「相棒」   作:ダンちゃん1号

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四遊霊使捕獲命令 その①:ヴェンジェンス

その日、とある廃墟に男の野太い声が響き渡った。

その男は近くにいた者の胸倉を掴むとその出所を確認。

それが確かな命令であったことに男は歓喜の声をあげる。

 

「…あいつを生かしたまま連れてこい…か。良いじゃねぇか。」

 

外道洛斗18歳。不良。

以前とある少年との決闘に負け、それ以降負けが込んだ男である。

一度の敗北で堕ちる所まで堕ちた外道は今では僅かな舎弟と共に暴力をかざし、奪い取った金で自身を四道の雑用として売り込んでいた。

そして今では理不尽な暴力でもって四道に仇なす者を狩る所謂「掃除屋」となっていた。

と言っても命を奪ったりなどしない。

命を奪ってしまえば確実に足が付く。

それだけは避けなければならないとの判断からだ。

だが、少年の捕獲は洛斗にとっては復讐のチャンスそのものである。

次こそその少年を負かし、尊厳をめちゃくちゃに踏みにじった上で―――屈服させる。

誰が強者で誰が弱者か。

それをはっきりと分からせる機会がようやくやってきたのだ。

これを好機と言わずに何と言おうか。

 

「あの時の礼をたっぷりさせてもらうとするかぁ…!」

 

時を同じくして四道に忠誠を誓う全ての者が一人の少年を狙い動き出す。

全ては彼らの望む世界に居たいと思うが故に。

洛斗が狙う男の名は四遊霊使。

彼を失墜させた張本人の男であった。

 

 

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一方の霊使。

自分が狙われているとは露知らず、呑気に日常を過ごしていた。

勿論霊使には「自分が狙われている」という事を知る術など無いのだが。

だが、いずれは四道と対峙しなければならないことは既に理解している。

 

「…だからってわざわざ皆出てこなくてもいいでしょ…?」

「…だって次に会う相手が()()()かもしれないじゃん…?」

 

ただ、八人の精霊で前後左右に上下を監視するのは止めて欲しい。

なんというかこのままではこちらの精神が持たなくなってしまう。

 

「こうでもしないとまたアイツが霊使を殺したりしようとするでしょ?」

「…ウィンよ。後でその者の名を教えよ…。(わたし)がきっちりと地獄に叩き落としてやる…!」

「それとも私が情報かき集めて社会的に殺してあげようか?…まぁ、ウィンが教えてくれたら、だけど」

「ワーココロヅヨイナー」

「棒読みっ!?」

 

なんだろうか。

この精霊達、怖い。

社会的にも人生的にも殺すことに容赦がないだなんてなんと恐ろしいのか。

と、ここまで考えてふと思う。

思えばあの時に一度死にかけたのだったか。

確かにそれならばこうなるのも仕方ないのだろう。

というか、ウィン達が同じ目にあったら多分自分だってそーするだろう。

 

「…まぁ、もう一度俺の目の前に現れたら…その時は心をバキバキに圧し折って―…。二度と決闘できないようなトラウマを植え付けてー…。」

「霊使、ステイ。」

「あと霊使…あいつの話はもうやめてあげてくれないかな…。」

 

どうやらあの男の事は相当トラウマだったようだ。

心なしか、あの時に居た四人は顔が死んでいる。

その当時はまだ顕現していなくともカードには宿っていたため、何もできずに嬲られ続けるさまを見たのだろう。

 

「天災は忘れたころにやってくるというからなぁ…。」

 

霊使にとっても霊使いに達とっても最も忘れたいことといえば真っ先に上がるこの出来事。

本人があずかり知らないところでそれが阻止されてようとは今の霊使達には知る由もなかったのだ。

 

 

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「…全く誰を尾行してると思ったら…テメェ…あの時の…!」

 

その日、九条克喜がその男を見つけたのはたまたまだった。

ウィッチクラフトたちと羽を伸ばそうと外出していたら、コソコソと親友を尾行する男を見つけた。

「ばれるとまずい」。そう考えた克喜はウィッチクラフトに精霊としての姿を消させてから男の前に出た。

あの日、あの場所でエリア達に蹂躙されていた男が目の前に居た。

 

「…あ?誰だテメェ…?」

「霊使の友人だよ。…なんでアイツを尾行してた…?」

 

偶然だってこうも重なれば必然だろうと思う。

この男は以前霊使に完敗を喫していたはずだ。

つまりそこから考えられることはただ一つ―――。

 

