凪が散々煽った結果始まってしまった凪とガボンガのデュエル。
こういう手合いは変な所で理性的なのが、凪にとっても救いであっただろう。
もし本当の意味で「問答無用」なのであれば、凪もそれ相応の対応をした。凪としてはそっちの方が―――格闘技術で叩き潰した方が手っ取り早いと踏んでいたいたのだが、ディアベルスターが見ている手前、そんな事は出来ない。というわけで、、凪は自分だけのデッキを握り締めて相手の挑戦を受けることにした。
「先攻は…あなたですか。」
「…このアマぁ…!絶対にぶっ殺してやる…!」
「ふむ、意外と理性的ですね。」
煽るのは忘れないとして―――、凪は相手の事を何一つ知らない。
とにかく、凪は相手の動きを見る事―――それだけに注視する事にした。
「俺は【
「…ふむ、いいでしょう。どうぞ、好きにしてください。」
「…けッ!でかい口叩いていた割には妨害が引けなかったようだなァーッ!じゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜーッ!【百鬼羅刹 特攻ダグ】の効果でデッキから【
どうやら相手のデッキは【ゴブリン】系統と混ぜ物を行う事で真価を発揮する類のデッキだろう。というかそうでなければ「百鬼羅刹」と書いて「ゴブリンライダー」と読ませるわけが無い。
肝心の【ゴブリン】カードが無いのが救いなのか、それともこれからを警戒するべきかは未だに分からないが―――とにかく、どうあったって凪がやることは変わらない。
「【
「ぶん回ってますね。…ええ。さらにレベルを揃えたという事は―――」
【百鬼羅刹】の特徴はX召喚主体のデッキであるという事と、X素材を用いて特殊召喚する効果が多いという事くらいだろうか。
その分手札消費も激しいと言えば激しいのだろうが―――一度回転し弾えればそんな事は関係ないようにも思える。
「…レベル6となった【百鬼羅刹 爆音クラッタ】と、【百鬼羅刹 神速ブーン】で…X召喚!【
ガボンガ 手札2枚 LP8000
フィールドソーン 百鬼羅刹 巨魁ガボンガ(X素材×1)
百鬼羅刹の大饕獣 (X素材×2)
魔法・罠ゾーン 百鬼羅刹大集会
凪は至って焦らない。
焦った所で結末は変わらないと知っているから。
この決闘に自分が勝っても負けても―――この可哀想な行きも奈たちの行く末は決まっているから。
凪が行うのはデュエルではあるが―――それと同時に時間稼ぎでもある。
「私のターン。…ドロー。…メインフェイズ1を終了してバトルフェイズに入ります。」
「モンスターいないのにバトルフェイズだァ?舐めてんじゃあねーぞ、このアマッ!」
「舐めてなどいませんよ。…バトルフェイズ終了時、手札から【拮抗勝負】を発動します。…このカードは自分フィールド上にカードがなければ手札から使えるのです。そしてその効果は―――私のフィールド上のカードの枚数と同じになるように、貴方のフィールド上から貴方がカードを除外する効果!さあ、フェアな勝負と参りましょうか。」
それでも貪欲に勝ちを狙いに行く。
フェアかアンフェアかは置いておいて―――凪にとっての「フェアプレイ」ではあるが―――今は鈴花が目を覚ますまで耐久するのが目的だ。
かといって、価値を狙わないというわけでは無い。俗にいう「倒してしまっても構わんのだろう?」というやつだ。
幸いなことに【蛇眼の炎燐】は既にディアベルスターが確保している。
あとは鈴花が目を覚ますまで耐えれば、少なくとも今ここでの自分の役目というものはおしまいである。後はディアベルスターがボコボコにするなり、鈴花がデュエルで調理するなり何なりとすればいいのだ。
「………俺は…【百鬼羅刹の大饕獣】を場に残す…!」
「分かりました。そのカード以外は全除外という事で…。ついでに【海亀壊獣ガメシエル】をどうぞ。当然、リリースするのは【百鬼羅刹の大饕獣】ですが。」
「…こ、このアバズレが…!」
ガボンガは額に青筋を浮かべてついでに口の端をぴくぴくさせている。
最も【海亀壊獣ガメシエル】はリリースのほかにももう一つ目的がある。ちゃんとした狙いあっての行動だ。
