「全く…まさか生きてるとはな…。」
四道空也は霊使のしぶとさに頭を抱えていた。
確かに弟からは始末したと聞かされていたのだ。
何故かは知らないが弟は霊使にご執心だ。
一度定めた獲物は逃がさないという意味で狙っていると思われるのだが。
だが、流石に二度目は無いだろう。
今日、確実に四遊霊使はあの男に殺される。
それは確定事項なのだ。
それこそ、天地がひっくり返らなければ。
弟が四遊霊使に敗北しなければの話だが。
「…やれやれだ。逃がさないようにしといてやるか。」
だが常に最悪を考えておかなければ不測の事態に対処できない。
故に四道空也は彼の弟の後を追う。
その目的は霊使ではなく自らを負かした咲姫であることに自覚がないまま。
空虚な男は夜の街を駆けた。
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四遊霊使は今、最大級の危機に瀕していた。
かつて自分を瀕死―――否、一度殺した相手と相対していたからだ。
その男は狂気に彩られた笑みを浮かべて霊使へと迫る。
「待ってたよ―――、お前を倒せる日を。」
「俺を倒すだぁ…?中々面白いことを言ってくれるじゃねぇか…!」
霊使は目の前の男を睨みつけながら、ゆっくりと後退する。
そこには慎重さしか存在していない。
それこそ不意打ちが来ても即対処できるような距離を保っている。
「それにしても…まさか生きてるなんて思いもしなかったぜ…。確実に出血多量で殺せる位置を狙ったんだがな。どーなってやがる?」
「一か月ほど意識が戻らなかったんだ。俺にも分かんないな。」
それはそうと男はやはり霊使を殺しにかかっていたようだ。
あの時向けられた感情は殺意以外の何物でもなかったと改めて実感する。
「ま、やっぱ不意打ちで殺せなかったのなら…
「…そうだな。…おい、後いい加減に名乗れよ。」
霊使も決闘で決着をつけるのは賛成だ。
それはそれとしていい加減に名乗ってくれないものだろうか。
いい加減「お前」という風に呼ぶのに飽きが来たところだ。
「…テメェ程のモンに名乗りたくもないがいいだろ。テメェを殺す男の名はな、
「分かった。四道零夜―――お前を、斃す。」
「来やがれ―――四遊霊使ィ!」
かつての因縁はここに実を結ぶ。
一度は殺されかけた男も、一度は瀕死に追い込んだ男も今は同じ
故に小細工なし、イカサマなしのガチンコ勝負。
少なくとも小細工やイカサマなんて行った日には決闘者としての全てを失うことになるだろう。
「さあ、始めようぜ?先攻はくれてやるよ。―――さあ、たっぷり苦しもうぜぇッ!」
(霊使!分かってるよね…!これは多分―――)
(闇の
ウィンの警告が無くとも分かる。
この雰囲気は確かにヤバい。
以前キスキル達と決闘したときに感じたものと同じだ。
「闇のゲームの始まり…ってなァッ!」
「いくぜ。―――俺のターンだ!」
霊使 LP8000
そしてついに命を懸けた決闘が始まる。
先攻は霊使。
いつもの通りにできればいいのだが。
霊使は気持ちを落ち着かせて手札を見た。
―――理想的な手札。
内心でガッツポーズを取った霊使は盤面を完璧にしようと動き出す。
「俺は手札一枚を捨てて速攻魔法"精霊術の使い手"発動。デッキから"憑依覚醒"と"憑依連携"を選択。今選んだカード一枚をセットしてもう一枚を手札に。そのままセットカード"憑依覚醒"発動!更に手札から永続魔法"
「マスター…コイツ、凄いヤバい気配がする!―――一体何人あの手で殺されたんだ!」
わりと悪魔然とした使い魔を連れたダルクがその姿を現す。
ダルクは使い魔の性質上悪霊だとか怨念だとか。そう言ったものには敏感だ。
