蓋を開けてみれば一度もキスキル達に攻撃ができず、圧倒的な惨敗を喫した霊使。
彼が目を覚ましたのは全てが終わった後だった。
「護衛は失敗…か。」
目を覚ました時にあったのは強烈な虚脱感と無力感だけだった。
「…負けた、か。」
手にはデッキが握られていた。
全てに絶望していた時に出会った最高の相棒達。
その力を存分に活かしてやれなかったことに霊使は泣いた。
「…ごめんな。弱くって。お前たちを活かしきれなくって。…本当にダメなマスターだな、俺は。」
一度弱音を吐いてしまうと、もう駄目だった。
今までずっと溜め込んできた不安や苦しさが堰を切ったかのように溢れ出す。
「いつも俺はそうだ…!肝心な所で何も出来てない!何も残せていない…!どうしてだよ…!なんで俺には何にもねえんだ…!」
今まで勝ってこられたのはウィン達がいたからだ。別にきっと自分が居なくたって上手くやれただろう。
こんなダメな人間といるから彼女たちに辛い思いをさせてしまったのだ。
自分が弱いから―――不甲斐ないから。
自らを呪うように自分を責める言葉を吐き出す。
「でも、せめて…!ウィン達の支えになってやりたい!」
それでも、こんな自分にも支えたい人がいるのだ。
「だから、力が、欲しい。純粋に!強くなりたいんだぁあぁぁああぁッ!」
だから吼える。相棒をまもるちからが欲しいと叫び続けた。
「…霊、使…。」
そしてウィンは遠目にその姿を見ていた。無力感に襲われながらもそれでも強くなりたいと純粋な願望を叫ぶ霊使のことをずっとみていた。
弱さに打ちひしがれていたのはウィンも同じだったからだ。
「私も…私も強くなりたい…!精霊だけど…もっと強くなりたい…ッ!」
気づけばウィンも決意の言葉と共に涙を流していた。
自らの無力さに気づいた二人はただ叫んだ。
「守る」ための強さを渇望した。
お互いの大切なものを守るために。
そして唯一無二の相棒の支えとなるために。
二人は同じ理由で、同じように力を求めた。
傍から見れば二人の流している涙は絶望の涙のように見えるだろう。
しかし、二人にとってのこの涙は違った。
この涙は決意の涙だ。
この苦しみをもう、二度と互いに味合わせまいとする、確固たる決意だ。
そしてたっぷりと涙を流して、気づけば朝になっていた。
朝日を眺め、そして人々は動き出す。
ひとしきり泣いて折り合いを付けた後、すっかり霊使のことを忘れてたウィンは、少しだけバツが悪そうな顔をして霊使のもとへと向かった。
「…あの二人、強かったね。…私達、手も足も出なかった。」
「…そうだな。俺がウィン達を活かしきれなかったせいで、だな。」
霊使はそう苦笑した。
ウィンも連れて苦笑してしまう。
「ええ…。それを霊使に言われるとなんかこっちの立つ瀬がなくなるなあ…」
「事実だからなぁ…。」
ウィンは霊使の傍によるとぺたんと座り込む。そしてそのまま霊使に体重を預け寄りかかってきた。
「…ねえ、霊使…。私、強くなりたい。もっともっと霊使を支えてあげたい。」
「奇遇だなウィン。俺ももっと強くなりたいって思った。もっともっとウィン達を支えてやりたいって、さ。」
言葉が無くなる。心地よい沈黙が辺りを支配した。
そしてその沈黙は笑い声によってすぐにかき消されたのだ。
「…なんだ。おんなじ事考えてたんだ。…よかったぁ…!」
「あれだけフルボッコにされたんだ。…そりゃ、強くなりたいさ。」
二人は互いが同じことを思っているということを知って―――
「…ぷっ」
「…くっ」
「「あっはははははは!」」
さらに大きな声で笑った。
そうしてひとしきり笑ったあと、すっきりした顔で霊使が言った。
「戻ろうぜ、皆の所に」
そしてウィンはとびきりの笑顔で頷いた。そしてさりげなく霊使の手をとった。
これから先にあるのは希望か、絶望か。
それでも少年少女は胸に未来を描きながら進んでいくのだ。
「うーん、その二人さっさと付き合わないかなー」
「…エリア、ちょっとは空気読もうか。」
二人の仲睦まじい姿を見て鼻血をを垂れ流している青髪のやべーやつとそれを取り押さえる赤髪と茶髪に幸か不幸か二人が気づくことはなかったのだった。
エリアはコイバナ好きという圧倒的後付け設定。
これでひとまずはキスキル・リィラ遭遇編は終了です。
少し日常を挟んでからキスキル・リィラ決戦編へと移行します。
感想、評価お待ちしております。
ミニキャラ紹介No7キスキル・リィラ(仮)
悪魔で二人組な怪盗。
めちゃくちゃ強い
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア