場のカードの枚数から見れば優勢なのは聖也の方だ。当然、この聖也のターンで決着がつくと考えている人間も多いだろう。
聖也自身もこのターンで終わらせるつもりではある。しかしながら、ここで一つの不安要素があった。
それは前のターンに鈴花が伏せていたカードだ。
残念なことに手札に今発動できる魔法・罠カードを除去するカードはない。
(…アレがミラーフォースのようなカードならあるいは…。…いや、ここはここで決めきる…!)
伏せカードがどんなカードなのかは分からない。ただ、一つ言えるのはあのカードに対していくら警戒しても仕方が無いという事くらいだ。
相手がどんなカードを使ってくるか未知数である以上、どうあってもカードの内容を予測できるわけが無い。
(…ここは一気に…!)
「僕は魔法カード【
だから、今の聖也にできる事はいつも通りの展開を維持する事だった。
「そしてそのまま【従騎士トゥルーデア】と【重騎士プリメラ】を特殊召喚!【スタンドアップ・センチュリオン!】の効果と、それにチェーンして【重騎士プリメラ】の効果を発動!」
この時、聖也は判断を誤ったとしか言いようがない。
もし、聖也が【スタンドアップ・センチュリオン!】の効果をここで発動しなければ、このターンで決着がついたのかもしれない。
「―――ここだぁぁぁ!速攻魔法【死の罪宝‐ルシエラ】を自分のレベル7以上の魔法使い族モンスター―――【黒魔女ディアベルスター】を対象にして発動ォォォォ!」
「―――しまっ…!」
「相手の場のモンスターは【黒魔女ディアベルスター】の攻撃力分だけ攻撃力が下がり【黒魔女ディアベルスター】自身は他のモンスター効果を受けずに次のターンのスタンバイフェイズに墓地に送られる!従って2500!攻撃力を下げてもらいますよ!」
しかし、ディアベルスターが所持しているもう一つの【罪宝】によって、聖也の目論見は崩れ去る。
ディアベルスターが鎌を振ったかと思えば、翠緑の斬撃が周囲一帯を削り取る勢いで聖也の場のモンスターに襲い掛かって来た。
無数の斬撃に刻まれてレガーティアやレッド・デーモン・カラミティの能力がガタ落ちしてしまう。
しかし、その一撃の被害はそれだけにとどまらなかった。
「そして【死の罪宝‐ルシエラ】の効果で攻撃力が0となったモンスターは破壊される!」
「…くっ!」
折角特殊召喚した【重騎士プリメラ】と【従騎士トゥルーデア】は無数の斬撃に耐えることが出来ずにそのままダウン、墓地へと戻る事となった。
カードイラスト通りに粉微塵に刻まれなかっただけマシなのだろうが。
「…攻撃力が届かない…!」
やはり、「2500」という下降幅は非常に大きく、結局攻撃できずにターンエンドを宣言することとなった。一応レガーティアを守備表示にはしたが、次のターンでいとも容易くこの盤面を乗り越えてくることだろう。当然次のターンに備えるための【重騎士プリメラ】を墓地から魔法・罠ゾーンに移動させるは忘れるべくもないが。ちなみにだが、特殊召喚した【重騎士プリメラ】の効果自体は生きているのでデッキから【騎士の絆】をちゃっかり回収していたりもする。
聖也 LP8000 手札5枚
EXモンスターゾーン 騎士皇レガーティア(守備表示)
モンスターゾーン 琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ
魔法・罠ゾーン 重騎士プリメラ(永続罠扱い)
フィールド魔法 スタンドアップ・センチュリオン!
