先に最新話まで見てから閲覧をお勧めします。
今回はメタ発言はありませんが著しいキャラ崩壊はあるかもしれません。
詳しい時系列は秘密ですがとりあえず本編でも同様の事が起こります。
後、ウィン×エリアなど百合がお好きな方には失礼ですがオリ主×ウィンとなっております。
それでもいいという方はどうぞ。
それ以外の方はブラウザバック推奨です。
「…今年のバレンタイン、どうしましょう…。」
『あー…悩むよねぇ…。ワタシは結からもらうしリィラもワタシも手作りのを結に渡すけど…。』
「…今まではなんか意識しなくてよかったけど…。なんか今の関係だと・・・すごく緊張しちゃって…。」
ウィンとキスキルは通話アプリを用いて連絡を取り合っていた。
昨日の敵は今日の友というがここまで親しくなったのはもうずっと前の事だ。
閑話休題。
ウィンがキスキルに連絡を取った理由は勿論すぐそこに迫ったバレンタインデー、である。
今まで霊使とウィンは恋人とかそういう関係ではなかったので普通に市販のチョコを渡していた。
が、今はもう恋人。
霊使と過ごす一瞬一瞬を大事にしたいし、ましや愛する人への贈り物に手を抜くなんて許されるはずもない。
それだけ霊使の事を大切に思えるから。
『愛だねぇ…。』
「ちょっ…。からかわないでくださいよぅ…。」
『それは失礼…。っと。さてと。ウィンの相談は『どうにかして手作りのチョコを渡したい』でいいのかい?』
「…はい。」
『やっぱ愛だねぇ…。』
言葉を噛みしめるように「愛」という単語を放つキスキルに思わず言葉が詰まってしまうウィン。
「うぅ…。」
『いい事じゃないか。誰かを心から愛するってことはそうそうできる事じゃないさ。少なくとも一人に愛を注ぎ続けるなんてことは、ね。』
「それって…。」
『…今のは聞かなかったことにしてくれ。勿論ワタシと結の事じゃないから安心してほしいねぇ。』
キスキル達もなんやかんやで結に対する愛情は深い。
結が怪我すれば飛んでくるし、誰かに彼女が傷つけられたのならばその下手人を社会的に抹殺する事だろう。
『とにもかくにも、だ。ワタシがウィンに教えるのはやぶさかじゃないんだけどねぇ…。やっぱりここは自分で調べてみたらどうだい?』
「…やっぱそれが一番ですよね…。」
『ああ。というわけで手伝ってあげるから図書館に行くよ。』
「え?今からですか?」
『思い立ったが吉日さ。』
こうしてウィンは初めてこの世界でお菓子作りをすることになった。
それは単純に愛を伝えたいから。
その感情は強い原動力になることをウィンは身を以て体験することになる。
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「これがお菓子作りのレシピ本のある書架だよ。」
「…なんでこんなに置いてあるんですか?」
「さぁねぇ…。」
そんなこんなで図書館にやって来たウィンとキスキル。
目的の書架は割とすぐに見つかった。
しかしながらその量は膨大だ。
細やかに知識を得ていたら間に合うはずがない。
ちなみにリィラは材料の買い出しに行っている。
個人個人で作るのでこの後ウィンも材料を買わないといけない。
「さて、と。じゃあ…。」
ウィンは既に勉強モードだ。
ルーズリーフに筆記用具も用意してある。
この図書館では調べものをするときに使える机もある。
便利。
これは本腰を据えてやるしかあるまい。
霊使にはキスキル達と一緒に出掛けてくるという事を伝えてある。
「さあ、勉強を始めようかな…!」
頭にハチマキを巻いて眼鏡をかけて準備は完了した。
いざ、戦いの時だ。
「やるぞー!」
誰かの迷惑にならないように小声で気合を入れる。
あとは使えそうなレシピを何個か厳選して自分が「これは」と思ったものを選ぶだけだ。
その後、気づけば閉館時間ギリギリまでチョコ関係の本を読み込むことになったウィンであった。
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「あ、これだ。」
結局ウィンはアイスボックスクッキーを皆に作る事にした。
が、霊使のために作るのはまた別の物である。
皆の分と一緒に"親愛"の証のクッキーでも渡そう。
そしたら町へ繰り出して、そこで二人だけの秘密のチョコを渡そう。
そんな事を考えながら材料の買い出しを行う。
今はバレンタインデー直前として普通のスーパーでも数多くの製菓材料が置いてあった。
それこそふつうは見ないような物も。
「なんで食用金箔なんて置いてあるのさ…。」
自分はアラザンで十分だし、そもそも今回作る予定のお菓子にアラザンも金箔も使わない。
お値段も高いのでわざわざ買う必要もない。
「あ、でも霊使個人用の飾りつけにはいいかも。…でもなぁ…。」
財布を開けて確認してみるも食用金箔はギリギリ買えるレベルである。
どうせなら手間暇かけて作りたい。
だが、これはどう考えても必要ない物だ。
だが、金箔を付けることで高級に見えるのも事実。
「うぅ…。」
