「…さて。」
個人戦の開会式を終えて、順に一回戦が始まっていく。
今回の個人戦では、咲姫、それに水樹が出て来る。それに加えて、同じ学校からは鈴花が出場することになっている。
霊使はあくまで「予選枠」。かつての大会予選で勝ち抜いたうちの一人というわけだ。
この個人戦には予選を勝ち上がり、出場資格を得た8名と団体戦の出場校から選ばれた24人の決闘者―――計32名の出場者が居る。
一度でも負ければそこで終わりのトーナメント戦だ。
「…行くか。」
そして霊使の最初の相手は四道咲姫。
霊使の実の妹である。
兄としてではなく、一人の人間として、負けたくない。
「覚悟はできてる?」
「勿論。勝っても負けても…全力を尽くすさ。」
あれから妹はとても強くなった。
自分でも苦戦する―――あるいは手も足も出なくなる【粛声】を前に火力で押し切るという荒業をやってのけるほどには強くなった。
すでに真正面から無策で挑むなんて愚行は考えていない。
「俺が咲姫に対してとるべき戦術は…リソース切れ…か?」
霊使は頭の中で考えた。
どうすれば咲姫に対抗できるのかを。
咲姫のデッキのメインは
半面手札消費は荒く、リソースが尽きるのが早い―――はずだ。
「でもな―…【アストログラフ・マジシャン】やら【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】やらがあるから…うん、リソース切れで敗北だけはないね。」
「そんな事は分かってるんだよなぁ!」
「だよねー…。」
「ここは安心と信頼の【増殖するG】だな、これで相手の展開を抑制するしかない。」
だがそんな希望は咲姫の用いる展開札兼リソース札である二枚のカードによって難なく砕かれるだろう。敢えて言葉にしなかったのだが―――ウィンの指摘によって気休めをすることさえ許されない。
「…そういえばさ、今回墓穴搭載しなくてよくない?」
「いやー…【灰流うらら】対策に入れておくべきだと思うよー?」
基本、
「それで次のターンにP召喚で再展開なんだからぶっ壊れているというかなんというか…。」
そうウィンは苦笑する。
そう言えば彼女はリンク召喚が発見されて以降のペンデュラム系デッキしか知らないのだったか。
確かに展開力はずば抜けているし、展開の際に小型のモンスターも用意することで大型リンクと切り札を並び立たせるといった事が可能だ。
酷い時には霊使も愛用している【召命の神弓‐アポロウーサ】と【アクセスコード・トーカー】、それに彼女自身の切り札である【グランドレミコード・クーリア】、【覇王龍ズァーク】もしくは【覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン】という悪夢のような盤面が成り立つ時があるのかもしれないのだ。考えるだけで身の毛もよだつようなことである。
「よし、デッキの調整はこんなもんだろう。後は当たって砕けろ、だ。」
結局、相手のデッキは戦うまでは分からない。
それに咲姫は身内―――身も蓋もない考え方をすれば互いに「デッキの基本的な情報は持っている」ということだ。
「緊張するなぁ。」
「事が終わったら皆で癒したげるから…ほら、行くよ?」
「…わーってるよ。…行くか、皆。」
エリアに叱咤されて、霊使は緊張している場合ではないと自信を奮い立たせる。
そして霊使は一世一代の兄妹勝負の場に足を踏み入れたのであった。
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咲姫は一足先に会場に立っていた。
対戦相手である兄はまだ来ていない。流石に妹に負けるのが怖くて尻尾巻いて逃げたなんてことは無いだろう。
「凄い歓声…咲姫、大丈夫かしら?」
「うん。クーリアも…クーリアは日常茶飯事か、こんな歓声。」
咲姫は歓声を気にしていた。この会場は狂気的といえるまでの歓声に包まれていたからだ。
一体どれだけ期待しているんだ、と頭を抱えそうになる。
もっとも大概の観客の興味はデュエルの内容ではなく「兄妹対決」と言うところに熱狂しているのだろう。
だから歓声とかは大して気にならない。
そんな事を考えていると、歓声がひときわ大きくなる。―――どうやら待ちかねていた相手がとうとう来たようだ。
「…さて、と。来たね、お兄ちゃん。」
「まあな。流石に…不戦敗は避けたいところだ。勝敗自体は分からないけどな。」
勝敗自体は分からない。それは紛れもなく、霊使が咲姫を対等な相手として認めている言葉だった。
正直な所、兄が羨ましかったのだ。自分よりずっと前に進んでいくその背中が余りにも遠くて―――それで少しばかり妬いてしまっていた。
それでも、自分を信じて、前に進んで。
ようやくその背に追いついたのだ。
そして、今日その背を追い越す日が来た。
「最早言葉は不要!もう戦わなければ生き残れないんだよ、お兄ちゃん!」
「面白いこと言うなぁ!戦わなければ生き残れない…いい言葉だ。」
心は浮足立って、心臓が早鐘を撃つ。
熱い血潮が全身を巡り、戦意と熱意が湧きたつ。
―――最高のコンディションだ。後は全身全霊を霊使に対してぶつけるだけ。
「…私の、先攻!」
咲姫は兄を超えるための一手を既に見つけている。
後は、それを―――か細い勝機を手元に引き寄せられるかどうかだ。
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(この肌に突き刺すような戦意…!ここまで成長するか、普通!?)
