情報屋に会おう!
「おーい、退院したかい?」
「無事にな。」
キスキルは完全にいつもの調子に戻ったようでいつもの飄々とした態度で語り掛けてくる。霊使はようやく話しやすくなったと感じた。
「霊使君…なんかウィンがすっごい敵意を向けてくるのはどうしてだい?」
「女の戦いキャットファイトだろ。なんでかは知らんけど。」
ただ―何の根拠もなくいきなりキャットファイトを開戦するのはやめてほしい。
そもそもの話なんでキャットファイトが始まったのか皆目見当がつかないのだが。
(…絶対霊使は渡さない…!)
(ちょーっと煽り過ぎちゃったかしら)
そんな二人の疑問をよそにキャットファイトを繰り広げる二人。
そんな平和な光景を見て、霊使は守れたもの改めて確認できた。
いつも、いつでも、ここに頼れる相棒が、気が置けない友人が、腐れ縁な怪盗が居る。
この世界でまだ生きていたい。
霊使は改めて、その思いを確認できた。
「…キャットファイトはそこまで。行くよ、ウィン。」
「…リィラもからかうのは大概にしようね?」
「…結が言うならしょうがない、か。」
そう言うといともあっさり女の戦いを中断したリィラ。
最近、手玉に取られてるような気がしてならないウィン。
二人の戦いはまだ、始まったばかりだ。
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「さて、と。これから情報屋に会うわけだけど…」
「彼女、どんな要求をしてくるか分からないからねぇ。」
キスキルとリィラはそう言って苦笑した。
何故ならば情報屋が対価として何を求めてくるか分かったもんじゃないからだ。
今までに二人の私物やら、高級な酒やら、金やら、挙げ句の果てには二人が盗った盗品までもが彼女の情報屋の対価になった。
故に対価が読めない。
しかも情報屋であるせいか、可能な限り対価と情報の交換───つまりはその場払いを強いられるのだ。
「…いや、そうはならんやろ。」
「それがなってるんだよねぇ…」
その事を聞き、思わず霊使は突っ込んだ。
しかし、乾いた声と遠い目をしたキスキルの様子にそれが事実であることを思い知らされる。
その瞬間、ウィンの霊使を掴む力が半端なく上昇した気がした。
「…大丈夫だろ。流石にその身を差し出せ───なんて言わないはずだから…多分。」
「そうだよね…?」
「むしろそうじゃなかったら困る。」
こうして一抹の不安を残しながらも霊使は情報屋に会いに行くのだった。
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「ここだよ。ここに彼女は来るはずだ。」
そう言うとキスキル達は寂れた酒場のドアを開く。
そこはゴミと埃が最低限掃除されただけの酒場の跡地と言った方が的確かもしれないが。
「さて…と。居るんだろ?マスカレーナ!」
「ハイハイお客さん?…ってキスキル達かぁ。」
「客にその態度は無いんじゃないの?」
「ハイハイ。相変わらずリィラは小言が多いなー。」
親しげなやり取りをしながら一人の人物が顔を覗かせた。
ヘソだしパンツルックでスタイルもそれなりにいい女性はいきなりこちらを向くと顔を覗き込んできた。
「…ねえ、君は誰?」
彼女は鋭い視線を霊使に向けた。
その視線には多分に殺気が含まれており、ウィンを二人の間に割り込ませるには十分だったと言える。
「…俺の名前は、四遊霊使。貴女に売って欲しい情報があってここに来ました。」
「…霊使君…だっけか。君はどんな情報を求めるの?」
「各地に居るまだ契約してない精霊の情報が欲しい。」
「それはなんで?」
返答を誤ればウィンごとここで葬られるだろう。
そして、隠し事をすれば今後の彼女に多大な迷惑をかけてしまう。
だから霊使はばか正直に全てを話すことにした。
キスキル達と決闘したこと。
二人を殺し屋から庇って一度死んだこと。
それから霊使い達の助力もあり、半分精霊として転生したこと。
そして、完全な精霊───霊使いになるために強力な精霊と契約しなければならない事。
