鈴花は、一人きりの控室でこれから対峙する相手のことを考えていた。
星神奈楽―――霊使の友人であり、かつての事件の立役者。
そして、この大会の優勝候補の一角と目されている凄腕の決闘者である。ちなみにもう一人は霊使だった。彼はどうやら無事に準決勝を突破した。羨ましい限りである。
「…勝てる…のかな。」
「弱気になってんのか?…鈴花らしくもねぇ…。」
「ここまでくると緊張するもんなんだよ。…ディアも少し硬いよ?」
「…オレの場合は…嫌な予感がプンプンしてるからなんだが…。」
ディアも相手の力のほどを正確に読み取っているようだ。
この勝負は自分の切り札を適切な場所で切れるかどうかが一番の鍵になりそうだ。
例えば相手の展開の要である【セラの蟲惑魔】の効果を何とかして無効にできればそれだけで脅威度はぐっと落ちるだろう。
逆に相手に先攻を取られてしまえば、それだけで壊滅的な被害を被る可能性も考えられる。
なんせ相手は妨害を行うという一点にかけては右に出る者はいないと言えるほどの力の持ち主だ。いくら警戒しても警戒しすぎということも無いだろう。
「私は…勝つんだ…!」
「…落ち着けよ、すげぇ怖い顔になってるぜ?」
「……ごめんごめん。…落ち着くよ、ディア。」
勝って、彼の隣に並びたい。
霊使の目に何が映っているのかは分からない。私が彼の目指している先に居るのかどうかすら分からない。
それはそれでいいだろう。
高い目標を持つことは何も悪い事じゃないはずだ。
(彼が見ている景色を見たい…と思ってしまうのは傲慢なのかな?)
それでも。
叶う事なら。
霊使の隣に立って、彼が望む景色を一目見てみたい。
よしんばその先に行きたいという気持ちもあるが―――それはさすがに高望みしすぎというものだろう。
「さて、行こうか、ディア!」
「ああ。」
鈴花とディアベルスターは二人で舞台へと向かう。
勝っても負けてももう一試合あるが―――一番の難敵は間違いなくこの先に居るのだから。
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奈楽は頭を抱えていた。
ただただ【スネークアイ】と【蟲惑魔】の相性の悪さをどうしようかと思索しているだけであるが―――相当に厄介な事だけが浮き彫りになるばかりだ。
「…【裏切りの罪宝‐シルウィア】の効果が厄介すぎるんだよなぁ…。」
EXデッキの【蟲惑魔】達に罠の効果は効かないとはいえ、それでも通常罠そのものに効果を当てられてしまう可能性がある。それに例え先攻を取ったとしても、炎属性レベル1のモンスターを主力にする以上、あのカードの効果に引っかかりかねない。
そうなってしまえば盤面はどうしようもなく壊滅だ。
「あのデッキの売りは柔軟性ですからね…。」
「あ、やっぱりそう思う?」
「はい。…なので基本は【墓穴ホール】や【煉獄の落とし穴】といったカードを中心に立ち回るのがいいでしょう。」
相性の悪さは分かっているせいか、フレシアもなるべく現実的で実用的なアドバイスを心掛ける。
どうやら彼女もこのデュエルに負けたくはないようだ。
「できれば最初のターンに【キノの蟲惑魔】を握っておきたいところだね。」
「そうですね。そうすればセラちゃんにスムーズに繋げられます。それに運が良ければそのまま【ラビュリンス】の子達で一気に制圧してしまってもいいでしょうし。」
いくら策を練った所で、結局は出たとこ勝負なのだ。
そしてその出たとこ勝負に勝てるかどうか―――それがデュエルだ。
戦略、運、そして運命を引き寄せる力―――全てが揃ったデュエリストが勝つ。
「行こうか、勝ちに!」
「―――はい。」
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鈴花は通用口から二人歩いてくるのを見た。
一人は星神奈楽―――先攻特化のはずのデッキなのになぜか後攻でも戦えるという訳の分からない男。
もう一人は彼のエースであるフレシアの蟲惑魔だろう。基本的に捕食者側であるはずの彼女がなぜあんなに奈楽にべったりなのかは知る由もないのだが。
「初めまして、桜庭鈴花さん…でよかったっけ?」
「そう言うあなたは星神奈落…。良いデュエルにしましょう。」
いくら霊使の親友とはいえ、奈楽は初対面の人間だ。
友人の友人―――ほとんど他人のような関係でどういう風に接するのが正解なのか、人付き合いが苦手な鈴花にはさっぱり分からない。
お陰で何故か挑発しているようになってしまった。
言葉とは何ともおそろしいものである。
「…そう言うセリフっていうのは強い人が言うものだよ。…君も彼と戦いたいんだ?」
「もちろん。負けっぱなしは癪だから。」
「実感が籠ってるね…。実のところ言うと僕もなんだけど。」
一方でそういう所は気が合いそうだ。
といっても今は倒すべき相手。彼のデッキの愚痴はこのデュエルが終わってから漏らせばいい。
「どっちが勝つか…始めようか。…霊使君と戦うのは、僕だ。」
「勝つのは私だよ、私が彼を倒すんだ!」
先攻は―――奈楽。
使用するデッキは【蟲惑魔】―――先攻有利の妨害デッキだ。
「僕の先攻だね―――デュエル!」
「デュエル―――!」
最初の五枚の手札を見たとき、鈴花は何となく安堵した。
少なくとも、次のターンに「何もできない」という事はないだろうからだ。
(…手札を見る限り後攻でもなんとかなりそう…。如何に相手に効果を使わせるかが重要だね…!)
