「ねえ、最近、女の子の精霊と契約結びすぎじゃない?」
「何も言えねぇ」
ある日、ウィンは唐突にそう切り出した。
最初は何を言ってるんだと思っていたが、考えてみると確かにそうだ。
別に精霊を選り好みで選んでいるわけではない。
たまたま契約できそうだったから契約しただけ。
それがたまたまウィンにとっての
可愛いからだとかそんな自分の好みではない。
だが。
だからこそ何も言えなかったのだ。
「何?私じゃ不満?」
「…そういうわけじゃないけど」
「じゃあなんで?」
「え?いや、だって…うん。」
「いや、何その反応はぁ!」
確かに霊使は多数の精霊と契約しなければならない。
ただ、それはウィンにとっては霊使を誘惑する
あとからポッと出の精霊に長年連れ添ってきた霊使の隣を奪われたくない。
言ってしまえばウィンは嫉妬していたのだ。
「契約したものは仕方ないっていうか…」
「…何それ。」
ウィンは思わず叫んでしまった。
「どうせ霊使も私の事を捨てるんでしょ!だからそんなに曖昧な態度を取るんだ!」
「…それは違う。」
確かにウィンは嫉妬している。
だが、ウィンが何よりも恐れているのは今の居場所を失ってしまう事なのだ。
だから、思わず叫んでしまった。
ウィンは分かっているのだ。
こんな事を叫んでも意味はないと。
いつかは霊使も大人になって、別の誰かと恋をして、自分から離れていく。
そんな未来しか見えないのだ。
どれだけ霊使が愛してるだとか言っても、ウィンには自分にとって都合がいいことばかり言っているようにしか思えない。
霊使はきっと、自分を捨てることはないだろう。
でもいつまで霊使の最高の相棒でいられるかなんてわからない。
だから、せめて霊使という最愛の人が自分の傍にいたという証がほしい。
愛が重いだとかそういうことだって言われるかもしれないし、霊使にドン引かれるかもしれない。
それでも。
四遊霊使という人間と共に居た証を残したかった。
これは、霊使の優しさに付け込んだウィンのわがままだ。
頭のどこかでは分かっている。
霊使は絶対に自分を一番にするだろうということは。
だが、それ以上に他の誰かに自分のいた場所を取られるのが怖かったのだ。
「…ごめん。これは、私のわがまま。今の事は、全部忘れて…」
「無理に決まってるだろ。…そんな風にお前は追い詰められてたっていうのに…俺は気づいてやれなかったんだな…ただの糞野郎じゃねぇか、俺…。」
ウィンの苦悩に気づくが出来なかった霊使は、己を恥じた。
大切な相手の苦悩を見抜けないでなにが相棒だ。
霊使は掌に血がにじむほど強く手を握り締めた。
「きっと、そこまでお前を追い詰めたのは俺が煮え切らなかった所為だ。ウィンに対するあいまいな態度がお前を不安にさせてたんだな。…正直言ってな、俺さ、すごい怖かったんだ。ウィンがどこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって思って。今のままの関係でいいやと思ってた。…深く踏み込んで裏切られるのが怖かったから。…何考えてんだろうな俺は。」
「霊使…」
ウィンだけじゃない。苦悩していたのは霊使も同じだった。
それなのに自分は一人で考えて、また、自分から一人になろうとして、霊使に叫んでしまった。
霊使は自分の事を最悪と言っていたがそんなことはないのだ。
むしろ、最悪なのは自分なのではないか。
そんな考えしか思い浮かばなかった.
「…最悪なのは、私だよ。霊使の優しさに甘えようとしてたんだもん。」
「別にいいだろ。…俺たちはそういう関係だろ?違うか?…俺も人のこと言えたもんじゃないけど…もっと頼ってくれたっていいんだ。」
なんで。
なんで霊使は自分が欲しい言葉を簡単に言ってしまえるのだろう。
そんなの、もっと好きになってしまう。
いつか、別れが来るのに、もっともっと好きになってしまう。
恋とは厄介なものだ。
恋のことでとても頭を悩ますのに、好きな人が目の前で笑いかけているだけで、悩んでいたことがどうでもよくなってしまう。
それで、また、一人で悩んでしまう。
だが。
きっと、それが正しい恋の形なのかもしれない。
悩みも、思いも全部ぶつけ合って、二人で傷つけあっても、次の瞬間にはどうでもよくなって。
ただ、ずっと隣に居たいと思う。
それが本当の恋なのだ。
自分がクルヌギアス達に嫉妬しているのも恋の所為だ。
一番好きな人の周りに可愛い娘ばかり集まったら嫉妬の一つもする。
自分はその感情をはき違えていただけなのだ。
「ああ、なんというか、もうすっきりしたよ」
「…そうか。そいつは良かった。」
ウィンは心からの笑顔を見せた。
憑き物が落ちたようで、鼻歌交じりに出ていく。
「…なんか嫌な予感がする。」
霊使の嫌な予感はある意味的中することが多い。
あの時の咲姫がいい例だろう。
その分状況が好転する可能性を秘めているのが霊使の"嫌な予感"なのだが。
今はただ、ウィンが斜め上に大暴走しないことを祈るばかりである。
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その晩、霊使は何か腰のあたりに居る気がして目を覚ました。
なにか、扇情的なうめき声が腰のあたりから聞こえる。
改めて腰のあたりを確認してみると――――
「ふへへへぇ…霊使ィ…ふへへへ…」
なんかすごいことになっているウィンが居た。
なんだこれは、一体どうなっているのかさっぱり分からない。
なんなのだ、この目の前に居る愛くるしい生き物は。
数多くの思考が霊使の理性を塗りつぶしていく。
「あ…霊使…起きたんだぁ…。…霊使が悪いんだからね?」
「それはどういう」と言いかけている間に強い力で押さえつけられてしまった。
霊使の思考が急激に冷やされる。
「おい、ウィン…寝ぼけて、ないよな?」
「もちろんだよ。…ただ私をもっと
「いや、だからってなんで押さえつけて―――まさか。」
霊使とウィンは今まで恋人らしいことはなんでもやってきた。
二人で出かけたり、二人きりでゆったりしたり。
だが、そんな二人にもまだ一つだけやっていないものがある。
まさか、今からソレをやろうというのか。
「…知ってるんだよ?霊使が初めてってことも。」
「…ストップ。落ち着けウィン。ステイ、ステイ。」
「無理だよ…もう、自分が抑えきれそうにないの…!だから、
「ちょッ…心の準備が…!」
「まーたない!」
ウィンは一気に顔を近づけると激しいキスをしてきた。
ウィンの舌が霊使の口腔内を蹂躙する。
元々こういう事にあまり耐性が無い霊使は直ぐにウィンに体を預けてしまった。
それを確認したウィンは口を一度離す。
二人の間には水糸が出来上がっていた。
「あれ…?もう抵抗しないの?…じゃあ、いただきます」
ウィンは舌なめずりをして霊使いを見下ろす。
この日、霊使はウィンに初めて大敗を喫してしまった。
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「いや、本当にごめん!」
「いや、別に大丈夫だけど。」
翌朝、自身が大暴走していた事を自覚していたウィンに謝られた。
別に少し驚いたが、ウィンに求めてもらえるということ自体は悪いことではない。
ただ、今回は急すぎて驚いてしまっただけだ。
本人もしっかり反省していることだし、霊使からは特に咎めるつもりはない。
ただ、一つだけ問題があるとすれば、この状況がウィンダールに知られることだ。
恐らくこの辺り一帯共々消し飛んでしまうだろう。
「…霊使の為にも絶対に父さんにばれないようにしないと…」
「こ…殺される…」
同じベッドの上でカタカタと震える二人。
一方のエリアはそんな事を露知らずに霊使の部屋のドアをあけ放った。
「…あれ?あの奥手だったウィンちゃんが…。さては、こういうのが正しいのかな?」
そして、同じベッドの上で男女が行う事なんてただ一つしかないだろう。
「さくやは おたのしみでしたね?」
エリアはにやけた顔で言い放った。
ウィンさん大暴走。
今回の話は前半と後半の温度差で風邪ひきます。
あと、今回大分ギリギリを責めました。
水樹君のデッキ強化
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