月は巡り日はまた昇る。
ギリギリで霊媒師としての力をものにしたウィン達は克喜から聞いた「約束」の場所へ向かう。
「ここが…」
霊使に指定された場所。
そこは、あの日、あの時と全く同じ場所だった。
つまりそこは、霊使宅前。
「私達移動無しって本当ですかー!?」
「せっかくこう…、なんていうのかな…その。」
一つの決戦前だというのにこの霊使い達は何というか、気が抜けている。
いや、これは気負い過ぎていないという事か。
少なくとも今の彼女たちは彼女たちのマスターと一戦交えるのに何一つ―――といえば噓になるだろうがほとんど迷いは感じられない。
なんというか「振り切った」感じがする。
少なくとも戦いの途中で迷いから行動を躊躇う―――なんてことは起きえないだろう。
まぁ霊使い達からしてみれば気合十分で家から出たのに目と鼻の先がその場所だったらやる気が削がれるのも止む無し―――なのだろうか。
少なくともたった今合流したばかりの九条克喜はそんな事を考える余地もないのだが。
そうして霊使宅前に一人ずつ人が集まっていく。
約束の時間になった時、咲姫、奈楽、克喜、流星、水樹、結の六人がその場にいた。
さらにそれぞれが精霊を従えているので人の群れがいともたやすく出来上がったのだ。
「…皆さん…お揃いで…。」
そこに現れるげんなりとした顔をした四道霊使。
さすがの彼もここまでの大所帯だとは思ってもいなかったようだ。
この時点で相当に霊使についていく行く人物が多いことを窺い知れた。
こんなにも数多くの人間に思われている男は、今は、意識の底に居る。
『――こうやって眺めてみると壮観だなこりゃ。』
『友人が並んでいる姿を見て壮観というんですか…?』
というか意識の底で話しかけてくる。
なんでそんな芸当が出来るのかが非常に気になるところだがどうせ訳の分からないことを言い始めるのだろう。
そんな奇妙な同居人の事は取り敢えずおいておく。
そうでなければ精神衛生上余りよろしくない。
「さて、と。『会場』へとご案内しましょうか。」
「そいつはご苦労なこって。」
「人が多すぎるんですよね…。なんなんですか貴方達は…。」
「その体の持ち主の友人と―――」
「精霊と―――」
「恋人ですッ!」
最後の宣言を聞いて四道霊使は頭を抱えた。
なんなのだこの訳の分からない神妙不可思議で奇怪な輩たちは。
友人や精霊はまだ分かるが―――恋人というのが良く分からない。
しかもそう宣言したのが割と幼い緑髪の少女だというのだから目も当てられない。
『もしかして貴方―――ロリコンなんですか?』
『俺はウィンが好きなだけだ!決してロリコンではない!』
『でもハーレム形成しているじゃないですか?』
『俺は悪くねぇ!』
更に言うならば四遊霊使の精霊と宣言したほぼすべての精霊が少女ではないか。
さすがの四道霊使もドン引きというものである。
「どう反応するのが正しいんでしょうね…。この場合。」
「一応お前悪役なんだからさぁ…。」
どうやら四道霊使という人物は割と気性が穏やかな人物のようだった。
その分「父上」―――あの老人を妄信している部分もあるのだろうか。
自分の行動が世界を滅ぼすかもしれないと知った時彼は一体何を思うのだろうか。
「まぁいいでしょう。とりあえず―――この体の元の魂や人格、記憶はまだ残っている。それを賭けて勝負をしましょう―――とでもいえば良いのでしょうか?」
「だめだこの悪役…。早く何とかしないと…。」
そう言って頭を抱えるのは克喜とウィンダ。
ウィンに至っては根本的な所が何も変わっていないとどうすればいいか分かっていないレベルである。
四道霊使は心の底から悪に染まるには少し純粋過ぎたのかもしれない。
かつてここまで覇気のない相手など見たことが無かったのだから。
かつての四遊霊使と戦っていた時のキスキル達の方がまだ哀しい悪役としてふさわしかったまである。
「―――どうやら、彼はキスキルや霊使君が持ってた"シリアスブレイカー"を引き継いでいるらしいね。」
「ちょっと待って!?リィラ、それワタシがシリアス出来ないって言ってる!?」
「ええ。」
四道霊使も聞き耳を立ててみればこの体の致命的な弱点が耳に入って来た。
シリアスができない。
ならばどうすればいいのか。
自分はこの男と根本的に何ら変わりないのではないか。
『そりゃ、思考する頭が一緒だからなぁ。』
『そのせいで感情が生まれたと?』
それは困る。
自分は父の願いを叶えるために生まれたただの機械的な人格だ。
それなのに感情を持ってしまっては父の剣にも盾にもなれない。
(…最初の頃から見ても随分感情的になったもんだけどなー…。)
四遊霊使の意識が四道霊使の意識の底で目覚めたのはつい最近だ。
それでもこの体が経験したこと、発した言葉、感じた感情は四遊霊使にも共有される。
だから、四遊霊使はその男が最初は冷徹で機械的だったことも知っている。
