「相棒」   作:ダンちゃん1号

207 / 209
準決勝②:「そこに行くのは―――」

 

奈楽 LP2300 手札一枚

フィールド   ①ティオの蟲惑魔

        ②~⑤なし

魔法・罠ゾーン ①伏せ

        ②伏せ

        ③~⑤なし

 

鈴花 手札1枚 LP8000

モンスターゾーン ①俱利伽羅天童

         ②白銀の城のラビュリンス

         ③なし

         ④なし

         ⑤なし

 

魔法・罠ゾーン  なし

 

 

奈楽は【俱利伽羅天童】によって壊滅状態に陥った自分のフィールドを眺めて考えていた。【俱利伽羅天童】は炎属性レベル1のモンスター。【スネークアイ・エクセル】でのサーチも容易く、どんなデッキでも一度は相手のターン中にモンスター効果を使うだろう。

相手ターン中にフィールド上のモンスターの効果を使わないデッキはそれこそ霊使の【霊使い】をはじめとしたデッキしか思いつかない。

 

(…結局の所【俱利伽羅天童】という選択肢を排除していた自分のせいだね…。)

 

レベル1、炎属性を主軸としたデッキであるならば当然【俱利伽羅天童】という選択肢は浮かんでくる。しかし、このカードはピーキーな性能をしているのだ。

まず、リリースするのは「自分のターン中に相手フィールド上で効果を発動したモンスター」のみ。例えば【灰流うらら】や【増殖するG】といった手札誘発には効果が無いし、「発動しない」モンスター効果には当然無力でしかない。

次に、「特殊召喚に対してカードを使える」ということ。このカードの召喚に成功した後に除去されてしまえば、フィールドががら空きかそれに近しい状態になる。

故に「決まれば強いが―――」という評価をされているカードが【俱利伽羅天童】なのだ。

 

(…基本は【ヴァンキッシュソウル】で使われることが多いから、…【スネークアイ・エクセル】のサーチ対象であることをすっかり失念していたから…!)

 

結局、奈楽は欠片たりとも【俱利伽羅天童】というカードを警戒していなかった。―――というより、警戒するのを忘れていたのだ。だから自身が展開していた盤面全てをたった一枚のカードでひっくり返されてしまった。後一手で勝ちと言うところから、あと一つ間違えれば負けといえるほどにまで。

それは言うまでもなく奈楽自身のミスだ。―――しかも、今回に至っては【フレシアの蟲惑魔】の効果を始めたとした蟲惑魔達の効果を利用される形で降臨を許したのだ。

 

(…油断、慢心…!一番やっちゃあいけないやつだ…!)

 

自分は絶対にしないと決めていた油断や慢心。―――手札誘発はあっても【原始生命態ニビル】くらいだろうという油断や、【蟲惑魔】達による制圧によってもうひっくり返しようがないだろうという確信のような慢心。

 

「…どうやら僕は君をどこかで見下していたらしい。僕と、フレシア達の方がずっと強いって…!反省しないとね、これは。」

 

そしてそれは心の何処かで鈴花たちを見くびっていたから起きたことに他ならない。

故に―――奈楽は自身の未熟を恥じ、鈴花に謝罪した。

 

「…そしてここからは僕もより貪欲に勝ちに行く…!ドロー。」

 

そしてより貪欲に勝ちに行くと誓った。

どんな手段を用いても最終的に勝つのは自分なのだと、そう言い切る。

 

「…魔法カード【貪欲な壺】発動!【パラレルエクシード】二枚と【セラの蟲惑魔】、【フレシアの蟲惑魔】、【シトリスの蟲惑魔】をデッキに戻して二枚ドロー!」

「うぐ…!」

 

まずはリソースを回復する。

【蟲惑魔】はそこまで積極的に墓地のカードを再使用するデッキではない。

だから墓地にあるカードはデッキに戻したほうが良いし、当然墓地にはカードを置いておく意味はない。

一部のカード―――【ホールティアの蟲惑魔】や【ティオの蟲惑魔】、【クラリアの蟲惑魔】は墓地にあるカードを特殊召喚することができるが、それは【蟲惑魔】モンスターだけだ。

 

「…そしてそのまま【ティオの蟲惑魔】一体で【セラの蟲惑魔】をリンク召喚!さらに伏せていた【ホールティアの蟲惑魔】を発動!【ホールティアの蟲惑魔】を特殊召喚!さらに通常罠が発動したため【セラの蟲惑魔】の効果が発動。…デッキから【リセの蟲惑魔】を特殊召喚!」

 

【蟲惑魔】は一体でも蟲惑魔が居れば、エンジンであり、デッキの要でもある【セラの蟲惑魔】につなげることができる。そして一度でも場を整えてしまえば連鎖的に【蟲惑魔】達はフィールドに現れる。

 

「いつも通りに【ホールティアの蟲惑魔】と【リセの蟲惑魔】で【フレシアの蟲惑魔】をエクシーズ召喚!さらに追加サービスだよ!手札から【ティオの蟲惑魔】を召喚!【ティオの蟲惑魔】の召喚成功時墓地から【アトラの蟲惑魔】を召喚!【蟲惑魔】の効果が発動したからデッキから【狂惑の落とし穴】をセット。【セラの蟲惑魔】、【アトラの蟲惑魔】、【ティオの蟲惑魔】の三体で【アティプスの蟲惑魔】をリンク召喚!」

 

【蟲惑魔】が【蟲惑魔】を呼び続けることで奈楽のフィールドは【俱利伽羅天童】によって壊滅状態にあった時から一転して、再び蟲惑魔軍団が姿を顕す。

そして、それは―――奈楽にとっては待ちに待った瞬間でもあった。

 

「【アティプスの蟲惑魔】の効果発動!このカードは自分フィールド上の昆虫族・植物族モンスターの数だけ相手の場のカードを対象にして発動できる効果を持つんだ。…そして対象となったモンスターは効果が無効にされ、その上で墓地の通常罠一枚を除外して対象カードの内の一枚を破壊できる…。」

「なんだって…!?そんな、まさか…!」

 

今の奈楽にとって一番厄介なのは【俱利伽羅天童】だ。このカードが場にある限り攻撃力7500の壁を越えなくてはならない。

しかし、【アティプスの蟲惑魔】がいれば話は変わってくる。【俱利伽羅天童】の攻撃力上昇効果は()()()()()()。そして一度無効にしてしまえば、攻撃力は1500へと戻る。

そうすれば戦闘が得意な【アティプスの蟲惑魔】によって何の苦もなく戦闘破壊ができる。

 

「【アティプスの蟲惑魔】の効果に対象とするのは【俱利伽羅天童】と【白銀の城のラビュリンス】。…さらに墓地の【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を除外して【白銀の城のラビュリンス】を破壊するよ。」

「くぅッ…!」

「バトルフェイズだ!【アティプスの蟲惑魔】で【俱利伽羅天童】を攻撃!」

 

効果を無効にされた【俱利伽羅天童】は攻撃力1500のモンスターだ。

今のアティプスの攻撃力は2800。言うまでもなく【俱利伽羅天童】の攻撃力を上回っている。

 

鈴花LP8000→6700

 

「…またひっくり返された…ッ!」

「これで…逆転だ!僕はこれでターンエンドだ。エンドフェイズに【ティオの蟲惑魔】の効果でセットされた【狂惑の落とし穴】は除外されるよ。」

 

奈楽 手札1枚 LP2300

EXモンスターゾーン (右)アティプスの蟲惑魔(リンク先②)

モンスターゾーン   ① フレシアの蟲惑魔(守備表示/X素材×2)

           ②~⑤なし

魔法・罠ゾーン    ①伏せ

 

鈴花 手札1枚 LP6700

フィールド なし

 

鈴花の手札は残り一枚。

そしてそれは【スネークアイ追走劇】であると奈楽は知っている。

故に、このデュエルがどうなるかは鈴花の次のドローに全てかかっているだろう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