本当にここ至るまでの全てを彼女に話した。
「…分かった。少なくとも君は信頼が出来る人だね。──でも、君に情報は売れない。」
「え…?」
そして、たっぷりと5分。彼女が出した結論は「情報は売れない」というもの。
「そんな…!お願いします。ソコをなんとか…!このままじゃ、私の大切な人が…霊使が…何も残せずに消えちゃう…!」
ウィンは泣きながらに訴える。
このままではそう遠くないうちに霊使は消滅してしまうからだ。大切な人を守るためならばあいてにひざまつく事だってしよう。
ウィンはそれほどまでに霊使と離れたくないのだ。初めて心の底から此処に居たいという思いを抱かせてくれた霊使の隣にまだ、いや、ずっと居たい。
「…君は好い人なんだね。…だからこそ情報を売れないんだけど。」
「だからなんで!?」
「いや、そんな純粋な君達を裏社会に巻き込める?そんなこと出来るわけないじゃん!売ってあげたいけどさぁ!罪悪感が凄いんだよ!」
マスカレーナが情報を売らない理由───それは二人を裏社会に巻き込みたくないという良心からのものだった。際どい情報だって扱う。なんなら、情報屋というだけで消される対象になることもある。
だから「売らない」のではなく「売れない」のだ。
こんな純粋に互いの事を思い合うパートナーを裏社会に巻き込むなんて事はマスカレーナには出来なかった。
「だから情報は君に「提供」させてもらうよ」
「…それじゃあ…!」
「うん。でもまずは───」
マスカレーナはウィンの方を見た。
申し訳なさそうに手を合わせると霊使に視線を戻す。
そして───
「私と君で契約できないかな?」
「……は?」
「……え?」
「……うん?」
「まるで意味が分からんぞ!」
霊使の精霊になると言い始めた。
「ええぇぇぇえええぇえぇぇぇぇぇぇえ!?」
衝撃の余りにキスキルとリィラが叫ぶ。
一方ウィンは頬を膨らませたままだ。
「一応理由は有るんだけどね。」
そう彼女は言う。
「1つはやっぱ彼女こんなに想われていること。こんな深い関係を築けるんなら信頼できるし。
二つ目の理由は行動の幅が広がるってことかな?」
「それはどういう…?」
マスカレーナはまず1つ、霊使との契約を決めた理由を話す。さらに二つ目の理由もさらっと説明した。
曰く、「霊体になれる」から。
「…分かったよ。なら宜しく…でいいのか?
「じゃあ、合意って事で。」
余りの展開の早さに霊使自身が付いていけない。一応理由としては納得できるものではあったが。
ウィンも、キスキルも、リィラも、全員が硬直している。
「これから宜しくね?んーと…"ご主人サマ"?」
「どうしてこうなった…?」
この展開の早さに契約を結んだ霊使本人さえも置いてきぼりだ。
辛うじて言えることは、今この場に居る全員がマスカレーナに手玉に取られたということだろう。
(…もしかして、ライバル増えた?)
ウィンはとことん不安になるのだった。
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実は、マスカレーナが契約を決めた理由はもう1つある。
あの二人が今までどんな人生を紡いできたか、マスカレーナは知らない。
だが。
あの二人に関して一つだけ言えることがあった。
それは「二人は幸せになるべき」だということ。
端的に言えば、ただ、二人を見ていたくなったのだ。
二人がどんな人生を歩み、どんな結末を迎えるのか。
それをただ近くで見ていたくなっただけ。
それだけで、彼女は霊使の精霊になると決めた。
(…私が二人を支えるよ。その代わりに、二人の生きざまを私に見せて?)
既に二人には精霊の情報を渡してある。
後は店仕舞いをして二人と合流するだけだ。
「さあ、マスカレーナ、出るよ!」
これまでの裏家業に別れを告げて、情報屋は未来へと走った。
I:Pマスカレーナ(NEW!)
あと残り5体!
水樹君のデッキ強化
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