それがここまで感情を得て、喋り、自分の考えで行動を起こしているのだ。
もう既に彼は彼の言う「盾」でも「剣」でもない。
「四道霊使」という一人の思考する人間なのだ。
『…。』
聡明な四道霊使の事だ。
既にその結論に至っていることだろう。
だからこそ、思考がまとまっていない。
それを認めるという事は自分の存在意義を自分自身で否定したというのと同義なのだから。
「…さて、勝負を始めましょうか。」
「…だな。」
その事に気づかないふりをして四道霊使は勝負を始める。
彼は一枚の紙きれを取り出すと、自身を含めて全員をその紙へと吸い込んだ。
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「ここは…。」
「ここは旧市街にある空き地―――になった場所ですよ。心当たりがあるのでは?」
紙から吐き出された先、そこは巨大な廃ビルに囲まれた―――空き地だった。
しかもこの場所には見覚えがある。
サニーとメテオニス、そしてベアルクティが暴れに暴れた場所だ。
「そっかー…ここ、更地になってタンダー」
「…私は何にも知らない…シラナイ…」
「なんで精神崩壊を起こしてるんですか…?」
訳が分からないを通り越して、会話が通じない。
四道霊使は目の前で繰り広げられる訳の分からないものに対して初めて恐怖を覚えた。
ギャグ時空の住人とはかくも恐ろしく空気を塗り替えてしまえるものだったのか、と。
この体に居るもう一人は常にこんなギャグ時空に住んでいたのかと。
というかこの人物がいるだけで本題に進めないまである。
もちろん暴れまわった当の本人たちは頭を抱えて後悔するばかり。
四道霊使が抱く思いなんて何一つ気づかない。
「っていうか人的被害出てたら洒落になってませんからね…。」
挙句の果てには敵対している相手に心配される始末。
もしかしたら、ツッコミ役とボケ役が交代しただけでこのメンバーが集まれば自然とこういう雰囲気になるのかもしれない。
「そうじゃなくて!今から勝負をするって話でしょう!?」
「そうだった!!」
「目的を忘れないでください!?」
そもそもこの場所は四道霊使が「勝負」をするときにおあつらえ向きだったから適当に選定しただけなのだ。
まさか勝負場所一つでこんなに動揺するなんて思いも寄らなかったのだ。
『…完全に俺の記憶読んで揺さぶりかけてるかと思ったゾ…。』
『そんな上等な事が出来るほどまだ
もちろんこれには意識の底の四遊霊使も大爆笑。
何というかいい加減この同居人もうるさくなってきた所だ。
と言ってもこうして意識が目覚めてしまった以上は今一度押さえつける術など知らないのだが。
「はぁ…。いいですか?これから皆さんには―――私の姉と兄と
だからもうその同居人の事は捨ておくしかない。
何故なら、話が進まないから。
完全に空気に呑まれる前にさっさとやるべきことはやっておきたいのだ。
『まぁ…克喜達なら余裕でしょ。何かウィンも新しい力に目覚めているみたいだし。…流石にこっちの声は届きそうにないけどなー…。』
『いい加減に黙ってください。いや、ほんとまじで。お願いします、静かにしてください。』
『答えはもちろんノゥだ!』
―――話が進まない。
こういう手合いは無視するに限るのだろう。
また一つ新しいことを学習した四道霊使は兄と姉がその場に現れたことを確認して―――一歩引いた。
『…真子には―――多分、流星が、零夜には克喜と颯人が対決。で―――俺とお前には―――零夜と戦わなかった方が来るなぁ。』
『…勝てるんですか?贔屓目に言って相当強いですよ?二人とも。』
『―――ああ。
言葉の端々から滲む彼らへの信頼感。
少なくともこの体の同居人が『勝つ』と言ったのだ。
ならばその言葉の通り彼らはここまでやってくるはずだ。
ならば迎え撃とう。
それがどのような結果になろうとも。
これより始まるのは少年の行く先を決める決闘。
光か闇か。
彼の進む先は一体どちらなのかはまだ誰も知らない、未来の話である。
だが、その未来はすぐそこに。
「俺が行くよ。」
一戦目―――四道真子対龍牙流星の決闘の幕が上がる―――。
登場人物紹介
・四道霊使
ギャグ担当の体のせいか思考が若干ギャグ寄りになってる。安雁を妄信しているがそれ以外は割と常識的な人間。
安雁の命令は絶対だが感情が完全に目覚めたら多分霊使と同じことになる人。
・四遊霊使
我らがシリアスブレイカー
・キスキル
我らがシリアスブレイカー
・その他の皆さん
大体がシリアスブレイカー持ち。
・星神奈楽
シリアスメーカー持ち。
・龍牙流星
一回戦目に躍り出る
皆さんはウィッチクラフトの新規カードをどう思いますか?
私から一言。
これ…今までのウィッチクラフトを根本的に見直す必要があるような気が…?
水樹君のデッキ強化
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