――――学校爆破炎上事件の翌日。
霊使達は再び旧端河原松高等学校校舎に訪れていた。
既にインフラなどは整備済みで、あの後徹夜で先生たちも動いていたのか目の下に隈が出来ている。
それで、肝心の「犯人たち」はというと―――
「いい加減に鈴花から離れやがれ蛇公!」
「こーら、ディア、フランを虐めない!」
何食わぬ顔で普通に鈴花と行動していた。
不思議な力で手乗りサイズにまで縮んだ【
ディアは何かが気に入らないのか、それともフランと鈴花に関係をすすs目たくないのか、はたまた嫉妬からかは知らないがずっとフランを威嚇し続けていた。フランはそんなディアに完全にびびって委縮している。
フランその体を縮めていることもあり、その様子はさながらいじめっ子といじめられっ子といった様子だ。
―――一人と一匹の犯人はそもそも自分達の行為のせいで校舎が爆破炎上したという事も当初は気づいていなかった。
「―――処すか?」
「クルヌギアス、ステイ。」
が、犯人たちは霊使が連れて来た知り合いの「神様」こと、クルヌギアスの威圧によって一瞬で押し黙ってしまう。後出しされればディアベルスターやフランは抵抗できないまま除去されるというのはただの恐怖だったらしい。
結果として、ディアベルスターたちはクルヌギアスの折檻を―――フランは言葉が通じなかったので拳を―――喰らう事になった。
「…いってぇなぁ!?」
「…もう一発行くか?」
「すいません何でもないです。」
そのままディアベルスターはしょげてしまった。
今回の件に関しては事故の側面もあったので何とも言えないが、二人は鈴花の制止を聞かなかった事もまた事実だ。
とにかく、これから一人と一匹は鈴花と共に生活を送ることになった。
―――それが騒動の始まりであるとは鈴花自身も知らずに。
そうして、今に至るというわけだ。
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人の噂も七十五日、人の口に戸は立てられぬ。
人々はうわさを騒ぎ立てて―――そのまま忘れ去っていく。
たとえそれがどんなに痛ましい歴史であったとしても、いずれは風化して記憶からなくなっていく。
だが、それは時間が経てばの話だ。
「教室爆破したって本当?彼女結構優しそうだけど…。」
「…事故だったみたいだけどね?」
口伝に伝わった噂は姿形を変え、気づけば鈴花は「校舎爆発の原因を呼び寄せた」から「校舎爆発の犯人」という事にされていた。
ディアとフランがあそこまで大暴れしてなければこんな事にもならなかったし、そもそもこんなうわさを立てられることも無かっただろう。
(…もしかしなくても…オレのせいか、これ?)
そんな感じで噂が鈴花の耳に入るものだからか、あの惨状を引き起こしたディアベルスターもスコアいばかり居心地を悪そうにしている。
肝心のフランは何で噂されているのか分かっているのかどうかさえ怪しいのだが。
「ふぇぇ…。」
一方の鈴花はすっかり意気消沈していた。身に覚えのない、しかし自らが引き起こした惨状の事をずっと噂されれば気分が滅入るのも止む無しではあるのだが。
「完全にしょげてる…。」
「無理だよぉ…。もう無理だよぉ…。これから私は「人見知りの爆裂姫」なんて呼ばれて生きていくんだ…。おーいおいおいおい…。」
「なんかとんでもない二つ名が生えてきてるよ鈴花さん!?」
流石にそんな状態にもなれば霊使も心配する。
もっともさすがにそんなひどいあだ名で呼ばれることは無いと思いたいのだが。
「―――げっ…「人見知りの爆裂姫」だーっ!焼き殺されるーっ!」
「…おおう…。」
バランスを崩して一人の少女が寄りかかる。どうやら、彼女は既に噂を信じている人のようで鈴花のことを「気に入らないことがあったら焼き尽くすやべー奴」扱いしてしまっている。
