「相棒」   作:ダンちゃん1号

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惑わし堕すは可憐な花

キスキル達からの予告状が再び届いた。

二人の潜伏場所を知らない霊使達にとって、この予告状だけがキスキル達を捉える手がかりだった。

 

「リベンジの準備はできてる。…もう一度、俺にやらせてくれないか?」

「…いいよ、と言いたいんだけどね。失敗できないんだ。」

 

しかし、そんなことは露知らず、霊使と奈楽の二人は睨みあっていた。

理由は簡単だ。

誰が例の二人と戦うか、という点で意見が真っ二つに割れたのである。

霊使にもう一度戦わせるリベンジ派と、誰か新しい相手に戦わせる交代派だ。

リベンジしたいと申し出たのは霊使で、それに便乗したのが、流星と水樹。

反対は克己と奈楽の二人。颯人はどっちつかずだった。というのも、ウィンダがしきりに頭の中で抗議し続けているからである。

 

「…埒が明かないね。」

「そうだな。…なら、決闘しよう。俺が負けたらリベンジは諦める。」

「…いいよ。約束だ。いいだろ?克己君。」

「そうだな。」

 

奈楽と霊使が合意する。

この時点でリベンジできるかどうかは、すでに決闘の腕にかけられていた。

 

「じゃあ、やろうか。」

「ああ。――――行こう、皆!」

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

奈楽 LP8000

 

「僕のターンだね。ドロー。…僕はカードを一枚伏せる。…そして、今伏せたカードを破壊して、"ジーナの蟲惑魔(こわくま)"を特殊召喚。さらに手札から"アトラの蟲惑魔(こわくま)"を召喚。」

 

一気に二枚のモンスターが並ぶ。

少女たちは"餌"を見つけたような嗜虐的な笑みを浮かべていた。

 

「さてと、行くよ!―――現れろ!蠱惑と魅惑のサーキット!」

「んな!?」

 

まさかのリンク召喚である。

使い手がこんな近くにいたとは驚きだ。

 

「僕は"ジーナの蟲惑魔"一体でリンクマーカーを形成!リンク召喚!おいで!"セラの蟲惑魔"!」

 

リンクマーカーから、新たな蟲惑魔が飛び出す。

しかし、その姿は――――

 

幼女だった。

緑髪の、他の蟲惑魔と比べても二回りも小さい幼女だった。

現にセラはあどけない顔をして後ろの霊使い達を悶絶させている。そして―――

 

「お兄さんたち、だぁれ?」

「ごはッ!」

 

地霊使いが吐血した。蟲惑魔は全員地属性。アウスとは相性が良かったのだろうか。

とか思っていたら奈楽とフレシアも悶えていた。

やはり、純粋な少女の笑顔というのは破壊力が高いらしい。

 

「っと…悶えてる場合じゃないや。…これで僕は、ターンエンド。」

 

奈楽 LP8000

フィールド アトラの蟲惑魔

      セラの蟲惑魔

 

「カードを伏せない…か。こりゃ、嫌な予感がするな…。俺のターン!ドロー!」

 

霊使 LP8000

 

「俺は手札から"憑依覚醒"を発動!そして俺は"妖精伝姫(フェアリーテイル)―カグヤ"を召喚!」

「なら、召喚したと時に手札から罠発動!"落とし穴"!効果で"カグヤ"は破壊される!」

「手札から…罠…だと!?」

「"セラの蟲惑魔"の効果を発動!自分が通常トラップを使用した際、自分フィールド上に存在しない"蟲惑魔"一体をデッキから特殊召喚できる!おいで、"リセの蟲惑魔"!」

 

場に出た瞬間、落とし穴に叩き落されるカグヤ。

その穴を作ったのは、他でもないアトラだった。

嗜虐的な笑みを浮かべたままカグヤが落ちた穴に近づくと――――

 

その穴から、"パキ"という音がした。

これ以上は考えないほうが良さそうだ。

 

一方、奈楽のフィールドにはセラを守るように蟲惑魔がまた現れる。

 

「…カグヤの召喚時効果は封じられたか…。なら、俺は、カードを三枚伏せて、ターンエンド。」

 

霊使 LP8000 

フィールド 無し

伏せ×3

憑依覚醒

手札一枚

 

「なら、僕のターンだね。ドロー。メインフェイズ。僕は手札から"ティオの蟲惑魔"を召喚。"ティオ"の召喚成功時に墓地の蟲惑魔一体を守備表示で蘇生させる!甦れ!"ジーナの蟲惑魔"!」

