「相棒」   作:ダンちゃん1号

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忍者乱舞

 

鈴花が目を覚ました時、一瞬、自分の目を疑った。

自分が目覚めるまで、相当な時間があったはずだ。それなのに、デュエルの状況は遅々として―――というか、全く以て進んでいない。

それなりに減少した山札が、それなりにデュエルを進めてきたという証にはなっているのだが、何をどうしてどうなったらここまで引き延ばせるのか。

鈴花はそれがどうしてもわからなかった。

理解できなかったと言い換えてもいい。

 

凪 LP4000 手札5枚

モンスターゾーン 戎の忍者‐冥禪

         黄昏の忍者将軍‐ゲツガ

         神禽王アレクトール

         伏せ×1

フィールド魔法  隠れ里‐忍法修練の地

魔法・罠カード  サモンリミッター

         魔封じの芳香

         忍法 変化の術 

         伏せ×1

 

ガボンガ LP7000 手札6枚

モンスターゾーン 百鬼羅刹の大饕獣(X素材×0)

         百鬼羅刹 巨魁ガボンガ(X素材×0)

魔法・罠ゾーン  伏せ×3

 

「―――なにこれ?」

「誰だってそーなる、オレもそーなった。」

 

恐らくは直前のターンに【スキルドレイン】と【魔封じの芳香】を発動したのだろうが―――それにしたってひどすぎる。一体ないがどうしてどうなってどうなったらこんな盤面が出来上がるのかがさっぱり分からない。

【忍者】が居るという事は―――【忍法 変化の術】で特殊召喚したのだろう。

中々にえぐいコンボを考える。

【神禽王アレクトール】で【魔封じの芳香】、あるいは【サモンリミッター】の効果を無効にして展開、あるいは妨害を躱して、そのまま理想の盤面を作り上げる。

 

(うわー…相性最悪ぅ…。)

 

当然、展開に魔法カードやら罠カードやら特殊召喚やらを多用する鈴花のデッキとは相性が最悪だろう。というか展開の軸が特殊召喚であるほぼ全ての現代のデッキに太刀打ちにしようがないのではないだろうか。

 

(…いや、できるか…?)

 

何度かデュエルした霊使の【ドラグマ霊使い】ならあるいは―――。

いや、それよりも今は状況の把握に努めるべきだ。

 

(…ディア、聞こえてる?)

(…こいつ、直接脳内に…!?)

(違うから、ディアにしか聞こえないような声でしゃべっているだけだから。…今の状況が読み込めないから簡単に説明してもらってもいい?)

 

そういう事もあってか、鈴花はディアベルスターに状況を説明するように求めた。

そもそもなぜ凪がデュエルしているのか、なんでフランが狙われたのか、色々と聞きたいことだらけだ。

 

(…正直に言うならオレも知らん。フランと戦っている間にこっちに呼ばれたからな。)

(…ええ…?)

(ただ、まあ。思い当たるフシはある。「罪宝狩りの悪魔」って言葉―――聞いたことはあるだろ?)

 

「罪宝狩りの悪魔」―――その言葉を鈴花は確かに知っている。その言葉に確かに見覚えがある

突き動かされるようにして鈴花は懐にしまい込んでいた自分のデッキを取り出し、カードを一気に流し見る。

目的の物はそう時間をかけずに見つけることができた。鈴花は一枚のカードを自分のデッキから抜き取る。

そのカード名は【"罪宝狩りの悪魔"】―――ディアが手配書に描かれていてその下には懸賞金が記されているらしいイラストのカードである。

 

(な…ななけた…?)

 

そこに描かれていたディアの懸賞金の値段は何と七桁―――ディアを突きだせば最低でも100万円は貰えるようだ。最も、交換レートがさっぱり分からないので、価値としては100万ジンバブエドルと同等の可能性ものこっているのだが。

何よりも、今のディアは仲間だ。金目当てで突き出したりはしない。

 

(…なんでオレの首にこんなに値段付けてんだ?)

(…ディア?何やらかしたの?)

 

といってもやはり7桁もの値段が付いているのはある意味では異常だろう。日本で7桁の懸賞金がかけられるのは殺人とか、強盗致死だとか―――人の道を外れた犯罪者にかけられるレベルだ。

つまり、ディアはそれだけのことをやらかしたという事になる。

 

(一つ言っておくがオレは誓って殺しはやってねぇぞ!?)

(えーほんとにござるかぁー?)

 

まあ、本当に殺人をしてたのならば今頃自分の首も飛んでいる事だろう。

もしくはこんな会話をすることも無くびくびく怯えながら接するだけだったのかもしれない。

心を開いてもいいと思えた相手なのだから―――そこまでの悪党ではないと思う。

 

(ま、とにかく「あっち」に残っていたオレの手配書に書かれてる金額を見てオレのことをぶっ殺しに来ただけだろうさ。一応「DEAD OR ALIVE(生死は問わず)」だからな。)

(…私巻き込まれるじゃん?)

(死なねぇように祈ってな…。というかオレが捕まったらお前も「協力者」扱いで殺されるかもな?)

