「相棒」   作:ダンちゃん1号

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一月後

「……んぅ。」

 

とても長い間眠っていたような、ほんのちょっとだけ眠っていたような、そんな感覚。

ゆっくりと目を開けるとウィンが自分の体の上でぐっすりと寝ていた。

体の節々は未だに痛むものの、あの時に受けた傷はほとんど塞がっているらしい。

外を見れば朝日が昇っていた。

霊使は一度手を握ったり開いたりしてみる。

 

「……やっぱ、そうだよな…。」

 

思ったよりも上手く動かすことが出来ない。

やはり長い間寝ていた事が原因なのだろうか。

 

「皆は…まだ寝てるか。」

 

ウィンを除く霊使い達は未だに寝続けている。

この事から、ウィンに全てを託したであろう事は容易に想像できた。

 

「………あの時、俺は…。」

 

確かに急所は撃ち抜かれてはいなかった。

だが。

体からどんどん何かが出ていくのを感じていた。

そして、意識が少しずつ遠くなるのを何処か他人事のように感じていた自分がいた。

恐らくだが、自分はあの時一度死んだのだろう。

分かるのだ。

ウィンの力が自分の中で渦巻いていてその空っぽになった何かに力を注ぎ続けていることが。

 

「……ああ。もう、俺は、人間じゃないんだな…。」

 

"人間としての"四遊霊使はあの時死んだのだと、嫌でも思い知る。

これを"生きているからラッキー"と捉えられればどれほど良かっただろうか。

今の霊使は言ってしまえば"ウィンがいなければすぐに死ぬ"状態なのだ。

ウィンにも相当な負担が掛かっているだろう。

 

「……ぐずぐずしててもしょうがない…か。」

 

今はほんの少しでもウィンの負担を減らす方法を考えねばならない。

それが、全てを賭け、負担を承知で蘇生させてくれた相棒への恩返しに繋がると思った。

 

「…生かしてくれてありがとうな、ウィン。」

 

未だに眠るウィンの頭をゆっくりと撫でてやる。

 

「……ふぇ?」

「……え?お、起きて…」

 

どうやらいつの間にかウィンは起きていたらしい。

顔が真っ赤に染まっている事からさっきの独り言は聞こえていたに違いない

 

「……霊、使?」

「…ん?どうした?」

「本当に霊使、なんだね…?」

「ああ。正真正銘の霊使だよ。…おはよう、ウィン。」

 

"おはよう"。この言葉をどれだけ待ちわびていたのだろうか。

ウィンは大声で泣きながら抱きついた。

 

「うええぇぇええぇ…!良かったよぉ…!霊使のばかぁ…。一体どれだけ私が…私達が心配したと思ってるのさぁ…!1ヶ月も寝たままでさぁ…!」

「……ああ。本当にすまない…。」

 

大粒の涙と大量の鼻水で布団がぐしょ濡れになってしまう。それでも、霊使はウィンの思いを受け止めなくてはならない。それだけ心配をかけたのだ。溢れ出るウィンの感情を一身に受け止めるのは霊使の義務で、そして、何より霊使が優先した行動だった。

 

「ばかぁ…!ばかぁ…!ばかぁ…!」

「…そうだな。俺は大馬鹿野郎だ。…本当にごめんな。お前を一人にしちまって。」

「…ちゃんとそういうことは分かってるんだね。」

「そりゃあ、俺の一番の相棒だしなぁ。」

 

そう言って笑う霊使。

未だに鼻をすする音は聞こえたが、ウィンの涙はもう止まっていた。

 

「…さて、と。そろそろナースコールを…。」

「ちょっと待って。その前に今の霊使の状況を説明させて。」

「…ああ。頼んだ。」

 

ウィンは急に真剣な面持ちになる。

二人のこれからに関する事なのだ。霊使も自然と真剣な面持ちになる。

 

「結論から言うね。……霊使は私の…私達の力で半分位私達(霊使い)と同じになってるの。…で、後、私の力が馴染めば霊使は完全に霊使いとして覚醒するの。」

「あれー。それってディープ・リンク・マインドの副作用じゃなかったけ」

「…逆にそれを利用したんだよ。決闘中じゃないから細心の注意を払って必要な分だけ私の力を送れたし。」

 

ウィンがあの夜語った"ディープ・リンク・マインド"の副作用を逆に利用して霊使を救ったのだ。

人外化は確定事項のようだが。

ところで、ウィンは皆と言っていたがここで「はて」と霊使は疑問を抱く。

 

果たして霊使い全員と"ディープ・リンク・マインド"の境地に達していたのか、と。

 

「なぁ、ウィン。俺、他の5人と"ディープ・リンク・マインド"の境地に達していたっけ?」

「…ううん?」

「…俺、今まで一回起きたっけ?」

「…ううん?」

 

霊使はデッキを取り出すとカードの確認を急いだ。

そして、ある一つの結論に達する。

 

「お前…俺が寝ている間に無理矢理"ディープ・リンク・マインド"の境地に到達させたな?」

「…いやー、条件が整っているから、つい…。」

「ヲイ」

 

ウィンを媒介として無理矢理霊使い全員をディープ・リンク・マインドの境地に到達させたのだと。

確かに今までに紡いだ絆が導く力の最奥であり、ライナとダルク以外は到達していてもおかしくはないだろう。

 

「…いやー、思い付いた方法がこれしかなくってさー。」

「そんな軽々しく言わないで!怖いから!…で?どうやったの?」

 

と言ってもやはりどうやったかは気になる。

自身はこの一月ずっと寝ていたのだ。

だからもしかしたら頭の中を弄くられているかもしれない。

 

「……まず私と皆の思いを一つにします。」

「うん。」

「そのあとは私経由で力を送ってました!だから霊使の中の"私の力"以外の力はもう馴染んでるはずだよ。…多分。それにしてもライナちゃんはともかくダルク君まで力を貸してくれるとは思わなかったなぁ…。」

 

頭の中を弄くられてはいなかった。

だが、ほとんどウィンに負担をかけてしまった。

 

「…本当にありがとう。」

「どーいたしまして。」

 

それでも命…とは呼べないかもしれないが、生きているのは事実だ。

 

「…なぁ、ウィンの力を早く馴染ませるにはどうしたら良いんだ?早い所退院したいんだが。」

「………ス。」

「…へ?」

「キス…して。」

「いや、そうはならんやろ…」

「いいから!」

 

ウィンは恥ずかしそうに大声を上げる

ウィンは自分をたすけてくれた。

一人という地獄から救ってくれた。

だから、早くウィンの隣に戻りたい。

そんな想いが霊使を突き動かした。

 

「分かったよ。…皆には内緒な。」

「ん。」

 

ウィンは目を閉じて可愛らしく唇を尖らす。

その姿が余りにも可愛くて、愛しくて、守ってやりたいと、隣に居たいと思ってしまう。

 

霊使は朝焼けを背にそっとウィンと口づけを交わした。

ウィンの力が自分の中に流れ込んで行くのを感じる。

しかし、それ以上にこの幸せな時間を味わっていたかった。

 

「んぅ…!んッ…」

 

少し口を開けばウィンの舌が霊使の口内に入ってきた。

ゆっくりと舌同士を絡める濃密で濃厚なキス。

暫く霊使の病室からは誰にも聞こえないような小さな水音が響いていた。

 

「んっ…。またしようね…?」

「ああ、そう、だな」

 

二人はどちらかともなく抱き締めあう。

風が二人の元に花びらを運んでいた。

 

 




ようやく、ヒロインムーヴをさせてあげられた…!

水樹君のデッキ強化

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