自分の独占欲を満たすため―――もとい、自分が誰よりも深く霊使いの皆を愛しているという事を証明するためのデュエルが幕を開けた。
先攻は霊使からだ。
「先攻は俺だ!…俺は手札から魔法カード【妖精の伝姫】を発動!更に手札から【妖精伝姫‐カグヤ】を召喚!効果でデッキから【憑依装着‐アウス】を手札に!」
いつも通りにカードを回していく。
似たような構成ならば相手も妨害のほとんどはEXデッキに頼っているはずだ。
「…俺は速攻魔法【精霊術の使い手】を発動!今手札に加えた【憑依装着‐アウス】をコストにデッキから【憑依覚醒】を手札に加えて【憑依連携】をセット。…さらにカードをニ枚伏せ、【憑依覚醒】を発動してターンエンドだ。」
霊使 手札0枚
モンスターゾーン ①なし
②妖精伝姫‐カグヤ
③なし
④なし
⑤なし
魔法・罠ゾーン ①妖精の伝姫
②憑依覚醒
③伏せ
④伏せ
⑤伏せ
霊使は自身のデッキの弱点を良く知っている。
弱点の一つは「攻撃力1850の魔法使い族」か、「守備力1500の魔法使い族」を展開の軸にしている事。【憑依】魔法・罠カードにおいて必ずこのどちらかが指定されている為、そのどちらも場になければ当然【憑依】魔法・罠カードは真価を発揮することは無い。
そしてもう一つの弱点が、展開力と火力の増強を魔法・罠カードに頼っているという事だ。
従って魔法・罠カードのいずれか―――あるいは両方を封じてしまえば、デッキの出力はガタ落ちしてしまう。だからできることなら相手の【ハーピィの羽箒】や【ライトニング・ストーム】といった伏せの除去カードを封じたいのだ。
霊使は今までそれを【魔法族の里】に頼ってきたが、それでは自分の場から魔法使い族が居なくなった時に魔法を使えず、自分が窮地に追いやられてしまう。
(―――もし俺が、魔法主体の魔法使い族デッキ―――【ブラック・マジシャン】やら【魔導】などと戦う事になった場合、今まで使用していた【魔法族の里】は意味を為さない。)
さらに【魔法族の里】は相手に魔法使い族モンスターが存在すれば、何の意味もなさないカードだ。例えば手札誘発用のカードとして【エフェクト・ヴェーラー】があるが、これを普通に召喚されるだけで簡単に対処されてしまう。
そのカードから展開できるようなデッキであれば、それこそモンスター効果で【魔法族の里】を破壊されて同じような目にあうだろう。よしんば【スキルドレイン】を発動していたとしても魔法カードの効果で除去されたらたまったものではない。
だから、霊使は【魔封じの芳香】を使う事にした。以前ウィンが使っていたデッキから【魔封じの芳香】の身を拝借した形だ。
「僕のターンだ。ドロー。」
「【魔封じの芳香】を発動。これで互いに魔法はセットしなければ発動できなくなった。…さらについでに【スキルドレイン】も発動。これで互いのモンスター効果全てが無効になる。」
「…カードを4枚伏せて【妖精伝姫‐カグヤ】を召喚。バトル!」
「当然伏せカードの【憑依連携】を発動。墓地の【憑依装着‐アウス】を召喚してそのまま【妖精伝姫‐カグヤ】を破壊。【憑依覚醒】の効果で一枚ドロー。」
「何もできないじゃないか…。」
霊使と遊樹。二人のデッキは全く同じだ。それはこれまでのデュエルを見てたらわかるし、きっと相手もそれを分かっているだろう。
だが、後攻になるという事を予測して―――サイクロンだとかそう言った速攻魔法を捨てていたのがあだになった。
「俺は流星との戦いで気付いたんだ。相手に何もさせなけりゃ勝つのはこっちだってな!」
「酷い!?…何もできないからターンエンドするしかないじゃないかぁ!」
遊樹 手札1枚
モンスターゾーン ①なし
②なし
③なし
④なし
⑤なし
魔法・罠ゾーン ①なし
②伏せ
③伏せ
④伏せ
⑤伏せ
霊使 手札1枚
モンスターゾーン ①なし
②妖精伝姫‐カグヤ
③なし
④なし
⑤憑依装着‐アウス
魔法・罠ゾーン ①妖精の伝姫
②憑依覚醒
③魔封じの芳香
④スキルドレイン
⑤なし
なにもさせない。それこのゲームにおいて最大級の勝ち筋の一つだ。
攻撃力を上げて物理で殴るのを信条にしている霊使にとっては「何もさせない」という事が一つの前提条件になってくる。相手に何かされたらそれこそそこから一気に巻き返されない。
故に霊使の用いるデッキは常に相手からイニシアチブを奪い続けなければならないのだ。一つのミス、一つの予想外が霊使を窮地に追い立ててしまう。
(自分のデッキの弱点を明確に把握しているとミラーマッチでこんなにも役に立つんだなぁ。)
しかしそれは、ミラーマッチにおいては「弱点を熟知しているということ」に他ならない。
デッキの弱点を突くことが出来れば大きく優位に立てる。今回の結果はそれを如実に表していると言えるだろう。霊使は自身のデッキの弱点を熟知して、それを生かした立ち回りをすることができた。
