「相棒」   作:ダンちゃん1号

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これから

「…俺はこれから何をすればいいんだろうか。」

 

霊使はこれからの事をずっと考えていた。

というのも、霊使の魂を完全に置き換えるには各属性の精霊の力が必要なんだそうだ。

霊使はウィン達が居ればいいのではないか。

そう考えていたが、どうやら話はもっと複雑らしい。

というのもウィン達霊使いは精霊を連れていることである程度力を借り受けているらしい。

その力を以て内と外の二方向から霊使の魂に力を加えて霊使いとしての力を完全に覚醒させなければならないというのだ。

それには、「外側」担当の精霊と霊使自身が霊使いとして契約する必要があるらしい。もっとも内側はウィン達が対応してくれるということであったが。

 

とにもかくにもまずは精霊を従えねばならない。

 

「…嫌な予感がするな」

 

なんとなく、嫌な予感がする。

この心配はある意味最悪の形で的中することになる。

主にウィンの嫉妬という意味で。

 

 

九条克喜は新たな決意を固めていた。

あの時、出会った男に手も足も出ずに瞬殺されてしまったからだ。

さらにその男は決闘することなく霊使に対して攻撃を敢行し、大怪我を負わせたという。

親友を傷つけられ、怒らない人間が何処にいようか。

だから克喜は決意した。

あの男が霊使に対して精霊の力を行使したように、自信も精霊の力を決闘外でも引き出せるようになることを。

 

「…皆、宜しく頼む。」

 

克喜はウィッチクラフト達に語りかける。

彼女達もまた、その声に答えるように、その姿を見せた。

 

「…たっぷりしごいてあげますからね。」

 

ハイネの宣言に吐血しそうになった。

 

 

 

風見颯人は既に人間の世界に居ない。

新たな力を得るためウィンダ共々精霊界に向かっていた。

 

「颯人はこっちに来るのは初めてだっけ。」

「ああ。」

 

ガスタにはある秘術が伝わっているという。

その秘術を得るのが今回の探索の目的だ。

 

「皆元気にしてるかなぁ…」

 

とウィンダはぼやく。

それはそうだ。

ガスタの里を飛び出して以降、あまり帰郷できていなかったのだから。

里の皆に自分のマスターの事をどう紹介しようか悩んでいた。

一方そんな事をウィンダが考えているとは知らずに―――

 

(ああ、旨いものは食べられるだろうか…)

 

そんな的外れな事を考えていた。

 

(ああ、緊張するなぁ…)

(こっちでもウィンダが作ってくれた飯を食えるだろうか。)

 

そんな事を考えながら二人はガスタの里に向かうのだった。

 

 

 

「ただいま、エミリア。」

「ああ、おかえり。…で?後ろの人間は?」

「…彼は僕のマスターだよ。儀式の生贄には使わせないからね。」

「いや、そんなことするのは少し前のお母さんだけだと思う…。」

 

一方水樹とエリアルはリチュアの集落にやってきていた。

エリアルが結の呪いを解呪した際にノエリアの中に同様の何かが蠢いているのを思い出したのだ。

結にやったように分離してやると、今まで戦争を推し進めていたはずのノエリアは正気に戻り、ガスタとの和解を果たした。

今では足りない食料は肥沃なガスタの里から分けてもらい、その分、魔術の研究成果をガスタに渡すという交易を行い、互いに交流するようになった。

勿論、ノエリアは断罪されたわけだが。

 

「呪いに侵されていた以上情状酌量の余地がある」

 

とウィンダールが判断を下したのだ。

 

「…さて、と新しい儀式の研究をしますか。」

「手伝うよ、エリアル。」

「わかったよ、マスター。じゃ、これ運んどいて。」

「ん。」

 

新たな力を手に入れるため、エリアルは自室に籠るのだった。

 

 

 

流星はメテオニスに連れられて宇宙にやってきていた。

 

「いや、なんで?」

「…新たな仲間を迎えに行こうと思ってな。」

「…仲間?」

「…私の新しい形態といった方が正しいかもしれない。」

 

メテオニスの中には空気が循環しており、堅牢な宇宙服を纏っているにも等しい状態だった。

 

「…え?まだ二分?」

「…物体は光速み近づくほど時間経過が遅くなるからな。」

「へぇ」

 

そんな豆知識を得ながら二人は空の果てを目指す。

宇宙の果て、新たな世界を目指して星は駆けた。

 

「…今がチャンスか…」

 

そんな流れ星に似た光を眺める存在が居た。

それは、光を喰らう機龍とある意味では対極の存在。

その存在は新たな光となって青き星へと向かう。

 

(来るか…ベアルクティ…!)

