「相棒」   作:ダンちゃん1号

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おまわりさんこいつはちがいます

結局あの後、ウィンを除く霊使い達は引っ込んだ。どうやら全員でライナを説教しているらしい。

霊使としてはファインプレーだったが、他の子達は出番が無くなった事に相当ご立腹のようだ。

 

「……なんと。マスターは既に死んでいるのか…。」

「……だから、精霊を探し回ってるんだ。後、まだ死んでない。」

「そうか…。そうだったのだな。そなたには本当に悪い事をした。」

 

そして、クルヌギアスとなんとか契約を果たした霊使はクルヌギアスの心をなんとか開くことに成功した。

彼女は極度の人間不信に陥っていたようだ。

それも仕方が無いのだろう。

真実を歪められただけでなく一度は全てを奪われたのだから。

 

「…まぁ、誤解が解けたようで何よりだ。」

「…少なくともあやつらよりかはマシだ。」

 

そういうと、クルヌギアスは苦笑した。

 

「最も、妾と契約したそなたは相当の物好きであろうがな。」

「…ええ?」

 

そこには先程まであった険悪な雰囲気など何一つ存在しない。互いに信頼を寄せる理想的な相棒の姿があった。

ウィンと霊使とクルヌギアスとマスカレーナの四人は談笑しながらゆっくりと下山する。

するとそこには────

 

「…へ?…あ、いや、見つけましたよ!マスカレーナ!」

「げっ…!」

 

新たなゴタゴタの姿があったのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ここですか…この黒い靄の原因は…。」

 

乱破小夜丸はS-Forceの上司の勅命を受けて、謎の黒い靄の調査に当たっていた。

こちらの世界に逃げ延びたマスカレーナ(執行対象)は噂をめっきり聞かなくなってしまった。そのせいで所在地が分からずこうして別の任務に当たっている。

だが、あの情報屋の事だ。

何処かで誰かの恨みを買って殺されたか、呑気に情報を売り捌いているに違いない。

しかし、今はそんな事を考えている余裕はなかった。

 

「この超常現象は明らかに精霊の仕業…!」

 

まずはこの怒れる精霊を収めなければならないだろう。

もしかしたら命の危険があるかもしれない。

それでも、自分は市民を守るS-Forceの一員だ。

どんな死地にも向かう覚悟がある。

そして、改めて覚悟をしたその矢先だった。

靄は急激に消え始め、怒れる精霊の気配も消えた。

 

「ええと…どうしましょう…?」

 

いい意味で覚悟をへし折られた小夜丸は、一応登山口辺りを警戒する。

もしかしたらこの靄の原因がここからやって来るかもしれないからだ。

暫く待機していると何やら話し声が聞こえてくる。

千代丸はその中に黒い靄についての会話に耳をこらす。

が、結論から言うと、何も分からなかった。

大人しくここは危険地帯だと伝えておこう。

そう考え、その集団に近づいた時だった。

その集団に明らかに見知った顔が居るのだ。

あのやけに露出が多い服装といい、特徴的なヘッドギアといい、明らかにマスカレーナその人そこに居た。

思わず呆けた声をあげてしまった自分は悪くないはずだ。何の情報も無かったターゲットがいきなり現れたら誰だって硬直する。

 

「見つけましたよ!マスカレーナ!」

 

とにもかくにも確保しなければ始まらない。

こうして、二人の争いは再開したのである。

 

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マスカレーナは思わずしかめっ面をさらしてしまった。まだ諦めてなかったのとも思った。

目の前の存在───乱破小夜丸はマスカレーナにとってそれほどまでに厄介な存在だからだ。

彼女のせいで一体何度取引を中止にせざるを得なかっただろうか。

こちらだってちゃんと情報を売る相手は見極めていたのだ。少なくとも悪用なんぞはさせない。

それなのに、彼女はどこまでも追ってくる。

それはもう、しつこい程に。

そもそももう情報屋は廃業したのだ。情報屋であるマスカレーナが狙いなら過去に行って欲しいものである。

だが、目の前の存在はそんな事お構い無しに飛び掛かってくる。

マスカレーナはいつものようにその一撃を避けた。

しかし、それは最悪手だったと言っても過言ではない。何故ならマスカレーナは丁度霊使と小夜丸の間に挟まるように立っていたからだ。

つまりマスカレーナが避けるということはラッキースケベ(そういうこと)が起きてしまうのである。

 

「しまった…!マスター!避け───」

「ばっつ!?」

 

既に警告は遅く、小夜丸は思いっきり霊使を押し倒してしまった。

 