咲姫は何処か自罰的なところがある子だった。
それがどうだ。今は心の底から湧き上がっているであろう闘志に身を任せ爛々とその瞳を輝かせている。どうやら咲姫はやる気満々どころの話ではないらしい。
「強ければ強いほど燃える。…とは言ったものの、こりゃまずいか。」
こういうのは大体やる気がすごい方が勝つのだ。
といっても手札には現代デュエルモンスターズにおける三種の神器の内の二枚を確保している。
「私は魔法カード【竜の霊廟】発動!」
「【覇王眷竜ダークヴルム】を墓地に送るつもりか!そうは行くか、手札から【灰流うらら】を捨てて効果発動!その効果を無効にする!」
「…【増殖するG】がありませんように…!速攻魔法【墓穴の指名者】!これでうららを除外してその効果を無効に!」
「勝った!チェーン4!【増殖するG】!」
「あああああああ!?」
仕方が無いので【灰流うらら】を囮に【増殖するG】の効果を通す。
無論、咲姫はこのターン特殊召喚しないという選択肢を取ることもできるが、それは当然愚かな行為だという事を理解しているだろう。
(お兄ちゃんのデッキはなぁ…最悪【火霊術―「紅」】やらでのバーンがありえるからなぁ…。)
なんてことを考えているのだろう。
確かに霊使の用いる【霊使い】にはそれぞれの霊使いに対応した【霊術】が存在する。
だが、霊使は基本的にその類のカードを用いてない。出力の大半を汎用カードと【憑依】魔法罠カードに頼っているからだ。つまるところ―――【霊術】を採用する余力がない。
「あーッ!あーッ!?最悪だーッ!」
「さあ、どうした咲姫!来いよ、特殊召喚なんて捨ててかかってこい!」
「無理だよぉ!…とにかく、墓地の【覇王眷竜ダークヴルム】の効果発動!このカードを特殊召喚する!」
「一枚ドロー!」
咲姫は【増殖するG】の効果を無効にできなかった以上、二度と崩されないような強固な盤面を作り上げるしかない。
躊躇ってしまっては負ける。それは確かな事だ。
「【覇王眷竜ダークヴルム】は特殊召喚・召喚成功時にデッキから【覇王門】Pモンスター一体を手札に加えられる!【覇王門零】を手札に。更に魔法カード【ドレミコード・エレガンス】を発動!手札の【シドレミコード・ビューティア】を表向きでEXデッキに加えて、【ドドレミコード・キューティア】と【ドドレミコード・クーリア】をPスケールにセッティング!」
手札三枚という状況からよくもまあデッキが回るものだ。残り二枚の手札の内、一枚は【覇王門零】であることが確定している。後の一枚が【ドレミコード】Pモンスターでなければよいのだが。
【ドレミコード】Pモンスターは音階に合わせて七種類存在している。複数種類手札に遭ってもそうそう驚くようなことではないだろう。
「私は手札から【ファドレミコード・ファンシア】を召喚!【ファンシア】の効果でデッキから【ソドレミコード・グレーシア】をEXデッキに表向きにして加える。…私は【覇王眷竜ダークヴルム】と【ファドレミコード・ファンシア】の二体でリンク召喚!頼んだよ、【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】!【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果で【アストログラフ・マジシャン】をEXデッキに表向きで加える!」
「…【夢幻泡影】がねぇ!?」
そして咲姫は全てのPデッキがお世話になるであろうカード、【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】のL召喚に成功する。
そして、このカードの召喚に成功したという事はさらなる展開が確定したという事である。何故なら、このカードはペンデュラム召喚を主体とするデッキにおいて展開の中核を担うほどの力を持ったカードだからだ。
「【増殖するG】の効果で一枚ドロー!」
「そんなもんじゃ私はもう止まらない!私は【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果発動!効果で私の【ドドレミコード・クーリア】を破壊して【アストログラフ・マジシャン】をEXデッキから手札に加える!さらに【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】と【アストログラフ・マジシャン】の効果でチェーンを組むよ!」
「【アストログラフ・マジシャン】は自分の場のカードが破壊されたときに特殊召喚できるカード…!」
「おまけに