手札誘発の類は手札に1枚のみ。このカードの効果をどこで使うか―――それがこのデュエルにおいて最も重要な戦術の軸になるだろう。
「僕は手札から【プティカの蟲惑魔】を召喚!効果でデッキから【蠱惑の園】を手札に加えてそのまま発動。更に手札の【
「分かってはいたけど【ラビュリンス】混合型…!」
先攻ならばどれだけ展開されても大丈夫―――なんて余裕をこける相手ではない。
相手に展開を許せば許すほど後々に不利になってしまう。
(
だからこそ、敢えて自分を不利にする。
そうすればそうするほど「とっておき」による相手への被害は大きいものになるから。
「リンク召喚成功時に【パラレルエクシード】の効果発動!このカードをリンクモンスターのリンク先に特殊召喚召喚してさらにデッキからもう一体【パラレルエクシード】を特殊召喚!【パラレルエクシード】の効果で召喚した【パラレルエクシード】の攻撃力は半分になり、レベルも4となる!」
「…ちょっとまって?」
―――予想外が過ぎる。
いきなりそんな―――サーチ手段に乏しい【パラレルエクシード】を特殊召喚するのはおかしいのではないだろうか。
しかも【パラレルエクシード】の効果で特殊召喚された【パラレルエクシード】はレベル4として扱うらしい。そして、各【蟲惑魔】エクシーズモンスターの召喚条件は「レベル4モンスター」のみ。
強力な【蟲惑魔】エクシーズモンスターの頭数が一体増える。それだけで異常なまでに厄介だ。
「【パラレルエクシード】二体で【シトリスの蟲惑魔】をリンク召喚!【シトリスの蟲惑魔】の
「…うららが欲しいよぉ!」
【シトリスの蟲惑魔】―――攻撃力2500と高めな上に、X素材を消費することでデッキから【蟲惑魔】モンスターをサーチすることができるカード。
そしてこのカードは当然【蟲惑魔】の一種である。従って―――
「【シトリスの蟲惑魔】の効果が発動したため【セラの蟲惑魔】の効果発動!デッキから【ホールティアの蟲惑魔】をフィールドにセット!」
【セラの蟲惑魔】の効果が発動する。
その効果は蟲惑魔の先攻制圧を支えるサーチ効果だ。しかも直接フィールドにセットする為「デッキからカードを手札に加える効果」、「デッキから特殊召喚する効果」、「デッキからカードを墓地に送る効果」のみを阻害する【灰流うらら】によって妨害されないという優秀な効果だ。
「更に【シトリスの蟲惑魔】の効果でデッキから【キノの蟲惑魔】を手札に加える!そしてフィールドにセットされた【ホールティアの蟲惑魔】は手札の通常罠一枚を墓地に送ることで即座に発動できる!というわけで手札の【串刺しの落とし穴】を墓地に送って【ホールティアの蟲惑魔】を発動!」
追い打ちを掛けるように奈楽は【ホールティアの蟲惑魔】を発動。このカードは「罠モンスター」と呼ばれる一種で通常の罠のように伏せて置き、発動後はモンスターとなるカードだ。
しかも【ホールティアの蟲惑魔】は手札の通常罠一枚をコストに伏せて即発動できる。なによりも【ホール】通常罠である為か【セラの蟲惑魔】の効果を発動させることができるのだ。
「通常罠が発動したため【セラの蟲惑魔】の効果発動。デッキから【ティオの蟲惑魔】を特殊召喚!【ティオの蟲惑魔】の召喚成功時、墓地の【狂惑の落とし穴】をセット!そして、【ティオの蟲惑魔】と【ホールティアの蟲惑魔】で【フレシアの蟲惑魔】をエクシーズ召喚!…これでターンエンド。」
奈楽 手札一枚 LP8000
EXモンスターゾーン(右) セラの蟲惑魔(リンク先:奈楽④)
モンスターゾーン ①なし
②なし
③なし
④フレシアの蟲惑魔
⑤シトリスの蟲惑魔
フィールド魔法 蟲惑の園
魔法・罠ゾーン ①伏せ
②伏せ
③なし
④なし
⑤なし
相手の盤面は何ともすさまじいものだ。生半可な展開はいとも容易く封じられてしまうだろう。
これから自分はこの蟲惑魔の牙城を崩さなくてはならない。
(神様は何とも高い壁を用意してくれたもんだねぇ…!)
いるはずもない神に悪態を付きながら鈴花は目の前を見据える。
これを乗り越える事が出来なければ、彼の足下にさえ及ばないだろう。
彼が強さの破堤何を望んでいるのかは分からない―――しかし、彼と並び立つにはこの強大な壁―――もとい巨大な森を乗り越える必要がある。
「さてと……私のターン、ドロー!」
鈴花は自身の全てを込めて、デッキの上から一枚目を引き出した。
登場人物紹介
・奈楽
いつも通りのとんでもねぇ展開。
・鈴花
蟲惑の森を焼却処分できないものか考えている
というわけで準決勝第二戦開始です
水樹君のデッキ強化
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ネクロス
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リチュア