「相棒」   作:ダンちゃん1号

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次なんてない

 

犬牙と名乗る男がデュエルを仕掛けてきた。

海斗にとってそれは受けるメリットさえ見当たらないような代物であったが、受けなければ生きては帰れない。

負傷者二人を背負って撤退するよりかは、ここで敵を打ち倒した方が幾分かマシだ。

そう言った判断もあって、海斗はこのデュエルを受けることにしたのだ。

 

「俺のターン!…俺は手札から【アマゾネス王女】を召喚。…効果発動!」

(…なるほど、【アマゾネス】…。)

 

【アマゾネス王女】―――戦士族の集団の【アマゾネス】におけるキーカード。

このカードによって【アマゾネス】魔法・罠カード一枚をサーチ氏、さらなる展開につなげるのが【アマゾネス】デッキの主流だったはずだ。

だが。

【ティアラメンツ】において無効化手段を用意せずに能力を発動する事、その行為は致命傷にもなりうる。

 

「…フィールドのモンスターの効果が発動したため【ティアラメンツ・ハゥフニス】の効果発動。このカードを特殊召喚してデッキの上から三枚を墓地に…。【ティアラメンツ・レイノハート】、【壱世壊に奏でる哀唱(ティアラメンツ・サリーク)】、【古衛兵アギド】の三枚を墓地へ。」

「…【アマゾネス王女】の効果でデッキから【アマゾネスの叫声】を手札に。」

 

それが、少しダウナーな彼女―――【ティアラメンツ・ハゥフニス】の存在だ。彼女は、相手フィールド上のモンスターが効果を発動すれば特殊召喚でき、更に墓地も肥やすことができる。

当然、これはハゥフニス召喚の為の「コスト」ではなく、「モンスター効果」である為、各ティアラメンツたちが持つ融合効果を相手ターン中に使用できるのだ。

 

「…今墓地に送られた【レイノハート】、【壱世壊に奏でる哀唱】、【古衛兵アギド】の三枚の効果を墓地に落ちた順にチェーンして発動。互いのデッキの上から5枚を墓地に送り、【壱世壊に奏でる哀唱】の効果で【ティアラメンツ・メイルゥ】を手札に。更に【ティアラメンツ・レイノハート】を墓地より特殊召喚して【メイルゥ】をそのまま墓地へ。まずは【メイルゥ】の効果発動…メイルゥの効果にチェーンして墓地に送られた【古尖兵ケルベク】の効果発動!更に互いのデッキの上から五枚を墓地へ!さらに墓地に送られた【ティアラメンツ・メイルゥ】と場の【レイノハート】で【ティアラメンツ・キトカロス】を融合召喚!…自身の効果で特殊召喚した【レイノハート】は場から離れた場合に除外される…けど。さらに【キトカロス】の融合召喚成功時の効果と墓地に送られた【ハゥフニス】、【ティアラメンツ・シェイレーン】、【壱世壊に澄み渡る残響(ティアラメンツ・クライム)】、【剣神官ムドラ】の効果発動!まずは【剣神官ムドラ】を除外し【古尖兵ケルベク】、【古衛兵アギド】、【ティアラメンツ・メイルゥ】をデッキに戻す。次に【壱世壊に澄み渡る残響】の効果で自身の効果で除外された【レイノハート】を手札に。更に、【シェイレーン】とフィールドの【キトカロス】をデッキの下に戻して【捕食植物ドラゴスタペリア】を融合召喚!最後に墓地の【ハゥフニス】と墓地の【沼地の魔神王】をデッキの下に戻して【ティアラメンツ・ルルカロス】を融合召喚!!」

「――――????」

 

犬牙は手札に妨害を抱えていなかったのかどうかは知らないが、自分のターン中に弐体の融合モンスターが並んだのを見て理解が及んでいないような顔をしている。

普通、デュエルモンスターズは相手のターンにやれることは少ない。さらにそれが相手の先攻一ターン目なら手札から妨害札を使用するという事くらいしかやることがない。

だからこそ、理解が及んでいないのだ。だからこそ、理解できていないのだ。本来ならやれることが少ない筈の先攻一ターン目にこんな形で召喚されまくったのだから。

 

