「相棒」   作:ダンちゃん1号

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風は心を通わせた

ノエリアの叱咤から数時間後、ウィンダールはウィンが滞在している部屋の戸を叩いた。

しかしながら何一つ反応がない。

 

とうとう嫌われたか。

それとも元から嫌われてたのか。

それすらも分からない。

だが、今まで自分はウィンと向き合わなかった―――否、押し付けていたという事実。

その事実は消えて無くならないしそれはきっとずっと背負っていかなくてはならない罪なのだろう。

許されないにしろ、今までの過ちを懺悔し、ウィンとの関係修復に努めなければならない。

 

「……夜分遅くに娘の部屋の前で何コソコソしてるの…?」

「…ッ!?――――ウィンか…。」

 

気づけばウィンが後ろに立っていた。

余りにも急な事で流石のウィンダールも少しばかり驚いてしまった。

 

「…少し、話がしたい。時間は…いいか?」

「霊使を諦めろって話なら聞かないけど…それ以外なら。」

「ならちょうどいい。…ウィンにとって俺は、ガスタは一体どう見えていただろうか…?」

 

ウィンは余りにも思いがけない質問に行動が一瞬止まってしまった。

次にはおろおろし始め、挙句の果てにはリチュア製の連絡用鏡を通してエリアルに連絡を取ろうとする。

 

「…なんか物凄いクるものがあるな…?」

「父さん…もう一度聞くけど何か悪い何かに憑かれてないよね…?」

「…それはお前が良く分かっているだろう」

「まぁね…じゃあやっぱ父さん正気なんだ…」

 

ウィンはこちらを信じられないものを見るような目で見て来る。

その目は割と心にダメージを与えるので止めて欲しい。

 

「…で?なんでまたそんな話を?」

「お前とは余り家族として話したことは無かったな、と思ってな。」

 

ウィンは何を今更と言いかけたが思いとどまる。

いっそのこと、ここで嫌ってた事実をぶちまけてしまった方がいいのでは、と考えた。

あくまでガスタとの関係は霊使救出まで。

だったらここで何を言っても関係ない。

 

「―――じゃあ、言わせてもらうよ。正直言って私はこのガスタそのものが――――大っ嫌いだったの。」

「そうか…。」

 

その言葉は容赦なくウィンダールの胸を貫いた。

今まで自分が守ってきたものが大嫌いだと言われれば誰であれ多少は傷つく。

 

「でもね、勘違いしないで欲しいのは一人の人間としてみるなら―――またそれは違う話になるから。」

「あくまで今はガスタという部族()()()嫌いなのか…。」

「そうだね。確かに古い因習を残していくのは大事だけどさ。私にはこの里に居たときずっと何かに縛られているようで―――窮屈だった。」

 

ウィンダールはそんな事を微塵も思っていなかったが、ウィンにとっては違った。

これもまた衝撃の事実だ。

 

「私とは多分合わなかったんだろうね。何度でもこの窮屈さに慣れようとしたけど、やっぱり私には無理だった。多分、ガスタの里は私のいるべき場所じゃなかったんだろうな。カムイ君やリーズさんとは考え方が違ってるし、ウィンダや父さんはそもそもそんなに家に居なかったし…これ、窮屈ってより孤独だったのでは…?」

「うぐっ…」

 

まずはウィンの軽いジャブが顎先にクリーンヒット。

すでに崩れ落ちそうなウィンダールを知ってか知らずかウィンはガスタという部族が嫌いな理由をつらつらとあげていく。

 

「プチリュウを使い魔にしたらなんか奇異な目で見られるし、ガスタの巫女としての力はあるのにその力を引き出すための魔導書は貰えないし、なんならプチリュウがガスタの秘術と相性悪かったせいでどっかの誰かさんに新しい使い魔を探せと言われるし。」

「ぐはぁ…?」

 

これはキツイ。

顎先にジャブを喰らってよろけたところにきまる強烈なボディーブロー。

これが決闘(デュエル)だったら既にLPがゼロになっているに違いない。

だがこれは全て自分達の行いが招いたこと。

ウィンの吐き出す全てを受け止めるのが父親である自分の役目だ。

 

「後は、昔の規則に縛られ過ぎてなんにもできないし、無理矢理族長にしようとしてくるし…」

「…もういい。所々俺に対する文句もあったけど、お前が皆とは違う目線で物事を見ていることが分かった。」

「…何?ものの見方でも矯正するつもりなの?」

 

どうやらウィンは未だに不信感を拭えないらしい。

その事実はアッパーカットが如くウィンダールに多大なるダメージを与えた。

 

「そうじゃない。…俺は…ノエリアの言う通りお前に押し付けていたのかもしれんな…。」

「何を言って―――。」

「すまなかった。俺とお前は違う。そんな単純な事に気づけなくて。」

 

だがこれも全て自身がウィンに押し付けすぎた結果だったのだろう。

子供の意見を聞けずに、さらに自分の意見まで押し付けて―――果たしてそれは親が行う行為なのだろうか?

