「…むぅ。」
「…ディア、どうしたの。」
「…火力が足りねぇなぁって思っただけだ。」
黒魔女は一人、夕暮れの教室で考え込んでいた。
今日一日を通して行ったデュエルの内の数戦は、最終的に先にデッキのリソースの方が切れてしまっていたのだ。
それでも勝てるあたり相当にディアベルスターの出力が高いのが確かではある。―――が、いつまでも出力頼りのデュエルをするわけにもいかないだろう。
現に出力という一点張りで霊使にデュエルを挑んだところ、マストカウンターをきっちり返されそのまま押し切られてしまった。
次に、海斗と戦う事となったが―――あれは何が起こったのか理解したくもなかった。
「全力で来てほしい」と海斗に頼んだ結果、まさか自分のターンに散々展開される、なんて夢にも思わないだろう。
「…色々と改善の余地はあるよね。」
「…そうだな。」
海斗戦は例外として。
とにかく、今は何でもいいから「スネークアイ」以外の攻める手段を考えたいところだ。
だがそうなると、今度はどんなモンスターがいいのかが分からなくなってしまう。
だからこそディアベルスターは悩んでいたのだ。
「…取り敢えず、【ジェット・シンクロン】は確定かなぁ。炎属性・レベル1のチューナー。それに【ヴォルカニック・バレット】もいいなぁ。」
「…オレの手札コストか?」
「うん。…ディアは…嫌?」
―――建設的な強化案だ。火力が足りなくなるのは、デッキ内のリソースが少ないから。
決定力が無いのはデッキに明確なフィニッシャーが存在しないから。
ならば、それに分類されるカードを使えばいい。―――簡単な話だ。
「…オレにもプライドっていうもんがなぁ…。」
だが、それをディアベルスターのプライドが許さない。
自分がエースだ。自分が鈴花のエースだ。そうでなければ何のために彼女と共にあるのか。
鈴花にとってのエースであること。それが自分がこの世界に居るためのアイデンティティなのだから。
だが、―――罪宝の協力があったとはいえ―――ほとんど一人で戦い続けてきて、自分は何でもできると思っていた。
現にこちらの世界でも十分に強力な力を手に入れられたが、それでもまだ足りない。
「…焦らなくてもいいんだよ?」
「…焦り…か。そうかもしれねぇな。オレは鈴花の物だが…お前が俺を捨てないとは限らないって考えているからかもしれないな…。」
―――そう考えてしまうのは、きっとディアベルスター自身が鈴花という少女についてまだよく知らないからだろう。確かに彼女の力になるといった。その声にはこれからも応えていくつもりだ。
だが、いつ彼女に捨てられるかという恐怖が今になって少し湧いてきた。
いつの間にか自分よりも強いカードを見つけて、そっちを使うようになっていくのか、そう考ええると心の奥がもやもやしてしまう。
「…やだなぁ。そんなことするわけないじゃん。」
「なっ…。」
「ディアは今まで一人だったんだろうけど…ここでは一人じゃないんだから。」
「…困ったらみんなが居る、ことは忘れないでね。…帰ろっ!」
簡単に相談できれば苦労はしない。
ディアベルスターは曖昧な返事を返す事しかできなかった。
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それから少し経ったある日の事。
ディアベルスターは学校の屋上で空を眺めていた。
―――やることがないという事はこんなにも暇な事だっただろうか。
「…平和だなぁ。」
今まで争っていた相手は牙を抜かれて今ではすっかり立派にペットになっている。
そもそも炎の蛇なのに日向ぼっこするとはこれ如何に。
呼ばれたからにはきっと何か理由はある。
だがその理由がさっぱり分からない。
生まれも何もない自分はとうとう「罪宝狩り」という自分の立場までなくなってしまったのだ。
「…オレはあいつに何か返せるんだろうか。」
「罪宝狩りの悪魔」ではなく、ただの【ディアベルスター】としてみてくれた彼女に。
ディアというもう一つの自分を作ってくれた彼女に。
果たして自分は何を遺せるだろうか。
「いや…考えるのはやめよう。オレはあいつの剣…それでいいはずだ…。」
そんな事を考えるのにはきっと理由があるのだろう。
だが、どれだけ理由を探そうとも何も思いつかない。
そう、深く考え込んでいたせいか、ディアベルスターはいつの間にか自分の隣に座っている小さな騎士に暫く気付かなかった。
「…不審者ーッ!?」
「…失礼な!?これでもこの学校にマスター居るんだけど!?」
結果、小さな騎士はディアベルスターに不審者扱いされる羽目になった。
これには彼女も思わず名乗る前に突っ込みたくなるというものである。
そんなやり取りをしたディアベルスターだが、結局ため息をついて、小さな騎士に相談することにした。
そしてその上での彼女の回答は至ってシンプルなものだったのだ。
