「相棒」   作:ダンちゃん1号

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準決勝:同担拒否だ!

 

咲姫を下した霊使はそのままに開戦、三回戦と順当に勝ち上がっていった。

この様子だと決勝戦の相手は奈楽になりそうだ。―――相性の悪い相手が決勝に上がってきそうなものである。

 

「奈楽も奈楽で厄介なんだが…次の相手がびっくりだ。」

 

そんな折、霊使は次の対戦相手のデッキを確認することにしていた。そして、そのデッキ内容に驚愕していたのだ。

 

「ミラー…マッチ…!」

「つまり…どういうこと?」

「相手も…ウィン達を使っている!」

 

どうやら今回の相手は霊使と同じデッキを扱っているようだ。

EXデッキの中身も含めて見えている限り全く同じなデッキ。

戦術も展開方法も、互いに全く同じ。俗にいう「ミラーマッチ」というやつだ。

 

「…ううむ…。」

「こ、これは…なんていうか、その…。」

 

―――キツイよね―――と声に出すことは無かった。

霊使のデッキは同じデッキを使っている人間がほとんどいないタイプのデッキだ。今の環境では【神碑】やら【粛声】やら【スネークアイ】やら【ラビュリンス】やらそう言ったカード群が環境を牛耳っている。さらに最近では後攻ワンショットキルを容易く狙える【天盃

龍】というデッキも台頭しているらしい。

とにかく、以前エリアが言っていたように霊使の扱うデッキはカードパワーは低い。故に相手を妨害しながら戦うメタビートというデッキタイプになる。

 

「…メタは全部壊してきたからなぁ…。」

「咲姫とのデュエルの時のように除去カード連発とかしてね…。」

 

霊使がメタデッキを相手にするとき、大概その要因を壊すカードを引き込むか、増殖するGにものを言わせた手札の物量で無理矢理切り抜けるかのどちらかであった。

しかし今回の相手は色々と未知数―――誰も自分自身と対戦する機会なんてものはないからだ。

 

「―――やりにくい…かな。私達も、霊使自身も…。」

「うん…特に私達は…自分を破壊するわけだから…もう…ね?」

「ええ…。何というか気が滅入る、というやつですね。」

「ボクも同士討ちはちょっと…。」

「ライナも嫌だなぁ。何とかして避けられない?」

「しかもこれ絶対あれだ、僕らも割り喰うやつだ。変な会話はするんじゃないぞ、マスター。」

 

それに精霊を連れたミラーマッチというものほどやりにくいものはない。

彼女たちの反応は六者六様であるが―――その根底にあるのは「やりにくい」という感情だ。

それは彼女達を愛用している霊使も同じで、もしかしたら躊躇してしまうかもしれない。

 

「…お、お腹痛い…。せめて変な言いがかりをつけてきませんように…!」

「そればかりは…なんとも…。」

 

霊使の訴える腹痛はもはや日常茶飯事になりつつある。

世界を救う戦いの時は全く緊張していなかったというのに、なぜこういう場ではこんなガチガチに緊張するのか。そんな可愛いところも霊使の魅力なのだろう―――とウィンは愚考する。

 

「なるようにしかならないから…頑張ろう!ボク達も頑張るから!」

「ヒータぁ…ありがとう…。」

 

そんなやり取りがあって、霊使は痛むお腹をさすりながら準決勝の舞台へと飛び出していった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「…来た。」

 

そこに居たのは、普通の男。

髪を短く切りそろえて、中肉中背―――170㎝くらいの男がそこに立っていた。

彼の特徴は黒い髪から赤、青、茶、緑、白、紫の六本のメッシュを伸ばしているという事。

何とも特徴的な髪型だ。

 

「待たせた…みたいだな?」

「いや、それほど。君は緊張しいだろう?僕もそうだから良く分かるとも。」

「なんでそんなところまで同じなんだよ!?」

 

しかしそれ以外はほとんど霊使と変わらない、至って普通の少年だ。

いや、頭から伸びる六本のメッシュがある限り普通の少年とは扱われないような気もするが―――、それでもちょっと奇抜なファッション、くらいの物だろう。

そんな彼だが、まず霊使に一つ質問を投げかけて来た。

 

「ところで、だ。君も【霊使い】ちゃん達を使ってるんだろう?」

 

というものである。それに関しては、霊使いはちゃんとした回答を返す事が出来た。

 

「…ああ。生まれてこの方霊使い一本だよ。」

 

無論、嘘である。霊使が【霊使い】達と出会う前には風属性を主体としたデッキを扱っていた。

しかし、そのデッキは奪われ売りさばかれ―――この世にきっと存在さえしていないだろう。

そして今の霊使はもはや【霊使い】というデッキを手放すつもりは毛頭ない。

そんなわけもあって、霊使はもう【霊使い】以外のデッキを使う考えが存在していなかった。それだけ、彼女たちにほれ込んでいるからだ。

 

「…なるほど。そんな君に一つ聞きたいことがある。」

 

そんな霊使に対して相手は一つの問いを投げかけて来た。

霊使は「その前に!」と男に問いを投げかける。

 

「名前を聞いてもいいか?」

「…同志に名乗らないのは失礼だったね。僕の名前は六道遊樹(りくどうゆうき)。君の同類だよ。君も霊使いを推さないか?」

 