―――ブラフとして【騎士の絆】を伏せる事を考えたが、それは止めた。
今の聖也の手札には【抹殺の指名者】や【墓穴の指名者】、【増殖するG】や【灰流うらら】といった汎用カードはほとんどなく、そのほとんどがサブプランである【Em トリック・クラウン】や【召喚僧サモンプリースト】といったカードである。
これらも汎用カードといえばそうなのだが、如何せん、このデッキの主役はあくまで【センチュリオン】だ。
しかも【センチュリオン】を用いた展開を主としているのだからあくまでこちらは予備用の手段である。
それに加えて【センチュリオン】はその性質上、すぐにモンスターゾーンが埋まってしまう。そういうこともあってかよっぽど最初の手札が悪くなければこのカードたちに出番はそこまでないというわけである。
しかも今回に至っては出したところで【黒魔女ディアベルスター】を突破できるわけでも無い。
(最も出したところで【死の罪宝‐ルシエラ】に蹂躙されて終わりだった言うね…。)
それほどまでにこの【死の罪宝‐ルシエラ】は聖也に刺さったという事だ。
しかもよりにも寄って攻撃力低下は永続だ。例え、このモンスター達を今この場に残していたとしてもそれは相手にとってのいい的でしかない。
(―――とんでもない逸材じゃあないか…ッ!)
しかもこれから始まるのは相手のターンだ。
攻撃力が下がって戦闘破壊されなくなったとはいえそれでも攻撃力1000はキツイ。
しかもレベル12シンクロの攻撃力が1000と、見るも無残な値にまで減少している。それだけあの一撃がレガーティアに深く残ったというわけなのだろう。
(…面白くなってきたじゃないか…!)
やはりデュエルは血沸き踊る高揚感が無ければつまらない。
―――なんでプリメラが彼女と自分を引き合わせてくれたかよくわかった気がした。
(真に楽しいのは、ここからかな…!)
強い相手とのデュエルというのは、楽しいものだから。
―――これだからやめられない!そう考えつつ鈴花のターンを迎えたのであった。
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鈴花は限りあるリソースをどこまで使い切るか、それだけを考えていた。
出来る事ならさっきのターンにそのまま展開しきりたかったのであるが、やはり【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】の制圧によって少なくない打撃を受けたのだ。
「…私のターン…!ドロー…!スタンバイフェイズに【黒魔女ディアベルスター】は墓地に送られる。…知ったことか!私は手札から魔法カード【死者蘇生】を発動!効果で墓地から【黒魔女ディアベルスター】を特殊召喚!【黒魔女ディアベルスター】は特殊召喚成功時にデッキから【罪宝】カード一枚を手札に加えることができる!従って【裏切りの罪宝‐シルウィア】を手札に!さらに…【ヴォルガニック・バレット】を召喚!手札から【原罪宝‐スネークアイ】発動!【ヴォルカニック・バレット】を墓地に送りデッキから炎属性レベル1である【スネークアイ・エクセル】を召喚!」
今ある手札を使い切ってでもある程度の盤面を作らなくてはならない。
正に血反吐吐きながら続けるマラソンそのものである。
しかしながら敵対関係であるというのにどうしてこんなにデッキの相性が良いのだろうか。
「―――さっきカードイラストでバラバラにされてなかった…?」
「なんで相性いいんでしょうね、ホント…。」
もっとも、それはディアベルスターの汎用性の高さが原因なのだろうが。
聖也の問いにあいまいな答えで返す鈴花。
とにかく、今は回せるだけ回さなくてはならないのだ。
限りあるリソースの中で、どれだけ多く、どれだけ素早く、そしてどれだけ制圧盤面を作れるか。
重要なのはそこだ。
「…【スネークアイ・エクセル】の効果でデッキから【スネークアイ・ワイト・バーチ】を手札に加える。【スネークアイ・ワイト・バーチ】はフィールドの炎属性モンスターが存在すると、特殊召喚できる。…なので【スネークアイ・ワイト・バーチ】を召喚したいです!」
「…【
「…よし!そのまま【スネークアイ・エクセル】の効果発動!【スネークアイ・エクセル】と【スネークアイ・ワイト・バーチ】をリリースしてデッキから【
そうして鈴花は自身のデッキと双璧を為すもう一枚の切り札であり【スネークアイ】の主たる【蛇眼の炎龍】の特殊召喚にこぎつけることに成功した。