「…ねえ、デュエルしなさいよ。」
「…なして?」
「デュエルでの悩みはデュエルで解決するのが一番でしょ。」
確かにそうなのだろうが―――流れをぶった切ってはいないだろうか。
そもそもデュエルでの悩みのようで「力になれていない」というのはデュエルの悩みには含まれないのではないだろうか。
「ま、いいか。…どこで?」
「放課後―――この教室で。」
「…分かった。」
ちなみにこの後鈴花に「デュエルに誘われた」と話したら泡を吐いてぶっ倒れた。
―――彼女の人見知りも何とかしないと。ディアベルスターは心にそう決めた。
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それで放課後、ディアベルスターが「集合場所」らしい場所を教えてくれその場所に赴くことになった。
ちなみに当然の通りに霊使同伴である。
海斗はバイトがあるという事だったのでこの場に居るのは霊使とウィン、ディアベルスターと鈴花の四人だけだ。
「で、なんで俺まで…。」
「だってクラス同じで部活に入ってないの霊使い君しかいないんだもん…!」
「鈴花さんはその人見知りを直すべきなのでは?」
「…やめて!正論は私に効く!」
「…霊使!鈴花を甘やかすなよ!?」
「分かってるって!」
4人でギャーギャー騒ぎながら目的の教室前までたどり着く。
鈴花は扉の前に立つと、思いっきりドアをあけ放った。
「た、たのもーっ!」
「…ちょっと待って!?」
「ちょっと待てぇ!?」
鈴花はカチコチに動きを固めながら思いっきり扉をあけ放つ。
そんな同情破りみたいな入室方法に霊使やディアベルスターは思わずツッコミを入れてしまった。
ウィンは知ってたと言わんばかりに肩をすくめている。
「荒療治しなきゃ治らないレベルだよね、鈴花ちゃんの人見知りは…。」
「ウィンちゃんの指摘が…心に刺さる…ッ!」
「自覚あるならもっとしゃんとしろよな…。」
「ディアぁ…それが出来たら苦労はしないんだよぉ…。」
人付き合いが心配になる―――なんてレベルではない。
人との付き合い方が余りにも不器用すぎる。
「…大丈夫?」
「これを見て大丈夫だと言えるならオレはそいつをぶん殴る自信がある。」
「…だよね…。」
そのレベルたるや教室で待っていた小さな騎士にさえ、ガチトーンで「大丈夫」と聞かれる始末である。
どうにも人づきあいが苦手―――とかそう言うレベルを超えているようにも思えるのだ。
「………これがコミュ障ってやつなのカ?」
「トゥルーデア、あれは極度の人見知りというんだ。そもそもコミュ障だったらここに同行者を連れてきてはいないよ。」
「それもそうだナ!」
―――こうして何んとも締まらない形で小さな騎士のお悩み相談会は始まったのである。
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鈴花が落ち着いた後、今回の話を提案してくれた騎士と、そのマスターと自己紹介を行う事になった。
「僕の名前は『
「プリメラで―――」
「私がトゥルーデア。」
「これが現在のうさぎチーム!使用機体はエメト
が、その自己紹介のインパクトがなんか妙に強く、思わず名前を覚えられないところであった。
いや、別に自己紹介の内容に問題があるわけでは無いのだが―――
「―――なんで、腕組んでるの?」
「これが私らのロマンだかんね!止めるなんてことはしないよ!」
「ついて行けない…!」
まさかの熱血系の人たちであったのだ。
しかもそのノリがロボット系アニメのそれだったのである。
「…機動武闘伝…?」
「…天元突破じゃね?」
そのノリを一体どんな作品に例えられるか後ろで語り合う霊使とウィン。
その話を聞いてうんうんと頷く聖也。
そしてそのノリについて行けない鈴花とディアベルスター。
呑気にトゥルーデアと遊んでいるフラン。
それぞれがそれぞれの反応を示す中ではあったが、この集団は一つ大きな事を忘れていた。
そう、自分達はここにデュエルしに来たという事を、ここにいる全員がすっかりっ忘れていたのだった。
それを思い出すにどれほど時間がかかったか―――それはもはや語るまでもないだろう。
登場人物紹介
・鈴花
人見知り爆発。
・ディアベルスター
悩みなんざ鈴花の人見知りの前に吹っ飛ぶ。
・聖也
センチュリオン使い。
・プリメラ/トゥルーデア
多分ノリノリで「誰だと思っていやがる!」っていう。
・霊使
天元突破も機動武闘伝も大好き
・霊使いの皆様方
新世紀も宇宙の騎士も伝説巨神も走る素材の元ネタも大好き
暫くはギャグで生きたいと思います。
…ギャグになるかなぁ…。
苦手なんだよなぁ、ギャグ…。
水樹君のデッキ強化
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