九条克喜は思いのほか早くにリベンジの機会がやってきたことに天啓を感じた。
それはある意味では個人的なものであったが、好都合なものに他ならない。
深い悪意を湛えたその目に
相手にとっては取るに足らない―――覚えられていない可能性もあるはずだ。
それでもあの時に味わった絶望は九条克喜という人間の中に強くくすぶり続けている。
自分が
それでもただリベンジするために牙を鋭く研いできた。
後はその牙を相手の喉元に突きつけるだけ。
きわめて単純で簡単な行為だ。
恐らく、今ならば四道霊使を斃せるだろう。
だが、自分では四遊霊使の心を助けることはできないだろうということも分かっている。
正確に言えばその役目は自分ではないというだけだが。
その役目を持つものはこの場にただ一人しかいない。
そう。
風霊使いウィンという精霊にしか彼の心は助けることはできない。
自分よりも霊使に近くて、霊使を一心に想い続けている彼女にしか助けることはできない。
簡単な理由だ。
彼の心を一番動かせるのは他の誰でもないウィンだけなのだから。
それを克喜は理解していた。
だから。
ここで彼女を阻むものを斃す。
それが九条克喜という人間の役目なのだ。
四遊霊使を取り戻した後で説教の一つでもしてやりたいところであるが、それもウィンの役目。
霊使に恩があるキスキル達には悪いが露払いが自分が請け負うべき役目なのだ。
格好つけだとかそんな深い意味はない。
ただの得手不得手の話なのだ。
親友を助けるためなら喜んで誰かの剣になろう。
それがこの戦いへと臨む克喜の思いだ。
友人を不当に傷つけられた怒りがある。
友人を救うために負けられない理由がある。
そして、ここで自分にしかできないことがある。
だから。
「今の俺は…!」
目の前の敵を打ち砕くことを至上の目的として。
相棒達と血の滲む様な努力をして。
今までの全てを後ろで待っている男のために。
全てをかける。
「負ける気がしねぇ!」
故に。
九条克喜に敗北の気は一切合切ない。
あるのはただ互いの
その姿を見て、彼の相棒たるウィッチクラフトも前へと並ぶ。
九条克喜にとって絶対に負けられないし、負ける気がしない決闘の幕が今にも上がろうとしていた。
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(ぎらついてんな…。)
正直にいって四道零夜は目の前の男の事を全く覚えていなかった。
当日に知らされた裏切りの怪盗達の始末を請け負った時に戦ったか、というくらいの淡い印象である。
それくらいあっさり倒してしまった相手なのだ。
雑魚をいちいち覚えているような頭をしていない。
だが今の目の前の男はどうだろうか。
その眼光は鋭く研ぎ澄まされ、あふれ出る闘争心は鋭く肌を刺してくる。
見違えたという言葉でも生温い。
まさに「豹変」というべきものだった。
かつての敗北が相当悔しかったのかどうかは分からないが、今の目の前の男は明らかに前とは違う。
その事を頭ではなく本能で理解した。
もしかしたらいつぞや戦った時の霊使よりも今の相手の方がよっぽど強いのかもしれない。
口角がめくれ上がる。
心臓がどくんどくんと早鐘を撃つ。
背筋に電流が走ったかのような衝撃を受ける。
全身が目の前の相手との全身全霊の
どのみち相手も自分も欲しい物は決闘でしか手に入れることができない。
ならば、もう。
今は計画の事は忘れてしまおう。
家の柵も何もかも忘れてしまおう。
そして相手が強者であるならば、それ以上の強さで蹂躙しよう。
闘争心の赴くままに。
「いいぜ…いいなぁ…。その目ぇ…!お前ぇ…名前はなんて言うんだ…?」
「九条克喜だ。…そういうアンタの名前はなんだ?」
「四道…零夜だぁ…。」
もう燃え滾る嗜虐心を抑えきれそうにない。
屈服させてその泣き顔を拝んでやりたい。
誰かが「デッキは剣、ディスクは盾」という言葉を放ったらしい。
が、今の零夜にとってはデッキも、ディスクも剣だ。
両の武器を一つにして、零夜は天へと、そして克喜へと吼えた。
「キヒヒヒッ…。お前…いいなぁ…!いいぜぇ!おっぱじめようじゃねぇかぁッ!九条克喜ィ!互いの全てをかけた決闘をよぉ!」
「望むところだ!四道零夜ァァァァァ!」
理性も何もかもをぶっ飛ばした二人が互いにデッキを構える。
その目に残る闘争心は互いの首元に狙いをつける。
勝つのは思いか、暴力か。
それは今から始まる決闘が示してくれる。
互いの信念がぶつかり合う、「ゲーム」、第二戦。
それが開戦の合図だった。
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四道空也は今頃「ゲーム」を繰り広げているであろう弟たちに思いを馳せていた。
「ふぅ…。まともな精神ならここに居るだけで発狂するだろうな…。」
