「マスター…。」
霊使が居なくなってから早一月が過ぎた。
どうやら今週末に何かあるようだが、今のヒータたちは平静を装うだけで精いっぱいだった。
どうやら自分達の中でも霊使が相当大きな支えになっていたらしい。
その事に気づいてしまえば何もかもがどうでもよくなってしまったかのように思えた。
現にヒータもまた無力感に苛まれている。
だからといって時間は止まってはくれないし過ごせるはずだった日々は霊使不在のままに過ぎ去っていく。
一生ここに帰ってこないのではないだろうか。
そんな不安がふと、ヒータの頭をよぎった。
自分たちは余りにも弱い。
大切な人一人守り切ることが出来なかったのだからその弱さは推して知るべしなんだろう。
もちろん、こんな所で諦めたくはない。
でもそもそもの話霊使が何処にいるのかさせ自分達には分からない。
だから、もうここに居る意味が無いように思えてきてしまった。
それと同時に霊使との濃密な三年間が溢れ出してくる。
その思いを読み解けば読み解くほど自分達は霊使の傍が居場所なのだと。
いつも通りの皆の笑顔があって。
いつも通りの皆で馬鹿な事をやって。
そしてそれを呆れたような、でも黙って傍にいてくれる人がいて。
それだけで心が満たされていた。
そう、自分は霊使と一緒に歩みたかった。
そんな簡単な事で自分の心は十分に温まった。
そうでなければ今、心に残るこの寒さが一体全体何なのかを説明することができない。
ヒータは―――否、霊使い達は皆、四遊霊使という人間に既に惹かれていたのだ。
四遊霊使という人間が一人いるだけで今までの自分とは違う者になっていく気がした。
四遊霊使という人間がいたからこそ、自分達は自分達であり続けることができた。
自分達は弱い。
これまで霊使以外の誰からも見向きされなかったのがいい証拠だ。
けれども。
今までの自分達からほんの少しでも変われた。
それも隣に他の誰でもない霊使のおかげだ。
自分達が今ここで霊使の事を考えていられるのもその霊使が居たからなのだ。
そうやってしまえばあとは簡単だ。
覚悟は既に完了した。
後は皆にも問うだけだ。
―――かつての霊使を救う事は今の霊使を倒す事。
確証も何もない。
けれど一度のしてしまえばどうとでもなる。
だから。
今ここで、ヒータは覚悟を決めた。
愛するものを失ってしまうかもしれないという可能性からも目を逸らさない事―――つまりは霊使が助けられないかもしれない最悪の可能性をじっと見つめるということを。
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「霊使…。」
克喜のつぶやきは星空に吸い込まれていった。
星たちは今も昔も変わらずに輝き続ける。
今、自分の親友は、四遊霊使は何をしているのだろうか。
何一つ分からない。
今、霊使が何処に居るのかも。
今、霊使が何を考えているのかも。
今、霊使がこの空を見上げているのかも。
何一つ分からない。
あの場所に一瞬でも早くついていれば霊使を助けられたかもしれない。
そうすればヒータたちがふさぎ込むこともなかったはずだ。
あの時を思い返せば思い返すほどやるせない気持ちと後悔の念で胸の中がいっぱいになってしまう。
「あれは…誰にも避けられない事でした。」
「ソレを認められないから後悔するんだ。―――ハイネ。」
「ええ。そうですね。でも、前に進むしかない。」
「そうだな。」
克喜は生きるという事は失敗の積み重ねだと聞いたことがある。
失敗というものは往々にして苦い物をだけを胸の中に残しがちだ。
それでも人はそこから学んで前へと進んでいく。
「…でもどうしても前に進むのが辛くなる時があるんだよ。」
「それが"人の弱さ"…。でも、弱さがあればある程人は強くなれる。」
「…どういうことだ。」
黒い衣装に身を包む、奈規模黒が特徴的な女性―――ハイネの言葉に克喜は思わず聞き返した。
「どもこうもないです。」
「…?」
「弱さの分だけ壁に当たり、弱さの分だけ成長できる。初めから完璧な人間なんてありえない。人間どこかしらに"弱さ"が存在する。それとどう向き合うかが強くなるために必要―――」
「なるほどなぁ。」
やはりこういう経験は叶わない。
どうやら彼女はまた自分にものの考え方をレクチャーしてくれたようだ。
