「メイド長はどこ!?」
「どこにもいません!」
あわただしい雰囲気が少女たちの間に駆け巡る。
この場所を取り仕切るメイドの長が行方不明になったという事実が彼女たちの不安を強く煽っていた。
厳しくもやることをきちんとこなし、不埒な輩には毅然とした態度で立ち向かうその姿は彼女たちの憧れの的だった。
だからこそ、この場に居る誰もが感じていた。
―――ありえない、と。
自分達の手本になるように常に心掛けていた彼女が仕事を放りだすなど。
しかも未だに教育の途中。
普通ならば何かがあったと考えるに違いない。
事実彼女たちはそうだった。
「無事でいてください…。ハスキーさん…。」
その声は彼女に届いただろうか。
今は尊敬する人が無事であることを祈るばかりである。
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メイドラの一日は早朝から始まる。
霊使達と共に朝餉を作り、霊使達と一緒に朝餉を取る。
その後は霊使達と分担して掃除洗濯を行い、買い出しに出る。
昼餉は買い出しによって手に入れた食料で作る。
そして洗濯物を取り込んで、夕餉を拵えて眠りにつく。
基本的に一日はこれの繰り返しだ。
だが、それでいいのだ。
何故かそれが自分の本分であるような気がしたから。
なんというか今の居場所がとても心地よく感じるのだ。
だからメイドラは自分がどんな扱いを受けても我慢するつもりだったし、それがこの世界の歪みなのだと思う事にした。
それがこの家に来てすぐの考えだった。
実際は違ったが。
彼らはメイドラだけに負担を背負わせることはしなかった。
なんならメイドラが起きる頃には既に朝の準備が始まっているのだ。
基本的に彼らは自分だけに負担を背負わせることが無かった。
だから、というかなんというか。
メイドラはこのままここに居るのもいいかなぁとか考え始めていた。
(いやいや待て待て、待ちなさい、私!…そもそもなんで記憶喪失なんかになったのでしょうか…。)
霊使が言うには自分は空から落ちてきたらしい。
そもそもそこからおかしいのだが。
でも、それが自分の正体に繋がるなんて考えたくもない。
「誰か知り合いでもいればいいんですけどね…。」
その呟きは誰にも届くことなく消えていくのであった。
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「おーおー。すごく集まってーら。」
「いや、呼んだのお前だろうが!」
「そうだったそうだった。」
メイドラという記憶喪失の女性について何か情報を持っていないか、近所のコンビニで駄弁ることにした霊使と友人たち。
内心メイドラの素性を突き止めたいという気持ちよりも女性ばっかの空間から逃げたい気持ちもあったが。
「兄さんはまーた精霊を侍って。」
「咲姫、その言い方はアカン。」
「私という人がいながら…!」
「ないわー…。」
メイドラの事を話した時点で既に精霊を含む女性陣から引かれている。
確かに同じ屋根の下に男性と女性がいるのだ。
もちろん天地神明に誓ってメイドラに手を出していないが。
というかメイドラに手を出したらウィンに殺される。
「まぁ、メイドラさんに手を出してるかどうかはすぐ分かるよ。」
「ウィンとの関係が劣悪になってないみたいだしね。姉としては安心安心。」
ウィンダや奈楽の太鼓判を押されて一線を越えていないことを確認する特捜部の面々。
「俺そんなに節操なしに思われてる?」
「お前の胸に手を当ててよーく考えてみろ…?」
いや、そんなこと言われても、とよくよく考えてみる。
しかし一線を越えた相手は将来を誓い合ったウィンだけだしそもそもそれもあっちから襲ってきたようなものだし、と首を傾ける。
克喜達は目の前の男の鈍感っぷりに思わず叫ばずにはいられなかった。
「お前が精霊たらしだからだろうがぁーッ!」
「なんでさ。」
颯人はおもわずパイルドライバーを霊使に仕掛けてしまった。
が、それは霊使が自分の精霊たらしっぷりに気づいていない制裁としては妥当なような物に思う。
「そもそも僕が考えるに霊使君は精霊がらみの事件に巻き込まれ過ぎなんだよねぇ。」
「水樹ぃ…。俺、呪われていないよな…?」
「当然の如く呪われていないね。」
「え、じゃああの巻き込まれ体質は天然モノってこと?ひゅーっ!やるねぇ、霊使君。」
「流星、里ロックー。」
「ああ!?それだけはやめて!」
グダグダとした会話は続き、一向に本題に入る気がしない。
それを見かねたエリアルが手を叩いて話をの軌道を修正しにかかった。
「はいはい、とりあえずメイドラさんの情報を考えよう。あ、ボクも水樹も知らないからそこは悪しからず。」
「ワタシもメイドラさんの写真を見て思い当たる節はないな。」
ウィンダやエリアル、その他多くの面々は彼女の事を知らないらしい。
だが、一組。
彼女の事を知ってそうな雰囲気を持つ存在が居た。
「…この人ってたしか…"ドラゴンメイド"の…。」
「知ってるんだ、クーリア。」
「ええ、咲姫と出会う前にね。彼女達が居る館に興行で顔を出したことがあって。名前は確か―――"ハスキー"、だったかしら。」
「…そうなんだ。ありがとう。」
思わぬ所からメイドラの素性を掴んだ霊使。
こういう時は人海戦術が有効だということを霊使はこのやり取りで学んでいた。
「よし、じゃあさっそく報告しに―――」
その言葉を遮るように巨大な影が舞い降りる。
その陰の正体は―――
「…メイド…ハスキーさん!?」
「私の名前が分かったんですか!?」
「知り合いが名前を知ってましたぁ!」
そう叫びながらメイドラ―――もといハスキーの元に駆け寄る霊使。
そしてハスキーの顔に口を近づけると小さな声でこう指摘した。
「いきなりドラゴンの姿になるのはやめようね?」
「移動はこちらの方が速いのですが…。」
「いや、ほら。事情を知っている人たち以外からは怪しまれちゃうからさ…。」
「…ああ。ってそうじゃなくて!」
ちらりと後ろを振り返りながらハスキーは小さく息を吐く
そして、ハスキーは慌てた様子で現状を告げた。
「何かよくわからないですけど同類の方たちが大量に家に…!」
「ファッ!?」
「行きましょう!早く!」
むんずと霊使の体を掴むとそのまま高速で飛び去って行くハスキー。
目の前で繰り広げられた寸劇を前に呆然としていた霊使の友人たちだったが―――。
「あ、霊使君お代を払ってない!」
「…これは、トイチかねぇ…。」
霊使が故意ではないとはいえ、代金を払ってないことに気づき、後でこの話をネタにして飯でも奢らせるかという話に至った。
そんな事を知る由もない霊使は後日、彼ら、彼女らの大食漢っぷりに戦慄することになるがそれはまた別の話である。
登場人物紹介
・メイドラさん
登場二話にして本名が明かされた人。
記憶喪失であり、なんで自分がここに居るのかを理解していない。
以降、本編ではハスキー表記になります
・クーリア
まあ多分興行とかやっているよねって話。
・霊使
お代を払っていないことに後から気づいた。
その付けは後々支払う事になる。
今回は少し短めですが許してください、何でもしますから!(何でもするとは言ってない)
水樹君のデッキ強化
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ネクロス
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リチュア