「は?な…何が起きた…?」

「何って…。俺はただ効果を使っただけさ。効果が連鎖して酷いことになっているけど…知ったことではないね。まさかひっくり返せないから許してください…なんて言わないよね?」

 

一方の海斗からすれば、「手札誘発」カードがないと高を括った時点で犬牙はこうなることは分かっていた。相手の手札全てに妨害の可能性がある、と考えた方がいい。代表的なものだけでも【灰流うらら】や、【増殖するG】、【無限泡影】に【屋敷わらし】、【原始生命態ニビル】に加えて【エフェクト・ヴェーラー】といったカードがある。

 

「…チィ!俺は手札から速攻魔法【アマゾネスの叫声】発動!デッキから―――」

「【灰流うらら】で。」

「―――!!」

「手札に持っていないの?【墓穴の指名者】。」

 

一応それらに対抗できるカードも無きにしも非ずだが―――その種類は非常に少ない。

だが、その数種類はほぼ確実にデッキに組み込む必要がある。特に海斗が挙げた【墓穴の指名者】は手札誘発カードの対抗策として有名だ。

―――最も海斗の【ティアラメンツ】の場合はそれらの妨害カードもデッキの出力を下げる原因となりうるせいで妨害はほぼほぼ【ティアラメンツ】魔法・罠に頼っているのだが。

 

「…う…く…!うぅぅ…!た、ターンエンド…!」

 

犬牙 LP8000 手札三枚

モンスターゾーン アマゾネス女王

 

海斗 LP8000 手札四枚

EXモンスターゾーン ティアラメンツ・ルルカロス

モンスターゾーン  ティアラメンツ・ハゥフニス

          捕食植物ドラゴスタペリア

 

犬牙は自身のターン中にモンスターを散々展開されたことがショックでたまらないようだ。伏せカードがあるのかどうかさえちらつかせずに、ターンを終了する。

 

「イキり散らかすからそうなるんだ。…ドロー。フィールド魔法【壱世壊=ペルレイノ】発動。…効果でデッキから【ティアラメンツ・シェイレーン】を手札に。そのまま【シェイレーン】を特殊召喚して、手札から【宿神像ケルドウ】を墓地に送る。…その後さらにデッキの上から三枚を墓地に。墓地に送られた【ケルドウ】と【シェイレーン】の効果を発動。まずは墓地の二枚目の【沼地の魔神王】と【シェイレーン】、【ハゥフニス】で【ティアラメンツ・カレイドハート】を召喚。…次に【ケルドウ】の効果で墓地の【ブレイクスルー・スキル】、【壱世壊に奏でる哀唱】、【壱世壊に軋む爪音】をデッキに戻す。…さらに手札から【絶海のマーレ】を通常召喚。効果で【ティアラメンツ・メイルゥ】を墓地に送って、そのまま【メイルゥ】の効果発動。このカードと、墓地の【捕食植物セラセニアント】をデッキに戻して【捕食植物キメラフレシア】を融合召喚!」

 

海斗のフィールド上には四体の融合モンスターが並ぶ。その一体一体全てがエース級の活躍をするモンスター達だ。そんなモンスター達に詰められているせいなのか、アマゾネス王女は歯をガチガチ鳴らしている。

映像であるはずの彼女は確かに目の前に迫る死の恐怖を感じていたのだろう。

斬り殺されるか、絞め殺されるか、噛み殺されるか、溶かし殺されるか。

どれを選んでもまともな末路は辿らない。せめて苦しくない死に方で死にたいと懇願しているようにも見えた。

 

「…墓地の【ティアラメンツ】がデッキに戻ったことにより【壱世壊=ペルレイノ】の効果発動。【アマゾネス王女】を破壊!」

「…うぅ…!」

 

