団体戦はダイジェストでお届けします、
日本選手権―――その団体戦は二つのチームが余りにも強すぎた。
圧倒的耐久力、圧倒的妨害能力、圧倒的殲滅力―――これらの能力を備えた人材が揃うチームというのはほとんどないだろう。
結果―――これが日本最高峰の試合だとは夢にも思わないような一方的な試合展開が多くみられた。
特に決勝に進んだ2チームの強さは異常だったと言う外ない。
唐突に攻撃力4000のモンスターの特殊召喚かつモンスター全破壊を行ったり、手札を全て使い切ってなお、場に健在の白い悪魔が存在していたり、圧倒的罠の力押しで相手にモンスターを召喚させなかったり―――相手ターンに無情な【コズミック・ブレイザー・ドラゴン】が飛んで来たり、唐突なトリシューラが登場したり、攻撃力4100の儀式モンスターに磨り潰されたり、じわじわと真綿で首を絞められるように追い詰められたり切り札をリンク素材にされたり―――まあ様々な虐殺があった。
この世全ての惨敗がここにぎゅっと詰まったかのような―――とにかくデュエルモンスターズを嗜むものたちにとっては地獄のような光景だったことだろう。
も仕方らこの結果にトラウマを掘りおこされた物もいるのかもしれない。
「…よし、決勝だぁ!」
「やっぱあの三人だよね、相手は…!」
そうしてなんやかんやあって決勝の舞台に二つのチームが揃う。
一方は霊使達のチーム。これまではノーダメージ―――文字通りにダイレクトアタックを一度も喰らう事はなく、そのまま決勝まで上がって来たチームだ。
基本先攻制圧がメインのチームだが、霊使や鈴花のように後攻でも戦えるデッキは多い。
一方のチームの使用デッキだが―――霊使は相手の三人のデッキに嫌というほど見覚えがあった。
天使族Pモンスターを主な戦力とし、EXデッキには覇王が控えている、誰が呼んだか【覇王ドレミコード】。
罠カードで相手を妨害し、自分は相手ターン中にも盤面を展開する。さらにそこに罠カードをメインとしたカードを混ぜ込んだ【蟲惑魔】。
そして、全てのデュエリストが戦慄した最強の儀式モンスターである【崇高なる宣告者】をはじめとした天使族と儀式モンスターなら問答無用で召喚できる【流星輝巧群】を擁する【ドライトロン】―――。
「なんであの三人が一つに纏まってんだよぉ…!?」
「…序盤中盤終盤隙が無いデッキが3つも…。」
頭を抱える―――なんてものではない。
まさかこのタイミングで彼らと戦う事になるとは思いもしなかった。
もっとも日本一を争うチーム戦なのだから、彼らが上がってくるのは当然と言えるのだろう。
霊使ばかりが持て囃されているが、彼らも確かに世界を救った霊使の仲間なのだ。あの時は心強い仲間だったが敵に回るとこれほど厄介な存在もない。
「互いに手の内を知り尽くしている…ってわけでもないか。」
あの事件はもう一年近く前のことだ。
霊使も彼らもきっとあの時よりも十数倍強くなっている。
だからこそ、もう既に「互いの手を知り尽くしている」だなんてことは言えなかった。
「泣いても笑ってもこれで最後の試合だよ、僕らは。」
「そうね。…どんなデッキと戦う事になるのかしら。」
オリエと聖也の二人は霊使が出場する個人戦には出場しない。
だから、彼らが高校生として公の場でデュエルするのはこれで最後になる。
泣いても笑っても、これが彼らの最後の公式戦なのだ。
「決勝って事で全ての勝負をやるみたいだ。…僕らが2敗しても大丈夫、出番はあるよ!」
「…嬉しくない宣言ですね…。」
聖也のブラックジョークに乾いた声で答える霊使。
確かに今回の試合はオリエと聖也―――二人の最高学年の引退試合という事もあって、二人が先鋒と中堅を務める。この二人が負けてしまったら勝負自体は決まるが、それでも決勝戦は第三試合までやってくれる。きっと対象に華を持たせようという運営の判断なのだろう。
「嬉しい気遣いなんだろうけど…聖也さんの言う通り負け確定で出陣することになるかもしれないんですよね、俺。3敗は避けたい!」
「あ、あはは…まぁ…蟲惑魔の彼に当たらなければワンチャンあるから!」
「なんでドレミコードからズァークが出て来るのかしら…?私は多分勝てないと思うから任せたわよ、聖也。」
若干一名諦めかけているが、攻撃力だけならそのズァークを上回るのだ。
勝ち目がないわけでは無いだろう。―――その上で勝てるかどうか不安がっているわけなのだが。
「…さて、と行こうか。オリエ、霊使君。」
「ええ。行きましょ。泣いても笑ってもこれが、皆との最後の公式戦よ!」
「…俺が大将でいいんですか?」
「任せた。惨敗になるかどうかは…君にかかっているぞ!」
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団体戦決勝の相手のチームは―――奈楽、咲姫、流星の三人組だった。
やはり、というか案の定というか―――この三人が所属しているチームがあるというだけで恐らく決勝に上がってくるのは彼らなのだろうと考えていた。
確かにこんな大舞台で戦えるのは幸運なのだろう。
だが、なんで先輩の引退試合でぶつかっちまうんだ、と霊使は頭を抱えそうになった。
「まさか君とこんな大舞台で戦えるなんてね…霊使君!」
無邪気な笑みを浮かべてデッキを取り出す奈楽。
後ろにはさも当然の如くフレシアが居た。なんでも三人のマネージャーらしい。
(マネージャーの振りした魑魅魍魎…?)