キスキルには自分で調べて作ったほうが良いのではないかと言われたから余り頼りたくはない。
アウスは家庭料理が得意だけれど、製菓を行った事はない。
ヒータは勘で料理を作るから、製菓には不向き。
エリアは味がおいしいか不味いのに極端すぎる。
ライナとダルクに至っては暗黒物質が生成されるため料理自体を封じられている。
マスカレーナは大体エナジーバーで食事を済ますし、クルヌギアスに至っては食事をしなくても大丈夫。
ウィンは頭を抱えざるを得なかった。
「いや、料理スキル低い子が多すぎない…?」
そもそも四遊家には人外しかいないのだが。
「…まぁ今回はぁ…うぅ…。」
「…何してるのよ、ウィン…。」
「あ、ウィンダ。実はね―――」
その後緑髪の女子二人が食用金箔の前で唸り続けるという奇妙な光景が繰り広げられることになるのだがそれはまた別の話である。
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そんなこんなでやってきたバレンタイン当日。
もう既に親愛を示すためのアイスボックスクッキーは渡した。
喜んでもらえたようで何よりだ。
「ね、霊使。少し外行かない?」
「…分かった、行くか。」
霊使達が住んでいる場所は商店街からほど近い。
二回交差点を曲がればそこはもう人々であふれかえる商店街だ。
「相変わらずの人気だねぇ…ここは。」
「そうだな。」
ウィンはそう言いながら霊使の右手を握る。
その体温のぬくもりを感じていると、霊使がそっと指を絡めてきた。
ウィンの左手にはっきりと感じられる霊使の素手の感触を確かめる。
暖かくて、大きくて安心するその手。
どんなときもウィンに勇気をくれた大きな手はいつもと同じようにそこにあった。
「…この一年色々とあったね。」
「ああ。」
「…本当に色々と忘れられない一年になったよ。」
「ソレはお互い様じゃないか。俺も忘れられないさ。」
まぁ、その記憶は常に死と隣り合わせだったわけだが。
だがそのおかげでウィンは霊使とかけがえのない愛を築くことができた。
だからこそこの一年は忘れられない一年になる。
年度の締めくくりには少し早いが一年の締めくくりとしては丁度いいだろう。
「あんな濃い経験を高一からやったなんてなぁ…。」
「あれ普通大人の出番だからね…?」
怪盗騒動を解決に導いたり、精霊の暴走を鎮めたりなど、本当にこの一年は濃厚な一年だった。
力が足りなくて後悔した日も、過去を後悔した日も、きっと、今日この日のために。
「もう少し歩こう?」
「…そうだな。今は久しぶりに二人っきりだ。」
手を絡めたまま商店街を出て街を一望できる展望台へ向かう。
商店街そのものが郊外にあるので、町はずれにある展望台までそんなに時間はかからなかった。
展望台には人一人居ない。
風の音、植えられている木が奏でる音。眼下に見える町の光。空に浮かぶ満天の星。
眩い光に照らされて、二人は目を細めた。
「綺麗だね…。」
「ああ。」
二人とも多くを語ることはしなかった。
今、この距離感がとても心地よいからだ。
「ね、霊使。渡したいものがあるんだけどいいかな…。」
「…分かった。」
「これ、どうぞ。」
ウィンは紙で丁寧に包装したチョコを霊使へ手渡した。
渡すときに笑顔で渡せていただろうか。
「開けていい?」
「うん。皆には内緒だよ…。」
霊使は丁寧に包装をはがす。
そこには丁寧にラッピングされた小さなザッハトルテがあった。
しかもウィンは霊使の甘味好きを知っていたので中のあんずのジャムや上部のグラサージュは甘めに仕上げてある。あんずの風味を活かせる甘さに調整するのは少し大変だった。
「美味しいな…。」
「良かった…。」
ザッハトルテを一口口に入れた霊使からは好評価を得た。
手間暇をかけて作ったし、霊使の好きな甘さに近づくように工夫を凝らした。
そんな会心の出来のザッハトルテが不味いはずもなく。
「…わざわざ俺だけのために作ってくれたのか…。ありがとな、ウィン。」
「良かったよ、口にあったのならば何より、だね。」
「ああ。」
霊使とウィンの間にあった数々の危機は二人をより強く、より深く結びつけた。
愛する人にこれ以上ない"愛"を送ることができただろうか。
そんな事は霊使の満足そうな顔を見れば成功だといっぱつで分かる。
そんな霊使が愛おしくて、ウィンは胸の中にある気持ちを素直に言葉にした。
「大好き、だよ。霊使。」
「ああ。俺も大好きだ。ウィン。」
その言葉を聞いてしまったらウィンはもう我慢できない。
霊使の傍にそっと近づくとその唇にウィンの唇を優しく合わせた。
それに満足して、ウィンは霊使の手を取る。
「帰ろっか。私達の、皆が待っているあの家に。」
「そうだな。」
二人は再び手を取って歩き出す。
二人には空に輝く星々が自分達を祝福しているように感じられた。
予告なしのサプライズ投稿。
バレンタイン番外編ですがいかがだったでしょうか。
これからも拙作をお願いします
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