「復讐に決まってんだろ?俺を負かしたあいつに対するなぁ!」

「…そう簡単にやらせると思うか?」

 

そう、復讐だ。

確かに復讐することで前に進むことができる人間だっているのかもしれない。

だが、目の前の男の復讐は何も生まないただ、私欲を満たすためだけのもの。

 

「…そうはさせねーよ。ここで…お前を止める。」

「けッ…。まぁ、軽いウォーミングアップくらいにゃなるか…?」

 

だから、ここで止めなくてはならない。

自らの友を悪意に呑まれないようにするために。

 

「さあ、行くぜ…!準備はいいか!?」

「そりゃこっちのセリフだなァ…!粗挽き肉団子にしてやるよ…!」

 

こうして、誰にも知られる事無く一人の少年のメインを左右する決闘が始まったのだった。

 

「…先攻は俺だ。…俺は"ウィッチクラフト・ポトリー"を召喚!」

 

克喜はいつもの如く下級ウィッチクラフトを召喚する。

下級ウィッチクラフトは共通の効果として、手札の魔法カードと自身をコストとすることによって新たなウィッチクラフトをデッキから特殊召喚することができるのだ。

この効果で先攻一ターン目から上級、もしくは最上級のウィッチクラフトを並べ相手フィールドを制圧する。

それが、ウィッチクラフトの戦い方だ。

 

「…俺は"ポトリー"をリリースし手札から魔法カード一枚を捨てて効果発動!俺はデッキから"ウィッチクラフト・ピットレ"を特殊召喚する」

 

しかし、克喜が召喚したモンスターはポトリーと同じく下級ウィッチクラフトの内の一人であるピットレ。

 

「普通そういう効果は上級モンスターを召喚するものだろォ!馬鹿じゃねぇのか!?」

「安心しろよ…。()()()()()()()()()()。」

「何を言って―――!」

「俺は"ピットレ"をリリースし、手札から魔法カード一枚を墓地に送ることで効果発動!俺はデッキから"ウィッチクラフトマスター・ヴェール"を特殊召喚!」

 

がしかし、ピットレ召喚後はそのまま効果での最上級ウィッチクラフトの特殊召喚につなげた。

 

「…何が狙いだ…?」

「それを言うほど俺は馬鹿じゃねぇぞ…?更に墓地の"ウィッチクラフト・ピットレ"の効果を発動!このカードを除外することでデッキから一枚ドローする。…その後手札の"ウィッチクラフト"カード一枚を墓地に送る。…俺は"ウィッチクラフト・シュミッタ"を墓地に。更に"シュミッタ"の効果発動。墓地のこのカードを除外してデッキから"ウィッチクラフト"カード一枚を墓地に送る。…俺は"ウィッチクラフト・クリエイション"を墓地に。…エンドフェイズ。…俺は墓地にある"クリエイション"、"デモンストレーション"、"サボタージュ"の効果発動。これらのカードは自分フィールド上に"ウィッチクラフト"モンスターカードが存在すれば自分エンドフェイズに手札に戻る。…これで、ターンエンドだ」

 

克喜 LP8000

フィールド ウィッチクラフトマスター・ヴェール

 

あれだけ回しておいてフィールドに残っているのは第一印象が妙にむかつく幼女一人。

なんというかあれだけ大口を叩いておきながら一体しかフィールドに残ってはいない。

 

「ふぅん…。あれだけでかい口きいてた割にはしょぼそうなモンスター一体だけじゃねぇか!」

「…テメェ…!俺の相棒をバカにしたことを絶対に後悔させてやる…!」

「やってみやがれ!俺のターンだ!ドロー!来い…!"無限起動ロックアンカー"!俺は、"ロックアンカー"の効果で手札から"無限起動ハーヴェスター"を特殊召喚させてもらう。」

 

現れるのは二体の重機を模したモンスター。

あれが今後どのようになるかは分からないがなるほど。

確かにあれなら相対するモンスターを粗挽き肉団子にできるのだろう。

 

「"ハーヴェスター"の効果発動!デッキから"無限起動"モンスター一体―――今回、俺は"無限起動キャンサークレーン"を手札に加えるぜぇ!そして俺は"キャンサークレーン"と…今、手札にある"スクレイパー"の効果発動!このカードたちは自分フィールド上の地属性・機械族モンスター一体をリリースすることで守備表示で特殊召喚することができる!来い!"スクレイパー"!"キャンサークレーン"!さらに"キャンサークレーン"召喚成功時に墓地の機械族モンスター一体を除外して"超接地展開(アウトトリガー・エクスパンド)を手札に加えそのまま発動!」

