場所を移して鈴花の家―――そこで二人は無言のまま向き合っていた。
(―――なんで?)
凪は鈴花の心中が分からない。
自分の行為を彼女に懺悔して、それだけにとどまらず土下座をして―――いや、なんでここに居るのかが思い出せない。
来た道順も、何もかもを覚えている。
だが、なんでここに―――鈴花の家に来ることになったのか、経緯がさっぱり分からない。
それでも、というか唯一分かるのは、鈴花は常に自分の手を引いてくれたという事だけだ。
「家の人は…?」
「いないよ。…あの事件で全員…」
「…嫌な事を…聞いてしまいましたね。」
あの事件―――言うまでもなく「彼」が英雄になった日―――そして、父が狂ってしまった日のことだろう。
なんであんな事件が起きたのか知る由もないが―――本質的には同じ考えの人間が起こした物だったのかもしれない。
「…なんで家に?」
「めちゃくちゃ視線を集めてたからだよ…ッ!」
そんな事を考えながら、凪は鈴花に一つの疑問をぶつけることにした。
その結果の答えがこれだ。
鈴花は勢いそのまま続けて凪に突っ込み始める。
「公共の場でッ!あんなに重苦しい話をするんじゃあないよッ!周りの人たち吐き気催してたよ!?」
「…確かに。それは私の配慮が足りませんでしたね。」
―――やはり肝心な所で自分はポンコツだ。
確かにこういう告白の類は人目に付く場所でやるべきではなかっただろう。この件に関しては猛省しなければならない。
凪は強くそう思った。
「…移動した理由はもう一つあるんだけど…それはまあいいか。」
「??」
彼女にしか分からない理由があったのだろう。
ならば、移動するのも致し方ないというやつだ。
凪はそんな風に考えながら鈴花の方を見る。そんな鈴花は、何故だかバツが悪そうな顔をしていた。
「…それでね。一つお願いがあるんだけど…。」
「…なんでしょう?」
「私の話も聞いて欲しいな。…互いに色々抱えたままだったみたいだからさ。」
「ええ。お互いに腹を割って話す事にしましょう。…隠し事はもうしません。」
こうして二人は改めて話を始める。
何処かに感じていた溝を埋めるように、二人はゆっくりと会話を続けるのだった。
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―――少し時は遡る。
凪が泣きながら鈴花に懺悔している様子を遠くから眺めている男が二人―――霊使と、克喜である。
「…霊使…紫焔を庇うのか?」
「まぁな。…少なくとも当時の彼女に責任能力はない。」
「ま、弁護としちゃ妥当な所だな。」
この二人の目的は以前とは違い―――霊使は凪を守り、克喜は凪を捕らえるというものだ。
つまり、今の二人は事実上の敵対関係に陥っている。
克喜は至って自分の職務にまじめに取り組んでいるのであって、別に二人の仲がこじれたというわけでは無い。
ただ、目的が合致しなかっただけなのである。
だが、それは二人にとっては余りにも重要な事だった。立場が変われば見方も変わる。
「俺は…変わろうとしている彼女を見守りたい。」
「…新たな禍になるかもしれないのにか?」
霊使は変わりつつある凪の事を今すぐどうこうしようとは考えない。
変わりつつあるという事は、今後はそう言う騒ぎを起こさないという可能性が現実になるかもしれないという事だ。それに、彼女は今までの自分の行為を恥じている。これから先、同じことをしようとは二度と思わないだろう。―――だがそれでは彼女の過去は清算できない。
一方の克喜は、凪は犯罪者であり刑務所に入れるべきだと考えている。
確かに彼女の今までやってきたことを考えるのであれば彼女は犯罪者であり、その判断も妥当なとこだろう。しかし、それは彼女が変わっていく未来を犠牲にする行為だ。
それに彼女は父親に逆らえなかったという現実がある。ただ、彼女の行為のもろもろはその「父親に逆らえなかった」という理由を大きく揺るがすものでもあった。
「…霊使。前も言ったが…。」
「分かってる。…もし彼女が何かやるなら俺が責任を取って捕まえる。」
「そうじゃない。言ったよな、俺は動くって。」
「…ああ、言ったな。」
確かに以前の電話の時点で既に動くみたいな話はしていた気がする。
なら克喜がここに来たという事はそういう事なのだろう。
―――凶悪犯をデュエルで拘束するとかいう訳の分からない―――恐らくは恣意行為なのだろうが―――そんな要請を克喜は受け、そして凪を捕まえに来た。
「…公務執行妨害ってやつか?」
「いや、これは「公務」じゃねぇ。裏の仕事ってやつだ。…デュエルが強いってことはそれだけ「抑止力」として扱われるって事だ。」