 

自分達と相反する存在を感じ、因縁はすぐそこまで迫っていることを悟るメテオニス。

怪獣大決戦が地上で行われる日は、近い。

 

 

 

「…彼女は協力してくれるでしょうか…」

「さあ、ね。そこは僕にも分からないからなぁ…」

 

奈楽とフレシアは二人が出会った森へと足を向けていた。

そこにはまだ一人蟲惑魔が居るのだ。

しかし、当時はまだ、奈楽の事を認めてはおらず、もう少し考える時間が欲しいと言われたのだ。

色々とあったが、それでも彼女が自分を認めてくれているかどうか分からない。

 

「彼女は少し強情な所がありますからね」

「そうなのかい?」

「ええ。一度狙った獲物は逃さない。それこそ自死を選んだとしても魂を掴んで弄びますからね…。彼女は。」

「え…こわ」

「ふふっ…。奈楽もそうなってしまうやもしれませんよ?」

「…うーん。何とも言えないのがね…。」

 

フレシア曰くその蟲惑魔は強情だという。

物腰はそれなりに穏やかだが、一度「獲物」と見定められると、その魂まで逃がさないような気性だという。

 

「アロメルス…元気にしてるんでしょうか?」

「だといいね。」

 

親友のなを呟くフレシアに奈楽は感慨深そうに頷くのだった。

 

 

 

「…負けたね、クーリア」

「ええ。圧倒的だったわ…」

 

咲姫とクーリアは二人で話し合っていた。

勿論、ボロボロにされた前の決闘についてだ。

あの決闘に大きなミスは無かった。

それなのに、手も足も出なかった。

そこにあるのは純然たる実力差だ。四道の刺客の強さを読みたがえた咲姫に敗因はある。

しかし、そこにあるのが、実力差だと判明した以上、対策を練るのは簡単だ。

そう。

 

「なら、アイツより強くなるだけ…!」

 

刺客より強くなればいいという至極単純で最も明快なおおよそ対策とは呼べないような対策を咲姫は上げた。

このことを何も知らない人間からすれば「何言ってんだこいつ」となること間違いなしだろう。だが決闘における対策なんてものはそれくらいしかないのだ。

相手に対するメタデッキを作り上げる?

勝てないからデッキそのものを変える?

咲姫にそんな考えはない。

勝てないのなら勝てるようになるだけ。

それはある意味で、最高の対策なのだ。

自分の信じるデッキは、そう簡単に折れはしない。

 

「…次は勝ってやる。」

「もちろん。さあ、始めましょうか」

 

決闘もせずに最高の決闘者を襲った馬鹿野郎に天罰を。

咲姫とクーリアの心が一つになった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「許さねぇぇえぇぇぇ!」

 

絶叫が闇夜に響き渡る。

 

「あいつらぁぁ!よくも俺の前から逃げやがってぇぇぇ!思い出しただけで腹が立ってくるぅ!なんで俺に気持ちよく殺されねぇんだ!」

 

男は部屋にある調度品に対して理不尽な怒りをぶつけていた。この男が怒っているのはあのひと月前の夜の出来事だ。

"仕事"を失敗した怪盗達の始末を行おうとし、ついでに邪魔者も処理しようとした。しかし、一瞬の隙を突かれ逃走されたあの夜からもう一月経過したのだ。

しかし、男は未だにあの四人に執着していた。

今まで"獲物"に逃げられたことなど無かったからだ。

 

「ふざけるな…!ふざけるな…!ふざけるなぁぁぁ!」

 

その男の咆哮はこの一月、ずっと響いたままであった。

 

「絶対に許さん…!」

 

その男の瞳が妖しく揺れる。

 

「次に会ったらまず、あの男を殺す…!そして次にあの緑髪のガキをぶっ殺す。そうして絶望させたところであの怪盗どもも殺す…!考え付く限りの陵辱を施してやってから殺してやる…!」

 

男の激情は収まることなく、むしろ悪化していくばかりだ。

夜は未だ開けず、男はただ荒れ狂うばかりであった。

 

 

 

これより始まるのは新たな戦い。

新たな精霊と成るため。

友の復讐を果たすため。

兄の本懐を遂げるため。

 

そして―――この世界を壊すため。

 

それぞれの強い思いを胸に秘めて少年少女は今、未来へと羽ばたく。

 

一章 怪・盗・決・闘 ―――完―――

 




というわけで一部一章完結です。
次回より一部二章がはじまります。

次回二章「精霊を探しに行こう」開幕!

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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