【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】は、自身のペンデュラムゾーンからカードが離れたときに一枚ドローする効果がある。そしてEXデッキからペンデュラムモンスターを回収する効果は自身の
つまり、自身の効果を使用するだけで一枚ドローしつつEXデッキのPモンスターを回収できるのだ。事実上の【強欲な壺】といっても差し支えはないだろう。
「…まずは【アストログラフ・マジシャン】を特殊召喚!効果で【ドドレミコード・クーリア】を手札に加える!」
「…【増殖するG】の効果で一枚ドロー。」
「そして【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果で一枚ドロー!」
効果が自己完結しているカードは強い。それは疑いようのない事実だ。
そして、咲姫のデッキは大半がその強力なカードで構成されている。自己完結していて、尚且つ強いモンスターが咲姫の切り札なのだ。
「そして、今手札に加えた【ドドレミコード・クーリア】をPスケールにセッティング!手札から【覇王門零】を、EXデッキから【ソドレミコード・グレーシア】をP召喚!」
「【増殖するG】の効果で一枚ドロー。なんで…一枚しかドローできないんだ?」
ちなみにだが、P召喚は複数のモンスターを一度に特殊召喚するという性質がある。従って【増殖するG】の効果ではドローは一枚分しかできない。なんとも先にとって割のいい話で―――霊使自身にとっては都合の悪い話である。
「【ソドレミコード・グレーシア】の召喚成功時に効果発動!デッキから【ドレミコード】魔法・罠カードである【ドレミコード・ハルモニア】を回収!そしてそのまま【ドレミコード・ハルモニア】を発動!【ドレミコード・ハルモニア】の効果でEXデッキの【ファドレミコード・ファンシア】を手札に!」
【ドレミコード・ハルモニア】はEXデッキからカードを回収することができるフィールド魔法。それに加えて【ファドレミコード・ファンシア】は各【ドレミコード】をEXデッキに送ることができるカードである。この二つを合わせることでEXデッキに【ドレミコード】を溜めるのが目的なのだろう。
そうすれば、リソースの減少は最小限で済む。それにまだ真打は登場してはいない。彼女がオリエを倒すキーカードにもなったあのカードを。咲姫はまだ持ったままだ。
「…響け!響鳴のサーキット!」
現れるのはリンクマーカーに光が灯ってないサーキット。
そして、彼女がそれを宣言したという事は、彼女にとっての切り札が現れるという事である。
彼女が最も信を置く【ドドレミコード・クーリア】がさらに上位になった存在。
或いは新たに【ドレミコード】の主となった存在。
それが今、目の前に現れようとしている。
「アローヘッド確認!召喚条件は
「…来るか!」
咲姫のフィールド上のモンスターが赤い光となってリンクマーカーに吸い込まれる。
左下、下、右下のリンクマーカーに光が灯り、―――そのモンスターはついに姿を顕す。
「世界を幸福に包む福音は今ここに!希望の音を響かせて!リンク召喚、リンク3―――【グランドレミコード・クーリア】!」
「一枚ドロー!」
グランドレミコード・クーリア 光属性
天使族/リンク/効果
①このカードの攻撃力はEXデッキの表側表示のPモンスターの数×100アップする。
②このカードのリンク先のモンスターが発動した効果は無効にされない。
③1ターンに1度、相手が効果を発動した時に発動できる。自分のPゾーンのPスケールが奇数の「ドレミコード」モンスター一体をこのカードのリンク先に特殊召喚し、その発動を無効にする。その後、デッキからPスケールが偶数の「ドレミコード」Pモンスター一体を表側表示でEXデッキに加える。
ATK2700/LINK-3 (リンクマーカー:左下、下、右下)
咲姫の新たな切り札である【グランドレミコード・クーリア】がついにその姿を顕した。
モンスターを展開しながら相手の効果の発動を無効にできるという空恐ろしいカードだ。なんなら、このカードはEXデッキのPモンスターの数だけ攻撃力が100上昇するらしい。
まさに【ドレミコード】における決戦兵器と呼べるカードだ。
「私の今のEXデッキには【覇王眷竜ダークヴルム】と【覇王門零】、【シドレミコード・ビューティア】の三枚のPモンスターがあるから攻撃力は300上昇の3000!まだまだ上げていけるね!私はカードを一枚伏せてターンエンド!」
咲姫 LP8000 手札0枚
EXモンスターゾーン(左)グランドレミコード・クーリア(①、②、③がリンク先)
