メイドラ―――もといハスキーに誘拐同然のように連れられてつかの間の遊覧飛行を楽しむ霊使。
空に居たのはほんの数十秒程度。
家から件のファミレスまでは歩いて30分程度のものだったのでおよそ40倍ほどのスピードが出ていたことになる。
「ちょっ…ハスキーさ…はや…。」
「ウィンさんも来ていらしたんですね!?」
「せめて一言…欲しかった、ですけどね!」
「アッハハハ!ハッエー!」
「霊使!?ちょっと気を確かに!?」
ウィンはランリュウの背に乗っての高速飛行に慣れているが霊使はそうではない。
そもそもランリュウの背中に誰かを乗せる時は大きくスピードを落としていた。
背に乗る人に負担がかからない様に。
まさかそれが今となって仇となるとは思ってもいなかった。
「アッハハハハハ!」
「霊使さん、気をしっかりー!?」
ハスキーの悲鳴にも似た思いは霊使に届くことなく、地上に降りるまでの数秒間、霊使は虚ろな目をしたまま笑い続けるのであった。
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「ここら辺にハスキーさんがいるらしいけど…。」
「見かけた御老人曰く『少女を侍らせた青年』が連れ去ったらしいですが…。」
「なんか凄い胡散臭かったデスよね…。」
「それでも情報が情報でしょうパルラ?」
時は少し遡って霊使宅前。
インターホンを前にして複数人の人影が様子を伺っていた。
それを見ていたハスキーは彼女たちに自分と同じ特徴があることを認める。
その事から同類と察したハスキーは何か嫌な予感がして、大急ぎで霊使を迎えに向かった。
(早く、なりたい。)
そう思えばまるで背に翼が生えたかのように空を飛べた。
より早く、より早く。
そう思うたびに体が変化していった。
それでもハスキーはそれに気づくことはなかった。
何故なら彼女は本当に空を飛んでいたから。
この世界が広く見えて、そして思い出したことがあるから。
(
そして、こういうふうに空を飛んでいると、何故自分がこの世界に居るのかが鮮明になっていく。
そのせいか。
霊使の元にたどり着く時には喪失していた記憶を取り戻していた。
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「つ…ついた…。」
たった数十秒の遊覧飛行で霊使は息も絶え絶えになった。
いきなりの高速飛行はいくらなんでも心臓に悪い。
あと、口の中が乾燥して少しばかり気持ちが悪い。
「そんなに急いでどうしたのさ…メイド―――ハスキーさん。」
「私の記憶に関わることですから。」
「もしかして記憶、取り戻してます?」
「その話は追々。今は私の部下をどうにかしないといけません。」
暗い影が霊使達を覆う。
霊使いの目の前には何と四体のドラゴンが居た。
この竜たちがハスキーの言う「同類」なのだろう。
「…なんでここにハスキーさんが?あの御老人の言葉は本当だったと?」
「ちょいちょいちょい!?なんか殺意向けられてませんか!?」
「…どうやら私のいないうちに何かされたようですね。」
しかし、まあ。
そのドラゴンたちはべったりとまとわりつくような殺意を霊使達に向けていた。
猛烈に嫌な予感がする霊使はウィンの方を見る。
真っ青になったその顔を見てウィンも何となく察したのかため息を一つ吐いた。
「…嫌な予感…。」
「奇遇だね。私も物凄く嫌な予感がするよ…。」
嫌な予感がするのはウィンも同じだった。というか―――
(ねー…、これ完璧にやらかしているよね?)
(おい、霊使、どうするんだ。このままじゃ全滅だぞ!?)
(でも、ライナ達じゃ一瞬でやられそうだしなー…。)
(お、落ち着くんだ。エリア、ダルク、ライナ…。)
今は実体化させていない精霊たちでさえ何となく詰んでいることを察している。
ここまでくると、もう、笑いしか出てこないわけで。
「ハスキーさん。…ごめん。」
「…霊使さん?まさか…。」
「一旦暴れられるところまで逃げるんだよォ!」
「………ん?」
そしてとうとう霊使いはその竜に背中を向けて逃げ出した。
「やっぱりやましい事があったか!」
「なんか勘違いしていらっしゃるゥ!?」
そもそも疑惑を解く気があるのなら背を向けずに事の次第を語ればいいだけである。
それなのに背を向けて逃げたら勘違いも止む無し。これは霊使が説得しようとしなかったが故の自業自得。
だから五体のドラゴンに追われることになったのも残念ながら当然なのであった。
「ちょっと、私の話を聞き―――」
「すみません、お話はあとで!今はこのクサレ脳味噌をどうにかしないといけませんので!」
ちなみにだがハスキーは当事者なのにその場に置いてきぼりになってしまった。
余りの展開の速さにさすがのメイド長も呆ける事しかできない。
「意味が分からないわ…。」
既に行方の分からなくなってしまった同僚とこの家の主に向けて。
彼女がつぶやいた言葉が届いたかどうかは定かではない。
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それからというもの霊使は逃げて逃げて逃げまくった。
が、とうとう瓦礫に躓いて盛大にすっこけてしまう。
「観念してハスキーさんを解放しなさい!」
「解放って…なんか吹き込まれてないか!?」
明らかな殺意を持って振るわれた緑のドラゴンの爪を躱し―――
「だったらその精霊だとかなんとかいう術を解除しなさい!」
「精霊術ですぅー!そもそも霊使は霊術使えませんー!」
ウィンに向かって放たれた炎のブレスはウィンが横っ飛びすることで着弾地点から逃れ―――
「どのみちマッチポンプでしょうがッ!」
「言っている意味が分からないな!?」
桃色のドラゴンの尻尾の打ち付けを鉄パイプを支えにして跳躍することで躱した。
だが、こうちょこまかと逃げていると相手も点で制圧するのではなく面で制圧しにかかってくる。
そのまま手をこまねいていた結果、霊使は青いドラゴンの体当たりを躱せずゴム毬のように弾き飛ばされてしまう。
が、彼は衝撃を後ろに飛ぶことで和らげていた。
最早人間という範疇を超え始めているのではないだろうか。
しかも偶然か必然か、霊使は青いドラゴンの足元に潜り込んだ。
そこは死角になっていて、本人どころかそのほかの竜も全く気づけない。
「何処行った!?」
「…全員飛んで!」
だが、ドラゴンたちは見失ったのなら人海戦術で見つけるだけ、と言わんばかりに空を飛び始める。
そうするとすぐに霊使の居場所はばれるわけで。
「見つけたァ!」
「どうしてだよォォォォ!」
再び始まる阿鼻叫喚のドラゴンたちによるリンチ。
おそしてそれを躱し続ける霊使。
二つの陣営のやり取りは空が茜色に染まるまで続いたのであった。
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一方その頃克喜達は―――
「えーと?つまりハスキーさんは本当に空から降って来ていて?」
「で、それを俺達が救助したと。」
チェイムという名のメイドの女性からハスキーの素性を聞き、そして今までの経緯を話していた。
話を聞くに「老人」がハスキーの居場所を知っていると言って、更にいなくなったのは「四遊霊使」という外道な男だと聞かされたという。
その男は少女達を侍らせ、無理矢理使役しているんだとか。
そういう話を聞かされたという。
まぁたしかに少女に囲まれているという点を間違ってはいないがそれ以外の所の改竄が酷いというレベルではない。という事を克喜はチェイムに伝えた。チェイムが「四遊霊使」の友人から聞いた人物像とぞの老人から聞いた「四遊霊使」の人物像は大きくかけ離れている。しかも話を聞くに友人とは相当親しい仲であることがわかる。
もしやこれは、と最悪の可能性がチェイムの頭によぎった。
「これ、間接的に彼の始末をさせられてるってことじゃないですか!?」
「…まーた精霊がらみの事件に巻き込まれているんじゃねーかアイツゥゥゥゥ!」
「…よくある事なんですか?」
「アイツ今までで二回死にかけてる。」
「ええ…?」
おもわず困惑した声を上げるチェイムだが、克喜はその「ええ…?」を発する気持ちが痛いほどに理解できてしまう。誰だってそうなるレベルで精霊がらみの事件に巻き込まれているのだから。
その内二回も死にかけていてはもしかしたら今回はと思うのも普通だ。
「…取り敢えず!急いで同僚を止めに行きましょう!」
「あ、やっぱり殺しに来てんのね!?」
「そりゃああんな話
そんなこんなで巻き込まれ癖のある友人の元へ急いで向かう克喜達。
彼らの目の前に色々な意味で衝撃的な光景が映るのはほんの少し先の事である。
登場人物紹介
・四遊霊使
またリアルファイトやってるよこの人…。
・ウィン
デュエルモンスターズの精霊なのにリアルファイトばっかりやってる人。
・霊使い御一行
家に帰ると勝手に実体化する。
・ドラゴンメイド
野良の精霊。
霊使を殺すためだけにこの世界にやってきた。
聞いた話だけによる独断なのでチェイムとハスキーを除く各ドラゴンメイドの第一印象は「散滅すべし。」
補足説明:野良の精霊
カードの精霊であるがマスターが居ない分勝手に実体化して甚大な被害を残すこともあるやべーやつら。
異世界から目的を持ってやってくる者もいればこちらの世界に流れ着いた者たちもいる。
ちなみにマスターが居ないためそんなにこっちの世界に居ることはできない。
だからマスカレーナみたいな存在は頻繁に二つの世界を行き来している。
例外は元々が神と同格のクルヌギアスのみ。
新型コロナワクチンの副作用で頭が回らないので初投稿です
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