 

しかしながら相手フィールド上に居るモンスターはどんどんその姿を変える。

そして、今。

相手フィールド上には同レベルのモンスターが存在している。

 

「狙いはX(エクシーズ)召喚か…!」

(…どうしますか?()()()を使うという方法がありますが…。)

(…そうだな。使うか。)

 

X(エクシーズ)モンスターとは総じて強力なモンスターが多い。

環境で暴れ散らかしたV.F.Dしかり、アーゼウスしかり。

目の前の男も相当に強力なXモンスターを所持しているのだろう。

だが、それでも霊使を斃すことができなかった。

それがこの男が霊使に復讐しようとする理由だろう。

大体、霊使がどのようにこの男を斃したかは想像がつく。

霊使に"メタバース"と"一輪"のコンボでも喰らって効果を無効にされたのだろう。

その後は、"霊使い"の効果でコントロールを奪われたか、"憑依連携"によって破壊されたかは知らないが。

少なくとも効果に「一ターンに一度」の制限が付いていると予測した。

 

「…俺は"キャンサークレーン"と"スクレイパー"の二体で…!オーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!X(エクシーズ)召喚!来やがれ!"無限起動リヴァーストーム"!さらにさらに、"R(ランク)U(アップ)M(マジック)―アストラル・フォース"発動。俺は"リヴァーストーム"でオーバーレイネットワークを再構築。」

「…そんな…!?ランクアップだって!?」

 

しかし、相手はその予測をはるかに超えてきた。

「ランクアップ」と呼ばれるエクシーズのなかでも使い手が少ない戦術だ。

それはそのはずでまず、「ランクアップ」に対応しているモンスターがNo.と呼ばれるカードと一部のエクシーズモンスターしか居ない。

現にエクシーズモンスターを主力とする奈楽の蟲惑魔もランクアップを行わないのだ。

舐めてかかると大変なことになる。

改めてその事を自覚した克喜は相手の行動に備えた。

 

「X召喚!来やがれ、"無限起動コロッサルマウンテン"!更に"超接地展開"の効果発動させてもらうぜぇ?俺の"無限起動コロッサルマウンテン"を対象とし、そのモンスターよりランクが2高いエクシーズモンスター一体をX召喚扱いとしてそのモンスターの上に重ねて特殊召喚する。…俺は"コロッサルマウンテン"一体でオーバーレイネットワークを再構築!X召喚!世界を揺らすは無限の力!あらゆるものを挽き潰せ!来い、"無限起動アースシェイカー"!」

「"無限起動アースシェイカー"…!?」

 

そのモンスターは余りにも大きく、余りにも狂暴だった。

意思があるかどうかは分からない。

ただ、その全身にある掘削機械はどれもヴェールを簡単に粗挽き肉に変えてしまいそうなものだった。

あれはまずい。

全身の本能がそう告げている。

 

「…"エフェクト・ヴェーラー"!俺は"アースシェイカー"の効果を無効にする!」

 

とっさにエフェクト・ヴェーラーを用いて、アースシェイカーの効果を無効にする。

逆に言えばこれでようやく条件が整った。

 

「チッ…。ならしょうがねぇ!カードを一枚伏せるぜ。さらにぃ、速攻魔法"エクシーズ・インポート"を"アースシェイカー"と"ヴェール"を対象として、発動する!」

「…今、()()()()()()()?たった今、英知の結晶は特殊召喚の条件を満たした…!」

「何ィ…!?」

 

克喜の奥の手。

それは自分フィールド上に居る魔法使い族のモンスター―――今回の場合はヴェールを対象とされたとき、又は攻撃対象に選択されたときに特殊召喚できるカード。

その際、墓地から"ウィッチクラフト"魔法カードか相手フィールド上のカード一枚を持ち主の手札に戻すことができるカード。

克喜にとってのヴェールに並ぶもう一枚の切り札。

 

「俺はお前の"アースシェイカー"を対象とし、そのカードを手札に戻し、"ウィッチクラフトゴーレム・アルル"を特殊召喚する!」

「なん…だとぉ…!?」

 

アースシェイカーが布やらなんやらで雁字搦めにされ、打ち捨てられるのと、いかにも魔女といった風貌の存在が出てくるのはほぼ同時だった。

かの存在こそがウィッチクラフトの最終兵器であり、最新鋭の叡智の結晶である存在―――「アルル」だ。

 