煙草を口に加えて火をつける。
煙を味わう事もせず、火の付いた煙草を口から離した。
「相変わらず血の匂いにはなれん…邪魔だな、この
できることなら四道霊使の「ゲーム」に参加したかった。
そうすれば咲姫との決闘で自分に欠けている物を見つけられるだろうから。
だが現実はそうはいかない。
「親父、俺だ。
『そうか。誰にも見られていないだろうな…。』
その日は休日であるからか、その場所に人は多くはなかった。
それでも何かしらの用事で、その場所に人が居ることは確かだった。
だがその場所は異様な静けさに満ちていた。
まるで空也以外の人間など居ないかのように。
「ターゲットは居なかったが――。」
『それは後で良い。バレる前に戻ってくるがいい。』
「ああ。そうさせてもらう。―――それにしても親父。」
『なんだ?』
「ターゲットは協力者なんだろう?殺してしまっていいのか?」
『目指すところが違うからな。アレとは元から相容れんよ。』
その言葉に容赦がないと苦笑しながらその場を後にする。
その足元には夥しい量の死体と、血液があった。
足元が血に濡れていて少しばかり気持ち悪い。
「…全く。少しばかり靴が汚れてしまった。」
口ではそんな事を言いながらも空也はさも気にしていないようだった。
空也にとって決闘は本業ではない。
空也の本業は殺しなのだ。
「…俺達の事を知っている市庁舎の職員の処理を完了。これより帰投する。―――喜べ、お前達は偉大なる神の肥やしとなれたのだから。」
『ちゃんと施肥計画は守れよ?』
「分かっているさ。俺は快楽殺人者じゃないんでね。」
邪悪は常に蠢いている。
次にその毒牙にかかるのは果たして。
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「俺のターン!ドロー!」
現在克喜のターンで数えて2ターン目。
今までに二度、戦闘のやり取りがあった。
克喜は先行一ターン目からエースモンスターであるヴェールを召喚する事に成功。
零夜も負けじと若干事故り気味の手札からいきなり"レスキューラビット"から"ヴェルズ・ヘリオロープ"二体の特殊召喚につなげ、さらにそこから"ヴェルズ・オピオン"を展開。
オピオンの効果によって克喜はレベル5以上のモンスターを召喚、特殊召喚する際はヴェールの効果でオピオンの効果を無効にしなくてはならなくなった。
ヴェールの効果は手札の魔法カードの枚数分だけ攻撃力、守備力を1000上昇させる効果と、手札の魔法カード1枚をコストに相手フィールド上の全てのモンスター効果を無効にすることができる効果の二つである。
しかし、毎ターン自分の手札の魔法カードをコストにしなければレベル5以上のモンスターの特殊召喚を行えないというのは厳しい物がある。
おまけにウィッチクラフト永続魔法もない。
故に。
その時が来るまではヴェール一人に頑張ってもらうしかない。
一方の零夜もオピオンを失うのは大きな痛手となる。
つまり互いの一ターン目は膠着した状況だったというわけだ。
だが、このターンから状況は一気に動き出す。
九条克喜の持つ新たなる力が、否応にも、そうさせた。
「…俺は、"ウィッチクラフトマスター・ヴェール"の効果発動。手札の"ウィッチクラフト・コラボレーション"をコストにこのターン、相手フィールド上のモンスター効果全てを無効にする。」
この一手により、一時的に"オピオン"の効果は無効化された。
この瞬間、克喜にとっての好条件が全て整った。
「見せてやる…!俺は手札から――――」
このカードは今までのウィッチクラフトのカードとは一線を画すもの。
そしてそれは克喜とウィッチクラフトたちの絆の結晶。
「―――魔法カード"ウィッチクラフト・コンフュージョン"、発動!」
そのカードの名は"ウィッチクラフト・コン
新たな一歩を踏み出すウィッチクラフト達への克喜なりの贈り物である―――。
登場人物紹介
・九条克喜
使用デッキはウィッチクラフト。
自分の役目は露払いだと自覚している。
ウィッチクラフト達の新たな力を霊使とは別の形で引き出した。
・四道零夜
あの夜戦った人物をほぼ全員忘れていた模様。
わざわざ弱者の名前を覚える必要があるかという。
・四道空也
ド外道。
市庁舎の人間を皆殺しにした。
どうやら「協力者」の始末に来たらしい
・「協力者」
良く分からない人。
ただ四道の目的とは相容れない目的の持ち主らしい。
編集する→最終投稿日を確認する→三週間たってる→( ゚Д゚)ファッ!?
訳が分からないですがそろそろ投稿開始して一周年だそうです。
一周年記念の番外編(カオス)もそのうち投稿するのでもしよければそちらも。
これからも拙作をよろしくお願いします。
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