「相棒」   作:ダンちゃん1号

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お前は一生ブタ箱に入ってろ。

 

「野郎、ぶっ殺してやぁぁぁる!」

「デュエリストが冷静さ失ったら終わりだってはっきり分かるなぁ。」

 

霊使は、確かに心の内に昏い復讐心を抱いた。

だが、それは冷静さを失わせるものになるとは限らない。

時に、冷酷な怒りが冷静さを引き出すという事もある。

 

「…俺のターン…ドロー。て、手札の魔法カード【超接地展開】発動…!【無限起動ハーヴェスター】を召喚!【ハーヴェスター】の効果でデッキから―――。」

「【大霊術-「一輪」】の効果で無効に。」

 

俗にいう「一周回って」というやつだ。

相手の初動を潰し、行動を制限して、自分のやりたいことを通す。

攻撃力で押すことと、複雑な能力で翻弄することのちょうど中間地点。

小型のカードでリソースを伸ばしつつ、相手の動きを止め、大型のフィニッシャーで一気にとどめを刺すという王道の戦術。

その戦術に外道はすっかり吞まれていた。

 

「…【ハーヴェスター】をリリースして【無限起動キャンサークレーン】特殊召喚、更に…俺のフィールドのカードがリリースされた…!その事により【無限起動ロードローラー】を特殊召喚!」

「【無限起動ロードローラー】の特殊召喚成功時に罠発動【憑依連携】!効果で墓地から【憑依装着-ウィン】を特殊召喚して【超接地展開】を破壊!さらに【憑依覚醒】の効果が発動して一枚ドロー!」

 

既に伏せカードが何かさえこの男は覚えていない事だろう。

デュエリストが冷静さを失えば、後は相手の布陣にからめとられるだけだ。

それがどれだけ強い力を持っていようとも、一度尻込みすれば終わりという事に変わりはない。

 

「…【キャンサークレーン】と…【ロードローラー】で【無限起動リヴァーストーム】をエクシーズ召喚!【リヴァーストーム】の効果発動…!」

「…【教導の騎士フルルドリス】の効果発動。…【フルルドリス】を特殊召喚して【リヴァーストーム】の効果を無効に。」

 

鋭く、喉元を穿つように、何度も何度も的確にカードを使う霊使。

ただ冷酷に淡々と、外道の喉元にナイフを突きつけるように、相手の動きを阻害していく。

ウィンにはそれが霊使なりの外道への「処刑」であるかのように感じられた。

相手に無力感を植え付け、何もできないと実感させ、外道が見下していた自分自身に何度も完封される。

それで、その高慢ちきな心が折れないわけが無い。

 

「…糞がァ…!【RUM‐アストラル・フォース】発動!効果で【リヴァーストーム】をランクアップ!エクシーズ召喚【無限起動コロッサルマウンテン】!―――エクシーズ素材を一つ使って効果発動…粗挽き肉団子にしてやる!」

「…【I:P マスカレーナ】の効果発動。【コロッサルマウンテン】、【I:P マスカレーナ】、【妖精伝姫‐カグヤ】、【教導の聖女エクレシア】の四体で【閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス・エレス=クルヌギアス)】をリンク召喚。…このカードは相手の場のモンスターを一体までリンク素材にできる…!」

 

それだけこの男は慢心していた。だからこそ圧倒されるということそのものを「異常事態」として捉える。

人間、異常事態に直面して冷静でいられるのは一部の超人だけだ。何であれ誰であれ「予想外」というものは人から冷静な判断を奪う。

そして、冷静さを取り戻したころにはもう手遅れになる。

 

「…た、ターンエンド…!」

 

外道 LP8000 手札無し

フィールド  カード無し

 

―――そして今が外道にとっての「手遅れ」だ。

外道の手札にカードは一枚もなく、フィールド上にカードが一枚も存在しない。

対して、霊使のフィールドには【憑依覚醒】の効果でバフを受けた三体のモンスターが居る。

相手が後先考えずにカードを使ったというのもあって、結果的に霊使は再び外道を圧倒するという結果に終わった。正直に言えば「物足りない」のである。

 

「おいおい…よく考えて手札は使えよな。…俺のターン、ドロー。【憑依装着‐エリア】を召喚。…デッキから一枚ドロー。さらに【妖精の伝姫】の効果で【憑依装着‐ヒータ】を召喚。…さらに【デーモン・イーター】を特殊召喚。…【教導の騎士フルルドリス】と【デーモン・イーター】で【崔嵬の地霊使いアウス】をリンク召喚。」

 

これで、闇以外の属性が場に揃った事になる。これにより【憑依覚醒】のバフ効果は1500までに上昇。おまけと言わんばかりに効果破壊耐性もあるので相手は当然これを罠で退かすことも不可能である。もっとも、今の外道にはそんな罠もないので何一つ抵抗は出来ないのだが。

従って、今の外道に選べるのはただ一つ―――自分がどう散るかのみである。

 

「…選べよ。圧死か、溺死か、焼死か、落下死か。ああ、影の世界への追放なんてのもいいな?」

 

このデュエルは闇のゲームではない。だから、どんな攻撃を喰らっても体がどうこうとはならない。

だから、霊使はただ無意味な問いかけをしたに過ぎないのだ。

―――外道という男の末路はもう決まっているから。だから、どんな形で負けたとしてもこの男の罪は消えることは無い。どれだけ無様に命乞いをしようと、もう、この男の悪運もここで尽きたのである。

 

「…とりあえずは、これで終わりだ…!」

 

抵抗は、ない。

外道はそのままウィン達の攻撃をその身に受け、そのライフをゼロにするのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「霊使ッ!」

「霊使君!」

「四遊ッ!!」

「霊使さんっ!」

 

