「相棒」   作:ダンちゃん1号

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四遊さんちとドラゴンメイド

「…で、なにか言い残すことはありますか?」

「ありません。今回の件は全て私の落ち度です。」

 

あの後、ティルルはこってりと絞られた。

簡単に敵の甘言に乗せられてしまった事、そして、周りを見ないで突っ込んで重大な過ちを犯しそうになったことについて、だ。

その時ついでにハスキーの記憶が戻っていたことも明かされ、誤解も解かれ、無事に大団円となる運びだった。

ちなみにどのようにして怒られたか。

それを言ってしまってはティルル達ドラゴンメイドの尊厳に関わるために、霊使達は口をつぐむことを決意した。

 

「…本来ならば、大きな過ちを犯しそうになった貴方にはそれ相応の罰が与えられるべきですが…。」

「なるべくことは大きくしたくありません。というかもう精霊がらみで二度死にかけているので、より大きな存在に目を付けられても厄介ですから。」

「ということなので、しばらくは反省するように。」

 

ちなみに郷に入っては郷に従えという言葉もあるが、それを言うと確実にティルル達ドラゴンメイドは墓地―――もといブタ箱送りになるという事は黙っている。

そんな事を言ってしまったらハスキーは心労でぶっ倒れるだろうし、ティルルは取り乱して大惨事間違いなしだ。

 

「ああ、それと。まだ恩を返し終わっていないのでしばらくはチェイムを中心として向こうを回してください。」

「え?戻らないんですか?」

「そもそも今回の件は私が居ればどうにかなった―――というモノではありません。それに、言ったでしょう。まだ私は貴方方に恩を返しきれてはいないのです。」

「別にいいのに…。」

「それに今回の件の罰でもありますから。」

「じゃあしゃあなしですね!」

 

さらりと居座る宣言をしたハスキーだが、今更一人二人増えたところで変わらない。

既にエンゲル係数が限界を迎えているのだが、それは黙っておくことにした。

というか今現在マスカレーナが株式投資で備蓄が増やせないか何とか画策しているレベルであるのだが。

 

「というわけで、一旦この子たちを送り届けてきます。」

「あ、うん。」

 

二つ返事で一旦了承した霊使だったが―――ここで一つ重要な事実に気づく。

 

(…なぁ、ウィン。俺、これもしかしてチャンスをみすみす見逃した?)

(…そうじゃん!霊使が()使()()()()()契約結ばないと死ぬじゃん!)

(多分これアレだよね。彼女達6属性揃ってるよね!?)

(…でもこれ弱みを握って無理矢理使い魔としての契約を握るタイプの奴だよね。)

(糞野郎じゃねぇか!)

 

このままでは魂が形をとどめずに崩壊してしまう事をすっかり忘れていたのだ。

今はウィン達霊使いからのエネルギーの逆流により、何とか命を繋ぎ止めているが、一度繋がってしまえば力は微量ながら常に霊使に逆流する。

それに霊使側がそれに耐えきれずに命を落としてしまうというわけだ。

それが訪れるのは前例がないせいでいつなのかは分からないが、少なくとも常人よりもはるかに早い段階で寿命を迎えてしまうのは確かだ。

だから、それを抑えるために相反する属性の力で以てその微量な逆流のエネルギーを打ち消す。

この理論が本当に正しいのかは分からない。

克喜達に看取られながら逝くんじゃなかろうか。

そんな嫌なイメージが霊使の頭によぎることはよくある事だ。

それでも今はそれを唯一の解決法と信じて突き進むしかない。

そんな折に、千才一隅のチャンスが回って来た。

今、霊使本人と契約している精霊はクルヌギアスとマスカレーナ。

クルヌギアスは神だったころの力を失っており、今は光属性のモンスターになっている。

そこれに加えてここであと一人くらい契約できれば物凄く楽になる。

 

だが、ここでその話を切り出したら、今回の件を盾に無理矢理使い魔にする形になるのではないかと霊使は感じた。

基本的に霊使は使い魔や精霊とはきちんとした契約を結びたい人間だ。

約一名誤解から殺しにかかって来た精霊もいたが、きちんと話をして、納得してくれたら契約するという形を取りたいのだ。

その事をウィンに話したら―――

 

