「相棒」   作:ダンちゃん1号

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個人的なつながり

 

霊使とウィンは誰よりも早く、教団本部の前に来ていた。

咲姫からの情報でそこが何処なのかを簡単に知ることができた。もとより向こうは隠す気もなかったらしいが。

 

「ここが…。」

「多分例の教団本部…。」

 

外見は至って普通の廃校の校舎。

だが、窓という窓には暗幕が貼ってあり、中の様子をうかがう事は出来ない。

 

「…こんな形でここに戻ってくるなんてな。」

 

―――ここはかつて霊使達が通っていた学校だ。

霊使の自宅は霊使が普通に使用しているのでここを拠点としたのだろう。

この学校は嘗ての仲間との思い出の場所だ。ここは他の誰にも踏み入ってほしくないところだったし、汚されたくもなかった。

 

「落ち着いてる?」

「…ああ。大丈夫だ…と思う。」

 

霊使の隣にはウィンが居る。霊使の心のざわめきを察してかどうかは知らないが、ウィンが霊使の右手に手を添えてくれた。

 

「大丈夫…大丈夫だ。」

 

ウィンの暖かな手が霊使の心に余裕を取り戻させる。

まだ怒りを爆発させる程度の事ではない。―――ここで爆発させたところで大した被害は与えられない。

 

「…さて、そろそろ―――。」

 

校門前に黒塗りのセダンが止まる。

そこから、鈴花や海斗、そして真木が姿を現した。

 

「もしかして霊使君ってロリコン?」

「おい海斗。それはどういう意味だ?」

「…え…本当に?ポリスメンの出張サービス、いる?」

「『送迎』されないなら。」

 

二人には既にウィンの事は話してある。人手が欲しいし、何より彼女はデュエルの腕のも一級品だ。霊使が全力を出さない限りはウィンの手助け無しで制圧できることだろう。

ただ、彼女かつ「デュエルモンスターズの精霊」であるので、二人はウィンの見た目は知らなかったようだ。おかげで色々と弄られる羽目になってしまった。

 

「やけに早かったな二人とも。…ウィン、霊使。これから私は「忘れ物」を取りに戻る。割と量が多いからな。皆に手伝ってもらわないと運べだせそうにない。」

「もしここを根城にしている奴らが居たら?」

「私達は正式な許可をもらっているが、大体は不法侵入者だろう。…拘束して、そのままポリスメンの送迎サービスに連れて行ってもらえ。」

「…先生?」

 

多少悪乗りもあったが―――。

真木の作戦通りに物事は進められそうだった―――。

 

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この作戦決行日の前々日―――霊使が致し方なく、海斗と論化を巻き込むことにした日の放課後。いつぞやの如く、三人は真木に呼び出される。その目的は言うまでもなく「どういう風にして例の教団を潰すか」だ。

咲姫が真木に報告していたらしく、教団の本拠地もしっかりと把握できている。

霊使は迷いなく、乗り込んで制圧――かつての自分と同じ選択を取ろうとした。

 

「え?乗り込んで制圧―――じゃダメなんですか?」

「…当たり前だ。前はお前らの功績がでかすぎてかき消されていたがな。…本来は他人が管理する建造物に侵入するのは「建造物侵入罪」に該当する。…つまりお前は見逃されていたが前科一犯しているんだ。」

「…な、なんだってー!」

 

―――あの時は深く考えなかったが今思い返してい見れば確かに犯罪行為に当たる。

そこのところを警察に深く追及されなくてよかった、と今になって思う。多分、お上が必死になって火消しに走ったか、「建造物侵入」なんてものは無かったかのどちらかになっている事だろう。

 

過程はどうであれ、「前科一犯」という十字架を背負う事は一切なかったので公式では霊使は犯罪をしていない綺麗な人間であるといえた。

 