それ故にダルクは零夜を警戒する。
「…ダルク。今はまだ―――。」
「分かってる。」
今にも殴り掛かりそうなダルクを制止しながら霊使は自身のプレイを続ける。
全てはこの男をぶん殴るため。
そして、四道と戦えるという事を証明するために。
「攻撃力1850のモンスターが登場したことにより"覚醒"の効果発動。デッキから一枚ドローする。」
ドローしたカードを確認する霊使。
その目は確かに何かを掴んだ眼だった。
「…俺はカードを二枚伏せてターンエンド。」
霊使 LP8000
フィールド 憑依装着ダルク
魔法・罠ゾーン 憑依覚醒
伏せ×2
霊使は"一輪"を発動することなくターンエンド。
メタバースもテラ・フォーミングも引けなかったというのは中々にキツイ。
だが、それ以上に"仕込み"を行うことができた。
(…ヴェルズは確か…召喚権を増やしてモンスターを並べるんだっけか。)
(死ぬほど厄介なデッキさ。…ちゃんと学習してんだな。)
ダルクと二人でばれないように念話をする。
そんな霊使に零夜は憎悪と殺意で塗れた目を向ける。
「俺のターンだ!…ドロー!…このカードは、相手フィールド上のモンスターが自分フィールド上のモンスターの数より多い時、このカードは特殊召喚できる!"ヴェルズ・マンドラゴ"を特殊召喚!」
相手フィールド上に現れるのは死んだ目と頭部に棘が付いた葉を持つ生物。
なんというか単語で言い表せないそのモンスターは、常に瘴気を漂わせていた。
見ただけで分かる。
あれは邪念―――悪意の塊だ。その濃さはあのモンスター一体でも数万人規模で発狂させられるだろう。
そんな悪意の塊があの「ヴェルズ」というモンスター群なのだ。
「更に俺は"ヴェルズ・カステル"を召喚!このカードによって俺は再び"ヴェルズ"モンスターの召喚権を得る。俺は更に"ヴェルズ・ケルキオン"を召喚だァ!」
更に増えるヴェルズ達。一体一体の攻撃力は辛うじてダルクに及ばないもののそれでも同じレベルのモンスターが複数体並ぶというのは避けなければならない事だった。
「エクシーズが狙いッ…!」
どうやらヴェルズというカテゴリは召喚権を増やしながらエクシーズモンスターでゴリゴリに押すデッキらしい。悪意に塗れたモンスター達からしたら力が振るい放題なのでらしいといえばらしいのだが。
「よく分かってんじゃねぇか!俺は"カステル"と"マンドラゴ"の二体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!来い!"ヴェルズ・オピオン"!こいつはダルクの攻撃力を上回ってるぜぇ?」
「そう易々と破壊させるかッ!
この場でダルクを破壊される訳にはいかない。
故に伏せカードの内の一枚を
出来ればこのカードは真の切り札まで取っておきたかったのだが使ってしまったものは仕方が無い。
だが、これで攻撃力2550のオピオンは退場させることができた。
未だ、流れは霊使の手の中に。
このまま押し切りたいところではあるが果たしてうまく行くのだろうか。
決闘というのはいくら警戒しても警戒し足りないのだから。
"覚醒"の効果でデッキから一枚ドローした霊使。
このタイミングで普通このカードが来るか?と思わせるようなカードが来た。
「…ちッ!まぁいい。…俺は"ケルキオン"の効果を発動させてもらう!俺は墓地の"マンドラゴ"を除外して"ヴェルズ・カステル"をもう一度手札に!…更に俺はカードを二枚伏せてターンエンドだ。」
零夜 LP8000
フィールド ヴェルズ・ケルキオン
魔法・罠ゾーン 伏せ×2
どうやら互いのデッキはお互いに手札が蒸発するデッキだったらしい。
霊使の手札はこのドローを含めて二枚。