「あっちゃー…。」

「…霊使?」

 

それはつまりウィンの怒りを買う行為であって。

しかも今回は100%霊使本人は悪くないときた。

なら怒りは一体誰に向くのか。

それは至って単純だ。

 

「小夜丸!深く考えずに今すぐそこを退いた方がいいと思う!」

「な…!貴女のいうことは聞きませんよ!?この方を話を聞かなきゃいけなさそうですしね!」

「いや、そうじゃない!良いから早く───!」

 

そう、小夜丸である。

早くしてくれ。

このままでは鬼神が生まれてしまう。

何故か小夜丸はどんどんやべぇ顔になっていくウィンに気付かない。

そんな思いは小夜丸には届かない。

そして、ついに。

 

ぷちん、と音が聞こえた。

 

「あ。」

 

もう知らないとばかりにそっぽを向き始めるクルヌギアス。一応、宥める準備だけはしておくマスカレーナ。

そして、ようやく自分に対して何かドス黒い物を向けられている事に気がついた小夜丸。

 

「ねえ。」

 

余りにも普通すぎる、だからこそ底冷えするような声。

その声があがるとき、だいたい彼女は鬼神のような表情で見下ろしてくる。

しかし、そんな粉とを露知らず、小夜丸はゆっくりと声がしたほうに振り替える。

 

「早く、彼の上から退いていただきませんか?」

「は…はひ…」

 

小夜丸が見上げた先には養豚場の豚を見るような目で見下す少女(ウィン)の姿があったのだった。

その圧は千代丸に受け止め切れるものでは無かった。

いや、S-Forceの長官ですら受け止め切れるか怪しい。それだけの気迫とスゴ味がこの少女の目にあった。

 

「後でお話しましょうね。」

「…ひぐっ…」

 

余りの剣幕に使命をほっぽりだして泣いてしまいたくなった。

ここに哀れな少女の運命が決まったのである。

 

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およそ10分。

それがウィンと小夜丸の「お話」にかかった時間だ。

その間にみっちりと上下関係を教え込まれ、小夜丸は本来は執行対象であるはずのマスカレーナに泣きついた。

それだけ怒り状態のウィンが怖かったのだ。

確かに小夜丸から見ればただの理不尽でしかないこの状況。しかし、ウィンからすれば小夜丸はいきなり霊使に抱きついて誘惑する泥棒猫そのものだ。

おまけに霊使が困惑しているのを共有でき、リィラの焚き付けを思いだしたのだ。

ここまでされて「キレるな」というほうが無理がある。

 

「怖かったよぉぉおぉおぉぉおおぉ!」

「おーよしよし。」

 

二人の関係性が完全に姉と妹のそれだ。

一応この二人は捕まえる側と逃げる側のはずなのだが。

今回の件で少しは突っ込み癖が治ってくれるといいのだが。

 

「はぁ…やっぱ私個人も大分この子に入れ込んでるなぁ。」

「…そうなのか?」

 

そうクルヌギアスが聞けば、マスカレーナは笑いながら答える。

 

「うん。この子と一緒にいるとなんやかんやで楽しいしね。普段は何故か私ってバレてないから。」

「これは…話が拗れるなぁ。」

 

そんな事を話していると急に小夜丸が暴れだす。

どうやら正気に戻ったようだ。

 

「…えー、皆さん、ここは黒い靄が発生してた事はご存知ですか?」

「あー。うん。…今しがた収めてきたよ、それ。」

「そうですか………ん?」

 

正気に戻った小夜丸は改めて本懐を遂げようとして、思考を放棄した。

 

「……へ?」

「なんなら原因はクルヌギアス(こいつ)だぞ。当時の記憶は暴走してたせいか全く無いけど。」

「えっえっ。」

 

あれは人間に収められるレベルではないだろう。それになんだ。隣にいるゴスロリ風の衣装を来た少しダウナーっぽい見た目の彼女が黒い靄の原因?精霊が人為的に暴走?訳が分からない。しかもそれが真実っぽいというのが余計に小夜丸の思考能力を奪う。

 

最終的に彼女は頭がショートを起こした。

そして、そのままフリーズしてしまったのである。

 

「……行くか。」

「せめてサイドカーには載っけてやろう。」

 

この状況を見て、小夜丸に微かに残された思考能力は一つの結論を導きだしていた。

 

おまわりさんこいつは違います。




という訳で新キャラである小夜丸が登場します。
ま、マスカレーナが出てるんなら小夜丸も出していいよねっていう考えです。
S-Forceの本格登場は大分先ですが。

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