「ああ、そういえば、だ。結局前任の高校に立ち入ることはあのあと一度もなかったんだ。あの時の生徒の情報は…適切な方法で管理していたんだが…。」

「…あ、そうか。そもそも学校に行っていないからまだ残ったままなんですね。」

「ああ。…つまり私には「忘れ物を取りに行く」という立派な理由がある。…許可をもらってこよう。」

「で、許可が取れ次第…。」

「ああ。乗り込むぞ。教室の隅をつつくように書類を探せ。」

 

つまりは合法的に住居に侵入する理由を作ったという事だ。

これにより、霊使達は一時的とはいえ合法的に活動することが可能となる。

―――では、「忘れ物」を取りに行ったときに変なカルト宗教が強襲してきたらどうなるのか。

合法的に、ぶちのめせる。

霊使達は許可を取っているので、事不法に建造物に侵入したという罪に問われることは無い。

 

「―――忘れ物探しという大前提がある事は忘れるなよ?」

「…ええ。…あ、じゃあ人でも多いほうが良いですよね?ウィンが開いてるか聞いておきましょう。」

「…そうか。ありがたい。―――最もあいつはお前の誘いなら断らないだろう。…お前の評価に関する事なら、なおさらな。…渡瀬、桜庭。伝手があったらよろしく頼む。私も少し「個人的な」伝手を頼ってみるとしよう。」

 

人手が欲しいのはどこもかしこも変わらないようだ。

とにかく、場所は分かったし、乗り込む準備もできた。後はただその時を待つだけである。

 

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そして、作戦決行日と相成った訳だ。

霊使、真木、海斗、鈴花の四人は廃校の校門前に立つ。

だが、まだ突入するわけでは無い。―――ただ、真木の「個人的な伝手」がまだここにきていないらしく、その人物の到着を待つことになった。

 

「…結局、個人的な伝手っていったい…。」

「ああ…お前にとっては余り嬉しくない相手だろうが…どうやらそいつも巻き込まれたようでな。」

「…あっ。」

「ほら、そうこう言っているうちに来たぞ。」

 

真木が指さす先、そこには霊使には見覚えのある顔があった。

霊使と似たような背丈に、髪を染めたのか少し明るい茶色の髪を短く切りそろえ、快活そうな笑みを浮かべる男―――霊使の大親友である九条克喜が、そこに立っていた。

 

「克喜ィ!?」

「霊使だなぁ、霊使!」

 

久しぶりに対面する霊使と克喜の二人。

相変わらず霊使はこういう事に首を突っ込んでんのな、と苦笑しながらも霊使のトラブルメーカーぶりを思い出し、苦笑する克喜。

克喜が今まで遭遇してきた事件の中心には大体この男がいた。違うのはキスキル達が起こした騒動位ではないだろうか。

 

(…いや、アイツ結局中心に踏み込んでったな…。)

 

結局の所。

誰かを傷つけるような事件に首を突っ込むことが多かった霊使。彼はきっと誰かが傷つくのが許せない。だから事件に首を突っ込んでしまう。それを正義と言えるのかは分からない。

ただ、まあ。

そんな霊使だからこそ、克喜はいつまでも友人として傍に居てやりたいと思っていたわけだが。

 

(―――大丈夫そう、だな。)

 

今の霊使は大丈夫そうだ。「英雄」だなんて色眼鏡では見られていないしそこに居る人として見てくれている―――とは思う。

 

「さて、ハイネ。…梱包よろしく。」

「まあ、ですよね。」

 

今回の目的は学校に置き忘れた書類の回収だと聞いている。

もし違法な滞在者が居ればボコボコにして簀巻きにでもすればいいだろう。ハイネが大活躍する時間だ。

 

「…克喜、皆呆けてますよ。」

「…あ。…そうだったな。霊使の親友、九条克喜だ。使用デッキは『ウィッチクラフト』だな。二人ともよろしく頼む。」

「…あ、ども…。えー…と桜庭鈴花です。デッキはちょっと言えない…かな。…ん?」

「渡瀬海斗。使用デッキは【ティアラメンツ】。…えーと…よろしく?…あれ?九条克喜…?その名前…。」

 

