「相棒」   作:ダンちゃん1号

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私達を誰だと思ってる!

 

「…で、ディアの悩みを解決するためにデュエルって事でいいのかな?」

 

一通り雰囲気が落ち着いた後、鈴花は聖也に改めて話しかけた。

その鈴花の問いかけに頷いたのは聖也ではなくプリメラだったが。

鈴花はディアベルスターが自身の火力不足に悩んでいた事を知っている。

ディアベルスターは攻撃力2500に加えてデッキから罪宝カードをサーチする効果、更に墓地に送られたら事故蘇生する効果を持っている。

 

「…ディアは火力役ってよりかは火力も出せる潤滑剤なんじゃ…?」

「…本人がそれを気に入ってないみたいなんだよね。」

「…羨ましいなぁ。」

 

ちなみに霊使が使用する霊使い達―――というか【憑依装着】モンスター達は攻撃力1850の準バニラカードだ。足りない火力は永続魔法と他テーマのカードを取り込むことで無理矢理底上げしているような感じである。

当然、霊使はそれだけにとどまらないよう、サポートや展開ルートをいくつも考えているのでそうそうそれが破られるということは無いのだが。

とにかくディアの抱える悩みは霊使い達にとっては羨ましいものであったのだ。

 

(…オレは恵まれてるのか…?)

 

最も、そう悩み始めた原因が霊使や海斗である。

その人物―――特に霊使からうらやましいなんて言われも闇か嫉妬の類にしか聞こえないのは気のせいでは無い筈だ。

 

「…まあいいか、しようぜ、デュエル。」

「…ディアは準備オッケーなの?…私は、全然ダメなんだけど…?」

「…鈴花、これはお前の人見知りの究極系を直すための治療でもある…受け入れてくれ…!」

「死にたくな―い…!」

 

こうして、何とも緩い空気で鈴花と聖也のデュエルが始まったのである。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「…四遊霊使はまだ篭絡できないのか?」

「………はい。」

「貴様はあの男の胤で孕まなければならない。分かっているな?」

「…分かっております、御父様。」

 

丁度その頃、凪は自宅で己の父と相まみえていた。

と言っても向こうは自分のことを都合の良い肉袋くらいにしか思っていないのだろうが。

そも、凪の家系のことは凪自身よくわかっていない。

知っているのはただ「世界の安寧」とやらを守り続けている家系であるということ。

それに加えて、「世界を守るに足る血筋を遺す」ことを役目としている事。

―――この二つだけである。

それで今回凪の相手として白羽の矢が立ったのが四遊霊使だった。

 

「…あの者の胤を得る事が出来れば…世界を安寧により近づけられる…!」

「安寧…ですか。」

 

紫焔凪という少女は安寧という言葉をよく知らない。

知っているのは父が狂ったように使うという事だけ。

当然、そんな少女に対しての安寧はいつまでもやってくるはずがない。

この紫焔という家で生まれた以上は、安寧を求めてはならない。

 

(羨ましい…。)

 

―――凪はとち狂った家系の中で、どちらかといえば常識的な考えをしていた。

邪魔者は始末し、目的の物は殺してでも奪い取る。―――そんな考えが異常だと思えるくらいには普通の感性を持っていた。

持っていたからこそ、鈴花という少女が羨ましく、恨めしい。

だって、彼女は霊使にきつく当たっていたのにもかかわらず、今ではすっかり仲良くなっている。一体、あの女と自分とで、何が違うというのだろうか。

 

―――凪は、純粋に霊使の事を好いていた。人としてか、異性としてかは定かではないが―――とにかく、霊使という人間は凪にとっての一種の憧れでもあった。

霊使の放つ強烈な光に目を焼かれることは無く、むしろ己の中の影を浄化してくれたかのような人だったからだ。

だから、霊使を事実上の神としてあがめるカルト宗教にも入信した。

結果は、まあ、霊使の名を借りただけのそこらに転がっているゲロの方がマシな最悪の組織だったわけだが。

 

あの時点において凪は、幼少の頃から変わらず使用しているデッキを使っていた。理由は好きだから―――とかではなく、単純にカモフラージュには十分だったから。

忍者カード自体は好きなので、もう少しまともなデッキを持っている。

そこから何枚かのカードを抜いてデュエル初心者が組み上げるようなデッキを作った。

しかし、今のデッキは趣味ではない。

そもそもこのデッキは霊使のより深いところに寄り付けるようにと父が用意したデッキだ。大した思い入れもなければ、まともに使おうとは思わない。

 