一方の零夜も手札は残り二枚。しかも一枚は"ヴェルズ・カステル"であることが確定している。
実質判明していないという点では零夜の手札は一枚。
手札アドバンテージという面では霊使の方がほんの少しだけ有利だ。
「俺のターンだ…ドロー!俺は手札から"憑依装着―アウス"を召喚!"覚醒"の効果で一枚ドロー。…更に俺は"妖精の伝姫"の効果で手札の攻撃力1850、魔法使い族モンスターである"憑依装着―エリア"を召喚!」
ポンポン出てくる霊使い達。
既に四属性存在することでウィン達の攻撃力は3050まで上昇。
下級モンスターでどうこうできる次元の攻撃力を突破している。
「…バトルだ!俺は"憑依装着―エリア"で"ヴェルズ・ケルキオン"を攻撃!」
「残念だったな!罠発動"攻撃の無力化"!これでこのバトルフェイズは終了だァ!」
だがここで妨害されてしまった。
これでこのターンは終了せざるを得ない。
「カードを一枚伏せてターンエンドだ。」
霊使 LP8000
フィールド 憑依装着―エリア
憑依装着―アウス
憑依装着―ウィン
憑依装着―ダルク
魔法・罠ゾーン 憑依覚醒
伏せ×2
確かに攻撃は出来なかったがそれでも十分。
ヴェルズのモンスター達にも負けない攻撃力を持つ自慢の相棒達が傍にいるだけでなんとかできると思ってしまう自分がいる。
何とかしなければ死ぬだけなのだが。
「…俺のターンだ。ハァ…認めてやるよ霊使。お前は俺が本気を出すに値する相手だってな。ドロー…。俺は――"レスキューラビット"を召喚!」
「あっ。…これはマズイな…!」
レスキューラビット。
このカード自身を除外することで同名かつレベル4以下の通常モンスターを二体特殊召喚できるカード。
もちろん霊使本人にとっても非常にトラウマなカードである。
主にそこからエクシーズ召喚され連続ランクアップを重ねた上に降臨したSNo.39とかがその最たる例だろう。
思わず叫んでしまったが確かに、ヴェルズとの相性は抜群だ。
ふざけるななんてレベルではない。
だがそれと同時に零夜の纏う雰囲気も変わったのだ。
恐らくは真に倒すべき相手として認識された。
「"レスキューラビット"を除外して俺は"ヴェルズ・ヘリオロープ"二体を特殊召喚。俺は二体の"ヘリオロープと"ケルキオン"の三体でオーバーレイ!…悪意の円環よ、今、ここに来たれ!エクシーズ召喚!来い"ヴェルズ・ウロボロス"ッ!」
現れるのは悪意の龍。
攻撃力は2750であり、霊使い達に届いていない。
それでも、恐らくは
「俺は更に"
「…!」
これは不味い。非常に不味い。
このままでは―――
「さあ、"ウロボロス"の効果発動の時間だァ!
「だろうな。…俺はこの瞬間に永続
確かに霊使いの強さを支える"憑依連携"が手札に戻されてしまったのは痛い。
だが転んでもただで起きないのが霊使という男だ。
破壊できないのなら後続を確保してしまえばいい。
だが。
「俺はこのタイミングで
さらにヴェルズがもう一体。
これでは確実に甚大な被害を被ってしまう。
「バトルだ!"ヴェルズ・オピオン"で"憑依装着―ダルク"を攻撃!」
「"
ダルクとオピオンの戦いは一瞬だった。
余りの速さでダルクはオピオンを捉えきれずそのまま一撃をもらい、吹っ飛ぶ。
明らかに致命傷レベルのそれは、しかし、妖精の尻尾によってその威力を大きく減衰させていた。
「でもまだ終わってないぜ?…続けて"ヴェルズ・ウロボロス"で"憑依装着―ウィン"を攻撃!」
「ぐうっ…!」
霊使 LP8000→7100
ウィンの受け止めきれなかった衝撃が霊使の内臓を揺らす。
ウィンに至っては気絶寸前にまで追い込まれていた。
(大丈夫か…ウィンッ!)
