決勝戦。
再戦。
この戦いを何と呼べばいいのだろうか。
この戦いはきっとそこらの言葉では言い表す事の出来ない何かだ。
心強い仲間であり、気の置けない友であり、世界への最大の壁。
それが霊使と奈楽―――二人の今の関係だ。
「多くを語る必要は無いよね。」
奈楽は霊使に向かってそう言う。
霊使は奈楽の言う通りだと言わんばかりにデッキを構えた。
言葉を交わさずとも通じ合っているのだ。
故に多くを語る必要は無い。
そうして二人にとっての久々のデュエルが幕を開ける。
だが、霊使だって人間だ。叶わない欲望をぼそりと漏らしてしまう可能性だってある。
「…どうせなら先攻欲しいなあ。」
「あげないよ!?」
霊使の初手にもよるが、奈楽に先攻を取られるという事は即ち敗北を意味する。
攻めて一枚手札誘発がありますように、と願いながら霊使は最初の五枚の手札を見た。
(【原始生命態ニビル】と【灰流うらら】と【増殖するG】と【天底の使徒】と【ドラグマ・パニッシュメント】だとぅ!?)
霊使は手札に着た五枚のカードを見て絶句していた。
ほぼ全てが相手依存のカードだからだ。
(…これなら先攻でも後攻でも同じじゃないか!?)
【増殖するG】を上手いこと使わなければまともに展開することができるかどうかさえ怪しい。それが今の霊使の手札だ。といっても妨害の札としては十分に優秀だし。何よりも次のターンへと希望をつなぐことができる【天底への使徒】がドローできているのも大きい。相手が手札に【墓穴の指名者】を持っていないかどうかが一つの争点になるだろう。
(しかもなぁ…鈴花さんとの一戦で多分【原始生命態ニビル】への警戒度合いを高めているだろうから…うーわ、これ奈楽の手札に【パラレルエクシード】ないことを祈るしかないじゃんか?)
それに加えて、霊使は先ほどの戦いで【蟲惑魔】に何の脈絡もなくぶち込まれた【パラレルエクシード】の恐ろしさを理解している。
普通に考えて強力なランク4エクシーズが一体増えるのだからたまったものではない。
(ベストなのは…【フレシアの蟲惑魔】と【セラの蟲惑魔】の二体に抑える事か…。)
後攻になった霊使にできるのは【蟲惑魔】の展開を最低限で止めさせることのみだ。
それこそさっきの鈴花のような盤面にまで追い込まれたら霊使では打つ手が無くなってしまう。
「さあ、行くよ!僕は手札から【ランカの蟲惑魔】を召喚!効果で【キノの蟲惑魔】を手札に加えるよ!」
「都合いいなぁ!畜生!【増殖するG】!」
「【墓穴の指名者】で【増殖するG】を無効に!」
どうやら奈楽は初手に【蟲惑魔】をサーチすることができる【ランカの蟲惑魔】を握っていたようだ。それにしても嫌なタイミングで【ランカの蟲惑魔】の効果を使われたものである。ここで【灰流うらら】の効果を使っては【パラレルエクシード】の召喚時に完全に追い詰められてしまう。それに【パラレルエクシード】の効果を止める事が出来なければ待っているのは永久に続く罠地獄だ。
手痛いが必要な出費という事らしい。霊使は潔く【増殖するG】を墓地へと送った。
「そしてそのまま【セラの蟲惑魔】をリンク召喚だ!リンク召喚成功時手札の【パラレルエクシード】の効果発動!」
「【灰流うらら】!【灰流うらら】ーッ!」
奈楽は手札に【パラレルエクシード】を握っていたようだ。このまま展開され続けたら、まず勝ち目はなかっただろう。
といってもこの程度で終わる程奈楽は軟ではない。それは今対峙している霊使が一番よく知っている。
「むぅ…。こればかりは仕方が無いか。といってもまだまだいけるよ!手札の【キノの蟲惑魔】の効果発動!他の蟲惑魔モンスターが居る場合このカードは手札から特殊召喚できる!」
「…何も出来ねぇ!」
「そうか…!それは朗報だね!レベル4になった【パラレルエクシード】と【キノの蟲惑魔】の二体でエクシーズ召喚!【フレシアの蟲惑魔】!」
そして特殊召喚を許してしまった【フレシアの蟲惑魔】。攻撃力300、守備力2500の【蟲惑魔】におけるエースモンスターだ。
居ても立っても仕方が無いので、ここで霊使は一種の賭けに出る事に決めた。
「…俺は…手札の【原始生命態ニビル】の効果を発動!」
「おっとぉ!そうはいかないよ!【フレシアの蟲惑魔】の効果発動!デッキから墓地に送るのは当然【墓穴ホール】!更に【蟲惑魔】モンスターの効果が発動したことで【セラの蟲惑魔】の効果が発動!デッキから【ホールティアの蟲惑魔】をセット!」
「ぬわーっ!?」
【墓穴ホール】。手札、墓地のモンスター効果を無効にして2000ダメージを与えることができる罠カード。当然、霊使にとっての虎の子であった【原始生命態ニビル】の効果は無効にされる。どうやら隕石は墓穴で止められるものだったらしい。
霊使 LP8000→6000
2000というのは初期ライフの4分の1。バーンダメージとしては当然破格の数値だ。それ故に奈楽は優先的にこのカードに頼る傾向にある。
今のデュエルモンスターズにおいて「手札・墓地で効果を発動するカード」というのは存外多い。【墓穴ホール】はモンスター限定とはいえ手札のモンスターが持つ厄介な効果を無効にしてくれる。しかもおまけに2000ダメージを与えてくれる。霊使いだって相性が良ければ採用したいくらいだ。
【墓穴ホール】と【蟲惑魔】の愛称は言うまでもなく抜群だ。故にこの効果でライフが削られるのは織り込み済みではある。
あるのだが―――それでも痛いものは痛い。
「さて、と…手札の【蠱惑の落とし穴】を墓地に送って伏せてある【ホールティアの蟲惑魔】を発動するよ。【ホールティアの蟲惑魔】を特殊召喚。通常罠が発動したからさらに【セラの蟲惑魔】の効果が発動。デッキから【ティオの蟲惑魔】を特殊召喚。【ティオの蟲惑魔】が特殊召喚に成功したから墓地の【蠱惑の落とし穴】をセット。…ホールティアとティオで【シトリスの蟲惑魔】をX召喚。【シトリスの蟲惑魔】のX素材を一つ使ってデッキから【プティカの蟲惑魔】を手札に。…カードを一枚伏せてターンエンド!」
奈楽 手札1枚 LP8000
EXモンスターゾーン(右)セラの蟲惑魔 (リンク先②)
モンスターゾーン ① シトリスの蟲惑魔(X素材×1)
② フレシアの蟲惑魔(X素材×1)
③~⑤なし
フィールド魔法 なし
魔法・罠ゾーン ①伏せ
②伏せ
③~⑤なし
霊使にとって最も絶望的な盤面と呼ぶべきだろうか。
【シトリスの蟲惑魔】と【フレシアの蟲惑魔】という【蟲惑魔】Xモンスターに加えて【蟲惑魔】デッキのメインエンジンである【セラの蟲惑魔】までいる。余りの無法っぷりに涙を流しそうだ。そんなことしたら奈楽に一生弄られることになるだろうからやろうと思わないが。
「俺のターン、ドロー!」
四遊霊使は考える。
この状況でどのカードを使うのが一番いいのか。奈楽が考えているであろうことを考えてみる。
まず、自分が奈楽ならば手札に抱えておきたかったカードは【キノの蟲惑魔】だろう。このカードがある限り【ハーピィの羽箒】や【ライトニング・ストーム】は意味を為さない。つまり単純に【蟲惑魔】の対応力が大きく上昇する。言うまでもなくメリットだらけの効果だ。
しかし、【キノの蟲惑魔】はたった今奈楽自身で特殊召喚した。
そして【シトリスの蟲惑魔】の効果で手札に加えたのは【プティカの蟲惑魔】。―――つまり、あの伏せカードは言うまでもなく伏せカード除去に対してチェーンを組むことができるカード、という事だろう。
奈楽の用いるデッキで、そんなカードはほとんどない。それこそ―――あのカードしかありえないだろう。
「…デッキとの相性を考えると…【ビッグウェルカム・ラビュリンス】か…?」
「な、何のことかなぁ?」
「伏せカードの話だ。【ビッグ
「沈黙を回答とさせてもらうよ。」
「言ってるようなもんだろ、それは!?」
奈楽の下手なすっとぼけの所為で確信を持つことができた。どうやら伏せカードは【ビッグウェルカム・ラビュリンス】で間違いなさそうだ。
(…分かった所で一体何か有利になるの?)
(言うな、ウィン…。)
もっとも分かった所でどうにもならないのだが。今の霊使の手札に伏せを除去するカードはない。今引いたカードも【精霊術の使い手】である。
ただ、奈楽には少しばかり痛い目を見てもらわないと気が済まない。
「俺は手札から【天底の使徒】発動!EXデッキから【旧神ヌトス】を墓地に送り【教導の聖女エクレシア】を手札に!そして【旧神ヌトス】の効果がが墓地に送られたことにより発動!【フレシアの蟲惑魔】を破壊するぜ!」
「…ふ、フレシアーっ!【墓穴ホール】!【墓穴ホール】ゥ!」
「わ、分かってますよーッ!」
墓地に送られた【旧神ヌトス】の効果によって【フレシアの蟲惑魔】が破壊されるという事に気付いて大慌てで二枚目の【墓穴ホール】を墓地に送り、その効果を無効にすることにしたフレシア。
「お返しですッ!イヤーッ!」
「グワーッ!」
霊使 LP6000→4000
地中から迸る電撃を、フレシアはいとも容易く霊使へと受け流す。
そう言えばさっきの二ビルの時も蔦でニビルの軌道を逸らして霊使に直撃させていた。少なくとも【墓穴ホール】はそう言う形でダメージを与えているわけではないだろう。―――しかし、フレシアの能力によって無効化されたという形にはなっている。故にフレシアが霊使の方にニビルを導いたとしても何ら問題はない。
「だがこれで…フレシアのX素材は0!罠カードの効果も通る!」
「…やってくれるね?」
結果として【蟲惑魔】にとっては生命線である【フレシアの蟲惑魔】のX素材を全て使い切る結果になってしまった。奈楽にとってはどっちにしろ少なくないダメージであるのは確かだ。
「というわけで捲っていこうか!ニビルをコストに【精霊術の使い手】発動…デッキから【憑依装着―ウィン】を手札に、【憑依覚醒】をセット!そしてそのまま【憑依覚醒】を発動。」
「罠発動!【ビッグウェルカム・ラビュリンス】!【迷宮城の白銀姫】を特殊召喚して手札に戻す!」
ここからは霊使の手番だ。どれだけ奈楽の妨害を乗り越えることができるか。
後攻一ターン目にしてこのデュエルの分水嶺が訪れていたのだった―――。
登場人物紹介
・霊使
反撃の時はきた
・奈楽
ここからここから
というわけで決勝戦開始です。
それはそれとしていい加減に水霊媒師エリアを出すべきだと思うんですよぼかぁ。
ライナとダルクはビーステッドやらが居るからダメです
次回もお楽しみに
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