克喜、海斗、真木、ハイネの四人はしらみつぶしに校舎内を探していた。理由としては「書類を見つけた」からさっさと撤収するという事を伝えるのと、鈴花をここから少しでも遠ざける為だ。

当初、その事を知らせるためにSNSでの連絡を試みたが、いつまでも既読が付かない。

―――そんな折に海斗にキトカロスから「霊使と黒幕が戦っている」という念話が届いた。

最も、キトカロスはここが何処か確認しなかったため「黒幕と戦っている」という事しか伝えられなかったのだが。おかげで4人は校舎内をしらみつぶしに探すという苦行を強いられる羽目になった。

その中でいくつか「胸糞悪い部屋」を潰すことになったのはまた別の話だ。

そして、4人が講堂に踏み込んだ時、そこにあったのは何かに怯えるようにして蹲る外道と、拳を握り締めていた。

だから四人は叫んだ。霊使はそっちに行ったら戻ってこれない危うさがあったから。

 

「…ここで、終わらせる。お前のやったことは()()()()()()()()()()()()()。」

 

4人の声が聞こえていないのか、それとも別の何かが霊使を突き動かしているのか。

とにかく、今の霊使はただ呼びかけただけでは止まらなそうだった。

 

「…祈りは込められた。とっくのとうに…お前は敵を作り過ぎたんだ。だから―――」

 

はぁ、と霊使はとても深いため息を吐いた。

四人は霊使が本当の気持ちを抑え込んでいるのだと理解した。

この男には道徳や倫理というものが欠けている。

だから簡単に誰かを傷つけられるし、人から奪えるのだ。この男はもう救いようの無いほどの悪党で、だからこそ、この男に傷つけられたも者たちを癒す方法など存在しない。

だが、ここで霊使がこの男を傷つけるようなことがあれば霊使はこの外道という男以下になってしまう。

 

「―――お前は一生ブタ箱に入ってろ。」

 

結局四人が心配していたような事は起こらず、霊使はその矛を収めた。

霊使は肩を上下させていて、相当に起こっていたのが見て取れる。―――それだけの怒りを飲み込んだという事なのだろう。

 

「…霊使ーッ!おまっ…お前また無茶してなぁ!?お前なぁ!?」

「霊使君はもう少し「報・連・相」をしっかりすべきだと思うけどなーっ!」

「渡瀬の言う通りだぞ。四遊…。」

「全く…既にあなた何回も死にかけているんですからいい加減に学んでください!」

 

抑える事が出来たのならきっと本人も分かっている。

だから四人は深く追及することはせずに、何とも軽い感じで霊使の下に駆け寄ることにした。

今の霊使に一番必要なのはきっと日常だろうから。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

―――どうしてこの男に勝てないのか。

―――どうしてこの男は自分よりも弱いくせに自分にないものをたくさん持っているのか。

羨ましい―――を通り越して最早憎たらしい。

恵まれたこの四遊霊使という男が憎たらしい。

弱いから奪われる、弱いからなにも得れない。この世界はそうできている。

四遊霊使は間違いなく「弱者」だった。それは自分が搾取しているから、というのではなく、何もかもが弱かった。

それなのに、この男は強くなった。

誰もがうらやむような強さを得た。

霊使を信じてくれる仲間や友を得た。

どれもこれも自分にはないものだ。

この世界に即した生き方を自分は両親から学んだ。

弱ければ奪われる、強ければすべてを得ることができる。

それなのに、この世界の在り方に逆らう霊使の方が強い事に納得できない。

しまいには世界を救った英雄だと呼ばれる始末。

嫉妬と言われれば、そうなのだろう。

だが、それ以上に「自分より下に居た奴」が自分より上に行っていることに納得がいかないのだ。

この世は力が全てなのに、どうして霊使は持っているのか分からない。

 

「…どうしてお前は持っているんだよ、俺に無かったものを!何も失わずに…何故だァ!」

 

だから、叫んだ。

どうしてなのか、どうして自分に無い物を力のない霊使が手に入れられたのか分からなかったから。

何も失わずに、何も零さずに―――どうしてなのか。何が霊使と違うのか。

―――霊使がみている世界が何一つ分からないから。

 

「…失わなかったわけじゃない。それに、俺はみんなに支えられて強くなった。皆の力が俺を強くしてくれた。…それだけだよ。お前が切ったものを俺は持っていった。…お前にも居た筈だ、支えてくれる人間が。」

 

―――何を言っているのか分からなかった。

この世界、表面上では「友人」としておきながら裏では口汚く罵倒する。そんな人間しかいないのだ。それなのに、霊使は、他人を信じ手を差し伸べて信頼を培ってきた。

信じれば裏切られるのが常なこの世界で。

 

「…もう少し世界を軽く見てみろよ。そうしたらお前も―――。」

「うるせぇよ。」

 

誰かを信じれば裏切られる。それがこの世界の常。その考え方を今更変えようもない。

ただ、もう少しだけ早くこの男と出会っていれば、何か変わったのだろうか。

 

「…つまらねぇな。俺も「少しでも早く会えていれば」なんてガラじゃねぇこと考えちまう。」

 

もうこの男には敵わない。

敵う気もしない。

きっと、この男の強さの本質はそこじゃないから。

―――勝てないはずだし、分からないはずだ。考え方が違うから。

 

(あぁ、くそ――――。)

 

開け放たれた窓から暗幕が青空へと飛んでいった。




登場人物紹介

・霊使
勝った。
背負うものがあるから強くなる。

・外道
彼が背負うものは余りにも重い。
でも今ならきっと背負える。

スネークアイズ欲しかったのにブラックホールドラゴン二枚だったので初投稿です

水樹君のデッキ強化

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