"ウィッチクラフト・コンフュージョン"。
この魔法の元となった力はヴェールではなく、ハイネの中にずっと眠っていたものだった。
そもそもの話であるがこの眠っていた力を呼び覚ます際に、ヴェールという精霊はその場にいなかった。
何故なら。
ヴェールはウィッチクラフトの激務に嫌気が差してウィッチクラフトを出奔したからである。
置手紙を残して雲隠れしたヴェール。
その行動に対してまずハイネは泣きそうになり、エーデルは額に青筋を浮かべながら拳を握り締め、その他のウィッチクラフト達はなんとなく察していたような反応をしていた。
とにもかくにも。
ウィッチクラフト達は長不在というこのとんでもない状況を乗り切ろうとハイネを代理の長とした。
その際、普段は「コラボレーション」というくらいには関りの薄かったはずのウィッチクラフト達が初めて真の意味で力を合わせた。
もちろん関係ないのはそれぞれの作業の時のみであって、それ以外―――オフの日などは一緒に旅行したりするくらいには仲は良かったが。
とにもかくにもウィッチクラフト達は行方不明であるヴェールを「療養中」ということにして、一時的な新体制で活動を再開させた。
活動を再開してヴェールが居なくとも依頼はひっきりなしにやってくる。もちろんそれぞれの得意な事にも、療養中のヴェールの仕事であるはずのガラス細工にも。
そしてヴェールが出奔してから数週間後、ふらりと彼女が帰ってくるまで続いた。
もちろん意気揚々とウィッチクラフトに帰還したヴェールに説教が降りかかったのは言うまでもないことだったが。
だからこそ、この力にヴェールは寄与しない。
別に力を借りようと思えば借りれるが、ヴェールはフィールド上にいるだけで十分な牽制となる。
相手からしてみれば下手に殴り掛かったら逆に大ダメージを喰らう事になりかねないのだから。
さらにいうならばこの力の本質は力を合わせる事―――つまりは力の融合だ。
協調性皆無なヴェールが融合召喚という力を御しきれるかどうかというならば否だろう。
故に。
「俺は―――手札の"ウィッチクラフト・ハイネ"と手札の"ウィッチクラフト・シュミッタ"の二体で―――
ヴェールを融合素材とせず、手札の二体のウィッチクラフトを融合させることで新たな力を導き出す。
それが克喜とウィッチクラフト達が得た新たな力。
あの日の混乱の再現にして新しい始まりを告げる姿。
その名は―――
「刮目せよ、魔女の工房の新たなる始まりを!紡いだ絆はいまここに!"ウィッチクラフト・バイスマスター"を召喚!」
ウィッチクラフト・バイスマスター。
今まさに生誕の瞬間である。
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「ウィッチクラフト・バイスマスター…だと?」
そのモンスターは以前に見たウィッチクラフト・ハイネというモンスターと酷似していた。
だが、何かが違う。
本当に何かが違うのだが、何が違うのかが分からない。
だが克喜は、「知らん、そんな事は俺の管轄外だ」と言わんばかりに克喜は能力を発動していく。
「俺は"ウィッチクラフト・コンフュージョン"の効果で墓地に落としたシュミッタの効果発動!墓地のこのカードを除外してデッキから"ウィッチクラフト・クリエイション"を墓地に!」
「各ウィッチクラフト魔法カードは各ターンのエンドフェイズに回収できる効果と…それぞれの固有効果の二者択一…。」
このターンに効果を使った"コンフュージョン"はともかく、先ほどヴェールの効果で墓地に行った"コラボレーション"、そしてたった今墓地に送られた"クリエイション"はどちらも手札に加わることになる。
「…それでも、耐える。」
「いいや。もうこのターンで終わりさ。お前に次のターンなんてない…!"ウィッチクラフト・バイスマスター"の効果発動!融合モンスター以外の魔法使い族モンスターの効果が発動した時に三つの効果から一つ選んで発動することができる!」
「何?」
そして"バイスマスター"の効果のトリガーは余りにも軽い条件だった。
そう、この"バイスマスター"はウィッチクラフトという存在そのものを新たな次元へと押し上げるモンスター。
