部員探しに奔走せよ
6月中旬。
聖也にとって数少ない異性の友人が聖也の部活を訪れていた。
彼女はこの学校の生徒会長で、数少ない聖也の理解者だ。
―――何故なら彼女も精霊を連れているから。
それはともかく。
雨がしとしとと降り注ぐ中、聖也にとんでもない事実が告げられる。
しかしそれは至って当然の理由で告げられたものだった。
「これ以上部員来なかったら廃部ね。」
「―――え!?」
「今4人だよね?最低五人いないと部活として認められないのは知ってるよね?」
至って普通の、校則に書かれていることだ。
しかしそれを聖也はど忘れしていたのだ。
そもそもの話だが、そんなに廃部になる部活もないのでこの校則が適用されること自体珍しいのだ。これも一般人から見た聖也の変人っぷりが高じた結果だ。
「ま、そういう訳であと一人集めてきてね。貴女が引退する前に五人になればギリギリで来年までは残せるから。」
そんな事もあってか、とうとう会長直々に最後通牒を下してきた。
当然、聖也は会長の名前を呼んでその行為に待ったをかけようとする。
「ちょちょちょっと待ってよオリエ!」
「そのセリフを何度聞いたことか!あなたねえ、去年は新規の部活が立ち上がらなかったから何とかなったけど今年は転入生も侵襲性も多いからそうはいかないの!これでも新規部員が入ったってことでもう一年延ばしてもらえるんだから!」
会長―――オリエは、そう聖也にまくしたてた。
本来なら中高一貫校で、外部からの入学者はごくわずかというような環境だが、今年は違った。
そのおかげでもう部室に余裕がないのである。
そういうわけで、これが文字通りの最後通告という訳なのだ。如何に人望の厚いオリエといえども、これ以上はもう「廃部にすべきでは?」という声を抑えきれないのである。
「じゃあ、オリエが入ってよ!」
「私が入ったら余計に「廃部にしろ」ってせっついてくるわよ!あなたと私珍しい外部入学組なんだから、つるんでると「贔屓」されてるって思われるわよ!というか今既に若干思われてるの!」
「―――なんてこったい!」
「頭抱えたいのはこっちよ!とにかく!あと一人だけでもいいから集めて!そうしたら声は抑えられるから!」
「嘘だこんなことぉぉぉぉ!」
―――こうして、聖也のデュエル部は廃部一歩手前になった。
これは、そんなところから始まる二人の少女のちょっとしたお話である。
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「―――というわけで誰か部員の宛てはある?」
「二人以外の友人が全員外部に行っちゃったのでないです。」
「あるわけがないです。何せ色々と事情がったので。」
「あったらぼっちやってません。」
以上の経緯を部員に話して、そうして帰って来たのは、身も蓋もない―――しかし、何とも納得せざるを得ない理由で告げられた「宛てがない」という答え。
何となくは分かっていたのだが、こう口にされて回答されると胸の所がちくりと痛くなってくる。
これではこの部活はボッチの巣窟ではないか。
―――その言葉を口にしなかっただけ、聖也は分別があった。
「…ど、どうしようか?」
「俺達に聞かれても…」
「ねえ、としか…。―――あ。」
三者三様の答えであるようで、事実上当てがないという事しか分からない会話。
そこで鈴花は、思いがけず一人の少女の顔を思い出した。
六武衆を使っていた少女―――紫焔凪だ。
ただ、まあ彼女には少しばかり心配事もある。以前、微かにだが敵意を感じたような―――そんな気がしたのだ。
「…誰か当てがあるんだね?」
「…といっても以前何回かデュエルした程度の仲ですよ?」
「十分さ。とにかくその子にお願いしてきてくれないかい?」
ただ、聖也としては鈴花の宛てに縋るしかないという事も鈴花自身が十分に理解している。
だから、鈴花は仕方が無いとばかりに大きなため息を一つ吐いて。
「期待は―――しないでくださいよ?」
そう、聖也に告げた。
別に彼女とは仲がいいわけでは無い。しかし、鈴花はこの部活を守るためなら、今まで自信が無かったことでもきっとできると思えるようになった。
この学校での居場所をくれたこの部活にために何かしたいと、心の底から思えるようになったのだ。
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鈴花は翌日、紫焔凪の所に突撃することにした。
善は急げ、あるいは「思い立ったが吉日」といったところだろう。
放課後、何とか凪を捕まえることに成功した鈴花はありのままの事情を話した。
その結果は―――
「…無理です。」
「ですよね。」
「はい、他の部活に入っているわけではありませんが、放課後は実家の手伝いがありますので。」
