鈴花と聖也のデュエル。
それは既に終盤、あと一歩でどちらかがどちらかを詰め切るという状態にまでなっていた。
鈴花は手札0枚ながらも、有効なカードを置く揃え、聖也は鈴花とは逆で手札は多いながらも有効なカードのほとんどが存在していないような状態だ。
具体的に言えば手札七枚でまともに作用するのは【騎士皇爆誕】と【騎士の絆】の二枚。
更にそこに追い打ちを掛けるように飛んでくる相手のカードの効果。
泣きっ面に蜂、一難去ってまた一難―――この状況を言葉で言い表すのであればきっとそうなる。
「【
「その効果は―――
「僕のフィールド上にある永続魔法扱いの【
鈴花のフィールドに現れる純白の騎士の王。
それはもう一人の自分に狙いを定めると、そのまま腰部の兵装を起動。
―――聖也の場の【レガーティア】はものの見事に焼かれてしまった。
「―――【騎士皇レガーティア】やっぱおかしいってぇ…!」
「敵対しているからかひしひしと伝わってくるよ…!」
その強力さは敵対していたときからよく知っている。
それを知っているからこそ、鈴花は迷いなくそのカードを召喚することにした。
強いカードというのは、それだけで相手に大きなプレッシャーとなる。
つまり、デュエルモンスターズにおいてコントロールの奪取というのは自分が受けるプレッシャーをそのまま相手に与えることになるのだ。
―――当然、それが弱いわけが無い。
「あー…こりゃ厳しいな…。」
一方の聖也は少し諦めたかのように頭を掻いていた。
一応まだ戦える。
だってまだ通常召喚権は残っている。
ただ、聖也にはここからどうしても鈴花に勝てる展開を思いつくことが出来なかった。
相手の場に【裏切りの罪宝‐シルウィア】が伏せられている以上、最低でも二度、展開できる効果が必要だ。それにドローカード次第ではこのまま押し切られる可能性もあった。
「…【召喚僧サモンプリースト】を召喚。守備表示にして…効果発動。」
「【裏切りの罪宝‐シルウィア】発動。【ディアベルスター】を墓地に送って無効に。…その後、【黒魔女ディアベルスター】の効果発動。相手のターン中、このカードが墓地に送られたときに発動できる。手札一枚をコストにして【黒魔女ディアベルスター】を召喚!コストには【超電磁タートル】!そして【黒魔女ディアベルスター】は特殊召喚に成功した時にデッキから【罪宝】カード一枚をセットできる!私は【死の罪宝‐ルシエラ】をセットします!」
「!!???」
【超電磁タートル】は墓地から除外することでバトルフェイズを強制終了する効果を持ったカードだ。
しかもセットカードには【死の罪宝‐ルシエラ】。このカードの恐ろしさは十分に思い知っている。
そして聖也はそこまで時間をかける事無く一つの結論にたどり着いた。
物事を深く考える彼にしては珍しく、簡潔に、単純に、この状況を言い表せる言葉を紡ぐ。
(こりゃ、無理だ…。)
このターンにモンスターを召喚しても次のターンに【死の罪宝‐ルシエラ】からのモンスター一斉攻撃でどのみち敗北だ。
負けを認めるのは早いか遅いかのどちらかでしかないのだ。
「…僕は、これでターンエンド。」
「私のターン、ドロー。…速攻魔法【死の罪宝‐ルシエラ】を発動。更に手札から【スネークアイ・エクセル】召喚。効果でデッキから【スネークアイ・ワイト・バーチ】を召喚して…デッキから三体目の【蛇眼の炎龍】を召喚!」
―――追い打ちかけて来るなんて非情だなぁ、だなんて思いつつ。
最終的に聖也は鈴花のデッキに押し切られたのであった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「はぁ…負けた負けたぁ…。」
聖也は鈴花とのデュエルに敗北して、そう大きく息を吐いた。
一方の鈴花は未だに「自分が勝った」という事に実感がわいていないようだった。
それも当然かもしれない。
なんだって、鈴花は開幕に【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】の完全ロック効果を喰らい、一時はピンチというのもおこがましいほどに追い込まれていたのだから。
それに、相手の聖也が相当な強者だったという事もある。
「実感がわかねぇか、鈴花?」
「…うん。…「本当に勝てたんだ」っていう実感が、どうしても、ね…。」
そんな内面をディアベルスターに見透かされていた。
デュエルに絶対はないと知っていても、それでもあの先攻制圧からひっくり返して勝てたという事実が信じられない。
「…それが、お前の実力さ。…もっと胸張っていいんだ。」
「そう、なのかもね…。」