「霊使らしいね。」

 

そう苦笑された。

ウィン曰く、基本的に使い魔というのは人間でいうペットに近しい存在であるらしい。

まあ、確かにプチリュウやきつね火、デーモン・ビーバーはペットっぽく見えなくもないが。

とにもかくにもこういう事があったのだ。

そういうわけで、結局。

精霊云々はハスキーたちには伝えないことにした。

 

善意で契約してくれたマスカレーナや利害の一致から協力することになったクルヌギアスとは違って彼女たちは霊使の首を突っ込んでいる件とは無関係―――のはずだ。

もしかしたら、という考えもあるがその時はその時で改めて助力を請えばいい。

そんな事を考えていると申し訳なさそうな顔をしたティルルが話しかけてきた。

 

「あ、すみません。霊使さん。一つ聞きたいことがあるのですが…。」

「んぁ?どうしたんです?」

「えっと、少し小柄で禿げ上がった頭の御老人をご存じないですか?いかにも悪役って感じの…。」

「…ん?その人から俺の事を聞いたんですか?」

「はい…。」

 

その老人はなんというか明らかに霊使を目の敵にしていたのだという。

その後ティルルは大きな過ちを犯しそうになったのだが。

咲姫から聞いた先ほどまでのティルルの様子と、老人というキーワード。

そして何よりも四遊霊使を目の敵にしている人間などそれこそ一人しかいないだろう。

 

「あんの糞爺…!」

「あ、知り合いなんですか…?」

「なんか認めたくないけど元・家族。」

「元というのは…。」

「え?…俺あの糞爺に元居た家追放されてましてね…。今になってウィンやウィンダの力が必要だから俺を狙ってきてるんですよ。ああクソ…。思い出すだけでイライラする…!」

「ええ…?」

 

まともな家庭環境だったらこんなふうに自分がいらいらすることもなかったはずだ。

結局の所、何が言いたいのかと言われればこの一言に尽きる。

 

「知ってます。知ってますとも。如何せん俺を二度殺しかけた奴らですからね。そいつらの頭ですよ。その糞爺は。」

「…ああ。なるほど。そうなんですね。―――良ければなんですが。私も個人的に協力しましょうか?」

「ふぇ!?」

 

まさかティルルからそういう感じの発言が飛び出してくるとは思わなかった。

ティルルの発言は霊使にとっても渡りに船だったがだが逆に本当にさっき言った状況にもなりかねない。

 

「このことは私の招いた種ですからね。正直あの御老人を〇〇(ピー)したいです。ハスキーさんからも許可は取ってありますしね。」

 

ちらりとハスキーの方を見る霊使。

彼女も頷いているのでこの話はあの説教の時点でついでに指示が下っていたのかもしれない。

 

「じゃ、よろしくお願いします…、で、いいんですかね?」

「はい。これはあくまで個人的な協力関係ですので―――敬語は止めて下さい。」

「…あ、はい、…じゃないな。改めてよろしく、ティルル。」

「はい。ではまた。」

 

こうしてハスキーを除くドラゴンメイドたちは帰っていった。

それでも個人的な協力を得られただけで充分である。

結局彼女達と霊使いと精霊としての契約を交わすことはなかったが、それでいいのだ。

 

「…ここで契約できなくても何とでもなるはずだ。」

「…これは盛大なガバの予感が…。」

 

ウィンはこの先は思いやられるというように呟いた。

夏休みはまだまだ始まったばかり。

この先の一ヶ月が平和に過ぎますように。

帰って来たハスキーを横目にそんな事を思わずにはいられないウィンなのであった。




登場人物紹介

・ティルル
何か個人的な協力関係を結んだ

・霊使
よくわかんないうちにティルルとの「縁」ができた。

・ハスキー
暫くは霊使んちに居候するつもり。
記憶を取り戻したのは霊使を迎えに行くとき。

ひとまずこれでドラメ編は終了となりますがこれからも彼女たちは定期的にこの作品に現れます。
というわけで次回は夏と言ったら「祭り」ですよね。
ですので騒がしい夏祭り編の開幕です。

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