今回の対戦相手―――遊樹は自分を「同類」と呼ぶ。そこに邪な感情は一切ない。

―――故に霊使は、相手のノリに全力で乗っかることにした。こういうのは乗ってしまった方がコミュニケーションしやすいのだ。

 

「同類…だと?じゃあ、答えてもらおうか。―――彼女たちのどこに惹かれた?」

「そりゃあ、顔であり、体であり、表情であり―――全てさ!彼女を!彼女と共に戦う君を!あの時、あの予選で見たときからずっと!彼女たちの全てに惹かれていた!」

「思ったよりも思いが重い!」

 

霊使はさっそく悪乗りをしたことを後悔した。何か思ったよりもヤバい目をしていらっしゃる遊樹に霊使は少し引き気味になってしまう。

いや、本当に遊樹の情熱は伝わってくるのだが、いかんせんそれ以上に恐怖が勝ってしまうのだ。もしかしたら自分もあんな目をしているのかと思うと、余計に心に来る。

 

「…霊使の目はさすがにあそこまではイってないと思う…多分。」

「そこははっきり断言して?」

 

悪い人間ではないのだろうが―――何というか霊使は少し苦手なタイプだ。

 

「…というわけで、だ。改めて聞かせてもらうよ?君も霊使いを推さないか?」

「………何を……言っている………?」

 

霊使いの頭の中には神秘的な宇宙が渦巻いていた。

目の前の男が一体何を言っているのかが理解できない。理解できなさすぎる。言葉は通じるのに会話が通じないというのこういう意味だったのか―――と、霊使は一人で納得する。

霊使いが混乱しているのを見てか、遊樹は質問を分かりやすく言い換えてくれた。

 

「…分かりやすくしたほうが良いか。君は霊使いの中で誰が「好き」なんだ?」

「そりゃ全員だろ。今までも、これからもずっと俺はみんなに尽くすさ。」

 

今度の問なら即答できる。

霊使はあくまで全員が好きだ。―――弱冠一名には恋愛感情を抱いているが、まあそれはそれというやつだ。

霊使の回答に「尽くすなら付き合ってくれたって…」という声が混じった気がしたが、それに関して考えるのは止めておくべきだろう。―――ウィンからの視線が冷たくなりそうだから。

 

「…なるほど。なら君は全員を平等に「推す」と?」

「…手札や展開の兼ね合い上出番が無くなっちゃう子たちもいるけど…基本は、まぁ。」

 

「推し」というのとはまた別物なのかもしれないが、それでも霊使が彼女達を使わなくなるということはあり得ない。一度のデュエルでは展開ルートの関係上、属性がダブって召喚する機会が減るライナや、基本は【大霊術‐「一輪」】で【デーモン・イーター】を手札に加えるためにデッキに戻すことが多いアウスなどはちょっと不満がありそうではあるのだが―――そこは自分の不徳の致すところだ。

それは今後のデュエルで取り返していくことにすると決めた。

 

「上から目線でウィン達について語られるというのは何ともむかつくな…。」

 

それはそれとして、愛の深さだけで言うのなら霊使は遊樹に負けることは無いだろう。それ故に、遊樹にそれを深堀りされるというのは霊使にとっては何とも複雑な気持ちになる。そして、何より目の前に男にウィン達の魅力を語られるのが我慢できない。

彼女たちの魅力は自分だけが知っていればいいという独占欲が心の奥底から鎌首をもたげてくるのだ。

 

(…意外と俺って嫉妬深いタイプなんだな。)

 

認めてしまえば、それはもう霊使の中で揺らぎようのないものになっていく。

目の前の男に対して何とも言い難い感情が胸の底から湧いてくる。

 

「…悪いが俺は同担拒否系の人間のようだ。特に霊使いの皆に関してはな。」

「おっと…それは失礼した。君が同担拒否の人間だったとは。…だが、敢えて言わせてもらおうッ!霊使いちゃん達の魅力は世界に発信されるべきなんだ!」

「皆と一緒に居られる時間が減ってしまうだろーがッ!俺は!みんなとゆったり暮らしたいんだよ!」

 

霊使いの魅力は自分だけのものにしたい。

といってもそれはそれ、これはこれだ。今後もこういう大会に出る以上、彼女達も注目されていくことだろう。

ならば彼女達の「使い手」として、なにができるのか。

それは「霊使いというカード群を使わせたら霊使自身の隣に並び立つものなし」と周囲に認識させる事くらいだろう。

―――やることは至って単純で、今後も勝ち続けていけばいいだけだ。無論、全員で一緒に。

 

「―――だから、俺はお前をぶっ潰す!」

 

まずはこの相手を乗り越える。

同担拒否であるという事を示すため、自分自身の意志で遊樹を斃すのだ。

 

「俺が!俺達こそが!【霊使い】だ!」

「ちょっとまって霊使が壊れたーッ!?」

 

これが後世まで伝わる史上最強の同担拒否の決闘者の誕生の瞬間であった―――。




というわけで同担拒否の男が誕生しました。
少なくとも日本編はギャグ寄りなので頭の中でUnwelcome Schoolでも流しておいてください。

登場人物紹介

・霊使
同担拒否の男。
色々とあったが結局は同担拒否なのだ。

・遊樹
1.5部だったら選ばれない男としての悲哀を見せた筈だった。
今回はこっちに出たので愉快なおもしれー男に。

というわけで次回をお楽しみに!

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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