モンスターゾーン ①なし
②ソドレミコード・グレーシア
③なし
④アストログラフ・マジシャン
⑤なし
Pゾーン 右ドドレミコード・クーリ
左ドドレミコード・キューティア
魔法・罠ゾーン ①Pゾーン
②なし
③伏せカード
④なし
⑤Pゾーン
フィールド魔法 ドレミコード・ハルモニア
「…ッスゥー」
「声にならない悲鳴を聞いた気がする。」
どうしようもなくはない。咲姫が構わずに特殊召喚してくれたおかげで手札は八枚。【灰流うらら】と【増殖するG】を使ったおかげで手札を整えることができたのではないだろうか。
「俺のターンだ、ドロー。まずは雑に【サンダー・ボルト】発動!」
「うおお!?【グランドレミコード・クーリア】の効果発動!【ドレミコード・クーリア】を召喚してその発動を無効に!ちょっともったいないけど更にその効果にチェーンして【覇王龍の魂】発動!」
咲姫 LP8000→4000
咲姫⑤の位置に覇王龍ズァークを特殊召喚
咲姫①の位置にドドレミコード・クーリアを特殊召喚
咲姫はこれだけ引いていれば【ライトニング・ストーム】か【ハーピィの羽箒】のどちらかを引いていると予測したのだろう。それなら破壊される前に墓地に【覇王龍の魂】を置いておくという意味合いを込めて、ここではtどうするのはあながち間違いでは無いと言えるかもしれない。
もっとも、効果を発動させる必要は無いと踏んだのか、咲姫は【覇王龍ズァーク】を【グランドレミコード・クーリア】のリンク先に置こうとは思わなかったようだが。
「…俺は、手札の【憑依装着―エリア】をコストに速攻魔法【精霊術の使い手】発動!」
「墓地の【覇王龍の魂】の効果発動!相手が魔法を使った時墓地のこのカードとフィールド上の【覇王龍ズァーク】を除外してデッキ・EXデッキから【ペンデュラム・ドラゴン】、【シンクロ・ドラゴン】、【フュージョン・ドラゴン】、【エクシーズ・ドラゴン】モンスターをそれぞれ一体ずつまで特殊召喚できる!私は【クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン】をEXデッキから、【オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン】をデッキから特殊召喚する!」
当然ながら、咲姫は自身のカードの特性をある程度把握している。
だからこそ、この状況での最適解をはじき出せたのだろう。
「無駄撃ちさせるしかないな。俺は【憑依装着―アウス】を手札に加えて【憑依覚醒】をセットする。そんでもって【ライトニング・ストーム】発動!当然、フィールドのモンスター全てを破壊する!」
「…【クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン】の効果で無効に!」
だが、咲姫は一つ大きな失態を犯していた。
霊使は一ターンに一度だけありとあらゆるモンスター効果を無効にできるフィールド魔法があることを失念していたのだ。
あるいは発動しても【クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン】の効果で無効にできると考えていた。
「そうか!なら【大霊術‐「一輪」】を発動!」
「あ…。ああああああ!?」
咲姫からすれば先ほどの【ライトニング・ストーム】を無効にしなければ【ドドレミコード・クーリア】を含めた全てのカードが破壊されていた。それこそP召喚でも取り返せないような打撃が与えられていただろう。
「悪いな、咲姫!手加減できるほど軟な相手じゃないって分かってるからな…悪いが全身全霊で潰させてもらうぞ!」
「この…鬼!悪魔!鬼いちゃん!」
霊使からしてみれば咲姫の盤面を全て潰すつもりであったので思ったよりずっと強固な盤面だったようだ。【覇王龍の魂】は確かに厄介なカードだ。強力な制圧効果を持つモンスターをいとも容易く特殊召喚できるのだから、その強さは推しはかるべし、というべき類のものだろう。
「…どうしようもないほどの強さってわけでもない。」
だが、それでもまだ何とかなる程度の強さではある。
少なくとも【クシャトリラ】や【ビースデッド】に代表されるような「どうしようもないほどのナニカ」ではないのだ。それならば戦える。
だが、手順を間違えれば、そこでゲームはおしまいだ。次のターンに一斉攻撃を喰らって、無事に爆発四散することになるだろう。
「俺は手札から…【
「…【ドドレミコード・クーリア】の効果発動!」
咲姫はここで【ドドレミコード・クーリア】の効果を発動した。どうやら【妖精伝姫-カグヤ】の効果を通すとまずいと感じたようだ。その勘はあっているのだが―――いかんせん、既にどうしようもなくなっていた。