彼女たちの生態を考えると、何とも奇妙な関係だ。植物や昆虫のモンスターと共生している―――あるいは「本体」の疑似餌である彼女達がまさかこんなに献身的になるとは―――。これも愛が為せる御業なのだろうか。
「霊使さん?何か変な事考えてませんかぁ?」
「
もっともその寵愛の対象である奈楽以外には捕食者としての面をのぞかせることも多々ある。今までフレシアやその他蟲惑魔に手を出そうとしてボコボコにされた人間が後を絶たない。どのみち「喰われる」よりかはましなな末路であるのは確かではあるが。
それはそうとして、霊使は三人に疑問を投げかけた。
「…奈楽も咲姫も流星も…バラバラだったじゃないか!進学する学校!」
そうなのだ。
三人とも転校する学校はばらばらだったはずだ。
それなのに、どういうわけかこの学校対抗団体戦で一緒のチームに所属している。
「―――私達、学校が「統合」しました!」
「ふざけるな!ふざけるな馬鹿やろぉぉぉぉぉ!ああぁぁああぁぁぁあぁぁぁ!」
「…ええ?普通そこまでになる?」
「咲姫も奈楽も流星もデュエルが強いからこうなってんだよぉ!」
つまりは、学校が一つになったという事に他ならない。
現に三人は違う学校の服ではなく同じ学校のユニフォームを着用している。
それに本来の学生連合は、聖也の【センチュリオン】と鈴花の【スネークアイズ】にボコボコにされていた。
「…よし、落ち着いた。」
「うわぁ!発狂していたのに急に落ち着かないでよ!?」
「お兄ちゃんは相変わらずだなぁ。つもる話もあるけど、まずはしようか!デュエル!!」
再会の喜びもそこそこに、霊使達は互いのデッキに手を掛けた。
やはり、デュエルは万能だ。何も考えなくてもデッキとカードで思いを伝えることができる。
「…僕たち、忘れられてるね…。」
「旧友の再会だもの。…黙ってみてましょ。」
ちなみに目の前で繰り広げられているコントにオリエと聖也の二人が付いていけなかったことは想像に難くない。
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結果から言うと―――「惜敗」とでもいうべき結果であった。
先鋒戦はオリエVS咲姫。
最初のターンでオリエは切札たる【粛声なる守護者ローガーディアン】の召喚に成功した。さらに一妨害のおまけつきである。この盤面は早々に崩されないと睨んでいたオリエであったが、宛てが外れてしまった。
「よし!まずは雑に【ライトニング・ストーム】!」
「【粛声なる守護者ローガーディアン】の効果で無効化ぁぁぁ!」
「かかったァ!魔法カード【三戦の才】!二枚ドロー!」
「うわぁぁぁぁ!?」
結局この【三戦の才】の二枚ドロー効果で【ドドレミコード・キューティア】を引き込んだ咲姫に全てを壊された。
そのターンだけでかなりの数の特殊召喚をこなし、場には咲姫の新たな切り札である【グランドレミコード・クーリア】、後はいつも通りの【アストログラフ・マジシャン】と【ソドレミコード・グレーシア】が展開され、更には伏せカードまで伏せて来た。
しかしそれでも攻撃力4100の【粛声の守護者ローガーディアン】は突破できなかった為かそのままターンエンド。
このままオリエ優勢で進んでいくと思われたオリエの二ターン目に、突如悲劇は起きる。
「罠カード発動!【覇王龍の魂】!このカードの効果でライフを半分支払いEXデッキから無条件で【覇王龍ズァーク】を【グランドレミコード・クーリア】のリンク先に特殊召喚するよ!ただしこの効果で特殊召喚した【覇王龍ズァーク】の効果は無効化されるよ!というわけで【覇王龍ズァーク】の召喚時効果発動!」
「【覇王龍ズァーク】の効果は無効化されてるじゃない?一体何をしようっていうの?」
「ここで【グランドレミコード・クーリア】の効果をご覧ください。」
「えーと…何々?「このカードのリンク先のPモンスターの効果は無効化されない」…ん!?