 

再び、蟲惑魔が現れる。

しかも二体。

餌を求める少女たちは一人、また一人とその数を増やしていく。

このまま、霊使は彼女たちの餌食となるしかないのだろうか。

否。

霊使はこの逆境に対して、笑みを浮かべていた。

相手がどんなデッキを使うか分からないから、どんな戦略があるか分からないから、楽しい。

決闘はこんなに楽しいものだったことをいつの間にか失念してしまっていたのかもしれない。

 

「…俺は!罠カード"魍魎跋扈"発動!」

「"魍魎跋扈"?」

 

このカードは、デッキを見直したときに、相手のターンでの展開札として採用したカードだ。

出来ればこのカードでカグヤを召喚したかったが、手札に一枚しか憑依装着が無かった。

だから、賭けに出た。

もう一度、あの緊張感と興奮を味わうために。

 

「…このカードは自分、相手フェイズに通常召喚を行うカード…!俺は手札から"憑依装着─アウス"を召喚する!」

「…"覚醒"の効果で"霊使い"と"憑依装着"は効果で破壊されないから、落とし穴系統の罠も通じない…か。」

「………"覚醒"の効果は覚えているな?」

「うん…。さあ、一枚のドローを。」

「行くぞ…!ド、ロォォォォ!」

 

全ての命運を賭けて、霊使はデッキの上からカードを一枚引いた。

 

「…いいカードは引けたかい?なら、こっちも行くよ!僕は、"ティオの蟲惑魔"と"ジーナの蟲惑魔"でオーバーレイ!」

「エクシーズ召喚まで…!?」

「本来、蟲惑魔はこっちがメインなのさ!……その花弁で全てを惑わし、全てを我らの糧とせよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4"フレシアの蟲惑魔"!」

 

召喚されたのはフレシア。奈楽の精霊でもあり、エースモンスターだ。

「…X(エクシーズ)素材を持つこのカードは罠の効果を受けず、このカード以外の"蟲惑魔"達は破壊されず、効果の対象にもならない。さあ、どう突破するかな?」

 

蟲惑魔達はフレシアの庇護の元で罠を張り、待ち構える。

さらにはフレシア自身に罠は意味がない。

ただ、攻撃力が低いのが唯一の救いか。

その後、奈楽は攻撃を宣言することなく、カードを一枚伏せてターンエンド。

そのタイミングで霊使は"メタバース"を発動。フィールド魔法である"大霊術─「一輪」"を発動し、改めて霊使のターンに。

 

奈楽 LP8000

フィールド フレシアの蟲惑魔(X素材×2)

セラの蟲惑魔

アトラの蟲惑魔

伏せ×1

 

「俺のターン。ドロー!」

 

手札は二枚。普通に考えて、頭がおかしくなりそうな位に劣勢だ。

そう、普通なら。

 

「…俺はモンスターをセット。これで、ターンエンド。」

 

霊使 LP8000

フィールド 憑依装着─アウス

セットモンスター×1

伏せ×1

憑依覚醒

大霊術─「一輪」

 

ゆったりとしたペースで進む決闘。今までに一度も攻撃しない決闘があっただろうか。

 

確かに奈楽の"蟲惑魔"は守りよりのデッキだ。

霊使の"憑依装着"デッキも一度展開札を引ければそれなりの展開力を生むが、逆に言うと展開札頼りのデッキだ。

つまり、こういうスローモーな決闘になることは目に見えていた。

 

ただし、こういう決闘こそ、動く時は一気に状況が動く。

このターン、奈楽は新たな蟲惑魔である"ランカの蟲惑魔"を召喚。

そのまま、ターンエンド。

互いに互いの戦術を見極めている最中だった。

決闘の低速化。

それが霊使の狙いだとは知らずに。

 

「俺のターン。…ドロー。…俺は"メタモルポット"を反転召喚。」

「…これは通した方が良さそうだね。」

「…なら、互いの手札を全て捨てて五枚ドロー。…さらに、俺は手札から永続魔法"三賢者の書《トリス・マギストス》"を発動!効果により、"憑依装着―ヒータ"を特殊召喚!"覚醒"の効果で一枚ドロー!…バトルだ!俺は"憑依装着―ヒータ"で"セラの蟲惑魔"を攻撃!"エレメンタル・ブレイズ"!」

「破壊はされないけれどダメージは受ける…!くッ!罠発動!"攻撃の無力化"!この攻撃を無効にして、バトルフェイズを終了させる!」

 

セラを狙って放たれた炎は渦によって受け止められる。

あの渦に阻まれてしまい攻撃はもう意味を為さないようだった。

 

「俺はカードを伏せてターンエンド。」

 

霊使 LP8000

フィールド 憑依装着─ヒータ

憑依装着─アウス

 

フィールド魔法 大霊術─「一輪」

魔法・罠 憑依覚醒

伏せ×2

 

「む…。攻めて来るかな…。僕のターンだ。…ドロー!