鈴花と海斗。それなりに霊使とは親しいのだろうか。

それとも単純に真木に巻き込まれただけなのだろうか。克喜としては、頭数が増えるだけでありがたいのだが。

 

(…それにしても奴らの本拠地がこことは。嫌な予感ほどよく当たるもんだなぁ。)

 

それ以上に克喜の中では不快感が蠢いていた。

仲間たちとの思い出の地を汚されたという怒り、新しい友人を苦しめる元凶への怒り。何よりも新しい生活を始めている霊使を貶めるかのような行為への怒り―――。今の克喜には色々な怒りが混ざっている。

結果克喜の内面には激情の炎が燃えている。それくらいには、許すつもりはない。

 

「じゃあ、行く―――」

「世界チャンピオンが何故ここにぃ!?」

「サイン!サインください!」

「あーもう滅茶苦茶だよ!シリアスな流れだったよね!?」

 

が、そんな怒りの炎も簡単にかき消されるくらいの声が克喜の耳に入る。

やはり、案の定、その話題が出てしまった。

確かに今年の二月―――霊使が退院する直前の世界大会で優勝したのだが、正直に言ってそこまで嬉しいものではなかった。

 

(なんか…なぁ。)

 

強い相手も多かったが物凄くあっさりしていた。なんというか、不利盤面になった瞬間にサレンダーする人が多いというか。

最後までやり切ってやろうという覇気が無かったのは確かだ。

 

「え!?おま…え!?おまっ…ええ!?」

「むしろなんでお前は知らないんだよ!」

「知るかよ!入院してて―――なんか克喜来ないなぁ、とは思っていたけれども!」

「世界大会に出てたからだよ!」

「そうなのか!?」

「もう色々と台無しだ!今に始まったことじゃないけど!」

 

余りにも緩い空気が周囲を支配する。

海斗と鈴花のサイン要求に始まり、霊使がそれを知らなかったという事実も合わさって、もう突入どうこう言う話でもテンションでもなくなってしまった。

 

「…おい、いつまでもふざけてないで行くぞ。」

「…うす…。」

 

真木に注意される形でようやく気持ちが落ち着いた克喜。

これでようやく本来の役目を遂げる事が出来そうだった。

 

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「暗い埃まみれ臭い辛い」

「なんか嗅いだことの無い匂いが…。」

「っぺぇ!?なぁんだここ!?」

「まるで異世界だな…。」

「これは酷い。」

 

五者五様の反応を示す。それだけ変わり果てたこの校舎の中にショックを隠し切れないという事なのか。

真木も変わり果てたかつての赴任校の今のありさまに言葉も出ない。

暗幕が張られ光が入ってこず、故にじめじめとして不快だ。しかもそこかしこからつんとした匂いが漂ってくる。どうやら知らない間に相当様変わりしていたようだ。かつて通っていた生徒たちはよりショックな事だろう。

 

「…行くぞ。桜庭と渡瀬は私と共に職員室に。四遊と九条は各教室を丁寧に回ってくれ。書類の取り残しが無いようにな。」

「了解しました。」

 

霊使と克喜はこの学校に通っていた。

その分だけ、自由に動けるというアドバンテージがある。

 

「…さて、不法滞在者には容赦するなよ。」

「…「どうしようもなかった人」が居たら?」

「…それくらいは自分で判断しろ。」

 

そうして五人は別々の方向に向かって歩き出す。

それはこの薄暗い校舎での死闘の始まりを告げるものであった。

 




登場人物紹介

・霊使
再会に喜ぶ
シリアス?奴さん死んだよ。こいつが殺すんだ。

・克喜
世界チャンプになっていた。
再会に喜ぶ

・鈴花
チャンプに会って最高潮

・海斗
チャンプに会って最高潮

・真木
「なんだこいつら…」

何かアーゼウスのプラモが出るらしいですね。
あと、霊使いのフィギュアも予約が始まりましたね。
楽しみですね。…金がなくて買えないけど。
次回もお楽しみに

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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