「じゃあ俺がここで足止めしても特に警察にはぶち込まれないってわけだ。」
「そうだな。」
ならば、と霊使は自身のデッキを構える。捕まらないのであれば―――違法でないというのであれば、もはやこれ以上を考えることは無い。
ただただデュエルして勝ってしまえばいいのだから。
克喜はそれに「待ってました」と応えんばかりに懐からデッキを取り出した。
「さあ、楽しもうぜ霊使ィ!」
「…さては俺とのデュエルが目的だなテメー!?」
「今更気付いてももう遅い!さあ、デッキからカードの剣を抜け、霊使ィ!」
―――どうやら凪の逮捕は建前だったらしい。
いや、要請を受けてそれを受け入れた以上それも克己の目的ではあるのだろうが。
それでも。
この克喜という男を誤解を恐れずに一言で言い表すのならば―――「霊使の同類」。
つまりは、無類のデュエル馬鹿なのである。
「紫焔凪は既に手配されているんだよ。どっちにしろ俺は彼女を捕まえる必要がある。立ち塞がるなら倒すしかないよなぁ!?」
「もっともらしい理由つけやがって!?公私混同も甚だしいぞお前ェ!」
無類のデュエル馬鹿同士が出会えば、当然ながらデュエルが始まるわけだ。
何故この二人がデュエルするのか。
色々理由は上げられるが究極的な理由は「コイツにゃ負けられねぇ」というなんとも陳腐で―――、二人の間にある友情を端的に言い表したものだ。
この空気は二人にしか理解できないものだろう。
きっとこの状況を誰かに見られていたら、全員がツッコミをしたのではないだろうか。
先ほどまでの剣呑な雰囲気はいつの間にか霧消していた。
「…なら俺も一つ言わせてもらうぜ!」
そんな雰囲気だからか、霊使も克喜を止める本心をさらけ出すことにした。
「それに俺はあの二人の空間に男を挟んで汚させるわけにはいかないッ!だからお前はここで止めなきゃならんのだ!」
「なるほど!じゃあ俺を止めなきゃダメだなぁ!俺をあの二人の間に挟みたくないならァ!」
「挟まったらぶっ殺してやるっ!」
―――結局二人は凪をどうこうしようとは考えてはいないのだ。
きっとこれだけ大声を出していれば鈴花か凪のどちらかは気づくだろうし、よしんば気付かなかったとしてもこの二人は勝手にこの場から離れていく。
「うおおーーー!罠発動【
「何ィ!?攻撃力8150と10300だとぉ!?」
「これぞ神の一撃!ゴッドハンドクラッシャー!」
「ぬわーーーーーーッ!」
―――この日、とある公園で世界チャンピオンと五分の勝負を繰り広げたデュエリストが居るという噂が広まったそうだ。
その噂の真実は―――定かではない。
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(仲良くデュエルしな二人とも…。)
あんな大声でツッコミの嵐が起きれば流石に嫌でも気づく。
というかあれで気付かないのはよっぽど疲れているとしか言いようがないだろう。
あの二人がどんなデュエルをするか非常に気になるところではあるが、一番重要なのはそこではない。
何よりもそれを確認するために、ここまで一緒に来たのだから。
「…凪ちゃん。あなたはこれからどうしたい?」
「…どうしたい、ですか…。」
彼女は少しだけ考え込む。
今になって「もう支配されなくていい」気づいたからだろうか。
心なしか顔から陰りが消えているようにも見える。
彼女が幸せだと感じるなら―――それでいいのだろう。
「…私がどうしたい、ですか。以前にもそんな事を聞かれたような気がします。」
「うん。前にも聞いたよね。」
其の問いをしてから―――ほんの少しずつ彼女は変わっていった。
だからきっと、あの時とは違う答えが出てくるはずだ。
「…相変わらず、「何がしたいのか」は良く分かりません。…ですが、私が居たいと思えるような場所は、できました。」
「貴女の…居場所?」
「はい。」
凪はまっすぐにそう答えた。
これまでの交流で、凪が得た答え。
鈴花はその答えを聞くのが楽しみであり―――そして少しだけ怖かった。
登場人物紹介
・霊使
久々の登場
何か最近ちょっとデッキを弄ったらしい。
・克喜
公務に追われて心身ともにボロボロ
でも霊使とのデュエルで回復したぞ!
・鈴花
彼女の答えを待っている
・凪
彼女が出した答えがある
なんか久々に野郎が出て来たので初投稿です。
水樹君のデッキ強化
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ネクロス
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リチュア