「【覇王龍の魂】で特殊召喚された【覇王龍ズァーク】はあくまで効果が無効化されているだけ!「発動できない」わけじゃあないんだよ!というわけで吹き飛べ『カイザー・ハウリング』!」
「ぜ…全滅…。」
唐突に特殊召喚された【覇王龍ズァーク】によってフィールドを根絶やしにされたのだ。しかも次のターンに【覇王龍の魂】でEXデッキに戻るはずだった【覇王龍ズァーク】は【覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン】に変換されそのまま総攻撃で止む無く撃沈した。
一方の聖也はというと――――
「【トリオンの蟲惑魔】!【ホールティアの蟲惑魔】サーチ!【セラの蟲惑魔】リンク召喚!カードを一枚伏せて手札の【断絶の落とし穴】をコストに【ホールティアの蟲惑魔】を発動!」
と、よりにもよって握っていた手札誘発が【夢幻泡影】だったせいで使用しようにも使用できず、そのまま展開を許してしまった。結果、フレシアの効果と伏せカードの【墓穴ホール】二連打を喰らった上でさらに【ビッグウェルカム・ラビュリンス】によってサーチ要員の【ランカの蟲惑魔】を回収されつつ【
言うまでもなく惨敗である。
本来なら先攻制圧で輝く【センチュリオン】も【蟲惑魔】の落とし穴の前には為す術がなかったようだ。
こうして、霊使達の敗北が決まってしまったわけなのだが―――。
「……先攻で制圧すればまだ勝てる…かも。」
「最後の最後に読み切られた感じがするよ。…俺と君のデッキが最悪の相性なのはよく知ってるから。」
それでも三戦目は行わないといけない。そう言う大会規定なのだ。
悲しいかな、霊使はどうあっても優勝できない戦いの舞台に上がってしまったのである。
「…ま、先輩の仇を取らせてもらおうか。関係ないけど…代償は払ってもらうぜ、流星?」
「…それは俺に向ける感情じゃあないような気がするなぁ!?」
とにかく、霊使の個人的な恨みを乗せた決勝戦第三試合が今始まろうとしていたのである。
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「世界からの強者が集う祭典!ああ、楽しみだねぇ!」
「…そうか。」
カーテンを閉め切った暗い部屋。
男はそこで一人嗤う。
世界最強の肩書に魅せられた強者たちが年末にこの地に集う。
そしてその強者たちの命を吸い上げて、自分は真に復活する。
完璧な計画だ。
この計画は今までの自分の全てを放り投げるものだだ、この世界を作り直せるのならばそれでいい。
もっと楽しく、もっと可笑しい―――混沌と悲劇の世界を望む男にとって、この世界は淡々としていてつまらない。
「君の旧友も来るかもしれないんだよ?」
「…なんだって?」
「ま、君にはその旧友を手にかけてもらう必要があるんだけどね!」
「…。」
男の部下は多くを語らない。
折角死にかけていたところを主従共々助けてやったというのに、何ともつまらない男だ。
旧友と戦うのだからもっと悲嘆に暮れてもいい筈なのに、淡々と自分の言葉にオウム返しをする。役者としては三流ではあるが―――人形としては一級品の力を秘めているのだから、始末が悪い。
「反応悪いなぁ。ま、いいか。…精々僕を楽しませてほしいものだね。」
「…こんなのがこの世界のトップか…。」
「悲劇的だろ?」
「あいつの戦いも…お前の娯楽になったというのなら、気に入らんな。」
大きな悪意を一つ潰したからといって、この世界の悪意が根絶できたわけでは無い。
より大きな悪意は既に動き始めている―――。
それを彼らが知るのはもう少し未来の話だ
登場人物紹介
・霊使
主人公。
対流星戦、始まるよ!
・聖也
いいとこなし
・オリエ
いいとこなし
・咲姫
つよつよ妹
・流星
つよつよ友人
・奈楽
つよつよ先攻制圧
というわけで決勝第三試合⇒幕間⇒個人戦という形で進行します。
対戦、よろしくお願いします。
水樹君のデッキ強化
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リチュア