夏。
夏と言えば色々なものが挙げられるだろう。
海水浴だってそうだし、虫取りだってそう。
今は離れ離れになってしまった友人と遊ぶのだって夏に行われることが多いだろう。
そして、実家に帰省する人や故郷に帰る人もいれば、どこか遠くにバカンスに行く人たちだっている。
そこでロマンスに発展したりもするがそれはまあ、別の話。
しかしながら夏と言えばやはり祭りと花火が華だろう。
夜空に咲く炎の華は夏の夜空を彩り、幻想的な世界へと連れて行ってくれる。
「―――と、俺は思うんだよね。」
「何を言っているんだ、
「祭りとはかくも楽しい物だってことを伝えたかっただけなんだ。」
霊使は祭りが大好きだ。
このように祭りについて熱く語れるくらいには大好きだ。
祭りというのはその土地の神に感謝を示すのが始まりであることが多い。
その土地によって祭りの行われ方は違う。
この国には同じ名前でも中身が全く違う祭りもある位だ。
だからこそ祭りの中にその土地の本質が見えるような気がして、本当に楽しい。
霊使の住む町では創星祭と呼ばれる創星神の生誕を祝う祭りのほかにもただどんちゃん騒ぎをする納涼祭がある。
近くこの町で行われる祭りは納涼祭だ。
お盆近くでいささか「納涼」というには語弊があるが取り敢えずは納涼祭が近くあるのだ。
「さて、今年はどんな催しがあるのかね。」
「催しって…何かあるのですか?」
「ハスキーさん。…そうですね。去年は最後のスターマインを誰の名義にするかという名目で決闘大会が開かれたんですよ。」
「それは、何故…?」
「なんでも始まりは恋人のために花火を作った人がその花火の下で恋人に告白したからなんですって。それが転じて最後のスターマインで名前が呼ばれた人は必ず恋が成就するって話になったんですよ。」
そんな裏話を知ったのは本当に一年前の決闘大会の開催前。
地域ぐるみで行われる実質の「地域一決定戦」の始まりはロマンスからだった。
それを聞いたウィンが目をキラキラさせていたのは内緒だ。
去年の結果は辛うじて優勝し、そのおよそ10ヶ月後に伝承通り恋は成就した。
ところで、である。
この大会自体は文字通りただの大会なのであるが今までこの大会で二連覇を果たした人間は誰一人として居ない。
だいたい勝った人間は翌年、死ぬ気でメタられて準決勝あたりで敗北するからだ。
要するに今年は霊使に対して嫉妬渦巻く本気のメタカードが飛んでくるというわけだ。
「それ勝てるんですか…?」
「何とでもなるはずだ!」
「冗談ですよね?」
「いや、ガチだが。」
「あー、ハスキーさん。こうなったらボク達のマスターは止まんないよ。」
大体察していたようにヒータは笑う。
昨年の大会優勝時に「また来年」と焚き付けたヒータは何となくそれを分かっていた。
というよりも今の霊使はたとえヒータが止めたとしても大会に殴り込むくらいの事はする。
ウィンはなんとなくそれを分かっていたのか何も言うことはなかった。
(やっぱり私達のマスターって決闘脳だね…。)
(まぁ、決闘者だしエリアの言うこともある意味当然だけど…。)
霊使の耳にエリアとアウスのささやきが届くことはなかった。
例え届いたとしてもこの二人が霊使の提案を断るなんて考えもしないだろうが。
とにもかくにも。
霊使の決闘大会二連覇をかけた戦いが今、始まろうとしていたのである。
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そして納涼祭当日。
霊使へとむけられたとてつもない敵愾心がハスキーを警戒させた。
だがそれを何もないように流す霊使にハスキーは感心を覚えた。
流石に前回この雰囲気の中で勝った男だ。
面構えが違う。
「さて、と今日の大会のエントリー場所はここかな?」
「…おう、にぃちゃん昨年の優勝者様がどうしてここに?」
「そりゃ決まってるでしょう。今年も俺が勝つため、ですよ。」
霊使はなにも感じていないかのようにサラリと己の主目標を告げた。
その言葉にその場にいたもの全員がひりつく。
「なんだって?」
「もう一度言ってみやがれ?」
「だから、
勢いのままに近づいてくる男は霊使の鼻先まで近づく。
二人の視線の間には火花が散っているようで、このままどちらかが動けば決闘が始まりそうな雰囲気だった。
「…じゃあ、確かめてみるか?」