「守備力1500の魔法使い族モンスターが居るから【大霊術-「一輪」】により【ドドレミコード・クーリア】の効果を無効にする!さらに【妖精伝姫-カグヤ】の効果でデッキから攻撃力1850の魔法使い族である【憑依装着―ウィン】を手札に。そして【大霊術‐「一輪」】の効果発動!手札の【憑依装着-アウス】を公開してデッキから同属性で攻撃力1500、守備力200のモンスター一体を手札に加える!俺は【デーモン・イーター】を手札に加える!【デーモン・イーター】はフィールド上に魔法使い族がいる場合、特殊召喚できる!」
「―――これは、いつもの展開パターン…!」
霊使のデッキは展開力の大半を魔法と罠に依存している。このデッキで自力で多面展開できるカードは【憑依覚醒―デーモン・リーパー】において他にない。
いつもの流れなら【I:Pマスカレーナ】に繋いで相手のターンに【
「俺は【妖精伝姫―カグヤ】と【デーモン・イーター】をリリースしてデッキから【憑依覚醒―デーモン・リーパー】を自身の効果で特殊召喚!【憑依覚醒―デーモン・リーパー】は自身の効果で特殊召喚された場合墓地からレベル4以下のモンスター一体を効果を無効にして特殊召喚できる!俺は効果を無効にして墓地から【憑依装着―エリア】を蘇生!」
「…【閉ザサレシ世界ノ冥神】の為の素材を確保するつもり?」
霊使が【閉ザサレシ世界ノ冥神】をリンク召喚する際、基本的にリンク2のモンスターを素材にしてリンク召喚を行う。それは、【閉ザサレシ世界ノ冥神】の召喚条件は効果モンスター4体以上といっそ異常といえる程度には重いからだ。
その代わりに相手一体をリンク素材としてあらゆる耐性をすり抜けて墓地に送ることができる。条件の重さゆえの救済処置といったところだろうか。
―――しかし咲姫は展開を行いきった盤面。故に、一体を素材にするだけではまだ足りない。
「妨害効果を吐き切ったことがあだになったな、咲姫!…現れろ、世界を拓くサーキット!アローヘッド確認…召喚条件は―――
「そんな…【I:Pマスカレーナ】じゃ…ない!?」
咲姫は、霊使が召喚しようとしているモンスターの予想がつかなかった。霊使が普段使用している【I:Pマスカレーナ】のリンク召喚の条件「リンクモンスター以外のモンスター2体」だったはずだ。何度か確認したのだ、それは間違いない。
ならば、霊使が召喚しようとしているモンスターは一体なんだというのか。
「俺は【憑依覚醒―デーモン・リーパー】と【憑依装着―エリア】をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン!―――閉ざされた世界を照らすは天の月、一筋の光明をここに!リンク召喚―――LINK‐2【
霊使 閉ザサレシ天ノ月をL召喚(リンク先:咲姫の③、④)
その姿は―――何といえば良いのか。
小さくなった【閉ザサレシ世界ノ冥神】とでもいえば良いのだろうか。元のクルヌギアスから幾分か小さくなったような少女は、しかしながら【閉ザサレシ世界ノ冥神】と同じ雰囲気を纏っていた。
(何か、妨害を―――)
咲姫は手札を見る。―――しかし手札にあるのは【ファドレミコード・ファンシア】一枚のみ。このカード一枚ではどうしようもないだろう。あのカードはサーチカードとしては優秀だが、だからといって一枚だけでこの状況をひっくり返せるカードでも無い筈だ。
だから、霊使はもう妨害はない、とはっきりと言いきることができる。
「自身の効果で特殊召喚した【憑依覚醒・デーモン・リーパー】が墓地に送られたとき、デッキから【憑依】魔法・罠か【地霊術】カード一枚を手札に加える。俺は【憑依連携】を手札に。そして―――」
「嫌な予感がするよぉ!」
「【
勝負は既に中盤戦。兄妹の激闘はまだまだ続くのだ。
登場人物紹介
・四遊霊使
ここにきてデッキに新カードを投入した。
マスカレーナが奇襲用のカードなのだとしたら、ナンナは捲りようのカード
・四道咲姫
覇王ドレミコードぶっぱする人。
トラップトリックなどを積んでいるので実は割と【覇王龍の魂】は簡単に発動できる。
長くなりましたが本命の個人戦、開幕です。
あと、基本的に左側から番号を振っています。
次回もお楽しみに
水樹君のデッキ強化
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ネクロス
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リチュア