否。

ウィンダールは言い切れる。断じて違う、と。

だが今までの自分はどうだ?

族長の仕事による疲労を言い訳にして実の娘との対話を行わず、挙句の果てに自分の理想を押し付けた。

これでは親とは程遠い本物のモンスターではないか。

だからこの過ちは清算しなければならない。

親として、そして一人の人間として。

だからウィンダールは、ウィンに向かって頭を下げた。

 

「…はぁ。なんというか…うん…どうしよ…?」

 

ウィンからしてみればこの状況は相当に困惑した物だろう。

急に父親が頭を下げてきたのだから。

別にウィンはウィンダールの事は分かっていたし、ガスタから飛び出したのも全て自分の意志だ。

ウィンダールは自身の行動が家出させるほどに追い詰めてしまったと思っているようだが、それも違う。

ただ、ウィンはガスタという場所に()()()()()()()()()()()

ガスタの里にかける風のように自由に旅をしたいと思ったから飛び出した。

どうやらそこの所をこの父親は勘違いしているようだ。

そして、協力期間が霊使救出までなのも霊使の傍に長く居たいからという理由である。

古い因習は後世に伝えるべき。

だが、それは伝えられるものが伝えるべきものなのだと思う。

 

「あー…そうだね。まず顔を上げてよ、父さん。色々と勘違いしているようだから言っておくけど、家出したのって私の意志なんだよね。…リーズさんから聞いてない?」

「…なん…だと…?」

「色々言ったけどさ…私は結局ガスタの里の中で一生を終えたくなかっただけなんだよね。だから―――少なくとも、私が家出したのは父さんのせいじゃないよ。…別の事でいろいろと()()したいことはあるけどね?」

「四遊霊使の事か?」

「そうだよ。何を勘違いしたのか知らないけどさ…。」

 

その後はウィンにくどくどと説教され続けた。

娘に説教される親とはこれ如何に。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「なんか皆勘違いしていたようだから言わせてもらうけどさー。私は自分が出たいから家出したんだよ?―――外の世界を見て、確かめたくなったから。何も言わずに出てったのは悪かったけどさ。」

「せめて一言声掛けをしてくれたらな良かったのに。」

「当時ガスタの有力者は戦争に行ってましたが?」

 

そのウィンダールは改めてウィンと話をした。

互いの気持ちを確かめるように、ゆっくりと。

時間にして一時間もたってないような間だったが、それでもようやく互いの心に気づけた。

ようやく、親子の絆というべきものを取り戻せた気がした。

 

もし、自分がもっと早くウィンの気持ちに気づけていたら笑顔でガスタの里から出ていくウィンを見送れたのだろうか。

そんな事を考えても答えは出てこない。

だが、今は。

この割とフリーダムな自分の娘を守るとしよう。

そして、彼女の願いをかなえよう。

 

「…ウィン。これからもお前は自由でいい」

「うん…うん?」

 

唐突にそう切り出したウィンダールにウィンは小首を傾げた。

だが、ウィンダールはそれに構わず話を続ける。

 

「でも…お前がどこまで吹きぬける風であったとしてもガスタはお前の故郷だ。だから―――辛くなったらいつでも帰ってこい。」

「…うん。今まで帰らないでごめんね。父さん。」

 

月明かりが傾き始め、太陽はまた昇る。

ウィンにとっても、ウィンダールにとっても今日は良い一日になりそうであった。




登場人物

・ウィン
ぶっちゃけガスタという部族に縛られるのが嫌なだけであって家族に関してはそこまで悪感情が無かった人。ちなみにウィンダールを苦手に思ったのは霊使との金的があってから。
それが無かったらもう少しましだった。

・ウィンダール
ウィンと色々と話せた人。
ついでにウィンによって霊使への誤解を解いたため、今後は血涙とともに見守っていくことになるだろう。



今回の話はすごい難産でした。
やっぱ文章を書くのって難しいですね…

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