「だから悩んでいる暇があったら前を向いて自分の弱さと向き合って。」
ハイネが敬語を崩した。
それは彼女にしては珍しく感情を露わにしているときのサインでもある。
「―――なあ、ハイネ、不安か?」
「それは、まあ。貴方の友人を失う事だけは避けなきゃって思っているわ。」
「でもインフェルニティに勝てるかどうかは分からないと。」
「あれは頭おかしいわ!なんなのよ!あれじゃあっちが満足してもこっちが全然満足できないわ!何が
同たらハイネの頭の中にはインフェルニティにやられた光景がくっきりと残っているようだ。
だが、それでもハイネは一言も「逃げ出したい」とは言わなかった。
結局の所、彼女も精霊なのだ。
ちょっと泣き虫な所はあるけれどそれでも鹿野はデュエルモンスターズの精霊。
そう何度も負けてやるつもりはない。
「勝とう、克喜。」
「だな。」
魔女と少年は星空を望む。
親友がきっと同じ空を見ていると信じて。
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「うん、できた…!」
ウィンは完全に霊媒師として覚醒した。
風の精霊と対話し、その身に精霊を降ろせるようになったウィン。
二匹の使い魔には精霊の暴走阻止のためのコントロールを担ってもらうつもりだ。
ただ、この力は他のモンスターの力も借りなければ行使できないのは明白だった。
「多分
「…なるほど…。」
墓地からの特殊召喚もそれなりに行う颯人の【SRガスタ】にとっては非常に有用な効果でもあった。
"墓穴の指名者"みたいなカードを使われてはどうしようもないがそれ以外ならきっと大丈夫だろう。
決戦前夜の空には煌々と輝いていた。
「霊使…今、行くから。絶対に助けてあげるから。」
ウィンは―――ガスタの一族の決意はとても強固なものだ。
例え、この作戦がいかなる結末に終わろうともきっとこの絆は崩れない。
だが。
だからこそ、霊使には一度見て欲しいと思う。
今のガスタの姿を。
四遊霊使という一人の人間を助けるためにたくさんのモノが動いている所を。
「これが今まで霊使が紡いできた思いなんだね。」
霊使を思う人間の心が数珠つなぎとなって霊使に届けられようとしている。
その声に霊使は答えるのかどうか。
それはまだ誰も知らない未来の話だ。
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四遊霊使は昏い意識の底で目を覚ました。
初めに体の主導権が無いことに驚く。
が、よくよく考えれば原因はこの体の中に入っている
本来の霊使とは、本来の四遊霊使は自分ではない。
自分は四遊霊使が追放された後にできた簒奪者の人格でしかないのだ。
だからこの体は本来の持ち主に返却された。
しかしながら向こうにもこちらの声は届いているようだ。
ならば、と思って話しかけてみることにする。
『おはよう、最悪の目覚めだけどな!』
『なぜ貴方が…本格的に消えたものだと思ってましたが。』
話しかけた声に返答が返って来た。
『どうだい?ちゃんと健康的なモノ食べてたから割と健康体だと思うんだけどな…。』
『無性に甘いものが欲しくなる時がありますけどね。』
『そりゃ俺の嗜好だな。』
どうやら"彼"は自分とコミュニケーションが取れるらしい。
『元の体に戻った気分はどうだい?』
『…さあ。貴方の体が本当に私の体なのか分かりませんし…。でも返すつもりはありませんよ?』
『わーったよ。』
それでも、もしかしたら。
彼もいつかは変わってくれるのだろうか。
いつか自分のやりたいことを見つけてくれるだろうか。
願わくは。
彼が四道のためではなく、彼自身のために生きて欲しい。
そんな事を思いながら霊使は"彼"の事を見守るのであった。
登場人物紹介
・霊使い一同
色々と手遅れな事に気づいた御一行。
・ウィン
霊媒師としての力をコントロールできるように
・四道霊使
我は汝…汝は我…みたいなことにはならない
・四遊霊使
スタンドではない。
すいません。
ゼノブレイド2を久々にやったらこんなことに…。
許してください!ゼノブレ2の短編二次創作書きますから!
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