「俺は手札・デッキからレベル6以下の"ウィッチクラフト"モンスターを特殊召喚する効果を選択!効果でデッキから"ウィッチクラフト・エーデル"、召喚!…まぁ、この効果はそれぞれ1ターンに一度、だけしか使えない。」
現れるのは宝石の嵌ったノギスを持ったモンスター。
攻撃力は2000と上級モンスターにしては少し低い気がする。
だが、攻撃力が低いモンスターは往々にして面倒くさい効果を持っている物だ。
特に上級モンスターや最上級モンスターにおいてその傾向が強い。
「俺は"ウィッチクラフト・エーデル"の効果を発動する!手札から魔法カード一枚を捨てて手札から"ウィッチクラフト"モンスターを特殊召喚する!俺は手札の"ウィッチクラフト・サボタージュ"を墓地に送り"ウィッチクラフトゴーレム・アルル"を特殊召喚!」
このターン、克喜は一気に五枚のカードを消費。これで手札はすっからかんになった。一ターン目のやり取りで墓地に送った"ウィッチクラフト"は墓地のウィッチクラフト魔法カードと自身を除外することでそのカードの発動時の効果をコピーすることができる"ジェニー"であった。
つまるところ、克喜の手札はゼロ枚。ものの見事に蒸発したわけだ。
「…手札0。これでもう後続は呼べねぇなァ?」
「…後続…か。面白い事を言うなぁ…。忘れちゃいないか…?"バイスマスター"の効果を…!」
「何を言ってんだ…?既に―――いや、おい、それぞれって言ってたよな―――まさか―――!」
「そのまさかに決まってんだろ!このドグサレ野郎がぁっ!"バイスマスター"の効果で墓地の"ウィッチクラフト・コンフュージョン"を回収!」
が、手札が割れているとはいえウィッチクラフト魔法カードが克喜への手札に戻った。
これは自分にとって非常に不味い展開だ。
零夜にはこの状況を凌げるカードが手元にあるのだが、その他もろもろの兼ね合いでデッキに投入できたのはたった一枚だけ。猶予期間わずか一ターンは慈悲が無い。
「バトルだ!"ウィッチクラフトゴーレム・アルル"で"ヴェルズ・オピオン"を攻撃!お前の場に伏せカードはないからそのままダメージステップだ!"ヴェール"の効果で手札の魔法カードを任意の枚数見せる。俺の手札には"コンフュージョン"が一枚だけあるから攻撃力が1000上昇してアルルの攻撃力は3800だ!」
ウィッチクラフトゴーレム・アルル ATK2800→3800
ヴェールの能力でバフをかけられたゴーレムはいとも容易くオピオンの体を粉砕した。
オピオンが受け止めきれなかった分の衝撃がLPダメージとして零夜自身にも伝わる。
「ぐううぅぅっ…!」
零夜LP8000→6750
「続けて"ウィッチクラフト・バイスマスター"でプレイヤーにダイレクトアタック!"ユニオン・ドレーピング"!」
「そうは問屋が卸さねぇぜ!俺は"速攻のかかし"を手札から墓地へ捨ててこのバトルフェイズを強制終了するぜ!」
「くそっ…!仕留めそこなった!」
克喜 LP8000
フィールド ウィッチクラフトマスター・ヴェール
ウィッチクラフト・バイスマスター
ウィッチクラフトゴーレム・アルル
ウィッチクラフト・エーデル
その後、克喜は墓地の"コラボレーション"、"クリエイション"、"サボタージュ"を回収。
これで手札は全て何か判明しているとはいえ4枚に。
この状態で克喜はターンエンドを宣言。
そうして零夜にターンが移る。
「俺のターン…ドロー!」
「相手スタンバイフェイズに"ウィッチクラフトゴーレム・アルル"は手札に戻る。」
勝手の邪魔ものが一人消え去った。
何かよくわからないがこれはチャンスなのではないだろうか。
零夜は今引いたカードを再確認すると一気に盤面を動かそうとする。
「俺は…"死者蘇生"を発動!墓地から"ヴェルズ・オピオン"を特殊召喚だァ!さらに速攻魔法"エクシーズ・インポート"を発動!俺は"ウィッチクラフト・エーデル"を対象に―――」
「かかったなアホが!自分フィールド上の魔法使い族モンスターが対象に取られたときに自分の墓地の魔法カード一枚か相手フィールド上のカード一枚を対象にして発動できる!」
「…何?そんなカードは…!いや…まさか…!?」
しかしながらその動きは一瞬でストップをかけられてしまう。
ストップをかけたのは他の誰でもない九条克喜だった。
「てめぇの…!さっき手札に戻したカードはぁ…!