(…やっぱ突き出そうかな…。)

(冗談だからやめてくれぇ!)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

こんな事になるならデュエルするのではなかった―――人質にでもしてさっさとディアベルスターの身柄を確保するべきだった、とガボンガは強く後悔した。

 

「ああくそ!」

 

ここまで的確な妨害をしてくる相手を知らない。

召喚回数が制限される。魔法も罠も制限される。何よりもモンスターを出したところですぐに除去される。

何よりも一番最悪なのはデュエル中に一回しか使えない【百鬼羅刹の大饕獣】の特殊召喚効果を用いらされたことだ。追撃することも叶わずこうして場に突っ立っている。

おかげで展開も打開もできず、ずるずると引き延ばされている。

 

「…おや、目が覚めましたか。じゃあ、あとは…さくっと狩るだけですね。」

「こ…このアバズレがっ…!」

 

そしてしまいには「さくっと狩るだけ」という無慈悲な宣告をされた。

それはもはや現実になるのだろう。それだけ、その言葉に重みとすごみがあった。

 

「取り敢えず魔法カード【パラレル・ツイスター】を発動。【サモンリミッター】を破壊して【百鬼羅刹の大饕獣】を破壊します。…さらにセットモンスターである【渋い忍者】を反転召喚。リバース時効果で墓地から【忍者マスターHANZO】を特殊召喚。【HANZO】の効果でデッキから【宙の忍者‐鳥帷】を手札に。…まず私は地属性を含む二体で【崔嵬の地霊使いアウス】をリンク召喚します。素材にするのは【神禽王アレクトール】と【渋い忍者】ですよ。」

 

そういえば最近、リンクの力に目覚めた小娘の集団がいたらしい。狙うならそっちからにしておけばよかった―――何てことを考えるガボンガ。

しかしそれはこの世界において「死」を望むというのと同義だ。

事実、それを行えば、ここにいる二人に加えて、天の光も地の底の炎も、全てがガボンガたちに牙を剥いた。いうなれば―――【ディアベルスター】を狙っているからこそ、ガボンガはまだ形を保っていられるのだ。

最も―――そう遠くないうちにガボンガはひき肉かミンチになるのだろうが。

 

「続きまして、【忍者マスターHANZO】と【黄昏の忍者将軍‐ゲツガ】で【聖騎士の追想‐イゾルデ】をリンク召喚します。そしてデッキから手札に【蟲の忍者‐蜜】を手札に。それで【崔嵬の地霊使いアウス】と【聖騎士の追想‐イゾルデ】で【アクセスコード・トーカー】をリンク召喚します。」

「…おい。オイオイオイ!」

 

ミンチかひき肉を避けたところで死は避けられない。目の前の光景はガボンガにそう思わせるには余りにも十分なものだったのだ。忍者が忍者を呼び、更に忍者はその数を増やす。かの有名な生命体であるかのように、ガボンガの首を刃で掻き切らんとする。

 

「それじゃあ、【宙の忍者‐鳥帷】の効果を発動しますね。このカードを墓地に送って手札の【蟲の忍者‐蜜】を召喚します。…うーん…後は【死者蘇生】で【宙の忍者‐鳥帷】を蘇生して、この二体をリリースしてデッキから【(ヨロイ)の忍者‐櫓丸(ヤグラマル)】を召喚します。」

 

さらに増える忍者。

ガボンガはもう忍者がトラウマになりそうだった。今後、そう言う存在のうわさを聞いただけで震えあがってしまいそうだし、間近でその姿を見てしまった時には悲鳴を上げてしめやかに失禁してしまうだろう。

それだけこのデュエルがガボンガの心の奥にこびりついてしまったということだ。

 

「最後に【アクセスコード・トーカー】の効果を二回ぶっ放してバトルです。…アクセスコードと冥禪と櫓丸の総攻撃力は8800…おや、少し過剰打点でしたね。」

 

―――これからは今までの過ちを清算して生きていこう。今まで傷つけた人たちの安寧を祈りながら生きていこう。

ガボンガたちは真に心を入れ替えようと決意した。そうでなければこの宵闇に潜む暗殺者たちはいつでも牙を剥くだろうから。

 

「本当に申し訳ございませんでしたァァァァァッ!」

「これぞ…天!誅!…です!」

 

ガボンガ LP0

 

このデュエルはあっけなく、そしてガボンガの心に大きな傷を残して終結するのであった―――。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

後処理は何か急にしおらしくなったガボンガに任せ、二人は凪が「話すことがある」と語った公園へと戻ってきていた。戻ってくる途中で鈴花は凪に「どんなデュエルをしたのか」と質問したのだが、「乙女の秘密です」とはぐらかされた。鈴花は、秘密なら仕方が無い―――そう、思って追及するのは諦めた。何故なら、彼女にとって最も重要な事がこの後に控えているからだ。

 

「フラン…ってその子だったんですか。確かに可愛いですね…頭になんか禍禍しい眼乗ってますけど。」

「…え?可愛くない?この大きいおめめも…。」

(…感性が分からない…。)

 

フランを一心不乱に撫で続ける鈴花と、それを呆れたような目で優しく見守る凪。

一通り撫で終えた後、鈴花は真剣な面持ちで凪の方を向いた。

 

「…それで?話って…何?」

「はい。…私は…。」

 

凪は一度そこで言葉を切る。

これから先、鈴花との関係が変わってしまうかもしれない。

その言葉を口にすれば、もう関係を元に戻すことはできなくなるかもしれない。

それでも、今までの行為を真に過ちだと認めているからこそ、この言葉を話さなくてはならない。

 

「私は、今まで…ずっと貴女を追い込んできた元凶です。」

「……そっ…か…。」

 

太陽の光を雲が遮る。

―――二人の関係は今、大きく変わろうとしていた。




登場人物紹介

・凪
告解の時間だオラァ!
懺悔する気があるだけまだ外道とは違うのかもしれない。
これからどうなっていくのかは大いなる神のみぞ知る。

・鈴花
今明かされる衝撃の真実。
鈴花の懐は広いが今回の件はさすがに…。
しかし、思い出してほしい。彼女は凪に少し敵意を抱いているのを見抜いていたのだ!

新規イラストの霊使いがクソ可愛かったので初投稿です。

水樹君のデッキ強化

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