「そして、【蛇眼の炎龍】の効果発動!自分、もしくは相手の墓地のカードから一枚選び、それを永続魔法扱いでそのカードの持ち主の魔法・罠ゾーンに置きます!私は…墓地の【スネークアイ・エクセル】を置きます!さらにさらに墓地の【ヴォルカニック・バレット】の効果発動!500LP払いデッキから三枚目の【ヴォルカニック・バレット】を手札に!更に墓地のの【スネークアイ・ワイト・バーチ】を対象にに手札から【ファイヤー・バック】発動!手札の【ヴォルカニック・バレット】を墓地に送って【スネークアイ・ワイト・バーチ】を守備表示で特殊召喚!そしてさらに【ファイヤー・バック】を除外して効果発動!墓地の【ヴォルカニック・バレット】三枚を戻してデッキから一枚ドロー!」
鈴花 LP7500→7000
鈴花は限られた手札の中で動けるだけ動けるように動いた。手札三枚というハンデや足枷は重いものだったがそれでも、なんとか最低限、迎撃の動きを取ることはできたか。
一応、【スネークアイ・ワイト・バーチ】の守備力は2100もある。もし、レガーティアを並べられても最終的には何とかなるはずだ。
「…バトル!まずは【
聖也 LP8000→6500
【死の罪宝‐ルシエラ】による攻撃力ダウンは永続的に続く。
従って、フランによってレッド・デーモン・カラミティは破壊された。ちなみに巻き付いて締めあげて破裂させていた。どうやら相当鬱憤が溜まっていたみたいだ。
「…続いて!【黒魔女ディアベルスター】で【
「了解だ、鈴花ぁ!」
そして鈴花はディアベルスターにレガーティア攻撃の指示を出す。当然、彼女達も迎撃する―――が。
レガーティアには【死の罪宝‐ルシエラ】によって刻み込まれた傷がある。
肩の武装を取り外して必死に応戦するレガーティア。そんなレガーティアに対して短刀を構えて吶喊するディアベルスター。これではどちらが悪役か分かったものではない。
「思いっきり刻んでやるよ!このオレが齎す恐怖をなぁ!」
『うじうじ悩んでるよりそっちの方がいいじゃない!―――でも負ける気は無いかんね!ぶっとばしたげるわ!』
一合、二合、三合、四合。
ディアとレガーティアが接触するたびに少しずつルシエラによって刻まれた罅が純白の鎧に広がっていく。
ディアベルスターは確実に、レガーティアの撃破に近づいていた。
「これで…!どうだぁあぁぁぁあ!」
『負けるかぁぁぁぁぁあああぁぁ!』
しかしこのままでは時間がかかりすぎると踏んだのか、それとも互いに次の一撃で決めるつもりなのか。
ディアはルシエラとシルウィアを励起させ、レガーティアは残存エネルギーの全てをランスの形成に使った。
そして二人の全力が大きな音を立ててぶつかり合う。
ほんの少しのせめぎあいの後、ディアベルスターが少しずつレガーティアを押し始めた。
「うおらぁぁああぁぁ!」
そうして―――ついに純白の鎧は砕けて、その場にはディアベルスターだけが立つことになったのだ―――。
―――しかし。
砕けた筈のレガーティアの鎧は少しずつ再生していく。
気付けば、レガーティアはすっかり元通りに戻っていた。―――それでもルシエラに刻まれた傷が癒えないあたりその威力―――というか死の罪宝そのものの凄まじさもうかがえるのだが。
しかもなんとフランが斃したはずのレッド・デーモン・カラミティも健在であった。
「攻撃力2000以下のモンスターは戦闘では破壊されない…!これが、レガーティアの能力…!」
「…でもダメージは受ける。」
―――なんで守備表示にしなかったのは永遠の謎だ。
まだ使えると思ったのか、それとも【死の罪宝‐ルシエラ】に度肝を抜かれたからなのか。
どっちにしたって、人見知りの鈴花に誰かの真意を測るのは難しい事だろう。
聖也 LP6500→5000
「私はカードを二枚伏せてターンエンド!」
鈴花 LP8000 手札0枚
モンスターゾーン 黒魔女ディアベルスター
スネークアイ・ワイト・バーチ
魔法・罠ゾーン スネークアイ・エクセル(永続魔法扱い)
伏せ×2
今の状況は鈴花にとって押せ押せの状態だ。うまく行けばこのターンで相手を壊滅させることだってできる。それでも油断はしない。
油断をしたらその隙に致命の一撃を入れられて、簡単に負けてしまうからだ。
今の自分の優位は薄氷一枚あるかどうかの差でしかない。
次の相手の手札次第によっては簡単にひっくり返されるのかもしれないのだから。
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(【死の罪宝‐ルシエラ】の攻撃力低下って永続なのぉぉぉぉ!?)
(ちゃんと効果を確認しなさいよ、バカぁ!)
(普通はそのターン中でしょうよ!)
(でも今回は確認しなかったマスターが馬鹿だナ。)
聖也はテキスト確認を怠っていたことを寄ってたかってプリメラとトゥルーデアに弄られていた。表面上は至って冷静だが、内面はテキスト確認を怠ったばっかりに引き起こされた事態への焦燥でいっぱいいっぱいである。
そんなこともあってか、二枚の大型シンクロを守備表示にするのをすっかり失念していたというわけだ。精神的な動揺から来るプレイミスというやつである。
「―――効果は無効になってないね!ヨシ!【従騎士トゥルーデア】を【騎士皇レガーティア】の効果で魔法・罠ゾーンに!そして僕のターン、ドロー!…そのまま【重騎士プリメラ】を魔法・罠ゾーンから特殊召喚!そしてその効果にチェーンして【従騎士トゥルーデア】の効果発動!魔法・罠ゾーンから特殊召喚!」
【センチュリオン】は確かに強力無比なデッキだが、マストカウンターが見極められやすい。
例えば、初動カードである【重騎士プリメラ】の効果を阻害されるとか、である。
「―――その効果にチェーンして罠発動【睨み統べるスネークアイズ】!効果で【騎士皇レガーティア】を永続魔法扱いで、魔法・罠ゾーンに!」
「…そして、【プリメラ】と【トゥルーデア】が場に出て来る!【プリメラ】の効果発動!デッキから【
「…【スネークアイ・ワイト・バーチ】の効果発動!このカードと永続魔法扱いの【スネークアイ・エクセル】を墓地に送ってデッキから二体目の【蛇眼の炎龍】を場に!」
聖也は鈴花の場に伏せてあるカードが気になって仕方が無い。
一枚は先ほど加えた【裏切りの罪宝‐シルウィア】なのだろうが―――もう一枚の予測が立たないのだ。
「…二体でシンクロ!【騎士皇レガーティア】を場に!特殊召喚成功時デッキから一枚ドローしつつ君の場の最高攻撃力を持つモンスターである【蛇眼の炎龍】を一体破壊する。」
だが、ここで【裏切りの罪宝‐シルウィア】を発動しないあたり、何か考えがあるに違いない。
それでも二体目の【騎士皇レガーティア】の効果を通してくれたという事はそこまで悪い事ではないのかもしれない。
「…【蛇眼の炎龍】は相手ターン中に墓地に送られたときに墓地からレベル1・炎属性モンスター二体を特殊召喚する効果を持ちます。…従って【スネークアイ・エクセル】と【スネークアイ・ワイト・バーチ】を場に。更に【スネークアイ・エクセル】の召喚成功時にデッキから【スネークアイ・オーク】を手札に。」
「…でも、僕の―――」
「
「…まだ、効果があるっていうのかい?」
そう遠くないうちにこのデュエルに決着がつく。
それがどのような形での決着になるかは分からないが―――聖也も、鈴花もそれだけは確信できていた。
登場人物紹介
・鈴花
勝てそう
・聖也
ちなみに手札に魔法カードはない。
余り好んでサモプリは使わないので割とピンチ
内心めっちゃ焦っている。
中途半端な所で斬ることになったのは私のせいだ。
だが私は謝らない。
というわけで色々と追い込みもあるので今回はここまでです。
もしかしたら来週からしばらく投稿ペースが落ちるかもしれません。
それでは次回もお楽しみに!
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