(…はあ…。)

 

これから先もきっと誰かの言いなりになる人生だ。

そこから抜け出す気力も、勇気もない自分はきっともう、変わるチャンスさえもない。

それでも、それでも。

せめて憧れに手を伸ばす事くらいは「この世界の安寧」とやらも許してはくれるのだろうか。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

そんなこんなで始まった鈴花と聖也のデュエル。

先攻は聖也からという事となった。正直鈴花のデッキは後攻でもそれなりに戦えると自負してはいるが、本当にうまく戦えるかどうかはまた別の話だ。

 

「…というわけで僕のターンだね。…僕は手札から魔法カード【テラ・フォーミング】を発動!」

「―――【灰流うらら】で無効!」

「…うんうん。それじゃあ…手札から【重騎士(センチュリオン)プリメラ】を召喚!効果でデッキから【スタンドアップ・センチュリオン!】を手札に加えようかな!」

 

聖也の用いるデッキは【センチュリオン】。つい最近収録されたカードだ。しかし最近収録されたにしては妙に動きに慣れているような気もする。

 

「…スタンドアップ・ヴァンが―――」

「霊使、それ以上はいけない。」

 

外野の発言は禁断の領域に一歩足を踏み入れているのではなかろうか。そこに関しては考えない方が賢明だろう。下手に詮索して何か大きな力に消されてでもしたら目も当てられない。

―――とにかく、初動を潰すことはほとんど失敗したとみていいだろう。

 

「嫌な予感がプンプンするよぉ…!」

「…オレも同じだ。…こりゃ高すぎる壁になるぜ…!」

 

そして初動が多いデッキというものは大概強いものだ。海斗の【ティアラメンツ】然り、良く環境に顔を出す【ピュアリィ】然り。

初動が多いデッキという事はつまり自分の動きを通しやすいデッキでもあるという事。

だから強いのだと今までの戦いの中で良く分かっていた。

 

「というわけで魔法カード【スタンドアップ・センチュリオン!】発動!手札の【超電磁タートル】をコストにデッキから【従騎士(センチュリオン)トゥルーデア】を永続罠扱いで魔法・罠ゾーンに!」

「げえっ!うらら貫通!?」

 

―――【灰流うらら】は「デッキから手札にカードを加える効果」、「デッキから特殊召喚する効果」、「デッキからカードを墓地に送る効果」の三種類を無効にできる。

だが、裏を返せばそれ以外のデッキに触るカードの効果―――魔法・罠ゾーンに直接置くといった効果は無効にできない。

 

「―――【幽鬼うさぎ】だねぇ…。」

「本当にいつも環境に居るよなうららとうさぎは…。」

 

となると今度は相手ターン中でもカードを破壊できる幽鬼うさぎが必要になってくるだろう。そうすると今度は破壊されても止まらないサーチ効果が火を噴きうららが必要になって―――この妖怪少女達―――というか【灰流うらら】と【幽鬼うさぎ】は環境に居座る続けることになる。

 

「…そのまま永続罠扱いの【従騎士トゥルーデア】の効果発動!このカードのレベルを4上げて特殊召喚!更に【従騎士トゥルーディア】の効果発動。このカードとデッキの【重騎兵(センチュリオン)エメト(ゼクス)】を永続罠カード扱いで魔法・罠ゾーンに!この効果の発動後、僕は【従騎士トゥルーデア】を特殊召喚出来ない…。」

 

というわけで既に抵抗が不可能な鈴花は相手の動きを見るしかない。

一応めくれるカードがあるとはいえ、それでも嫌な予感はぬぐえない。

 

「【重騎兵エメトⅥ】を魔法・罠ゾーンから特殊召喚して―――僕はレベル8の【重騎兵エメトⅥ】にレベル4の【重騎士プリメラ】をチューニング!」

「…え!?プリメラってチューナーなの!?ズルくない!?」

 

事実上の初動がさらなる展開札であることに正直驚きを隠せない。

ディアベルスターとは似たような立ち位置ではあるが、それでも下級かつ【スタンドアップ・センチュリオン!】というカードが存在する中でのチューナーというのは色々と悪用が出来そうでもある。

 