…僕は──」

「メインフェイズ開始後に手札の"エフェクト・ヴェーラー"の効果発動。このカードを手札から捨てる事によりこのターン中、"フレシア"の効果を無効にする!」

「…む。なら、その効果にチェーンして、フレシアの効果発動!」

「"大霊術─「一輪」"の効果により"フレシア"の効果を無効に。これで、"ヴェーラー"の効果でこのターン、耐性が消え去る。」

 

フレシアの顔色が悪くなる。

どうやら、無事、ヴェーラーの効果は届いたようだ。

 

「…僕は手札から"リセの蟲惑魔"を召喚。」

「ところがどっこい、罠発動!"激流葬"!お互いのモンスターを全破壊する!」

「………なんでさ。セラは残るけどさぁ…。」

 

奈楽からしてみれば全てのモンスターが消し飛ぶのだ。理不尽だと感じることだろう。

ただ、発動を許したのは他でもない奈楽自身だ。

 

「これは、やられたね…。……ターンエンド、だよ」

「じゃあ、エンドフェイズに罠発動!"憑依連携"。墓地の"憑依装着─エリア"を蘇生。覚醒の効果で一枚引く」

 

エリアが飛び出す。

しかし、セラの愛らしさにそのまま破壊するのを躊躇い、エリアは踏みとどまった。

 

『なぁんでメタポの効果で手札の私を捨てたのさー!』

(知ら管)

『返しが適当すぎるんですけどー!?』

 

エリアが何かを訴えてきたが無視する。

流石にエリア一枚で勝てと言われても無茶ぶりがすぎるというものだ。

 

「じゃあ、俺のターン。ドロー!手札から"憑依装着─ウィン"を召喚。─バトル!"憑依装着─エリア"で"セラの蟲惑魔"を攻撃!」

 

セラは他の蟲惑魔が居なくなったことに困惑、おろおろとしている。

エリアはおもむろにそんなセラに近づくと───

 

「ねぇ、君、どうしたの?何か困った事があったらお姉ちゃんに話してみて?」

「私のおねぇちゃんたちがいなくなっちゃったの。みんな、どこに行っちゃったの?」

「じゃあ、お姉ちゃんと一緒に君のお姉さんの所まで一緒に行こっか。」

 

なんと、他の蟲惑魔の場所に案内しだした。

勿論、フレシア達は激流に押し流されて、後方で伸びて居る。

ただ、幼いセラはそれを理解出来ていないのか、エリアに連れられてフレシアの元まで行くと、フレシアの太腿を枕代わりにして、寝始めた。

 

奈楽 LP8000→5750

 

「……てぇてぇ」

 

そして───、

その光景から余りに尊み摂取し過ぎた奈楽が昇天仕掛けていた。

 

「戻ってこい!奈楽ゥーッ!」

 

その後、気付け変わりに二回ダイレクトアタックをくらい、元に戻った奈楽は鼻血を垂れ流していたという───。

 

 

「負けたねぇ…」

「負けましたねぇ…」

 

わざとらしく呟く二人。

 

「さては、嵌めたな!?」

 

今頃霊使は自分が嵌められた事に気付いたのだ。

 

「じゃあ、リベンジしてきなよ?」

「頑張って下さいね~」

 

いかにも軽薄そうにすごすご二人に霊使は思わず叫んだのだった。

 

「納得いかねぇぇぇえぇぇええぇぇええ!」

 

と。

 

 

その声をたまたま近くで聞いていた生徒がひっくり返ったのは、別の話である。

 

 

 

 

 




ミニキャラ紹介No11 星神奈楽

蟲惑魔の使い手。
精霊はフレシア。
好物はフレンチトースト。
苦手な物は音ゲー。
フレシア達とは非常に強い絆で結ばれている。
ちなみに蟲惑魔全員から好かれているが本人はそれに気づかない。
そろそろフレシアが痺れを切らしそう

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
  • リチュア
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