なんというか、自分も相当だが、彼女も大概運が無いと感じてしまった霊使は悪くないはずだ。
「…次の授業は…あー…全校で行うデュエル実習かぁ。」
「これ、相手いるんですか…?」
「…頑張れ!」
―――もはや何も言うまい。
霊使が「いい相手が見つかるように」と願いながら実習場所である体育館に向かう事にした。
「あっ、ちょっとまって!待ってって!見捨てないでぇーッ!」という鈴花の切実な悲鳴が霊使の背中に叩きつけられる。
これも人見知りを直して鈴花本来の性格を知ってもらうために必要な事だ。
―――そう割り切って霊使は無慈悲に「行かなきゃ遅れちゃうよ」と鈴花に声を掛けるのだった。
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どうやら既に「人見知りの爆裂姫」のあだ名は相当浸透してしまったらしい。
鈴花は本人の与り知らない間に「目を合わせたら爆殺される」という身も蓋もない特徴が張り付けられていた。
―――流石の霊使もこの噂の速度にはドン引きである。
「…や、やる?」
「お、お願いします…。」
といっても流石にそんな噂を信じる人はまだ少ないわけで。
噂は噂だとして、何人か、鈴花にデュエルを申し込む人物もいた。
その中で特に鈴花は一人の少女に惹かれたのだ。
「…私と、やってくれませんか?」
「お、お願いします…!」
何とも儚げな雰囲気を持つ少女だな、と思った。
それと同時に何となくだが、なんとなくだがこの少女にほんの少しだけ敵意を感じたような気がした。
まあ、いつも通り、霊使との距離が近いという事に対しての嫉妬だろうと考え、それでも歩み寄ろうとしてくれた彼女に感謝をしつつ。
鈴花は改めて自己紹介をすることにした。
「改めて―――私は桜庭鈴花。あの事件以降すっかり人見知りになって気づけばとんでもないあだ名で呼ばれてる。今日はよろしく…お願いします。」
「はい。…私は
そうして、紫焔と名乗る少女とデュエルをすることにしたのだ。
先攻は紫焔から、という事になった。
「私のターン。私は永続魔法【六武の門】を発動。更に手札から【真六武衆‐カゲキ】を召喚。【六武の門】は【六武衆】を召喚・特殊召喚した時に武士道カウンターを二つ乗せます。…さらに【真六武衆‐カゲキ】は召喚に成功した時手札から他の【六武衆】を特殊召喚できるカード。というわけで【六部衆の影武者】を手札から特殊召喚します。そして再び【武士道カウンター】が二つ【六武の門】に乗ります。」
「【六武衆】…か。こりゃまたとんでもないデッキを…!」
【六武衆】―――【六武の門】の効果でステータスの低い下級モンスターを並べてとにかく殴ってくるデッキだったか。実の所「強い」とは聞いているが、鈴花は戦ったことがないので良く分からない。
それに、鈴花も今回初めてこのデッキを使うのだ。そう言うもろもろを含めて、互いに実力や相性は未知数といえるだろう。
「私は【カゲキ】と【影武者】でシンクロ召喚。【真六武衆‐シエン】!…これで【六武の門】の武士道カウンターは6個…。武士道カウンターを4個取り除き、デッキから【真六武衆‐キザン】を手札に!【キザン】は自分場に【六武衆】モンスターが存在すれば特殊召喚できる!従って【キザン】を特殊召喚しさらに【六武の門】に武士道カウンターを2個追加します。…【六武の門】の効果に「一ターンに一度」の制限はない…。というわけで【六武の門】の武士道カウンターを四つ取り除きデッキから【六武衆の師範】を回収!そしてそのまま【六武衆の師範】を特殊召喚!これで再び武士道カウンターが二個乗ります!更に【師範】と【キザン】でリンク召喚!【六武衆の軍大将】!そして【六武の門】に武士道カウンターを二個のせます!」
(…これでまた四個…!)
なるほど、厄介なデッキだ。展開すればするほど
【六武衆】は六武衆が六武衆を呼ぶ連鎖的なデッキなのだ。
「更に【軍大将】の効果を発動。こうかで手札から【裏六武衆‐キザル】を墓地に送り【六武衆の結束】を手札に。…さらに【六武の門】の効果で【真六武衆‐キザン】を手札に加えます。…ふむ、カードを一枚伏せてこれでターンエンドですかね。」
紫焔 LP8000 手札2枚
EXモンスターゾーン 六武衆の軍大将
モンスターゾーン 真六武衆‐シエン
魔法・罠ゾーン 伏せ×1
六武の門
(…はてさて、どう突破しようかねぇ。)
鈴花はこの盤面をどうするべきかを考えていた。
まず、【真六武衆‐シエン】をどうにかするのは既に決定事項だ。あのカードは一ターンに一度魔法・罠カードの効果を無効にしてくる。
鈴花のデッキを最大限に生かすには魔法・罠カードが必須なためどうにかするべきだろう。
さらに厄介なのはあの伏せカードだ。
あの伏せカードがミラーフォースのようなカードだと、一瞬で全てが崩壊してしまう。そうなってはディアとフランのデビュー戦を黒星で迎えることになってしまう。
―――それはいただけない。
「よし…私のターン、ドロー!私は雑に【ライトニング・ストーム】を発動!魔法・罠カードをすべて破壊!」
「…【シエン】の効果で無効に!」
「…よし!」
結局、鈴花は雑に【ライトニング・ストーム】を放つことにした。このカードの効果を無効にしなければどのみち【六武の門】も破壊されてしまうからだ。
【六武衆】にとって【六武の門】は生命線といっても過言ではない。そのため、六武衆使いは皆このカードの破壊だけは絶対にさせないのだという。
「…さあ、行くよ。私は魔法カード【"罪宝狩りの悪魔"】発動!効果でデッキから【黒魔女ディアベルスター】を手札に!更に手札から魔法カード【蛇眼神殿‐スネークアイ】を発動!効果でデッキから【スネークアイ・エクセル】を永続魔法扱いで魔法・罠ゾーンへ!更に手札から【原罪宝‐スネークアイ】発動!効果で場の表側表示のカード一枚を墓地に送り手札・デッキから炎属性・レベル1モンスター一体を特殊召喚する!私は【スネークアイ・エクセル】を墓地に送ってデッキから【スネークアイ・オーク】を特殊召喚!【スネークアイ・オーク】が特殊召喚に成功したため、【オーク】の効果発動!墓地から【スネークアイ・エクセル】を特殊召喚するよ!【エクセル】は召喚、特殊召喚に成功したときデッキから炎族・レベル1モンスター一体を手札に加える事ができる!というわけで【スネークアイ・ワイト・バーチ】を手札に!」
(はえー…すっごい回る…。)
鈴花はものすごい勢いでデッキを回していた。手札やフィールドのカードをコストに展開できるカードが多い印象の強い【スネークアイ】。デッキのモンスターのほぼ全てが炎属性レベル1。
もちろん、このデッキはそれだけではない。
―――このデッキの真価は展開力と、驚異的なまでの【応用力】―――だ。
「…炎属性モンスターが私のフィールドに存在している為、私は【スネークアイ・ワイト・バーチ】を特殊召喚!そうしてから…【スネークアイ・オーク】の効果、発動!このカードと、表側表示のカード…【スネークアイ・エクセル】を墓地に送りデッキから【スネークアイ】モンスター一体を特殊召喚する。…早速披露しようかな!このデッキの
だが、まずはここで相手の度肝を抜くことにしよう。
【スネークアイ】というデッキはフィールドの表側表示のカードを使用するカードが非常に多い。
だから、各【スネークアイ】が持つ特殊召喚効果も表側表示のカードを利用する効果である。
「…罪の宝を埋め込まれし炎よ、今こそ顕現し、叛逆の狼煙を上げよ!【
―――そして鈴花の切り札の内の一枚目がその姿を現した。
罪の宝を背負いし者が今ここに蘇ったのである。
「さあ、行くよ!【蛇眼の炎龍】の効果、発動!」
デュエルは今から大きく動き出す事となる―――。
登場人物紹介
・鈴花
この章の主人公
霊使以上の不幸体質
・霊使
鈴花の慰めくらいしかできない
・紫焔凪
儚げな少女
来週は番外編の投稿になると思います。
では次回もお楽しみに。
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