「皆の思いが真白に輝く!勝利を掴めと轟き叫ぶ!ばぁぁぁく誕せよ、【騎士皇(センチュリオン)レガーティア】!」

 

プリメラとエメトⅥが全く同じポーズ―――腕を組んで仁王立ちした状態で宙に浮いていく。そして二人が一本の光の柱に呑まれ―――二つの影は一つに溶けていくように交じり合う。

光の柱が消えたころ、そこに居たのは桃色の炎をふかしながら右人差指を天に掲げている純白の騎士の姿だった。その余りの変貌っぷりにディアベルスターの開いた口が塞がらない。

 

「カードイラストは天元突破なのに、口上は機動武闘伝…?」

「―――突っ込んだら負けだよ、霊使…。」

 

―――外野はそろそろいい加減にしてくれないだろうか。

そもそも鈴花は二人が何の話をしているかさっぱり理解できていないのだが。それでもどこかの大御所に喧嘩を売っているであろうという事は予測できる。

 

「【騎士皇レガーティア】の特殊召喚成功時の効果発動!デッキから一枚ドローし、さらに相手の場の最も攻撃力の高いモンスターを破壊できる!」

「…え?手札消費事実上の二枚でレベル12シンクロ?」

「…テラフォ無効にしてなかったら実質一枚消費ってやべぇな…。」

 

―――【レガーティア】は召喚した時にドローしながらモンスター破壊ができるという効果を持っているようだ。アドバンテージを得る能力が優れている上に、先攻一ターン目に出しても1ドローという最低限の仕事をこなしてくる。

 

「…強くない?」

「だああぁぁぁ!オレの悩みを増やすんじゃねぇよォッ!」

「悩み云々は言ってる場合!?」

「…それもそうだな!」

 

こうなってしまえばディアベルスター個人が抱く悩みについて頭を回す余裕がなくなる。

ディアが何について悩んでいるのかは知らないが、もしディアが変な事を考えていたらその時は頬をひっぱたいてやるつもりだ。

 

「ボクはカードをこれでターンエンドかなぁ。エンドフェイズ時に【騎士皇レガーティア】の効果発動!墓地の【重騎士プリメラ】を永続罠扱いで魔法・罠ゾーンに!」

「ちょっと待ってそのアドの塊(プリメラ)使いまわすの!?」

「言い方が悪いけどそうだよ!」

 

 

聖也 LP8000 手札3枚

EXモンスターゾーン 騎士皇レガーティア

魔法・罠ゾーン   重騎士プリメラ(永続罠扱い)

          従騎士トゥルーデア(永続罠扱い)

フィールド魔法   スタンドアップ・センチュリオン!

 

相手の行動によっていよいよディアベルスターに気を回す余裕がなくなって来た。

プリメラというアドバンテージを一気に稼ぐ優秀なチューナーモンスターが再び出撃の準備を整えたのだ。

これななりふり構っている場合ではないだろう。

 

「私のターン、ドロー!私は手札から【ハーピィの羽箒】発動!」

「そうは行くか!【重騎士プリメラ】の効果と、それにチェーンして【従騎士トゥルーディア】の効果を発動!永続罠扱いの【従騎士トゥルーデア】、及び【重騎士プリメラ】を魔法・罠ゾーンから特殊召喚!この時に【従騎士トゥルーデア】自身の効果で【重騎士トゥルーデア】のレベルを4上げて8に!おまけに【スタンドアップ・センチュリオン!】は僕のフィールドに【センチュリオン】()()()()()()()()があれば破壊されることは無い!」

「―――は?…え?ウソでしょ?え?ねぇ、嘘だと言ってよ、ディアぁ!」

「…オレ…こんなに現実見たくねぇって思ったの初めてだぜ…。」

「嘘だこんな事ぉぉぉぉぉッ!」

 

一世一代の賭けであった【ハーピィの羽箒】は埃一つない綺麗な床を掃くにとどまった。

俗にいう「無駄撃ち」というやつである。おかげで折角引き込んだ制限カードが意味を為さないものになってしまった。

 

「…というわけで特殊召喚に成功したから【スタンドアップ・センチュリオン!】の第三の効果発動!それにチェーンして【重騎士プリメラ】の効果発動!逆順処理で【重騎士プリメラ】の効果で【センチュリオン】カード…【騎士の絆(フェイス・オブ・センチュリオン)】を手札に加えて―――【スタンドアップ・センチュリオン!】の効果で【センチュリオン】モンスターを素材にシンクロ召喚するよ!」