(なんとか…でもこれ…なんか闇落ちしそうな感じはある。)
(後でたくさんかまってやるから。)
なんやかんやでお互いに無事そうであった。
ただ互いに被害が無かったことには内心安堵していたが。
「…メインフェイズ2。俺は"オピオン"の効果発動。X素材を一つ使いデッキから"侵略の侵喰崩壊"を手札に加えてそのままセットするぜ?…何もなし、か。…これで、ターンエンドだ。」
零夜 LP8000
フィールド ヴェルズ・ウロボロス(X素材×2)
ヴェルズ・オピオン (X素材×0)
魔法・罠ゾーン 伏せ×1
(あの伏せは"侵略の侵食崩壊"で確定…。どうあってもバウンスされる…か。)
霊使は既に勝つための道筋は見つけてある。
これから先考えるのはどのようにして"侵略の侵喰崩壊"における被害を低減できるのかだ。
恐らく、相手の狙いは"憑依覚醒"と"憑依解放"の二枚。
この二枚を片付けてしまえば霊使い達の攻撃力は元に戻る。
ならば、あのカードを使わせればいいだけ。
先ほど使わされた"憑依連携"と同じ事をやり返してやればいい。
ここにきて最初の"覚醒"の効果で引いたカードが活きてくる。
「俺のターンだ!…ドロー!」
裂帛の気合と共にデッキトップから引いたカードを確認する。
ぶっちゃけここでこのカードを引いてしまうとは。
なんなら欲しいカードは最初から手札にあったため、ある意味でこれはオーバーキルともいえるだろう。
「俺は手札から速攻魔法"サイクロン"発動!その伏せカードを破壊だ!」
「チィ!引き良すぎじゃねぇか!?"侵略の侵喰崩壊"は発動しないッ!」
「残念だったな!持ってたんだよ!」
どうやらここで"オピオン"を破壊されるよりかはこのまま盾にした方がいいと踏んだようだ。
が、その判断は今、この状況においてはもはや意味を為さないものだったからだ。
言ってしまえば四道零夜は詰んでいた。
「俺は、手札から"憑依装着―ウィン"を召喚!」
これで再び四霊使いが場に揃ったことになる。
今回はこの四人に久しぶりに大活躍してもらうとしよう。
「バトルだ!やられたらやり返す!倍返しだ!"憑依装着―エリア"で"ヴェルズ・ウロボロス"に攻撃!―――"解放"の効果で攻撃力はさらに800上昇!」
「…馬鹿な。いや、今回はお前が上だったってことか…!」
ついさっきまで攻撃力の関係から逃げ一辺倒だったエリアがウロボロス相手に大立ち回りを演じている。
どす黒い氷の槍を躱し、水圧で砕き、水流で逸らしながら巨大な水球を生成。
ウロボロスがぴったり浸かるくらいの大きさまで成長させたのちに水の槍で貫いて刺殺してしまった。
ウロボロスの受け止めきれなかった分の水の槍は零夜を襲いそのライフポイントを奪う。
零夜 LP8000→6900
「まだまだ!俺は"憑依装着―アウス"で"ヴェルズ・オピオン"を攻撃!この攻撃も"解放"の効果でアウスの攻撃力は800アップ!」
続いての攻撃手はアウス。
彼女もまたエリアに負けない様なド派手な方法でオピオンを圧殺した。
その凄惨さたるや「いちげき ひっさつ!」とでも例える方がいいだろう。
まさか地割れを起こしたうえで圧殺をするとは。
零夜 LP6900→5600
そして、零夜のフィールド上にモンスターは無く、そして霊使のフィールド上には攻撃力3050となっているヒータとウィン。
「行くぜダメ押し!まずはヒータでダイレクトアタック!」
阻むもののない豪炎が零夜の体を焼く。
これは向こうが始めた闇の決闘。
言ってしまえば―――自爆だ。
零夜 LP5600→2550
「ラスト!"憑依装着―ウィン"でとどめ!」
「これで―――」
炎から解放された零夜が最初に見たものは―――。
拳を握り締めて全力で腕を振りかぶる一人の少女の姿だった。
「―――終わりだァアアァァアァッ!」
ウィンの全力の殴打が零夜を吹き飛ばし、そして四道零夜はピクリとも動かなくなった。
零夜 LP2550→0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
四道零夜と四遊霊使の決闘。
その結果は空也の予想を覆して霊使が勝利した。
そのライフ差はなんと脅威の7100。
結果だけで見れば霊使の圧勝だろう。
それに加えてデュエル内容も常に霊使が有利な状況だった。
「どういう…ことだ…?」
一言で言ってしまえば訳が分からない。
何故、あそこまでカードパワーが低いデッキであそこまで戦えるのか分からない。
何故、デッキという紙束に命を預けられるのかが分からない。
何故、何故。
たくさんの疑問が常に冷静な空也の頭を満たす。
「…取り敢えず零夜は回収するか…。」
ここの所自身の予想が覆される事態が起きすぎている。
だから空也は自身に行えることを行おうと思ったのだった。
登場人物紹介
・四遊霊使
不意打ち男に負けるほど弱くはない。
ウロボロスを見て一瞬トリシューラかと期待してしまった。
・四道零夜
蓋を開けてみたら惨敗。
どうやらデッキを信じられなかった模様
・ウィン
珍しく感情的に全力殴打。
無論闇の決闘なので骨の一つはへし折るくらいの力は出した。
決着ゥゥゥゥッ!ではないです。
まだまだ霊使君には受難が襲い掛かります。
後…もう2,3話くらいですかね。
そしたらのほほんとした精霊探しに戻ります。
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア