに連絡を取っている。

それは新しい学年となった霊使達の生活が始まって一月経とうとしているいまこのときでさえ、だ。

だからこそ、霊使は彼らを巻き込むわけにはいかなかった。

―――すでに首を突っ込んでしまった咲姫はともかく、それ以外の誰もが新しい生活を送っている。

これは霊使だけの因縁だ。それにどうして他の友人を巻き込むことが出来ようか。

 

「…これは、俺が一人でやらなくちゃいけない事なんです。」

 

だからこれは霊使いがやらなければならない事だ。

自分の名を借りて好き勝手やっている連中が居るのであれば、自分の力で制圧する。

 

「俺の名を騙って好き勝手やろうとはとんだ連中がいたものですから。―――ただ懲らしめるだけじゃ飽き足らない。二度と社会で生活できない様にしないと…。」

「…一旦落ち着け。お前の気分は分からんでもないが…、それに相手は組織一つ…。」

 

と、言葉にしかけて真木は言葉を切る。

そういえば、霊使達は四道(悪の組織)を一回潰しているんだった、と。

だが、あれはあくまで仲間たちがいたからこそできた芸当だ。

真木本人としてはまだ守るべき子供である霊使達を二度も死地に送り込むなんて言う馬鹿な真似は出来ない。

 

「………お前は。」

「止めに行くなというのなら聞きませんよ。…もう、助けられたはずの誰かが、後手に回って死ぬ、だなんてことは起こしたくないですから。…彼女の為にも。」

 

だが、どうあっても霊使の意志は固い。

―――霊使はそもそもこういう理不尽を許さない性質の人間だ。自分の中の善悪に拠っている所もあるが、それでもやはり彼は英雄だった。

だから、彼の意志は固いのだと、真木はあらためて思い知る。

 

「…なら一つ条件がある。…私も同行する。」

「…え!?」

「なんならそのための口実も作ろうじゃないか。…お前は誰かが見ていないと無茶しそうで怖いからな。」

「…感謝します。」

 

なら、せめて、近くで見守る。

何でかつての仲間を巻き込まないかを痛いほどにわかるから。自分の名を借りて好き勝手やられるのはあまり気分のいいものではないから。それに何より霊使に止まる気がないから。だから彼を止める事は出来ないのは確かだ。

 

「…本当に死んでくれるなよ。」

「死にませんよ。…そんなことしたらあっちで颯人に殺されますから。」

「…そうか。」

 

風見颯人の一件は霊使の心に暗い影を落としている。その影を拭い去ることは誰にもできない。

少なくとも、その影を拭うには自分では足りないのは確かだ。

もし、彼の心の影を拭い去る人物が居るのなら。それはきっと、もっと霊使に近しい人間だから。

 

「…ふむ。」

 

―――果たして二人だけで足りるのか。

霊使が得た情報では、それなりに大きい組織であるらしい。だから、どうするべきか相談に来たのだろう。

独りが二人になったというのは大きい。―――それでも足りなかったらどうすればいいのか・

そんな思考の堂々巡りに陥った真木は、一つの可能性にたどり着く。

 

「…そういえば最近お前は屋上に言っていないらしいな?」

「ええ。海斗と桜庭さんがあっているらしいので。…彼女は俺の事を嫌ってますし。」

「なるほど…。丁度いい。――――。」

「…は…?」

 

真木の言葉に霊使は衝撃を、とてつもない衝撃を受けたのだった。

 

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あれからまだ一日しかたっていないというのに海斗と鈴花はすっかり昼休みに屋上で会う仲となっていた。

だが、男女の仲だとかそういった認識は二人の間には全くなく、「ただの友人」という関係と呼べるものだ。

ちなみにそうならない理由は「人目に付かないから」という理由で実の所鈴花に嫉妬したキトカロスが、海斗の腕にそのたわわな胸を押し付けているからだ。俗にいう「アピール」―――海斗は渡さないという意思表示―――である。

そんな状態で屋上で出会ったものだから彼女が居るのも、なぜか宙に浮いているのも全く気にしないで受け入れた。鈴花もまた「精霊(そういうもの)」の存在をかの事件で知ったからである。

 

「…種を超えた恋愛っていいよね。」

「水かけて頭冷やした方が!?」

「五月の屋上だぞ!?もっと、こう、爽やかな感じで良いじゃん?」

 

今の気温は30度。

一応言っておくが、今は五月一日―――暦の上では一応夏ではあるのだが、普通に考えればもう少し気温が低くてもいいはずだ。

だが何が原因か知らないが、今日は快晴、気温はあほみたいに上昇して30度の大台を突破。

 

「あっついです…。暑くて溶けそうで溶けそうで…。私の場合は干からびるってのが正解なんですかね…?」

「違う、そうじゃない。…本題。…終わってないんだって?」

「…うん、全く。生ごみ入れられるのは無くなったけど…前も校舎裏にゴミ捨てに行ったら空から水入りバケツが降って来たし…授業聞いているときに窓の外から野球ボールが飛んできたりもしたっけ。今日一日だけで何回死にかけているのやら。」

「…窓際の席なんだよね?」

「うん。」

 

野球ボールはただの偶然かもしれない。だが、確実に水入りバケツには明確な殺意があることは確かなのだ。

絶対に同じような事が二度も三度も起きていればきっとこの世界に「偶然」という言葉は存在しないだろう。少なくとも野球ボールが飛んできたのはただの一回きりだ。だが、それ以外―――人目に付かないところでは大体頭上から何かものが降ってきていた。

そのほとんどが水入りバケツだったが、たまに石が降ってきたりもした。

今まで運が良かったのか一発も当たることは無かったが、それでもこれは明らかにおかしいと言える。

それこそ「まだ終わっていない」とでも主張しているような―――。

 

「…多分、別の誰かが私を狙ってる…。」

「…なんで君は同じ学校の生徒に命を狙われているんだ…?」

「…本当に同じ学校の生徒なのかな…?」

 

―――もっと深いところに根っこがあるようなそんな嫌な感覚。

全く持って別の何かが、自分の近くで蠢いているような感覚―――とでもいえば良いだろうか。

 

(そういえば―――)

 

あの時ナイフを突きつけて来た女子生徒の声はあの動画の中にはなかった。

そこから考えるのであれば―――答えは一つ。

 

「この学校の内部か外部か知らないけど…確実に何かが、というか誰かが関わっているんじゃないかな。」

「そうとしか考えられない。…霊使君なら何か知ってそうだけど。」

「…少なくとも、これを知らせるべきじゃないんじゃ…。首を突っ込んできそうな気がする。」

「…それはそうかもしれない。でも―――。」

 

海斗は次の言葉を放とうとする。

その前に、ある人物の声が海斗の声を引き継ぐように放たれる。

 

「…あー…。桜庭さんに、海斗…?」

「一番いやなタイミングで…。」

「…なんでこのタイミングで来るの!?」

「おーう、理不尽…。」

 

それは二人にとっては一番、この場に来てほしくない人物―――霊使だった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「…えー!?」

「ということで、全く持って知らないところで勝手にそんな組織が作られていて、勝手に崇め奉られ、咲姫がいつの間にか潜入していた。…訳が分からない?大丈夫だ、俺が一番ついていけていない。」

 

霊使は事のあらましを二人に説明した。

そして、鈴花がレイの宗教に狙われる理由も多分自分だと話した。

 

「…伝えるのが遅くなって、誠に申し訳ない…。」

「むしろ伝えてくれない方が良かったかなー!?これから私咲姫とどんな顔して会えばいいの!?あの子結構なブラコンなのに…!」

「…え!?そうなの!?」

 

結果としては鈴花からは伝えてくれなかった方が良かったと後悔される程度には重い情報を伝えることになった締まった。だが、彼女が反応したのが「霊使と咲姫の関係性」であったのには流石の霊使も驚いたが。

 

「とにかく、あな―――霊使、君の妹である咲姫が君を勝手に祭り上げている宗教組織に潜入して?私が狙われているという情報をぶっこ抜いてきた?」

「うん。…思い当たる節が?」

「…はい。めちゃくちゃあります…。」

 

なるほど、やっぱりそうだったのか、と一人で勝手に納得している鈴花。

その様子を罰が悪そうにして眺めている霊使と、なんで鈴花に情報が伝わっていないかを悟った海斗。

 

「…君を避けていなければもう少し早くに気付けたのかな…。」

「かもしれない。…でももうごちゃごちゃ言っていてもどうにもならない。」

 

だが、二人の関係性はとりあえず横に置いておくべきだ。

今は霊使と鈴花、それに海斗の三人には共通の目的がある。

―――戦いに巻き込みたくはなかったんだがなぁ、と霊使は内心思うが今回に限ってはそうもいっていられない状況だ。だって、もう既に鈴花の命を狙う輩が大量に出現しているのだから。

 

「……く、うぅ~…!巻き込みたくはないけど…!」

「行くなって言われても俺達は行くよ。」

「うん。行く。言って誰に手を出したのか思い知らせる。」

「この子達殺意高いんですけど!?」

 

もうこんなにやる気ならばついてくるなと言ったところで無駄だろう。

こうなったら一緒に行動したほうが良いのは火を見るよりも明らかだ。目の届かないところで勝手に行動されて守れなかったというよりは多少はまともな結果になる。

 

「じゃあ、潰しに行くか?俺と一緒に。」

「いいよ。ルルカロスの剣の錆にしてあげなきゃ…。」

「私は自分が狙われなくなるならそれでいいよ。…だから行くね。」

「アグレッシブゥ…。」

 

こうして、各々の目的が偶然にも一致した結果、三人は仲良くカルト組織を潰すことになったのだった。

 

 




登場人物紹介

・霊使
物騒その①

・真木
物騒その②

・鈴花
物騒その③

・海斗
物騒その④

物騒なお考えなひとたちが集まりました。
カルト組織逃げて!超逃げて!!

水樹君のデッキ強化

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