「私は…手札から【
「…な、なにぃーッ!ニ、ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」
―――何故忍者でそこまで驚くのだろうか。
別に彼らはカラテで以て戦うわけではないし「ノーカラテ・ノーニンジャ」の原則もない。当然、アンブッシュは何度だってするし、戦う前にアイサツを交わすことも無い。
あくまで彼らは「忍者」であり―――外人が想像するような「ニンジャ」とは違うのだ。―――恐らくは。
凪は驚くガボンガの姿を見ながら一息にデッキを回していく。
手札は蒸発していくが―――それは相手も似たようなものだろう。
「…私は【宙の忍者‐鳥帷】の効果を発動します。【忍者マスターHANZO】と【宙の忍者‐鳥帷】で融合召喚。…【
それに、相手が【拮抗勝負】のような妨害系統のカードを好んで入れていないことは明白だ。せめてもの【エフェクト・ヴェーラー】辺りは投入していると思っていたが―――あのデッキはもしかしたら冗談抜きで【ゴブリン】系列のカードで埋め尽くされているのかもしれない。
「私は…カードを二枚伏せてターンエンド。」
凪 手札0枚 LP8000
モンスターゾーン 戎の忍者‐冥禪
黄昏の忍者将軍‐ゲツガ(守備表示)
魔法・罠ゾーン 伏せ×2
凪の【忍者】において重要なのは【忍法】罠カードと、いかに場に【忍者】を遺すかという二点である。
【黄昏の忍者将軍‐ゲツガ】の守備力は3000であり、しかも【戎の忍者‐冥禪】は一ターンに一度とはいえ、デッキから【忍者】モンスターを裏側守備表示で召喚できる効果を持っている。
「…はてさて。ここからどうなる事やら。」
ただ―――虎の子でもあった【海亀壊獣ガメシエル】と【拮抗勝負】による事実上の完全除去は一度しか使えないだろう。まずもって【拮抗勝負】は自分がボード・アドバンテージを得ているときには一切合切使えないし、よしんばもう一度使う機会が来たとしても相手はモンスターを除外するだろう。そうすれば、相手はまた魔法カードの効果で展開を再開する。
「…俺のターン、ドロー!…俺は、【百鬼羅刹 爆音クラッタ】を召喚!ここで、効果はつど―――」
「その効果にチェーンしてまずは【戎の忍者‐冥禪】の効果を発動します。この効果は、『相手が効果の発動に成功した時』に発動できる効果です。これで私はデッキから【忍者】モンスターを裏側守備表示で特殊召喚することができます。」
相手が効果を発動したというのならば、それに乗って、自分も動く。
凪はまず、【戎の忍者‐冥禪】の効果でカードを一枚フィールドに増やすことにする。
しかし、それだけではまだ足りない。
それだけでは貪欲に勝利を狙いに、しかしながら時間稼ぎをするにはまだ足りない。
「―――ですがその前に。【戎の忍者‐冥禪】の効果にチェーンして、永続罠発動【サモンリミッター】。…これで互いに二度までしかモンスターを召喚・特殊召喚・反転召喚することができない。…さて、残念でしたね。貴方が発動した【百鬼羅刹 爆音クラッタ】の効果によってモンスターは特殊召喚され、これ以上はもう召喚出来ないというわけです。」
ならばそもそも互いの展開そのものを抑制してしまえばいい。
デュエルモンスターズとは、究極的に言えば自身が望んだ盤面をいかに早く作り上げられるかという点を競っているともいえる。
例えば―――自身の切り札をいつでも特殊召喚するように構えるだとか、相手のターン中に自分が望む盤面を作り上げてしまうとか。
それだけデュエルモンスターズというゲームにおいて展開力というのは重要なのだ。
「うぐ、ぐぐぐ…!」
「こっちも諸刃の剣なのですから…これで条件は同じ!互いに二回しかモンスターを場に出せない!さあ、フェアな勝負と参りましょう!」
「こ、こんなの…お前の有利しかないじゃあないか!」
だが、展開は遅くとも、一度盤面を作りさえしてしまえば、その「有利」を引き延ばすことができるデッキも存在する。凪の使う【忍者】は展開力を犠牲に、確実に相手の動きを妨害するデッキに仕上げてあるのだ。