追い込まれた。鈴花は互いのフィールドを見比べるまでもなくそう強く感じた。

あの状況から全てをひっくり返された。

しかも自分は【俱利伽羅天童】という一枚のカードにかけた大博打だったが、相手は展開していくうえで自然と立て直して見せた。

―――そしてこのドローで自分の全てが決まる。

そう考えてしまうと、少し怖い。

―――それと同時に今にも負けそうなこの状況を楽しんでいる自分が居る事にも驚いている。

 

「私のターン。…ドロー。500LP払って墓地の【ヴォルカニック・バレット】の効果発動。デッキから【ヴォルカニック・バレット】を手札に加える。…速攻魔法【スネークアイ追走劇】発動!デッキから【黒魔女ディアベルスター】を永続魔法扱いでフィールドに置く!…そして…!」

 

恐らくこの【黒魔女ディアベルスター】は【狂惑の落とし穴】か【フレシアの蟲惑魔】の効果で破壊されてしまうだろう。

それでも、勝ちたいと願う。

まだなにかあるはずだと考える。

この楽しい時間を終わらせたくはないから。

 

「…そして、魔法カード【貪欲な壺】発動!」

「…君もか!」

 

このデッキにおいて墓地は非常に重要だ。

特にレベル1、炎属性モンスターを墓地にためるという行動がそのまま自分のアドバンテージに繋がる。

しかしこの手札ではそもそもの展開さえ行う事が出来ない。

ならばいっそのこと全てリセットして一からやり直したほうが良いのだ。

 

「当然…!私は墓地の【俱利伽羅天童】、【スネークアイ・エクセル】、【蛇眼の炎燐】、【黒魔女ディアベルスター】、【ヴォルカニック・バレット】の五枚をデッキに戻して二枚ドロー!…魔法カード【ファイアー・バック】!手札の【ヴォルカニック・バレット】をコストに墓地の【スネークアイ・オーク】を召喚!そして【スネークアイ・オーク】の効果発動!」

 

ドローしたカードによってはまだいける。

まだ戦える。

そうして少しずつ、少しずつ差を詰めていけばいい。

だが、鈴花は一つ見落としていた。攻撃力1500以下のモンスターを対象に取る落とし穴が存在しているという事を―――。

 

「悪いけれど―――そこに行くのは僕だ!【フレシアの蟲惑魔】の効果発動!効果ででデッキから【断絶の落とし穴】を墓地に送って―――【スネークアイ・オーク】を裏側表示で除外する!」

「…あっ。」

 

奈楽が【フレシアの蟲惑魔】の効果でコピーした罠カードは【断絶の落とし穴】。攻撃力1500以下のモンスターを裏側表示で除外する罠カードだ。

当然、裏側守備表示で除外された【スネークアイ・オーク】はフィールド上に存在しない。従って後続のモンスターを呼ぶことは叶わない。

 

「…ここまでか、な。エンドフェイズ。エンドフェイズ時に墓地の【スネークアイ追走劇】を除外して効果発動。【黒魔女ディアベルスター】を特殊召喚するけど…」

「…当然無効化だね。」

 

故に鈴花にできるのはターンエンドを宣言する事のみだった。

そうすれば当然、奈楽のターンが回ってくる。

 

「僕の勝ちだね、桜庭さん。…いいデュエルだったよ。」

 

次のターン、奈楽は【蟲惑魔】を並べたててそのまま鈴花を総攻撃。

【アティプスの蟲惑魔】によって攻撃力が1000上昇していることもあり―――桜庭鈴花の日本大会はここで終わりを告げたのだった。




登場人物紹介

・桜庭鈴花
負けたけど楽しかった。
楽しければそれでいいじゃない

・星神奈楽
勝った。楽しかった。
油断や慢心は忘れたころに這い上がってくるのを実感していた。

というわけで鈴花対奈楽決着です。
次回は幕間で、鈴花と霊使と奈楽の意気込みです。

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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