鈴花は凪の言葉を受けてからたっぷり時間をかけて何を言うべきか―――紡ぐ言の葉を考えていた。
自分の隣に居たい、と。
彼女は確かにそう言った。
普通なら彼女の行為は決して許されるものではないだろう。
しかし、凪は誰でもない彼女自身の意志で「ごめんなさい」を伝えたのだ。そのことをどうして無下にすることが出来ようか。
もしかしたら、自分が激昂して彼女に殴り掛かってもおかしくなかったというのに。
「…凪ちゃんは、ずるいや。」
確かに自分は凪の行動によって大きな傷を負う事になった。
見た目ではなく心にだが―――それでも、これから先の鈴花の在り方を変えるくらいの衝撃はあった。
しかし、彼女はその事を恥だと思い、今日自分に懺悔した。
あんな必死に訴えられたら怒るに怒れなくなってしまう。
それに、これまで過ごしてきた中で凪の善性も痛いほどに良く分かった。
それらを踏まえて、自分は凪に対して答えを返さなくてはならない。
彼女の本気の言葉には本気の思いを返さねばならない。それこそ、凪の心を下手に慰めるような言葉を掛けてはいけないだろう。
「…私は。」
言葉に詰まる。
どうしてもその「先」の言葉がでてきてくれない。
許すか、許さないか―――ではなく。
凪の「傍に居たい」という言葉の意味が分からなかったから。どういう意味なのか分からなければそれに対しての返答も行う事が出来ない。
それでも。
それでも今ここでその答えから逃げることは許されない。
「…私は。」
彼女の思いを聞いた。
彼女の悔恨を聞いた。
彼女の覚悟を聞いた。
彼女の願いを聞いた。
そして、彼女の全てを知った。
「私は…私は…。」
自分がどういう風に思っているのか――。
もうその答えはとっくのとうに出ている。だけれど、それを言葉にするのは怖い。
きっと―――彼女もこんな感じだったのだろう。
「私は、私は――――。」
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「…新入部員の紫焔凪です。よろしくお願いします。」
そして、それから少しして、凪は聖也のデュエル部に入部することにした。
あれだけのことをしておいて―――というのもあれだが、どうやらこの学校には自分以上のことをやっていた生徒がいるらしい。
鈴花曰く「殺されかけた」とのことだ。
その生徒たちが居なくなってからというもの鈴花に対する攻撃は無くなったため凪が行った脅迫もその生徒たちが一緒に引き受けることになったらしい。
最もその生徒たちも彼女に脅迫まがいの事をしたらしいので罪自体は相当なものになったそうだが。
「使用デッキは忍者です。よろしくお願いします。」
「アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」
「なんでそんなにリアリティショック発動させているんですか?」
凪は確かにこの部活に居ることになった。
それは凪を監視する為でもあり、凪と鈴花が互いを知るための手段でもあった。
凪はあの日の鈴花の言葉を思い出す。
『あなたが傍に居たいというのなら―――私はそれを受け入れましょう。貴女が失くしてしまった何かを一緒に探しましょう。だからね、凪ちゃん。私は貴女を赦すよ。』
『でもね、凪ちゃん。あなたが使命感から傍にいるなんて言い出し始めたのなら―――それは許さない。』
『だからね。私と一緒に過ごして―――気持ちが変わらないのなら。―――ずっと一緒に居よう。』
一緒に過ごす期間というのは特に決めてはいない。
互いに互いを知っていけばきっといい未来を自然と選択できるだろうから。
(私は…変わった。今までとははっきりと違うと言い切れるくらいに―――。)
そして変えてくれたのは他でもない鈴花だ。鈴花が居なければ今でも自分は
彼女が自分に希望を注いでくれたからこそ、今の自分があると思っている。
だから、凪に取って鈴花は希望で、凪自身にとっての「未来」でもあるのだ。未来を大切な人と見据えるという事
ができる。―――それだけで凪にとっては十分な価値があるのだ。
鈴花が―――そしてその友人たちが今の自分を変えてくれた。
自分なりの贖罪で許されるのはもう分からない。
それでも―――自分なりに進んでみようと凪はそう決意したのだ。
自分に全てをくれた鈴花の為に―――。
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満月がてらす夜空を背にその女は立っていた。
一室の電気がついたままの建物―――霊使達の学校を見下ろせる屋上。。
―――霊使はその女の背後を取っている。
普段だったら一言声を掛けてから何をしてたか聞き出しているが―――目の前の女は悪意の格が違う。早いところ対処せねば大惨事になる。―――霊使の勘がそう告げていた。
一つの汚れのない純白のような姿を持った
「―――ねぇ、乙女の秘密をのぞき見かしら?いけない殿方ねぇ。」
内に孕む悪意とは似ても似つかない様な間延びした声。それはその場にいない―――少なくとも気配を悟らせないようにしていた霊使にとっては―――恐怖以外の何物でもなかったのだ。
(こいつ、きづ―――!)
姿を見せていない。痕跡も残していない。気配を悟らせていない。文字通りの隠密行動―――。
それなのに、気づかれた。
ここまでやって気づかれたという恐怖が、霊使を余計に焦らせる。
「そんなに怖がらないで―――こっちにいらっしゃい?」
女の声が霊使の心にするりと入り込んでくる。
これは、まずい。そう考えたときには既に遅く、霊使の体は自然と動き、その女の前に出ていた。
「あら、意外といい男…。」
「…何が狙いだ?」
女は霊使の言葉に応えず霊使の体をペタペタ触っている。
そしてそのまま霊使の服を剥ぎ取ろうとして―――。
「霊使に触るなぁッ!」
「やらせるかぁ!この糞女ァ!」
ウィンとディアベルスターが女に対して殺意満々に飛び掛かっていく。
普通であればこの不意打ちじみた挟撃を避ける術はないだろう。
しかし、二人の攻撃はぐにゃり、女
「あらあら…招待していない人がこんなにも…。」
一瞬で元の姿に戻る女。
その様子を見た三人は即座に撤退することを決める。
「こんな状況であの女には勝てねぇ!ここは一旦退くぞ、霊使!」
「了解だ、ディアベルスター!」
「逃がすと思うかしら?」
しかし、というか当然というか。
女は三人を逃がすつもりはないようだ。
だが―――霊使は考えなしに突っ込むほど馬鹿ではない。
「―――ああ、
既に逃げる算段を付けているからこそ、こういう無茶をすることができるのだ。
霊使の影が広がる。
「貴様はまた無茶しおって…!」
「…返す言葉もございません…。」
その陰からクルヌギアスが飛び出してきたかと思うと、そのまま霊使達を抱え即座に姿を消した。
あとに残るのは女ただ一人のみ。
「中々良い舞台になりそうね…。」
その言葉を最後に、女は屋上から掻き消えた―――。
登場人物紹介
・凪
きっと前に進んでいける。
・鈴花
ちゃんと謝罪した人間と謝罪すらしない人間の好感度の差は歴然。
・謎の女
一体何ベルゼなんだ…。
というわけで不穏な雰囲気を残しつつ二部三章は解決です。
というわけで次回から世界編に突入します。
水樹君のデッキ強化
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ネクロス
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リチュア