「…なんでシンクロ先に縛りが無いんですかぁ!?」

「あったらロマンにならないからね!」

「それは「ロマン」じゃない!「虐殺」だぁーっ!」

 

しかも下手に動いたことにより更なる動きを相手に許してしまう。

シンクロ召喚されるモンスターのレベルは12。シンクロモンスター事態に縛りはないと考えると非常に不味い。あのカードを出されたら冗談抜きで何も出来なくなるのだ。

 

「レベル8【従騎士トゥルーデア】にレベル4【重騎士プリメラ】をチューニング!シンクロ召喚【赤き竜】!」

「…ああ終わった…。」

「というわけで召喚成功時に【赤き竜】の効果発動!」

「…ああもう!手札から速攻魔法【"罪宝狩りの悪魔"】発動!デッキから【黒魔女ディアベルスター】を手札に!」

「【赤き竜】の効果を場の【騎士皇レガーティア】を対象として発動!【騎士皇レガーティア】のレベルは12!従ってEXデッキから同じレベル12である【琰魔竜王(えんまりゅうおう)レッド・デーモン・カラミティ】をシンクロ召喚扱いで特殊召喚!」

 

二人の騎士に導かれるようにして現れたのは赤き竜である。その赤き竜はフィールドに降り立つと天に向かって嘶いた。

そうしてレガーティアがその上に搭乗し、赤き竜とレガーティアが空へと駆けあがっていく。

そうして赤き竜は消え、レガーティアは新たなドラゴンを連れて戻って来た。

そのドラゴンが放つ炎によって、鈴花のフィールドが一瞬にして焼け焦げ、死の大地へと化してしまう。

 

「【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】の効果は知っているね!?」

「このターンフィールドで発動する効果を私は使えない…!」

「その通りだ!」

 

これでは【スネークアイ】の効果も使えず【蛇眼の炎龍】さえ出すことが叶わない。

―――相手ターン中に効果封殺は果たして存在していいレベルなのであろうか。甚だ度し難い効果である。

手札に罠カードがある事にはあるが、それは自分場の【スネークアイ】モンスターのレベル合計が二以上の場合にのみ使える【睨み統べるスネークアイズ】である。

一枚も場になければ当然【睨み統べるスネークアイズ】は発動できない。

 

「…私は手札の【黒魔女ディアベルスター】を、手札【ヴォルカニック・バレット】を墓地に送ることで特殊召喚するよ。…墓地の【ヴォルカニック・バレット】の効果で500のLPを支払い【ヴォルカニック・バレット】を手札に。…これでターンエンド。」

「エンドフェイズ時【騎士皇レガーティア】の効果発動。【重騎士プリメラ】を魔法・罠ゾーンに。」

 

鈴花 LP8000→7500 手札3枚

モンスターゾーン 黒魔女ディアベルスター

魔法・罠ゾーン  伏せ×1

 

聖也 LP8000 手札4枚

EXモンスターゾーン 騎士皇レガーティア

モンスターゾーン  琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ

魔法・罠ゾーン   重騎士プリメラ(永続罠扱い)

フィールド魔法   スタンドアップ・センチュリオン!

 

―――結局、結はまともに動くことすら敵わずに聖也にターンを渡すことになる。しかもアドバンテージ獲得能力が非常に高いプリメラの出撃の準備を完了させて。

しかし、これが今の結にできる精一杯なのだ。これを崩されたのならば最早どうこう言うまでもなく、自分が弱いという事なのだろう。

 

「…僕のターン…!」

 

そして、再び始まる聖也のターン。

このデュエルの行く末は、鈴花の伏せカード一枚によって左右されることになる。




登場人物紹介

・鈴花
逆転の一手があるようだが…?

・聖也
ここから返されることは無いだろうと考えてはいるが、返されたら返されたで認めることができる。

・霊使、ウィン
外野。
何故か機動武闘伝やら天元突破やらの知識がある。

なんでカードイラストはグレ〇ラガ〇なのに、口上はG〇ンなのかって?
それは私がG〇ン大好きだからです。
ちなみに一番好きなのはドモンでもレインでもなくシュバルツです。
次回をお楽しみに…!

水樹君のデッキ強化

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