「…起動シークエンス再完了。ウィッチクラフト製ゴーレム、名称「アルル」、再起動します。また、休眠時に()()()()の出動要請があったために一時的に"オートメント・システム"を使用しました。この決闘が終わり次第速やかなメンテナンスを要求します」

 

アルルの姿かたちは人のそれだ。着ている服も少しばかり露出が多いことに目を瞑れば人間が纏っているものそのものだ。

しかし、アルルには決定的に人は違う点を持っていた。

それは「足」と「肌の色」だ。肌の色は人の者とは思えないほど白く、足の膝関節はいわゆる球体関節人形(ドール)と呼ばれるものにそっくりだった。

この二点から彼女はその名の通り「ゴーレム」であることは明らかであった。

 

「…ターンエンド、だッ…!クソがっ…!」

 

外道洛斗 LP8000

モンスター なし

魔法&罠  伏せ×1

 

完璧な動きをしたはずだった。

それをたった二枚のカードで返された。

それはかつての大敗を想起させるような状況で。

外道は屈辱で憤死してしまいそうなほどに激昂していた。

 

「俺のターンだ。…怖いか?」

「…なんだと…?」

「だから怖いか、と聞いてるんだ。このクサレ脳味噌。」

 

克喜は洛斗を煽りながら一枚のカードを差し出す。

 

「…俺が今引いたカードは"ウィッチクラフト・エーデル"。観念しろ。お前はもう、勝てない。」

「…ッ!」

 

克喜の差し出したカード。

それはたった今ドローしたカードだ。

何故わざわざ手の内を明かすような行動を取るのか。

それはもう既に"勝つ手段がない"からだ。

相手の手札は残り一枚。

墓地に"超電磁タートル"は無く、また最後の一枚の伏せ。

あれも恐らく破壊をケアするための"マーシャリングフィールド"であると予測していた。

 

「…ざけんな…!俺は…俺は…!誰よりも強いんだあぁぁああぁぁぁッ!テメェらなんかに!負けるなぞあり得ねぇんだよぉ!」

「…決闘者の風上にも置けない奴だ。…俺は手札の"ウィッチクラフト・デモンストレーション"を発動。手札から"ウィッチクラフト・エーデル"を特殊召喚。更に俺は"ウィッチクラフト・クリエイション"発動。デッキから"ウィッチクラフト・ハイネ"を手札に加える。更に手札の魔法カード1枚をコストに"エーデル"の効果発動。手札から"ハイネ"を特殊召喚。」

 

今の洛斗のフィールド上には使えるかどうかも分からない伏せカードが1枚。

それとは対照的に克己のフィールドには4体もの上級モンスターたちが存在している。

 

「今のお前には色々と足りないものが多い…が。一番足りないのはあれだな。」

 

克喜はゆっくりと右腕を振り上げた。

あれが振り下ろされれば自分は再び負けてしまう。

だが、もはやあの時のように暴力に訴えることもできない。

 

「やめ――――」

「どんな結果でも素直に受け入れる強い心だな。」

 

克喜はもはや見る価値もないと振り返る。

それと同時に右腕は振り下ろされ、風前の灯火であった自身の8000のLPは消し飛んだ。

 

洛斗 LP8000→0

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「おーう、霊使ー。」

「克喜!?…なにかあったのか?」

「ま、ちょっとした野暮用ってやつさ。」

 

その後洛斗を近くの電柱に括りつけた克喜は何食わぬ顔で霊使と合流した。

その際に一瞬何があったかばれそうになったが隠し通すことに成功したのだ。

だが、克喜達は知らない。

これはまだ始まりに過ぎなかったのだと。

 

四道と霊使の因縁の始まりを告げたに過ぎなかったのだと、嫌でも思い知ることになる。

 

「霊使君ッ!無事かい――――!?」

 

二人が「あの命令」を知るまであと数秒――――。

そして新たな戦いが始まるまであと――――。




登場人物紹介

・九条克喜
久々の決闘。
切り札は"ヴェール"と"アルル"。

・外道洛斗
一話以来の登場。
自分を最上だと思い込んでいる人間の屑。
心をバキバキに折られた。

・四遊霊使
最近決闘より、肉弾戦の方が多いと思っている。
絶賛精霊化進行中



今回はほんの少しだけ強くなった克喜君のデッキお披露目回でした。
さて、珍しくシリアスが続きます。

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
  • リチュア
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