「その通りだ!俺は"ヴェルズ・オピオン"を対象としてこの効果を発動!"ウィッチクラフトゴーレム・アルル"を特殊召喚して"ヴェルズ・オピオン"を手札へ!」
「…オピオンは
これは完全にやられた。
手札に戻るのは毎ターン確実にこの効果を発動させるため。
控えめに言ってぶっ壊れもいいところである。
おかげで全ての考えがぶち壊された。
「ふっざけんなぁぁぁぁああぁぁぁあああ!EXデッキに戻るんじゃねぇかよぉぉ!」
久々に頭に血が上る感覚を味わった。
頭が重くなって、気持ち悪い。
怒りや、嫉妬とかそういうものではないどす黒い感情が湧く。
それは世間一般では「殺意」と呼ばれる感情が克喜に向けられる。
「なぁんでどいつもこいつも俺に黙って殺されねぇんだよ!俺はお前みたいな闘争心にあふれた奴の心をへし折るのが
「…醜いですね…。」
「ああ、あれはもう決闘者ですらない。」
こうなった原因どもがうるさい。
確かに計画の事も考える必要もあったが今は、それよりもさっさと目の前の不快なナニカを消し去りたい。
「…ぁはっはっ…霊使如きに負けてこっちのフラストレーションは溜まりに溜まってたってのによォ…!」
だからこの決闘は自分の負けで良い。
「あぁもう我慢ならねぇ…!ぶっ潰す!」
「…おい、デュエル続けろよ。」
「ターンエンドだ!これで満足しやがれ!」
これでターンエンドを宣言する。
一刻も早くあの目障りな奴から視線を外したかった。
「俺のターン。ドロー。」
狙うは最後の一撃。
既に自分のLPよりも相手モンスターの攻撃力の合計の方が高い。
ならば最後の一撃と同時にあのナニカを纏めて殺す。
別に計画はここに居る精霊でなくともいいわけだし、多少計画に遅れは出るが必要経費というモノだ。
「最後だ。"ウィッチクラフト・バイスマスター"でダイレクトアタック。」
その瞬間物凄い衝撃が自身を襲った。
それでもそれなりに得物の扱いには慣れている。
「BANG…!」
その言葉とともにカチリとした感触が人差指に伝わって、そして零夜の視界は黒く染め上げられた。
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「警戒しといて正解…でしたね。」
「うん。勝てないと悟ってから殺そうとするまでのタイムラグが短すぎる…。」
ぼそりとヴェールとバイスマスター…ハイネがつぶやく。
放たれた一発の銃弾は結晶とハイネの主武装の一つである幾重にも織り込まれた強靭な布によって容易く止められていた。
「…さてと、
シュミッタはおっかなびっくりといった感じで気絶した零夜をつついている。
普段は人の事はきちんと名前で呼ぶのに
決闘の途中で銃を持ち出すなどあってはならない事なのでこの反応は当然なのだが。
とりあえずキスキル達の予備のワイヤーで雁字搦めに縛って犬神家状態にしておくことにした。
そして克喜は二人を―――ウィンと颯人を見る。
「で、本題だ。―――颯人、ウィン。出番だぞ。」
「…勝つぞ。二人とも。」
ちょっとしたトラブルもあったが無事に霊使を取り戻せる算段は出来た。
「ようやくだ。ようやく霊使を助けてあげられる。」
「アタシの妹を泣かせたんだ。覚悟はできてるよねぇ?霊使君?」
後ろに般若が見えそうなウィンダと今にも消え入りそうな悲しい笑顔を浮かべたウィン。
霊使い達は全員霊使を助けたいと願った。
それと同時にそれができるのが一人しかいないという事も分かっていた。
(ウィン―――ボク達の全てを霊使にぶつけてこい。)
ヒータ達にはこの決闘がどのような結果を迎えるか分からない。
だから、ただ見守ろうと決心した。
『ウィン。俺はここに居る。だから―――待ってる。』
最早言葉は不要。
ここまで来た小田から互いに全力を尽くすのみ。
朱年の未来を賭けた最後の決闘が今、幕を開けようとしていた。
登場人物紹介
・九条克喜
リベンジ成功した人。
実は命の危機だったやべーやつ。
・四道零夜
ド外道。
というわけであと一戦ですね。
四道霊使が使うデッキは満族ことインフェルニティです。
というわけで、颯人【■■■】V.S 霊使【インフェルニティ】が次回の対決内容です。
後アンケートの結果にのっとってこのままタイトルは行くのであしからず。
それでは次回をお楽しみに!
水樹君のデッキ強化
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