そんなアマゾネス王女は波にさらわれることで破壊された。斬られるやかみ砕かれる、絞め殺されるに溶かされるよりかはまともだろうが―――どのみち死ぬことには変わりないというわけだ。

最も肝心のアマゾネス王女のソリッドビジョンは安心したような顔で波に流されていったところから、胃考えうる限り最も理想的な退場の仕方をしたようだった。

 

「さあ、トイレは済ませた?英雄にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて弐度とデュエルしたくなくなる準備はOK?―――バトルフェイズ!【捕食植物ドラゴスタペリア】でダイレクトアタック!」

「まだだ!直接攻撃時に【バトルフェーダー】の効果発動―――!このカードを特殊召喚し、このバトルフェイズを終了させる!次のターンだ!次のターンで…!」

 

しかしどうやら犬牙は最後の足掻きとして手札に【バトルフェーダー】を持っていた。

犬牙はこのターンをこのカードでしのぎ、次のターンに一縷の望みを賭けるつもりなのだろう。

それが犬牙の絶望をより煽ることになろうとは知らずに。

 

「…次なんて無いよ。今、ここで確実にお前を斃す…!モンスターの特殊召喚を含む効果が発動したため【ティアラメンツ・ルルカロス】の効果発動。【ティアラメンツ・ルルカロス】を墓地に送りその効果を無効にして破壊。融合召喚した【ルルカロス】が効果で墓地に送られた場合、このカードを特殊召喚できる。舞い戻れ、【ティアラメンツ・ルルカロス】…!バトル続行!【ドラゴスタペリア】でダイレクトアタック!続けて【カレイドハート】でダイレクトアタック!」

 

海斗の場の融合モンスター全ては【ペルレイノ】の効果で攻撃力が500上昇している。3500と3200のダメージを受けて犬牙のライフはもうわずかしかない。

到底次に控えている海斗の切り札の攻撃を耐えられるライフではないのだ。

 

「終わりだ…【ティアラメンツ・ルルカロス】で…とどめェっ!」

「うわぁあぁぁああぁぁ!?」

 

いつも通りに、情け容赦ない後攻一ターンキル。

それは調子に乗っていた犬の牙をへし折るには十分な恐怖と、挫折を与えるのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「く…うぐっ…」

(渡瀬は―――ッ!)

 

歪む視界に顔を歪めながらも真木は何とか起き上がろうとする。それは先生として生徒を守るため、そしてかつての過ちを犯さないためであった。

どれだけデュエルが強くても、大人数で暴漢に襲われてはひとたまりもない。それは簡単に蹴り飛ばされた自分にも言える事だ。

―――が、真木の目に飛び込んできたのは予想外の光景だった

 

「く、来るなぁあぁぁぁ!?」

「かーんぜんに錯乱していらっしゃる。…僕は君達みたいに嬲る趣味なんてものは無いんだけどなぁ。」

 

自身を蹴り飛ばしたであろう男が渡瀬に完全に怯え切っているのだ。周囲にデュエルモンスターズのカードが散らかっているあたり、海斗は男の心を懇切丁寧に、一片の反抗心も残さずにすり潰したらしい。

 

「…一体どんなデュエルだったというんだ…?」

 

その疑問に答えられる人物はもうこの場には居なかった。海斗は至って「いつも通り」のデュエルをしただけなのだろうから。

―――興味がないと言ったらうそになるのだが。

とにかく、今はそれを知る術はないという事だ。

これは余談なのだが、後に真木は海斗にその時のログを見せられて、こう漏らしたという。

 

「あれは虐殺を超えた何かだった」、と。




登場人物紹介

・海斗
最凶再び。
なんなんすかね、こいつ…。

・犬牙
フルボッコだドン!

・真木
「これは酷い」


というわけでティアラメンツによる蹂躙回でした。
海斗君はもうあれだ!デウスエクスマキナだ、コレ!
というわけで次回もお楽しみに

水樹君のデッキ強化

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