「ええ。去年の俺とは一味も二味も違うってとこ見せてやりますよ。」
「ほう、にぃちゃんここで手の内を公開してしまってもいいんか?」
「ええ、もちろんですとも。」
流石にクルヌギアスやマスカレーナは取っておくが。
別にリンクモンスターと化した霊使い達の力を見せつけるにはちょうどいい機会だ。
(やっぱ今年も変わらないね。)
(ああ。さすがに地域一決定戦だ。日本中…とまではいかないが、勝てればそれなりにはモテる。それに、商品券も副賞で付いてくる。)
この大会は場外乱闘なんて当たり前。
強いやつは参加する前に潰すなんて日常茶飯事でしかない。
そもそもの話、余興で行われるためか、参加枠は16人と非常に少ない。
故に、
ちなみに去年は参加者を絞るために決闘を3戦行い、残りライフの合計値上位16人が参加する仕組みになっていた。
昨年の霊使の記録は16400で13位タイ。
昨年はアタッカーがいなかったから長引いてしまったのも原因と言える。
今年がどんな形になるのか分からないが少なくともあまりいい予感はしない。
「…何やってるのさ霊使君…。」
「あれ、結?」
「私達も暇だから参加しようかなって。」
そんな愛に飢えたモンスター達と火花を散らしている霊使に声を掛ける存在が居た。白百合結である。
彼女は最近町の青年たちの憧れの的だ。
だれにだって平等に接するし、性格は明るいし、成績優秀だし、眉目秀麗だしで、男子が惹かれる全てを彼女は有していた。
そんな彼女と親しげに話している男が居たらどう思うだろうか。
そう。
殺意が湧く。
その場にいる大人たちはともかく青年たちにとって霊使はより許されざる者になった。
霊使は胃がキリキリなりだしているがここまで来ては引き下がれない。
『えー、本日の決闘大会に参加を希望される皆様は受付に集まってください。そこで今年の決闘大会出場者の決定をいたします。繰り返します―――』
その一言が合図であるかのように大会受付前に整列する愛に飢えた決闘者たち。
目にこれから始まる決闘に期待とほんの少しの劣情を浮かんでいる者が多い。
そんな中に放り込まれた霊使と霊使い達、それに結と、イビルツインズ。
そしてその場は受付の次の一言で阿鼻叫喚の地獄絵図へと早変わりするのだった。
『えー、今年の予選はくじです。昨年度のベスト4進出者と…。んーと…。そこの貴女はこのくじを引いて下さい。』
「「「「ん?」」」」
『この中の誰かが当たりを持っています。後でくじを引いた方々はこちらへ。16枚の当たりくじを該当者に渡しますので。』
「「「「え?」」」」
『はい。それでは予選開始までしばらくお待ちください。なお暴力行為、及びイカサマが発見された場合は即退場していただきますので。』
そう言って受付の人は霊使達をに手招きした。
その人に従って付いていくと16枚の当たりくじを―――少女に渡した。
その少女―――結は、目を丸くして、全てを悟ったような顔をして、こう言った。
「これって決勝でまた会おうとか言わないほうが良いよね?」
「安心しろ、結の骨は拾ってやるさ。」
「…うん。でも、敢えて言わせてもらうよ。決勝で戦おう、霊使君。」
「ああ。」
その後、結は16枚の当たりを守り抜き、伝説と称されるようになったのはまた別の話である。
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「決勝進出!」
最終的に結が16枚のあたりを守り通したために決闘の残りライフの平均値の上位16人が決勝へと駒を進めることになった。
もちろん襲い来る愛に飢えた決闘者を返り討ちにしていた霊使も予選1位タイで突破している。
しかし、霊使と結は知らなかったのだ。
この中にとんでもないデッキを持ちこんでいる者がいたことを。
これはこの決闘大会が「伝説」と呼ばれるに至った記録の一切である。
登場人物紹介
・四遊霊使
とりあえず参加したい
・白百合結
取り敢えず霊使と決闘したい
伝説を作った模様
・愛に飢えたモンスター
いくら決闘できても性格が良くないので(ry
というわけで祭りという名の決闘大会編開始です。
これが終わったらちゃんとお祭りに行くから許してください
水樹君のデッキ強化
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