【忍者】はそこまで召喚を行う物でもない。相手の動きを抑制しながら【戎の忍者‐冥禪】の効果で少しずつ場に【忍者】を増やしていく。それが凪なりの戦い方だ。
この戦術を執る場合は、とことん妨害に徹しなければならず、自分もあまり【忍者】モンスターを展開できない為、デュエルに非常に時間がかかるという欠点がある。
だが、今このデュエルに限っては「時間がかかる」というデメリットはあってないようなものだ。
「有利…ふむ…。ですがあなたにも除去カードはあるはずですよね?」
「う、うぐぐぐ…!」
「では、逆順処理を行いましょう。まずは【戎の忍者‐冥禪】の効果でデッキから【
「…【百鬼羅刹 爆音クラッタ】の効果で墓地から【百鬼羅刹の大饕獣】を召喚!」
「【百鬼羅刹の大饕獣】の召喚時に罠発動…はしなくていいですね。」
これで、相手はもう何もする手立てはない。
相手はこれ以上モンスターを召喚出来ないのだから、このまま殴ってくるしかない。
「…こうなったら…バトルだ!【百鬼羅刹の大饕獣】で【戎の忍者‐冥禪】を―――」
「残念ですが―――【戎の忍者‐冥禪】は、自分の場に裏側守備表示のモンスターが居れば攻撃されない―――攻撃対象にならないんですよ。…というわけで攻撃対象は―――守備力3000の【黄昏の忍者将軍‐ゲツガ】か
しかし、【戎の忍者‐冥禪】は裏側守備表示のモンスターが場にある限り攻撃されることは無い。
従って、ガボンガは破壊されることを前提としてゲツガを攻撃するか、リバース効果覚悟でセットカードを攻撃するかの理不尽な二択を迫られているのだ。
「…さて、勝負はまだまだこれから。思いっきり楽しみましょう。」
「こ、このアバズレが…!」
凪とガボンガのデュエルは続く。
互いの目的のどちらかが果たされるまで、永遠に―――。
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ディアベルスターは凪を見捨ててそのまま逃げ帰ろうと思っていた。
何故なら、凪は一度鈴花を追い込んだから。
―――黒魔女ディアベルスターは全てを知っている。紫焔凪という少女が桜庭鈴花という一人の少女を追い込んだことを。
紫焔凪という少女が、鈴花に敵意を向けていたことを。
そんな彼女はどういう訳か、すっかり鈴花の隣を歩くようになった。
いつの間にか、彼女の殺意が無くなっていた。
鈴花の人の好さに、毒気を抜かれたからか、それとも別の何かが凪を突き動かしているのか。
(…人の気持ちは分かんねぇものだな。)
それはディアベルスターにはさっぱり分からない。
しかしながら、今の凪がかつての凪とは違い、鈴花に敵意を向けていないというのはディアベルスターにも何となく感じ取れた。
―――そして、ディアベルスターは
彼女が鈴花にやったことは決して許されていい事ではない。
しかしそれでも。
それでも凪が鈴花と関わることでいい影響を受けているのであれば―――そしてそれを鈴花が許すのであれば、ディアは凪をどうこうしようとは思わない。
別に凪の事を信じているわけでは無いのだ。凪はディアにとっては鈴花を追い込んだ仇敵であり―――憎むべき相手である。
だが、鈴花はその事を知ってか知らずか、紫焔凪という少女の事を信頼している。
ならば、今までの禍根があったとしても
(……やれやれ。)
腕の中で鈴花がもぞもぞし始めている。そう遠くないうちに鈴花は目を覚ますだろう。そうすれば、後は二人でこの子鬼どもを煮るなり焼くなりしてさっさと帰還すればいい。
(オレは鈴花の決断を信じるだけだ。)
それがきっと、鈴花のそばに自分が居る意味なのだろうから。
登場人物紹介
・鈴花
気絶中
・凪
デュエル中
・ディア
実は全部知ってる。
その上で信じると決めた。
・ガボンガ
お前に慈悲は与えない。
ちなみに拮抗勝負からのガメシエルは実体験です。
それはそれとしてルーンを殺したいので初投稿です
水樹君のデッキ強化
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