「…そっか。」
一言で言えば取り付く島もなく断られた。
考えてみれば当然というか、当たり前というべきか。
彼女の事を知らないのだからそもそも実家の手伝いだとかそう言う感じの事情を知るわけが無い。
「…ちなみに凪ちゃんに宛てってあるのかな?」
「申し訳ないですが…。」
こうなると彼女の宛てを頼るしかないのだが、彼女にも部活に入っていないフリーな人材の宛てはないという。
彼女には彼女の事情があるのでしょうがないところではあるのだが、宛てが一瞬で消えてしまった。
「ぬぐぐぐ…。」
「あの…本当に他に宛ては―――」
流石に友人の一人や二人はいるだろう。
そう考えたのかどうか知らないが、凪は鈴花にそう問いただした。
当然、凪も鈴花の事を深くは知らないのである。
「いたらこんなに悩んでないよぉぉぉう…。」
「ああ…。」
「そんな可哀想な生き物を見る目で見ないでぇ!」
が、その質問は当然鈴花にとって地雷の訳で。
結果鈴花の顔は見るも無残に変形した。それはもう原形の無いほどに崩壊した。
現実で作画崩壊なんて起こるんだなぁ、なんてのんきなことを考えつつ凪はこの目の前の異形にどう接するべきかを考えていた。
―――流石に怖い。
そう思った凪を誰も責めることはできないだろう。
だって、傍から見れば顔と口がぐちゃぐちゃに描かれた線のようになっていたのだから。
そう見えるだけでも十分な恐怖なのだ。
「…なんというか…その…これしか思いつかないんですが…俗にいう『ドンマイ』というやつなのでしょうか…。」
「はぐわっ!」
―――こうして鈴花の精神は燃え尽きた。
部室に帰って来た鈴花の姿は、真っ白に燃え尽きた灰であったかのようだったという―――。
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―――変わっていた。
以前決闘した時よりもずっと、
悔しいというか、まともになって何よりというか。
今まで敵意しか抱いてこなかった相手と話していたはずなのに、どうしても彼女の事を気にしだしてしまう。
一体何が彼女を変えたのか。
どうしてもそれが知りたいのだ。
(それに比べて私は…。)
自分は何も変わっていない。むしろ、彼女と比べて自分は醜く見えてしまうだろう。
彼女の成長はそれだけ目を見張るものがあるということだ。
それが分かっているからこそ、自分はどれだけ成長したか、というのをまざまざと見せつけられている気がする。
(貴方は…本当に強いのですね。)
本当は、部活にだって参加してみたかった。
もっと、彼女と話してみたかった。
だが、自分にそれは許されない。あれだけ彼女を追いこんでおいて、今更自分にそうする資格など無いのだ。
もし、もっと早く。
もし、後少しでも早く。
桜庭鈴花という少女に出会っていれば、自分も何か変われたのだろうか。
変わらないと言いながらも変わり続ける彼女と一緒に自分も少しは変わることが出来たのだろうか。
それが気になる。
どうしようもないくらいに気になって仕方が無いのだ。
「私には…何があるのでしょうか。」
自分には「変わる自分」さえありはしないというのに。
「変われる自分」を確立した彼女と自分とでいつの間にか大きな差が生まれてしまったかのような気分だ。
(…あれが部活に参加することを許すとは思えませんし…。はぁ…。)
何度目か数える事さえ飽きた溜め息がまた曇りの空に溶けて消える。
彼女もまた「今の自分の在り方」に悩む一人の少女なのだから。
何もないがゆえに、何でもしてきた少女。
そんな少女は本当にほんのちょっとしたきっかけから大きく変わっていくことになる。
「―――凪ちゃん!やっぱ一緒に部活しよう!」
「…えぇ…?」
始まりはいつだって突然に、そして無理矢理運命に割り込んでくるものなのだから。
登場人物紹介
・紫焔凪
この章の主人公の内の一人。
彼女の家は色々と複雑ではあるが―――。
ちなみ前科0犯。カルトに殺人的な裏にはほとんど関わっていないが一応一通りの対人戦闘技能をもっている。
純粋な戦闘力ならOTONAにもタメはるレベルで強い。
・桜庭鈴花
この章の主人公の内の一人。
前章でどんな感じに成長したのかがこの章で描かれる。
戦闘力は5。
・霊使/海斗/聖也
ここからおにゃのこ同士の話が始まるのに男入れる必要があるんか?
友人だから出るけどこれまでの章と比べて多少落ちるんじゃねぇかな。
・古賀オリエ
生徒会長。日常の象徴ポジションである。
ちなみにくっつく相手はもう決まっている。
という訳で三章「希望少女と
これ終わったら第二部の主要メンバーが全員揃うので大会編開始ですかね…?
水樹君のデッキ強化
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