鈴花の人見知りは結局自分の自信の無さからくるものだ。
自分に自信がないから、―――或いは、自分に醜いところしかないと思っているから。
だからこそ、彼女は人を自分の心の奥底へ深く立ち入らせようとしない。
「で、そう言うディアはどうなのさ?相当悩んでたみたいだけど?」
「…オレは、まぁ…うん。そうだな。…ぜいたくな悩みだったってこったな…。」
「…?」
「…気にしないでくれ。今のはオレの独り言だ。」
―――結局鈴花はディアの悩みについてほとんど知らないうちに、ディアが自身でその答えを見つけてしまった。
解決したのならばいい事であるのだろうが―――それでも少し、もやっとする結果になってしまった。
「人の心は難しいナ。」
「まあね。色々な事があって悩むのが人間なの。…トゥルーデアもよく知っているでしょ。」
「…そうだナ。悩んで前に進んで、時にはぶつかってまた悩んで…。そうして互いにとってのベストな位置を探していク。私もプリメラからいろいろ学んだゾ。」
その様子をプリメラとトゥルーデアに見られて恥ずかしい思いをしたのは言うまでもなかったのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
聖也と鈴花のデュエルから数日後――――
「【憑依装着―ウィン】で【黒魔女ディアベルスター】を攻撃!」
「―――まぁたまけたぁ!」
「【ティアラメンツ・ルルカロス】で【騎士皇レガーティア】を攻撃!」
「相打ちになったら負けるって!―――アッー!」
海斗を含めた霊使、鈴花、聖也の四人は部室でデュエルに興じていた。
鈴花は相変わらず霊使に勝つことは出来なかったが、それでもいくばくかは食い下がれるようになってきた。
自身の使うカードの特性を段々と理解し始めたからだろう。
だからこそ「食い下がる」ことができるようになってきたと言える。
それでもまだ「食い下がる」止まりなのは悔しいところではあったが。
(それだけ扱いなれてるって事なんだろうなぁ…。)
―――考えてみれば、霊使は自分のデッキであの地獄を戦い抜いて、勝利を掴んだ。その時のデッキからそこまで変わっていないと本人は言う。
―――つまりそれだけ扱いなれているという事だ。
それだけ熟練しているという事でもあり、その分自分のデッキの特性を理解しているという事だ。
―――なんで勝てないのか?と聞かれたらまず真っ先に【黒魔女ディアベルスター】の効果を【大霊術‐「一輪」】やら、【閉ザサレシ世界ノ冥神】といったカードで妨害されることが原因だとあげるだろう。
手札から特殊召喚すれば、【閉ザサレシ世界ノ冥神】のリンク素材にされ、自身の能力で蘇生もできず、ならばと無理矢理蘇生しようものなら大霊術の効果で効果を無効にされる。
つまり―――
(くっっっっそほどに相性が悪い!)
―――というわけである。
どんなに強力なデッキでも相性そのものが悪ければ機能不全に陥る場合も多い。
例えば、海斗の扱う【ティアラメンツ】と、聖也の扱う【センチュリオン】では―――
「【古衛兵アギド】の効果!デッキから【古尖兵ケルベク】が墓地に!【古尖兵ケルベク】効果!【墓守の罠】セット!更にさらに融合効果も誘発!【ルルカロス】!【カレイドハート】!【キメラフレシア】!」
「【プリメラ】と【トゥルーデア】が全部墓地に!?」
と、初動カードを全部墓地に送られて負けるだなんてこともありうる。
というか目の前で実際に起きている。
―――これは【ティアラメンツ】が例外なだけだろう。割とそうであってほしい。そうであれ。
とにかく、相性の差もある意味では重要な事だと思い知った。
なるほど、これは勝てないどうこうと騒いでいる場合ではない。
「―――ディアとならどこまでもいける気がする…!」
「―――ハッ!お前ならそう言うと思ったぜ、鈴花。」
だから鈴花は、黒魔女と一緒に何処までも羽ばたいていこうと、そう心に決めたのだ。
「―――あ、でもちゃんとフランと仲良くするようにね!」
「ぜ…善処する…。」
―――とにかく、二人と一匹が歩み始める道は、ここから始まるのだ。
登場人物紹介
・鈴花
人見知りは治らないけど―――
それでもどこまでも行きたい。
ディアとフランの三人ならきっとどこまでもいけるから
・ディアベルスター
・フラン
仲は悪いけど主の為なら力を合わせることもやぶさかではない。
・霊使
バグっているような主人公。
実際ちょっとバグっている面もある。
二章はもうちょい続くんじゃ。
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア