その日、キスキル達は確かに結と居た。
そのことは結が自信を持って証言できるし、キスキル達も天地神明に誓って盗みはやっていないという。
それなのに。
再び怪盗事件が夜を騒がせた。
霊使はその知らせを聞くや否やクルヌギアスやマスカレーナ、霊使い達に警戒するように伝える。
「…何が起こってる…」
「分からない。…でも、なんか嫌な予感がする」
そう。
何が起こってるのかが分からない。
ウィンも、エリアも、ヒータも、誰一人分からない。
だが、一つだけ分かっていることがある。
「…これ、明らかに二人の跡をなぞった行動をしているよね?」
「…つまりは、二人の知り合いってわけか…。」
そう。
明らかに二人の行動をなぞったものになっていた。
ここから導き出されることはただ一つ。
「…明らかに二人をおびき出すつもりだ…!」
一体何を目的として二人を狙うのか。
そんな事はさっぱり分からない。
「…キスキル達と協力して炙り出してみるか…」
「うん。それがベストかな…?」
二人は夜空を見上げる。
霊使達を見下ろす影に二人が気づくことは無かった。
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「へぇ…あれがキスキル達を倒したっていう決闘者?…なんていうか、冴えなさそうなやつね。このサニー様の敵じゃないわね!」
「…それでも一応キスキル達を破ってるんです。正面から堂々と行くより奇襲を仕掛けた方が確実かと。」
「分かってるわよ、ルーナ。」
サニーとルーナと呼ばれる二人は自分たちの商売敵であるキスキル達を破った相手を探していた。
二人を倒した者を倒し、自分たちがあの二人よりも上であることを証明するためである。
既に計画は最終段階。
二人を倒した者をボコボコにするだけというところまで漕ぎつけていた。
こうすれば、二人よりも正真正銘上になることができる。
そうなれば、少しはキスキル達ばかり見る世間も変わるだろう。
捕まえた相手はほどほどに甚振りキスキル達の前に突き出す。
そうすれば見る目も変わるだろう。
「絶対に成功させる…!」
サニーとルーナ。
この二人は常にキスキル達の影に隠れていた。
だからこそ、この計画を立てたのだ。
この二人の計画は
だが、二人は知らない。
この計画には大きな見落としがあることに気づいていない。
二人のターゲットの事になると鬼神が生まれる事を知らない。
その事を見落としていた時点でこの二人の敗北は決まっていたのだ。
この二人がその事を思い知るのはほんの少しの先の未来である。
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その日の勉学を終えて、霊使は一人夜道を歩いていた。
「やっぱ、こうなるよなぁ…」
霊使は霊使い、ウィッチクラフト、ドレミコード、蟲惑魔達の協力を得て、人海戦術で以て怪盗を炙り出そうとしていた。
キスキル達の動きを模倣している以上、霊使達にその足取りを追う術など無い。
故の人海戦術だった。
そもそもの話だが、キスキル達は盗んだものを依頼人に渡していたという。姿は見せず、声はボイスチェンジャーで変えられていたためその正体を探るのは不可能だったとキスキル達は語っている。
それはそうと、今回の怪盗がそこまで把握しているかどうかは謎だ。
つまり、怪盗達は誰にも会っていない可能性がある。
誰かと会うつもりならば、この町の何処かに姿を現すはず。
逆にこの町に現れなければキスキル達の後を追う模倣犯であり、対処の必要はない。
それこそ、キスキル達本人にでも捕まえてもらえばいいだろう。
ただ、会っていた場合はその場で確保。
警察に身柄を引き渡すことになっている。
というのも、この怪盗はキスキル達の模倣を行っているせいか、精霊の主たるものが居ないのだ。
キスキル達はマスターである結を救いたいという一心で動いていた。
それ故に利用されてしまったわけだが。
だが、今回この怪盗達のマスターはどうしてキスキル達の模倣をさせたのだろうか。
そんな事をしたところで意味が無いのは確かなのだ。
それだったら個人的な恨みつらみをキスキル達に向けていると考えた方が納得する。
「…それにしても。」
いつもはウィンや克喜達、咲姫達と帰っていることが多いからか、一人で帰るということ自体が珍しい。
いつも誰かしらが隣でギャーギャー騒いでいるというのが当たり前になった帰り路。
一人で帰ってみると、新鮮なものがある。
「…平和なもんだな。」
霊使は、自分たちが人知れずに守り続けてきた人々の営みを眺めている。
守れてよかったと心から思うことができるようになったのは、ウィン達のお陰だろう。
「…さて、行くか。」
霊使はゆっくりと歩きだす。
霊使は自らを尾行している存在に終ぞ気づくことは無かった。
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霊使は人気の無い路地を一人で歩いていた。
家がこの路地を通ったさきにあるのだ。
別に通りを大回りしてもいいが、そうすると一度行ってから戻るという道程を経る必要がある。
ただ、一日の学業で疲れた体は一分でも早く休息を求めている。
おまけにウィン達霊使いは怪盗の調査で帰宅が遅れるために七人分のご飯を作らなければならない。
ため息を吐きながらドアノブを握る。
「…、鍵、閉めたよな?」
ドアノブに違和感を感じる。
そう、鍵が開けられたかのように軽い。
確かに今朝、家を出るときにドアの鍵は閉めた。
それはウィン達とも確認した。
それなのに、何故か開いている。
そう、
「嗅ぎ付けられ…っ!」
霊使は抵抗する暇もなく家へと引きずり込まれた。
その後の事は何一つ覚えていない。
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ターゲットが普段使いしているWi-Fiから住所を特定するなんてお手の物だ。
ネットから情報を引き出す術に長けているという自負がサニーとルーナの二人にあった。
住所が割れてしまえばあとは簡単。
家の鍵をピッキングして侵入。ターゲットの帰宅タイミングで家に引きずり込んで拘束、そのまま拉致する。
そうしてしまえば自宅で行方不明となる。
そうなってしまえば、自主的に居なくなったものとして扱われるだろう。
後はターゲットを屈服させてしまえばいい。
だが、一度ターゲットを倒してしまえばようやく、キスキル達の影に隠れず堂々と活動できる。
そして今、目的への第一歩が達成されたのだ。
そう、キスキル達を倒した張本人である四遊霊使の捕獲である。
後はもう拘束なりなんなりして本人に「敵わない」と思い込ませるだけだ。
「でもここじゃ色々と不都合ね…」
そういうとサニーは拘束し眠らせた霊使を担ぎ空へと飛ぶ。
ようやく日陰者ではなくなるのだ。
キスキル・リィラという先駆者を超える時がやってきたのだ。
「…これでようやく、見返してやれる…!」
二人の目に、霊使の姿は無い。
いつだって、二人はキスキル達を超える事だけを目標としてきた。
「もうこれで…!"真似事"だなんて誰にも言わせない…!」
かつてのあこがれは今の憎しみに。
その変化にさえ、二人は気づけなかった。
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霊使が目を覚ました時には、目隠しをされた上でどこか見知らぬ空間に連れられていた。
今でもウィンとの力のパスを感じられる。
少なくとも殺されるとかそういう類の話ではないようだ。
(…ったく。まさか狙いが俺自身だったとは…それはそうと
まさかクルヌギアスの一件に続きこんな事に巻き込まれる羽目になるとは思いもしなかった。
一体何が目的で自分を攫ったのだろうか。
皆目見当のつかない霊使は暫く一人で考え込むことにした。
ここがどこなのか分からなければウィンに居場所を伝えることもできない。
暫く一人で考え込んでいると急にアイマスクが外された。
外の様子は分からない。
だが、わずかに入ってくる星明りとそれに照らされた二人組が見えた。
「なに?身代金目的の誘拐かい?」
「…そんなもんじゃないわよ。…あんたはただ黙って私達の踏み台になってりゃいいの」
「こっちは誰かを踏み台にするのも、誰かに踏み台にされるのも勘弁なんだけどなぁ。」
嫌みったらしく言ってやると二人組のちんまい方が近づいてきた。
どうやらかなり短気な模様で霊使の胸倉を掴もうとする。
それを制したのは長身のほうがちんまい方を制止する。
「こちらとしても余り荒い手は使いたくないのです…。どうかお願いを聞いていただけないでしょうか?」
「悪いけどそりゃ無理だな。俺にお願い聞かせたいんだったら…正面から来るべきだったな。」
「…そうですか。…ならしょうがありませんね。」
その瞬間腹部に強い衝撃を感じた。
どうやら腹部を蹴られたようだ。
「…言うことを聞いてくれるまでは甚振りますね。」
そう淡々と告げる女性に何か黒い念を感じた霊使は手首を縛るロープを焼き切って脱出。
辛うじて一撃を避けた。
「やれやれだ…行くぞ!」
霊使は負けじと飛び掛かる。
こうして、霊使は再び、精霊に対して、肉弾戦を行うことになったのである。
「おいおい…一体何の真似だ?」
「…言ったでしょう。しょうがない、と」
霊使君本人が戦うのはこれで2戦目です。
まあ、今回は霊使にはっきりとした意味があって戦わせてるんですけどね!
水樹君のデッキ強化
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