「…俺のターン、ドロー。【憑依装着‐ウィン】を召喚!攻撃力1850のモンスターが召喚されたことにより【憑依覚醒】の効果発動。デッキから一枚ドローする。さらに【妖精の伝姫】の効果でデッキから【憑依装着―ダルク】を召喚。更に手札の【デーモン・イーター】の効果で自身を特殊召喚。【デーモン・イーター】と【妖精伝姫‐カグヤ】の二体で【照耀の光霊使いライナ】をリンク召喚!」
「…リンクの霊使いまで…!すごいや…!」
後はもうこのまま後を詰めるだけ。
相手が【聖なるバリア‐ミラーフォース】を伏せていたらシャレにならないし、もしかしたら【魔法の筒】や【波紋のバリア‐ウェーブ・フォース】のような霊使が採用していないカードを採用しているかもしれない。
基本的なデッキ構成は同じだが、細部まで全く同じであるという事はありえないはずだ。
「…バトルだ!」
―――遊樹は動きを見せることは無い。
そのまま4体のモンスターの一斉攻撃で霊使の準決勝はいとも簡単に幕を閉じた。
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「負けた負けた」と遊樹は晴れやかに笑う。
どうやら、彼の想像していた以上の負けっぷりだったらしい。
「ははは、流石同志だよ。僕も彼女たちを勝たせるという一点では君に負けるつもりはなかったんだけどなぁ。」
「悪いな、俺はまだまだ負けるわけにはいかないんだ。」
遊樹はそう言いながら舞台から去っていった。
彼が去った後、霊使も舞台を去る。そこでウィンが姿を顕した。
「あと一つ、だね。」
「…ああ、そうだな。あと一つだ。」
あと一つ―――霊使はウィンの言っているが分からないほど馬鹿ではない。
これで霊使は日本選手権で決勝まで進んだことになる。
あと一つ勝てれば優勝―――世界を相手にして戦う事になるだろう。
そして、それはようやく克喜に並べるということでもある。といっても克喜と戦うためには今度は世界の強豪相手に勝ちあがっていかなければならない訳なのだが。
(はてさて―――決勝の相手は…誰になるかな。)
霊使はおおよそ奈楽がそのまま決勝まで上がってくるだろうと考えていた。
奈楽のデッキは【蟲惑魔】と【ラビュリンス】を掛け合わせたデッキだ。どちらも通常罠の扱いに長けていて、【ラビュリンス】側は【蟲惑魔】において足りない打点をカバーし、【蟲惑魔】側は通常罠である【ホール】、【落とし穴】系統のカードを用いてラビュリンスのカード効果を誘発させる。
何とも相性が良い組み合わせだ。そして霊使が最も苦手とするデッキタイプでもある。
(準決勝は―――鈴花さん!?え!?な…えぇえぇぇえええ…?)
本人は多分二回戦か三回戦あたりで負けるとと言っていた。
しかしどうやら彼女の用いる【罪宝スネークアイ】は相当に強力だったらしくなんやかんやで準決勝まで進んでしまったようだ。
本人があわあわしている様子が克明に思い浮かぶ。
「やっぱり弱いわけじゃあないんだよな、鈴花さんのデッキ。」
霊使は鈴花のデッキを思い浮かべながらそう呟いた。
炎属性レベル1のカードならなんでも採用できる程度にはあのデッキの裾野は広い。
「そうなの?」
だがそれがどういう事かよく分かっていないのだろう。ウィンはそうなの、と聞き返す事しかしなかった。
「二ターン目には【ヴァレルロード・S・ドラゴン】と【フルール・ド・バロネス】が並ぶんだぞ。そんなものにどうやったら勝てるっていうんだ?」
「…なんで勝ててたんだろうね」
具体例を説明したらウィンはなんで今まで自分達が勝てて来たのか心底不思議がっていたようだが。
彼女が何故かプレイングミスすることが多かったからだろう。
といってもこの大会において彼女は一度たりともプレイングミスをすることは無かった。
「どっちが勝っても強敵だぞ、これは…!」
「でも、楽しみなんでしょ?」
「まあ、な。」
奈楽と鈴花。どちらが勝って決勝に上がってきては霊使がやるべきことは変わらない。
ただ、勝つだけだ。
「楽しみだなぁ。」
「そうだね。…私も楽しみ。」
霊使の漏らした言葉にウィンもまた言葉を返す。
どちらが戦う相手になるのか――それはまだ、だれも知らない。
登場人物紹介
・霊使
勝った。
普通に考えてあんなえぐい先攻制圧したら勝てるやろ。
・遊樹
負けた
というわけで準決勝の前座戦は終了です。
個人的には準決勝は新旧霊使の仲間対決がメインなのです。
水樹君のデッキ強化
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ネクロス
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リチュア